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第415話【ジャイアントサンライズとの決戦】
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俺は腹八分目ぐらいまで飯を食ったあとに、ボルトン男爵から白装束を借りて着込んでいた。
「ちょっと暑いな、これ……」
「我が儘言うな、真っ黒な服よりマシだろうさ。それに白ければ若干の熱避けにもなる」
「なるほど……」
躱鎧の上から白装束を纏った俺の横で、ボルトン男爵も白装束に着替える。
戦いを遠目に観戦するらしい。
そして着替え終わった俺たちは二人で森の中を歩いていた。
「それで、どんな作戦で行くのだ?」
俺は異次元宝物庫からラージロングボウ+2を取り出すと言った。
「クロスボウで、遠くからピュンピュンっと射抜く」
「セコいな」
「セコイとか言うな……」
「しかし、体躯の小さな雄になら矢でも攻撃が届くだろうが、巨躯の雌には矢なんぞ届かんぞ。届く前に燃え尽きてしまう」
「そのために氷属性の矢と冷却水を用意した。準備は万全だ」
「なるほど、なかなか考えているんだな……」
俺は白頭巾を被った頭をポリポリとかきながらボルトン男爵を揶揄する。
「やっぱりあんたは軍人に向いてないな」
「何故だ?」
「戦う相手の情報を得て、その敵に有効な作戦を立てるのが当然の戦術だ。それは戦争だろうと冒険だろうと代わらない。あんたは、その辺が分かってないよ」
ボルトン男爵は白頭巾を被ると口元をタオルで隠した。
「分かってる。だからこんな田舎で農場を営んでいるんだ。でも、それが私にはあっている。楽しくもあるから問題ない……」
「楽しければいいけれど、俺は冒険をしていたほうが楽しいな。何せロマンがある」
「スローライフにもロマンは溢れているぞ」
「スローライフね~……」
「スローライフはいいぞ。心が温まる」
「俺にとっては冒険者の人生も、十分スローライフなんだけれどさ」
「冒険はスローライフじゃあないだろ~」
「そうかな~?」
そんな会話を続けながら俺たちは屋敷裏の森を進んで行った。
やがて森を抜けて広野に出る。
遠くに三体のジャイアントサンライズが陽炎を揺らしながら踞っているのが見えた。
「よし、じゃあここからは一人で行ってくるぜ、白髪オヤジ」
「ちょっと待て、誰が白髪オヤジだ!」
「えっ、違うの?」
「いや、まあ、そうだけど……」
「まあ、なんでもいいや。兎に角行ってくるぜ!」
そう言い俺はラージロングボウを背負いながら広野を一人で進んだ。
「さて、良さげな狙撃ポイントはないかな~」
俺は堂々と広野を進んで狙撃できそうなポジションを探した。
ジャイアントサンライズは目も悪ければ耳も悪い。
尚且つ足腰も悪いから移動能力にも問題がある。
自分より高い段差を越えられないし、体重が有る分だけ足も遅い。
だから坂道すら普段は避けて移動するぐらいだと聞いている。
故に俺は高い場所から狙撃しようと考えていた。
「あの山がいいかな──」
少し高い山がある。
その下にジャイアントサンライズたちが踞っているのだ。
坂は緩やかだが、高さ的にも距離的にも丁度良さそうだ。
俺は山の頂上に登ると岩陰に身を潜めた。
氷の矢が詰まった矢筒と冷却水を異次元宝物庫から出して戦いの準備をする。
壺の蓋を開けて矢先を冷却水に付けた。
ヒタヒタだ。
もう冷却水が入った壺が矢筒のようになってしまった……。
「さてと……」
俺はラージロングボウに氷の矢をセットすると岩陰から下を覗き見た。
緩やかな坂の下にジャイアントサンライズが三匹固まって寝てやがる。
夜行性だから昼間だとほとんど動かないようだな。
寝てるのか?
寝てそうだな。
よし、不意打ちだ。
「それにしても、ちょっと熱いぞ……」
ジャイアントサンライズまでの距離は100メートル弱だろうか……。
なのにここまでジャイアントサンライズの熱が伝わって来る。
接近したら、どんだけ熱いのだろう。
マジで太陽だな。
俺は岩の陰から出ると地面に伏せた。
腹這いの体制でラージロングボウを構える。
「まずは数減らしで、弱い雄からだ……」
初弾の狙いを一番小さなジャイアントサンライズに定めた。
一番小さいって言っても球体で1.5メートルほどは有るだろう。
もう一匹の雄は2メートルだ。
一番大きな雌は4メートルの球体だ。
普通の雌が3メートルぐらいと聞くから、この雌はかなり大きいのだろう。
兎に角移動速度が高い小柄なヤツから仕留める作戦だ。
「じゃあ、行くぜ!」
俺はラージロングボウの狙いを定めると、軽く人差し指で引鉄を引いた。
プシュンっと音を奏でて氷の矢が放たれる。
放った矢は光りながら雄の体に突き刺さった。
「キィーーー!!」
雄のジャイアントサンライズが甲高い悲鳴を上げてもんどりうった。
その騒ぎで他の二匹も目を覚ます。
俺はすぐさまラージロングボウの弦を引くと二本目の矢をセットする。
「効いてるな~」
俺に射ぬかれた雄のジャイアントサンライズはヨタヨタしていた。
足に来ているようだ。
弱ってやがる。
ならば、二発で狩れるかな?
俺は慈悲無く二発目の矢を放つ。
そして光った氷の矢が刺さると一番小さなジャイアントサンライズは細い足を痙攣させながら沈み込む。
「よし、致命傷だ。もう動けまい。これでまずは一匹だ」
二匹のジャイアントサンライズはキョロキョロと周囲を見回しているばかりだった。
俺がどこから狙撃してきたか分かっていない。
なるほどね~。
こいつら夜行性で明るいと目が見えづらいんだよな。
だから白装束が有効なように、矢が光ってると眩しくって見えないんだわ。
故に俺がどこから狙撃しているか気付いていない。
「じゃあ、次は中級のジャイアントサンライズを狩るぞ」
俺は次の矢を二匹目の雄に向かって放った。
光る矢は二匹目の雄に突き刺さる。
「キィーーーー!!!」
攻撃は当たった。
しかし──。
「あれ……?」
こっちを見上げている。
気付かれた?
マジでかよ……。
二匹のジャイアントサンライスが100メートルある緩やかな山を駆け上がって来る。
だが、遅い。
先頭を登る雄よりも、巨漢の雌は更に遅かった。
「あの速度なら、ここまで届く前に三発以上は撃てるぞ!」
俺は次々と再装填しては矢を放つ。
そして、予想した通り更に三発の矢を放って二匹目の雄を撃ち殺した。
「よし、二匹目ゲットだぜ!」
俺が浮かれていると矢が四本刺さった雄の死体を押し退けて雌のジャイアントサンライズが迫って来た。
「うわ、マジで熱いぞ!!」
空気が煮え上がる中で俺はラージロングボウの銃口を獲物に向けた。
まず外さないだろう。
相手は巨躯でトロイからな。
しかも至近距離だ。
「食らえ!!」
俺は矢を放った。
しかし──。
ジュッ!!
「ジュッて鳴ったぞ!?」
放った矢が蒸発した!?
突き刺さる前に火が上がり空中で燃え尽きた。
「ヤバイっ!!」
俺はラージロングボウを背負うと矢筒と壺を抱えて、迫り来るジャイアントサンライズから逃げ出した。
坂道を駆け降りる。
「熱い、熱い!!」
ヤバイわ!!
これは堪らん!!
熱すぎるぞ!!
背中が燃え上がりそうだわ!!
とりあえず俺は逃げた。
兎に角走った。
仕切り直しである。
まさか放った矢が蒸発するとは思わなかったぜ。
どんだけの熱を帯びていやがるんだ。
【つづく】
「ちょっと暑いな、これ……」
「我が儘言うな、真っ黒な服よりマシだろうさ。それに白ければ若干の熱避けにもなる」
「なるほど……」
躱鎧の上から白装束を纏った俺の横で、ボルトン男爵も白装束に着替える。
戦いを遠目に観戦するらしい。
そして着替え終わった俺たちは二人で森の中を歩いていた。
「それで、どんな作戦で行くのだ?」
俺は異次元宝物庫からラージロングボウ+2を取り出すと言った。
「クロスボウで、遠くからピュンピュンっと射抜く」
「セコいな」
「セコイとか言うな……」
「しかし、体躯の小さな雄になら矢でも攻撃が届くだろうが、巨躯の雌には矢なんぞ届かんぞ。届く前に燃え尽きてしまう」
「そのために氷属性の矢と冷却水を用意した。準備は万全だ」
「なるほど、なかなか考えているんだな……」
俺は白頭巾を被った頭をポリポリとかきながらボルトン男爵を揶揄する。
「やっぱりあんたは軍人に向いてないな」
「何故だ?」
「戦う相手の情報を得て、その敵に有効な作戦を立てるのが当然の戦術だ。それは戦争だろうと冒険だろうと代わらない。あんたは、その辺が分かってないよ」
ボルトン男爵は白頭巾を被ると口元をタオルで隠した。
「分かってる。だからこんな田舎で農場を営んでいるんだ。でも、それが私にはあっている。楽しくもあるから問題ない……」
「楽しければいいけれど、俺は冒険をしていたほうが楽しいな。何せロマンがある」
「スローライフにもロマンは溢れているぞ」
「スローライフね~……」
「スローライフはいいぞ。心が温まる」
「俺にとっては冒険者の人生も、十分スローライフなんだけれどさ」
「冒険はスローライフじゃあないだろ~」
「そうかな~?」
そんな会話を続けながら俺たちは屋敷裏の森を進んで行った。
やがて森を抜けて広野に出る。
遠くに三体のジャイアントサンライズが陽炎を揺らしながら踞っているのが見えた。
「よし、じゃあここからは一人で行ってくるぜ、白髪オヤジ」
「ちょっと待て、誰が白髪オヤジだ!」
「えっ、違うの?」
「いや、まあ、そうだけど……」
「まあ、なんでもいいや。兎に角行ってくるぜ!」
そう言い俺はラージロングボウを背負いながら広野を一人で進んだ。
「さて、良さげな狙撃ポイントはないかな~」
俺は堂々と広野を進んで狙撃できそうなポジションを探した。
ジャイアントサンライズは目も悪ければ耳も悪い。
尚且つ足腰も悪いから移動能力にも問題がある。
自分より高い段差を越えられないし、体重が有る分だけ足も遅い。
だから坂道すら普段は避けて移動するぐらいだと聞いている。
故に俺は高い場所から狙撃しようと考えていた。
「あの山がいいかな──」
少し高い山がある。
その下にジャイアントサンライズたちが踞っているのだ。
坂は緩やかだが、高さ的にも距離的にも丁度良さそうだ。
俺は山の頂上に登ると岩陰に身を潜めた。
氷の矢が詰まった矢筒と冷却水を異次元宝物庫から出して戦いの準備をする。
壺の蓋を開けて矢先を冷却水に付けた。
ヒタヒタだ。
もう冷却水が入った壺が矢筒のようになってしまった……。
「さてと……」
俺はラージロングボウに氷の矢をセットすると岩陰から下を覗き見た。
緩やかな坂の下にジャイアントサンライズが三匹固まって寝てやがる。
夜行性だから昼間だとほとんど動かないようだな。
寝てるのか?
寝てそうだな。
よし、不意打ちだ。
「それにしても、ちょっと熱いぞ……」
ジャイアントサンライズまでの距離は100メートル弱だろうか……。
なのにここまでジャイアントサンライズの熱が伝わって来る。
接近したら、どんだけ熱いのだろう。
マジで太陽だな。
俺は岩の陰から出ると地面に伏せた。
腹這いの体制でラージロングボウを構える。
「まずは数減らしで、弱い雄からだ……」
初弾の狙いを一番小さなジャイアントサンライズに定めた。
一番小さいって言っても球体で1.5メートルほどは有るだろう。
もう一匹の雄は2メートルだ。
一番大きな雌は4メートルの球体だ。
普通の雌が3メートルぐらいと聞くから、この雌はかなり大きいのだろう。
兎に角移動速度が高い小柄なヤツから仕留める作戦だ。
「じゃあ、行くぜ!」
俺はラージロングボウの狙いを定めると、軽く人差し指で引鉄を引いた。
プシュンっと音を奏でて氷の矢が放たれる。
放った矢は光りながら雄の体に突き刺さった。
「キィーーー!!」
雄のジャイアントサンライズが甲高い悲鳴を上げてもんどりうった。
その騒ぎで他の二匹も目を覚ます。
俺はすぐさまラージロングボウの弦を引くと二本目の矢をセットする。
「効いてるな~」
俺に射ぬかれた雄のジャイアントサンライズはヨタヨタしていた。
足に来ているようだ。
弱ってやがる。
ならば、二発で狩れるかな?
俺は慈悲無く二発目の矢を放つ。
そして光った氷の矢が刺さると一番小さなジャイアントサンライズは細い足を痙攣させながら沈み込む。
「よし、致命傷だ。もう動けまい。これでまずは一匹だ」
二匹のジャイアントサンライズはキョロキョロと周囲を見回しているばかりだった。
俺がどこから狙撃してきたか分かっていない。
なるほどね~。
こいつら夜行性で明るいと目が見えづらいんだよな。
だから白装束が有効なように、矢が光ってると眩しくって見えないんだわ。
故に俺がどこから狙撃しているか気付いていない。
「じゃあ、次は中級のジャイアントサンライズを狩るぞ」
俺は次の矢を二匹目の雄に向かって放った。
光る矢は二匹目の雄に突き刺さる。
「キィーーーー!!!」
攻撃は当たった。
しかし──。
「あれ……?」
こっちを見上げている。
気付かれた?
マジでかよ……。
二匹のジャイアントサンライスが100メートルある緩やかな山を駆け上がって来る。
だが、遅い。
先頭を登る雄よりも、巨漢の雌は更に遅かった。
「あの速度なら、ここまで届く前に三発以上は撃てるぞ!」
俺は次々と再装填しては矢を放つ。
そして、予想した通り更に三発の矢を放って二匹目の雄を撃ち殺した。
「よし、二匹目ゲットだぜ!」
俺が浮かれていると矢が四本刺さった雄の死体を押し退けて雌のジャイアントサンライズが迫って来た。
「うわ、マジで熱いぞ!!」
空気が煮え上がる中で俺はラージロングボウの銃口を獲物に向けた。
まず外さないだろう。
相手は巨躯でトロイからな。
しかも至近距離だ。
「食らえ!!」
俺は矢を放った。
しかし──。
ジュッ!!
「ジュッて鳴ったぞ!?」
放った矢が蒸発した!?
突き刺さる前に火が上がり空中で燃え尽きた。
「ヤバイっ!!」
俺はラージロングボウを背負うと矢筒と壺を抱えて、迫り来るジャイアントサンライズから逃げ出した。
坂道を駆け降りる。
「熱い、熱い!!」
ヤバイわ!!
これは堪らん!!
熱すぎるぞ!!
背中が燃え上がりそうだわ!!
とりあえず俺は逃げた。
兎に角走った。
仕切り直しである。
まさか放った矢が蒸発するとは思わなかったぜ。
どんだけの熱を帯びていやがるんだ。
【つづく】
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