上 下
419 / 604

第418話【未来の目標】

しおりを挟む
俺はサッカーボールサイズの白い玉を抱えながらボルトン男爵に訊いた。

「白髪のオッサン、この玉っころはなんだ?」

それとは倒したジャイアントサンライズの体内から出てきた白い玉である。

うっすらと魔力は感じられるが真っ当なマジックアイテムではないようだ。

その証拠にアイテム鑑定をすると【ジャイアントサンライズの白球+1。火で焼けない】としか出ないのだ。

その疑問に、俺の隣を歩くボルトン男爵が答えてくれた。

「それは、村だとジャイアントサンライズの肝って呼ばれている」

「えっ、肝なのか?」

「いや、分からん……。たぶん真珠貝の体内で出来る真珠と同じ感じの石じゃあないかと思うんだがな」

「なるほど、真珠の一種か。それなら納得できる」

俺とボルトン男爵は並んで森の中を歩いていた。

村に帰る途中だ。

「でもよ、燃えないだけだろ。なんに使えるんだ。置物か、それとも飾りか?」

「置物は飾りだろ」

「だな………」

鋭い意見だな、マジで。

「ほら、前にも説明しただろ。ジャイアントサンライズに捨てるところ無しだって」

「ああ、それは覚えてる」

「その玉は魔法使いギルドに高く売れるんだ」

「魔法使いギルドがこれを買うのか?」

「なんでも魔法のポーションの材料らしい。砕いて粉にしてからいろんな物と混ぜ合わせると、魔法のポーションが出来上がるらしいぞ」

「へぇ~……」

それならスバルちゃんにプレゼントしたら喜んでくれるかな?

「これを魔法使いギルドは幾らぐらいで買い取るんだ?」

「量り売りだ。1キロ5000Gぐらいかな。その日の相場によるんだよ」

俺はなんとなく持った感覚で、7キロから8キロぐらいだと感じる。

「これは少なくても7キロぐらいだろ。だとすると、1キロ5000Gなら7×500で30000Gぐらいか──」

「ぐらいってなんだ……。35000Gだろ……」

「ああ、今35000Gって言おうとしていたのにさ!」

「嘘つけ!」

俺は手に在る巨大真珠を眺めながらボルトン男爵に訊いた。

「これ、要る?」

「当然だ。要るだろ。35000Gの値打ちだぞ」

「だよね……」

失敗した。

戦利品に関して話し合っていなかった。

ジャイアントサンライズの死体に捨てるところ無しって聞いた段階で、キッチリ話し合って置くべきだったぜ。

倒したジャイアントサンライズの死体はどっちの物になるのだろうか?

俺の戦利品として認められるのだろうか?

いや、そんな契約はしていない。

これは損をしたかも知れんぞ……。

「なあ、白髪のボルトン男爵」

「なんだ、ハゲのアスラン殿?」

「ジャイアントサンライズを倒したのは俺だよな?」

「そうだが?」

「じゃあ、倒した死体は俺の物だよな?」

「はっはっはっはっ~~」

高笑いを上げたあとにボルトン男爵が言う。

「キミは何を言っているんだ。我々の私有物が私有地内に逃げ出して、それを殺したからって、それが殺した人の物になるのかね。なるとしたら山賊が人の私有地で村人を殺したら、その村人の財産が合法的に山賊の物になるって言ってるようなもんだぞ。それは強盗だ」

「うぐぅぅぅ……」

ぐうの音も出ない正論だ……。

例え話が上手いな、この白髪野郎。

これは論破できないぞ。

しゃあない、今回はガメツイことは言わずに、素直に諦めるか……。

「ほれ」

「おっと!」

俺は手に持っていた巨大真珠をボルトン男爵に放り投げた。

俺の物にならないなら持ってても仕方無い。

村まで運ぶのすらストレスだ。

「詰まらなそうな顔をするな」

「フンッだ……」

「我々だって、稼ぎ出すのに必死なんだ。村では子供を食わせなきゃならないし、老人たちも面倒見なければならない。だから金が必要なんだ」

「分かってらぁ~……」

「今の目標は、村に学校を建てて教師を雇いたいんだ。子供たちにちゃんとした教育を施してやりたいんだよ。そのためにも金を貯めないとならなくってね」

ちゃんと将来を考えているんだな~。

「学校か──」

魔王城の町にも学校が必要なのかな?

まあ、まだその段階じゃあないか。

まずは人がちゃんと住める環境を構築しないとな。

そして、俺たちハゲと白髪の二人は村に帰って来た。

討伐成功を村人たちに告げる。

すると村人たちは歓声を上げながら仕事の準備を始め出す。

「あれ、これから仕事か、もうそろそろ日が沈むぞ?」

そう、夜は近いはずだ。

ボルトン男爵が答えた。

「今晩は徹夜だな。ジャイアントサンライズの死体を回収しないとならないから」

「急ぐことは無いだろ。明日の朝からにしろよ」

「そうもいかん。ジャイアントサンライズの死体は雨に当たると質が墜ちるんだ。だから早めに解体して倉庫に保管したいんだよ。万が一に雨にでも降られたら台無しだからな」

「なるほどね。働き者だな──」

まあ、そこまで俺には関係無い話だ。

よし、俺は水浴びだぜ。

井戸水で良いから頭から被りたい。

今晩は村に泊めてもらって、明日になったらゴモラタウンに帰ろうか。

まあ、金にはなった。

500000Gの仕事だもんな。

たぶん、あの死体を全部捌けばもっと金になるんだろうけれど……。

それを俺が言ったら欲張りだな。

俺は俺の仕事を果たしたんだ。

それで十分じゃあないか。

明後日にはソドムタウンに帰って、また町作りだぜ。


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...