上 下
390 / 604

第389話【トロール登場】

しおりを挟む
俺は頭の潰れたアマゾネスたちの死体を部屋の隅に並べて胸の前で手を組ませてやった。

南無南無南無っと拝む。

残念なことにアマゾネスゾンビはマジックアイテムどころか金目の物すら何も持っていなかった。

ゾンビだから武器すら持っていない。

流石にマジックアイテムじゃあないビキニアーマーまで剥ぎ取るのは可哀想だから、それは止めておいた。

さて、気を取り直して探索を再開させるかな。

俺は部屋を出て奥の通路を進む。

再び狭い通路だったが15メートルほど歩いただけで隣の部屋に到着した。

部屋への入り口には扉が在ったが開いたままである。

俺はランタンの明かりを絞ると出入り口に近付いて部屋の中を覗いた。

暗闇の中は静かだったが気配を感じる。

んん~、何か居るな……。

部屋の奥に大きな塊が二つ在る。

2メートルほどの塊なのだが暗くて良く見えない。

夜目スキルが有るが、これが限界だ。

しゃあないから俺はランタンで部屋の中を照らし出す。

再び殺風景な20メートル四方の部屋だった。

その部屋の奥に在るのは岩である。

岩には何か巻き付いている。

二つの変な岩が部屋の奥に在るのだ。

「うむ、不自然だ……」

俺は警戒しながら部屋に入る。

すると岩がグラグラと動き出した。

これ、生きてるよ。

「人間の匂いがするぞ~?」

「また、人間のゾンビじゃねえ~?」

「いや、生きのいい匂いだ~」

「じゃあ、食えるのか~?」

「うん、食えるな~」

どちらも頭の悪そうな口調だった。

岩たちが会話をしている。

いや、岩じゃあないぞ。

俺がネーム判定をしたら【トロールです】っと返された。

二体のトロールが振り返る。

ずんむりっとしたデブい体型のトロール二体は木の棍棒を持っていた。

そして、何故か岩のような肌にはビキニアーマーを纏っている。

俺は愕然としながら声を溢した。

「なんでトロールがビキニアーマーを着てるんじゃあ……」

振り返ったビキニアーマートロールと目が合った。

すると岩の顔を微笑ましてトロールが述べる。

「人間だ~。しかも男だぞ~」

「本当だ~。よ~し、こいつを殺そう~」

おっ、早くも殺す気満々じゃあねえか。

よーーし、やったろうじゃあねえか!!

「これで、オラたちもビキニアーマーから卒業だ~」

「こいつの服を剥ぎ取って、着込んでやるぞ~」

「でも~、こいつは一体だ。だから服も一着だぞ~」

「じゃあお前が上着を着ろよ~。オラはズボンを履くからさ~」

「それだとオラはチンチン丸出しじゃあねえか~」

「気にすんな~、オラは乳首丸出しだからさ~」

「あはははは~。そりゃあいいや~~!!」

気にしろ!!

なんだこのビキニトロールズは!?

バカなの!?

バカですか!?

俺があきれていると、ドシンドシンと音を鳴らしてデブトロールが走って来る。

身長は2メートル20センチぐらいだろうか。

醜悪な顔に太った体は岩のよう。

太い腕に丸太のような棍棒を持っている。

そして恥ずかしげもないビキニアーマー。

もう、どこから見ても変態だ。

変態にしか見えない。

うん、殺そう!!

殺すしかない!!

俺は腰からゴールドロングソードを引き抜いた。

「服だけ残してミンチになれ~」

トロールが棍棒を袈裟懸けに振るった。

「遅い!」

トロールだけにトロイ。

俺は身を屈めながら横に躱す。

そこから走った。

ビキニトロールの周りを進んで二匹の背後を取る。

容易い!

こいつらパワーは強そうだが移動速度は低いぞ。

所詮はデブだ。

俺は背後からトロールの背中を斬りつけた。

「もろうた!!」

だが───。

「なにっ!!」

俺の剣は硬い皮膚に弾かれる。

俺が斬ったのはブラの紐だけだった。

岩ってレベルの硬さじゃあない。

鉄だ、鉄の塊だ。

「いやん、オラのブラが外れたわ~」

俺にブラの紐を斬られたトロールは、可愛らしく胸を押さえて踞る。

しかし、もう一体が俺を追って攻撃を振るう。

「ちょこまかすんな、俺の上着~!!」

トロールの振り向き様の横振り攻撃。

俺は棍棒を屈んで躱すと後方に退いた。

少し仕切り直す。

んんー、破壊力が足りないのかな?

ならば──。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、ディフェンスシールド、フォーカスアイ、ファイアーエンチャントウェポン!!」

次々に唱えられるエンチャント魔法を帯びた俺のからだが様々に輝いた。

そして黄金剣が炎に包まれる。

攻撃力アップのついでに防御力も上げといた。

「まてこら、上着!!」

「ライトニングボルト!!」

「ギィァアアア!!」

よし、魔法が効いたぞ!!

「とうっ!!」

俺はジャンプ一番で飛びかかった。

「かーらーのーー!」

俺は上段に大きく構えて黄金剣を振りかぶっていた。

そこから──。

「ヘルムクラッシャー!!」

全力に攻撃スキルを乗せた兜割り。

攻撃力1.5倍の一撃だ。

その一撃がビキニトロールの顔面を切り裂いた。

「うぎゃぁあああ、顔が~!!」

片手で顔を押さえながらよろめくビキニトロール。

浅いか!?

だが切れた。

切れれば殺せる。

「もうブラなんか要らないぞ~!」

ブラを切られたビキニトロールが、そのブラを投げ捨てた。

ノーブラで駆け寄って来る。

「ライトニングボルト!!」

「ギョェエエエ!!」

同じ作戦だ。

まずは魔法で怯ませてからの本命攻撃に続く。

「ダッシュクラッシャー!!」

3メートルダッシュで一気に間合いを詰めた俺の残撃がノーブラトロールの膝を攻めた。

ガンっと音が響く。

「ぬぬっ!!」

剣が膝に食い込んだ。

だが、足を切断までは行かない。

「ちっ!!」

剣が骨に食い込んだところで止まって抜けないぞ。

「痛いー、痛いぞー!!」

そして、ノーブラトロールが膝の痛みに悲鳴を上げながら闇雲に棍棒を振るった。

その一振りが俺の肩に当たってしまう。

「のわっ!?」

強い衝撃に俺の体が吹っ飛んだ。

燃え上がる黄金剣から手を放してしまう。

「いてー、俺の肘がー!!」

いや、肘じゃあない、膝だ……。

「糞ぉぉ、オラの美顔がぁぁああ!!」

いや、デブで酷い顔だぞ……。

いやいや、突っ込んでる場合じゃあ無いぞ。

俺は異次元宝物庫から斬馬刀を取り出した。

その斬馬刀にファイヤーエンチャントを施す。

「一気に攻める!!」

「仕返ししてやるぞ、上着!!」

俺が走ると顔を切られたビキニトロールも走り出した。

俺とトロールが激突する。

「のわぁあああ!!」

「どぉらぁあああ!!」

俺の斬馬刀とビキニトロールの棍棒が鍔迫り合いを繰り広げる。

やはり凄いパワーだぜ。

こりゃあアカン。

俺は身を躱して鍔迫り合いから逃げた。

「おっとっとっ……」

俺が横に逃げると勢い余ったビキニトロールが前のめりに倒れた。

俺は四つん這いに倒れたトロールの延髄を狙って斬馬刀を振るう。

「ワイルドクラッシャー!!」

ガンって音が鳴った。

斬りつけた斬馬刀の刀身がトロールの後ろ首に半分ぐらい刺さっている。

流石は攻撃力2.5倍のスキルだぜ。

「ぐはぁっ!!」

四つん這いのビキニトロールが血を吐いた。

刀身が脊髄を切り裂き食道にまで到達した証拠だ。

「ち、くしょ、う……」

まだ、生きてる!?

まだ、倒れない!?

まだ、しゃべれるのか!?

俺は斬馬刀から手を離すと異次元宝物庫からウォーハンマー+1攻撃力向上を取り出した。

それで斬馬刀の刀背を打った。

その一撃で更に斬馬刀の刀身が首に深く食い込んだ。

「もう、一丁だ!!」

二擊目のウォーハンマーでビキニトロールの姿勢が力無く前に崩れた。

尻を突き上げ顔を地面につけて動かなくなる。

ビキニトロールの首は皮一枚で繋がっている状態だった。

まず一体撃破だ。

「良くも仲間を~!!」

ノーブラトロールが俺の黄金剣を振り上げながら走って来る。

「あっ~、俺の愛剣を!?」

それよりも、あいつ走れるの?

あれ、膝が治ってやがる。

トロールには強い自己再生能力が有るって聞いたことがあるが、ここまで速く再生するんだな。

「もうお前の服はオラ一人の物だ~。服以外全部細切れにしてやるぞ~!!」

無茶苦茶に振るわれる黄金剣の攻撃は速い。

流石は俺の愛用武器だぜ。

だが、剣技が幼稚だ。

穴だらけである。

「それっ!!」

俺は見つけた剣筋の穴を突いてウォーハンマーを振るった。

槌頭の一撃がノーブラトロールの顔面を撃ち殴る。

「ぐはっ!!」

まるで釣りかねを叩いたかのような感触。

硬いが空っぽ感が有る。

たぶん脳味噌が入ってないからだろう。

その一撃でノーブラトロールの前歯が飛んだ。

「歯がぁ~!!」

あれ、ハンマーのほうが効いてるぞ。

あー、なるほど。

俺は刃物で岩を切ってたから悪かったんだ。

岩は【切る】より【砕く】のほうが効果的なんだ。

続いて──。

「そぉ~~ら!!」

俺は顔を押さえているノーブラトロールのビキニパンツを下から掬い上げるようにウォーハンマーで叩いた。

ゴーーーンっと音が鳴る。

「ぐはっ!?!?!?」

頭も股間も釣り鐘のような感触がしたぞ。

どうなってるんだ、こいつの頭と玉は?

「うがぁぁ……、金玉がぁ~……」

ノーブラトロールが股間を両手で押さえながら前のめりに倒れた。

一体目と同じように顔を床につけて尻を高く上げている。

違うのは、まだこいつは生きている。

「ワイルドクラッシャーで一撃に決めたいが、スキル回数の節約だ」

言いながら俺はウォーハンマーを振り上げた。

「オラ、オラ、オラ、オラ、オラ!!」

複数打の滅多打ちである。

俺はノーブラトロールの後頭部をウォーハンマーでボコボコのタコ殴りにしてやった。

やがてノーブラトロールは動かなくなる。

勝ったぞ!!

ビキニトロール、ノーブラトロールを撃破。

この戦いの教訓は、硬けりゃ斬らすに叩けである。


【つづく】
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...