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第423話【夢と記憶】

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俺はベッドの中でぐっすりと寝ていた。

なんだろうか──。

記憶が朧気だ。

意識と気力がハッキリしない。

この感覚は前にも何度ばかりか経験しているな~。

あー、たぶん、これは、夢だ。

ドリームだな。

確か俺は閉鎖ダンジョンに入った晩に、丁度良い部屋を見つけたから、そこで一晩を過ごすことに決めたんだ。

部屋は10×10メートル四方の部屋で、何故か生活出来るだけの家具が揃った部屋だった。

机が在り、テーブルが在り、箪笥が在り、ベッドが在り、食器まで揃っていた。

まるで誰かが住んでいたような間取りだった。

しかし、埃が溜まっていたから、何年も放置されていたのは分かった。

なので、この部屋で寝ることにしたのだ。

見張りはヒルダが買って出てくれた。

ヒルダはマミーなので居眠りして見張りを怠ることは無いだろうから、安心して眠れる。

だからだ──。

だから俺は閉鎖ダンジョン内にも関わらず、夢まで見ているのだろう。

夢の中の俺はベッドの中で眠っていた。

窓の外から雀の鳴く声が五月蝿くて目を覚ます。

机の上の目覚まし時計を見たら、七時だった。

「この目覚まし、鳴らんかったよな?」

ここは俺の部屋だ……。

一階から姉さんの声が聞こえて来る。

「○○~、朝御飯が出来たぞ~。さっさと起きやがれ~」

五月蝿いな……。

「言われなくったって起きるよ……」

俺はまだ眠たい目を擦りながら一階に下りて行った。

リビングのテーブルの上には二人分の朝食が並んでいる。

「朝から丼かよ……」

俺と姉さんの分だ。

「ほら、まずはさっさと顔を洗って、歯を磨いて来い」

「分かった……」

懐かしい声だった。

姉さんの声だった。

あれ、でも、これって……。

スカル姉さんか……?

スカル姉さん?

誰だっけ、それ?

「何をボケッとしてる。早くしろ!」

「へぇ~い……」

俺は難しいことを考えずに洗面台で顔を洗った。

いや、全然難しくないか?

まあ、いいや。

兎に角、歯を磨いたあとに姉さんが作ってくれた朝御飯を食べる。

「姉さん……」

「なんだ?」

「朝から麻婆五目焼き飯丼は、少しヘビーだと思うんだが……」

「文句有るなら、食うな。明日から自分で作れ……」

「ああ、なんで父さんと母さんは、一週間も旅行なんだよ……」

「結婚30周年なんだから、いいだろ」

「姉さんは結婚しないの?」

「まだ、しない」

あれ、あの医薬品会社の兄さんとは仲良く行ってないのかな?

確か大学生時代の同級生だったよね。

「じゃあ、私は仕事に行って来るから、食器は洗って置けよ」

「へぇ~~い」

姉さんは仕事に出て行った。

「医者も大変だな……」

俺は飯を食い終わると姉さんに言われた通り食器を洗ってから二階で学生服に着替えた。

「よし、学校に行くか──」

俺が毎朝と変わらない感じで学校に向かっていると、同じ高校に通う近所の○○○に出会う。

「よう、○○くん、おはよう」

「おう、おはよう○○○。朝から元気か?」

こいつとは中学生からの同級生だ。

「ああ、僕は元気だぞ」

「親父さん、大変なんだろう。ニュースで見たぞ」

「親父は代々の政治家だ。この程度で終わる男じゃあないよ」

「なら、いいんだが」

間も無くして俺たちは学校に到着する。

○○○とはクラスが別なので下駄箱で別れた。

俺は俺の教室を目指す。

俺が教室に入るなりに大柄な女子にヘッドロックをされた。

頬に乳が当たる。

あれ、なんか胸が痛むぞ……。

「よ~う、○○。おはよう~」

「○ちゃん、やめろよ。苦しいだろ!」

○ちゃんは身長が俺より高い。

190センチあるらしい。

だから女子バレー部のエースだ。

俺が○ちゃんのヘッドロックに苦しめられていると、ツインテール眼鏡の○○ちゃんが助けに入ってくれた。

「ほら、○ちゃん、そんなに捻ったら○○君の首がもげちゃうよ!」

「大丈夫だ。人間の首は、この程度でもげたりしないからさ」

ええい、この怪力娘が!!

マジでもげるぞ!!

俺がヘッドロックに苦しんでいると、朝礼のチャイムが鳴った。

それで俺はヘッドロックから解放される。

「大丈夫だった、○○君?」

隣の席の○○ちゃんが聞いて来たので俺は「慣れてるから」って苦笑いで答えた。

眼鏡の彼女も苦笑いする。

その彼女から漂う香水の匂いが心地よかった。

こんな感じでいつものように毎日が始まった。

「でーはー、一時限目を始めますー(棒読み)」

ちんちくりんな歴史の教師が授業を始める。

背伸びをするが、黒板に走らせるチョークは低い位置にしか届いていない。

二時限目は体育だった。

ゴリラ顔の教師は体育会系丸出しでウザイ。

もっとウザイのは音楽の教師だ。

鷹のような鋭い目でピアノを引く姿は音楽家と言うよりサイコパスな殺人気を連想させる。

マジでアイツはヤバイと思う。

なんでもう一人のアホっぽい音楽教師が担当じゃなかったのかな。

まあ、いいや。

あれ、またあの用務員さん、焚き火してるよ。

本当に焚き火が好きだな。

また、こうしていつも通りの学校生活が終わる。

学校帰りに俺はいつもの駄菓子屋に寄ってから帰る。

俺は駄菓子が好きだ

でも、駄菓子屋の親父は苦手である。

何せモッチリデブで仕草がキモイ。

だがしかし、何故か憎めない。

今日は駄菓子屋でヨッちゃん烏賊を買って帰った。

そして、食べながら帰る。

この酸味がたまらん。

俺は食べ終わった串を咥えながら歩いていた。

串に残った酸味を楽しんでいるのだ。

これだけで、帰り道は楽しめる。

「あっ!!」

その時であった。

俺は、何もない道端で躓いたのだ。

正面からスッ転ぶ。

ズブリっ!!

あーーーーーー!!!

俺は心の中で叫んでいた。

それは、口から叫びを上げられなかったからだ。

倒れた俺の喉に、咥えていたヨッちゃん烏賊の串が刺さっている。

呼吸が出来ない!?

これ、ヤバイかも!!

い、い、息が………。

く、くる、し、いい……。

「ぜはぁーーーーー!!」

そこで目が覚めた。

俺はベッドから猛スピードで上半身を跳ね起こした。

『アスラン様、大丈夫でしょうか。何か魘されていましたが……?』

慌てる俺が周りを見舞わせば、アイパッチのメイドさんが、俺を心配そうに見ていた。

「ヒルダか……」

『はい、ヒルダです』

そうだ、ここは閉鎖ダンジョンの一室だ。

ここで夜を明かしていたんだ。

「ヒルダ、聞いてくれ……」

『なんで御座いましょう?』

「俺、ヨッちゃん烏賊の串で死んだんだわ……」

『はあ?』

ヒルダは不思議そうに首を傾げていた。

正直言って、こんなこと思いだしとうなかったわい……。


【つづく】
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