上 下
375 / 604

第374話【グールグループとの決着】

しおりを挟む
「グルグルグルゥ!」

巨漢オークグールが片足で足元の死体を蹴り払う。

足の踏み場を作ってやがるぞ。

やっぱりグールってゾンビと違って賢いんだな。

だから背中に潜んで居たゴブリングールは、今の今まで姿を隠していたんだ。

確実に殺れると思った時にしか出て来ないって戦法かよ。

さて、どうするかな……。

作戦らしい作戦が今一思いつかない。

マントの中に潜んで居るゴブリングールが、どう動くか予想がつかないせいだ。

先が読めない……。

読めないなら考えない──、かな。

行き当たりばったりで行くしかねえか。

「それっ!」

俺は思い付きで動いた。

戦斧を足元に振り下ろし、死体の首をスパリと跳ねる。

その切断されたオークグールの首を足の甲に乗せるとサッカーボールのように蹴り上げた。

リフティングだ。

俺って上手いな。

もしかしたら前世はプロサッカー選手だったんじゃね。

「それっ!!」

そしてボレーキックで生首を蹴り飛ばす。

蹴り飛んだ生首が巨漢オークグールの上半身に迫る。

それを巨漢オークグールが反応して、兜割りで頭を真っ二つに斬り裂いた。

「そりゃっ!!」

今度は俺が飛んでいた。

横振りの斧で巨漢オークグールの首を狙う。

巨漢オークグールは斧を振るったばかりで反応できない。

俺の振るった戦斧が喉に刺さったインセクトクローナックルのお尻を強打した。

「グッハァッ!!」

更に深く鍵爪が食い込むと喉や口から汚い血が飛び散った。

まあ、この程度で決まらんだろう。

俺はそのまま巨漢オークグールの横を走り過ぎる。

そして背後から広い背中に一撃を入れた。

「それっ!!」

「ギィア!!」

マントの中から悲鳴が聞こえた。

すると千切れた腕と、片腕を失くしたゴブリングールがマント内から落ちて来る。

「ハロー」

「キィーーー!!」

片腕を失くしたゴブリングールが狂ったように飛びかかって来た。

「おっと!」

しかし俺は戦斧の一振りで反対の腕も斬り落としてやった。

「ヒグゥーー!!」

それでも怯まないゴブリングールは、一度着地すると更にジャンプして飛び掛かって来る。

どうやら噛み付くつもりらしい。

だが、俺はバトルアックスで盾を作る。

その盾にゴブリングールが顔を激突して止まった時であった。

巨漢オークグールが振り返りざまにグレートアックスを横一文字に振るったのだ。

その一振りがゴブリングールの胴体を、軽々と真っ二つに斬り裂いた。

あら、まあ、同士討ちだ。

上半身と下半身がお別れしたゴブリングールが地面に転がった。

「キャン!」

アンデッドだけあって死んでいないが、両腕と下半身を失くしたゴブリングールは芋虫のように踠いている。

俺はそんなゴブリングールを無視して巨漢オークグールに向かって再び飛んだ。

「それっ!」

俺の飛び蹴り。

足刀で顔面に刺さっているダガーを押すように蹴り付ける。

ダガーが更に深く刺さった。

それでも巨漢オークグールは止まらない。

巨漢オークグールはグレートアックスを袈裟斬りに振るって来る。

俺は上半身を斜めに反らして大型戦斧を躱す。

そしてバトルアックスで巨漢オークグールの膝を外側から打ち殴った。

「りいぁ!!」

手応えが有った。

ガンっと派手な音が鳴ると、太い足の膝関節が、曲がらない方向にぐにゃりと曲がった。

「うしっ!」

バギリと鈍い音が聞こえたぞ。

骨が折れたな。

それでも巨漢オークグールは、倒れる瞬間にグレートアックスを振るう。

俺はその一打を飛んで躱すとバトルアックスを空中で振り上げた。

巨漢オークグールは腹這いに倒れる。

その背中に向かって降下する俺は、延髄を狙ってバトルアックスを振り下ろした。

「首を跳ねてやるぞ! ヘルムクラッシャー!!」

だが、マントの中から新たなゴブリングールが飛び出して来た。

えっ!?

二匹目だと!!

「シャーーー!!」

二匹目のゴブリングールがダガーを俺の体に突き刺した。

左肩の付け根にダガーが刺さる。

ちっ、丁度鉄腕の付け根だった。

痛いっ!

それでも浅い!!

「ライトニングボルト!!」

「ギィァアアア!!!」

電撃魔法を至近距離で食らったゴブリングールの体がスパークしながら吹き飛んだ。

丸焦げになった死体が壁まで飛んで激突する。

まさか二匹も隠れて居るなんて思わんかったわ。

「グルッ!!」

「うわっ!?」

組みつかれた!?

片足で立ち上がって来た巨漢オークグールに抱きつかれる。

ベアーハッグだ。

臭っ!!

スゲー臭うぞ!!

「ウガアーー!!」

俺の体が怪力で締め上げられる。

力む巨漢オークグールは片膝立ちだ。

俺の両足は地面についているし、両腕はフリーだった。

まだ戦斧も手にある。

だがここは派手に決めたい。

俺は戦斧を捨てると、体を締め上げる巨漢オークグールの両腕に自分の両腕を回して抱え込む。

「閂スープレックスだ、こん畜生!!」

しかし、重い……。

やべ、投げられないかも……。

ちょっとまずったかな……。

俺が若干の後悔をしていると、巨漢オークグールの背中からダガーを持った細い手がニョキっと見えた。

えっ……、三匹目が居る!!

不味い、マジで早く投げないと!!

俺は全力で踏ん張った。

「おりゃぁああああ!!!!」

巨漢オークグールの体が浮いた。

背を反らした俺の臍に乗っかって、頭から後方に落とされる。

「閂式反り投げの成功じゃあ!!」

ゴンっと鈍い音が響いた。

巨漢オークグールは脳天をモロに石畳の上に打ち付けたのだ。

「ふぅ~~」

安心感から溜め息が出た。

巨漢オークグールの腕力から解放された俺が立ち上がる。

まだ巨漢オークグールは動いていた。

それでも動きが鈍い。

痙攣しているな。

アンデッドでも脳震盪ってするんだな。

俺は片足を高く上げた。

その足を倒れている巨漢オークグールの顔面に刺さったダガーに落とす。

踏みつけられたダガーが更に深く刺さって根元まで見えなくなる。

それで巨漢オークグールの動きが止まった。

その寝そべる背中に、巨漢で潰された三匹目の腕が見える。

動いていない。

「ふう……。これでグールどもは殲滅できたかな……」

できてたらいいな。

ちょっと疲れたわ~。

肩の傷にセルフヒールしとこっと。


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

処理中です...