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第345話【エルフの村】
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空を見上げれば、風切り音を鳴らしながら滑空する矢が大きく円を描いて飛んでくるとハイエナコボルトの後頭部を綺麗に射ぬいた。
次々とハイエナコボルトが射ぬかれて行く。
確実に背後から射撃される者。
脳天を垂直に射ぬかれる者。
矢で頭部を木っ端微塵に粉砕される者。
大きく別けて三通りかな。
俺は完璧に隠れているわけではない。
なのに俺は狙撃されない。
何故だ?
順番的に後回しか?
それとも俺は敵と見なされていなくて、そもそも狙われてないとかか?
んん~、後者っぽいよね。
よし、立って見るか。
するとブウンっと俺の顔の寸前を矢が過ぎた。
その矢は俺の背後に居たハイエナコボルトの頭を射ぬくと破裂させる。
やっぱりだ──。
俺は狙われてないな。
「キャン!」
「キャン!!」
「キャン!!!」
あー、最後のハイエナコボルトが殺られたわ~。
すると辺りが静かになる。
矢の攻撃も止まった。
俺は異次元宝物庫からアキレスを出してまたがると、山脈の麓の森を目指した。
やはり馬を走らせても狙われないぞ。
俺は敵として認識されてないわ。
やがて山脈が近付き森も近付いた。
山脈にはポッカリと割れた亀裂の部分が見えた。
山が真っ二つに割れている。
大きな割れ目だ。
あそこが魔王城が在るクレーターに入るための入り口なのかな?
たぶんそうだろう。
俺が馬を進めて麓の森に近付くと、森の入り口には物見櫓が幾つか在った。
自然の木の上に作られた小さなテラスだ。
そして、その下には植木で作られた垣根のような壁が並び、森を囲むように何処までも築かれている。
垣根は5メートルほどの高さだ。
たぶんエルフが魔法で作った大自然の防壁なのだろう。
俺はアキレスに乗ったまま壁に近付いた。
垣根の下まで来ると、上の物見櫓の一つに声を掛ける。
「すんませーーん、どなたか居ますか~?」
すると一人のエルフが物見櫓から顔を出した。
金髪で長い耳、色白の美形だ。
でも、男である。
ちっ……、詰まんない。
そのエルフが上から声を掛けて来た。
「あんた、さっきハイエナコボルトに襲われていた人間だな?」
「ああ、そうだ。矢で助けてくれたのはあんたか?」
「ああ、我々だ」
我々かぁ。
なら、姿は見せてないが他にもエルフが潜んで居るんだな。
「悪いね~。助かったよ。わざわざ武器についた鮮血を拭かなくてすんだからさ」
「そうかい……」
エルフは少し臭い顔を見せた。
「でえ、こんな田舎に人間がなんの用事だ?」
「魔王城に行きたい。なので、ここを通してもらいたいのだが」
「何故、魔王城に行きたいのだ?」
「魔王城に住むからだ」
「はっ……?」
エルフは俺を見下ろしながら目を点にさせている。
「あのぉ……。住んでどうするの?」
「魔王城の周りに町を作るつもりだ」
「はあっ?」
エルフは俺を見下ろしながら首を大きく傾げた。
俺の発言が理解しきれていないようだ。
「すまん、あんたじゃあ話にならんから、村長とか偉い人を出してくれないか?」
「あ、ああ……、わかった……」
そう言うとエルフは奥に引っ込んで行く。
どうやらちゃんとお偉いさんに話に行ったようだ。
しばらく待つと俺の正面の垣根が生きているように動いて入り口を作る。
なんかトリンドルのところの動く茨を思い出したわ。
動く植物なんて懐かしいよ。
そして、出来た垣根の入り口から、さっきのエルフが顔を出した。
「あの~、若様がお会いになるそうですので、どうぞ中にお入りください」
「ありがとう」
エルフがアキレスの手綱を引いて森の中に誘導してくれた。
俺はアキレスに乗ったまま森の中を進む。
そのまましばらく進むと開けた場所に出る。
そして広場の上には、木々の上に民家と思われる家が沢山築かれていた。
村だな。
ここがエルフの村のようだ。
ほとんどの家が木の上に在るのだろう。
なんともエルフらしい村だった。
アキレスの手綱を引いていたエルフが言う。
「ただいま若様が参りますので、馬から降りてもらえますか。若様はとても気位の高い御方です。無礼が無いようにお願いします」
「ああ、わかったよ」
俺は言われた通りにした。
それにしても、若様だって?
どうやらお高くついたエルフが出てきそうだな。
自分たちは民度が高い種族だと、人間を見下すタイプなのかな。
プライドが高いんだろうな~。
イライラしないといいな~。
イライラしたらどうしよう。
よし、もしもイライラしたら、一丁その鼻をへし折ってやろうじゃあねえか!
さあ、どんとこいや!!
「とうっ!!」
えっ!!
突然ながら木の上から誰かが飛び降りて来た。
一人じゃあない。
五人だ。
五人のエルフが突然木の上から飛び降りて、俺の前に着地したのである。
派手な登場しやがるな!!
なんかムカツク!!
だが、俺は五人のエルフが顔を上げてから驚いた。
「なぁ~んだぁテメー! どぉ~こから来たぁ~、あー!?」
えっ……?
すげ~、下品な口調だな……。
それになんだこいつ?
エルフだよね?
エルフだけどリーゼントだ……?
金髪で長い耳、色白の美形だが……、リーゼントヘアーだ。
口調からしてヤンキーなのか……。
なんか純白衣装だけど、ねじりはちまきを締めてるしさ。
それに特攻服みたいなコート着てるしさ。
その下はニッカポッカだしさ。
もう暴走族じゃんか!!
それに一緒に飛び降りて来た四人もヤンキーだよ。
いや、ヤンキーなんだけど……。
一人は女だ。
金髪で長い耳、色白で美形だけど……。
アフロだ……。
眉無しで口はマスクで隠している。
ロングスカートが昭和のレディースだよ。
手に在る木刀には風林火山とか書かれてないか!?
えっ、日本語!?
どう言うこと??
その他三人も可笑しいぞ!!
小柄な男のエルフだ。
金髪なのにパンチパーマだよ!!
ポッカニッカに腹巻きしているよ!!
腹巻きなんて、バカボンのパパがしているところしか見たことねーよ!
それにサングラスだ!?
この世界にもサングラスって有るのかよ!
さーて、問題は残りの二人だ。
今紹介した三人の後ろに立つ二人のエルフだよ……。
ヤバイは、こいつら……。
金髪で長い耳だけど、美形じゃあねえよ!!
一人はデブじゃんか!!
真ん丸だよ!!
えっ、力士ですか!?
相撲取りですか!?
小錦ですか!?
エルフってここまで太れるのかよ!!
太り過ぎじゃあねえ!?
ベジタリアンなのに、ここまで太るか!?
まあ、いい……。
まだ、いい……。
さあ、一番の問題は最後の一人だ。
もう完全にエルフじゃあねえぞ……。
こいつは一言で表現できるよ……。
アンドレだ……。
身長が2メートル10はあるね……。
体重は240キロはありそうな、ちゃんこ型の体型だ……。
もう顔が怖いわ……。
金髪で長い耳で色白だけど、悪鬼羅刹のオーガだよ……。
絶対にエルフじゃあねーーよ!!
なに、この壊れたエルフどもは!?
なんか間違えた遺伝子組み換えしてるだろ!?
【つづく】
次々とハイエナコボルトが射ぬかれて行く。
確実に背後から射撃される者。
脳天を垂直に射ぬかれる者。
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大きく別けて三通りかな。
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「キャン!!!」
あー、最後のハイエナコボルトが殺られたわ~。
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俺は異次元宝物庫からアキレスを出してまたがると、山脈の麓の森を目指した。
やはり馬を走らせても狙われないぞ。
俺は敵として認識されてないわ。
やがて山脈が近付き森も近付いた。
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山が真っ二つに割れている。
大きな割れ目だ。
あそこが魔王城が在るクレーターに入るための入り口なのかな?
たぶんそうだろう。
俺が馬を進めて麓の森に近付くと、森の入り口には物見櫓が幾つか在った。
自然の木の上に作られた小さなテラスだ。
そして、その下には植木で作られた垣根のような壁が並び、森を囲むように何処までも築かれている。
垣根は5メートルほどの高さだ。
たぶんエルフが魔法で作った大自然の防壁なのだろう。
俺はアキレスに乗ったまま壁に近付いた。
垣根の下まで来ると、上の物見櫓の一つに声を掛ける。
「すんませーーん、どなたか居ますか~?」
すると一人のエルフが物見櫓から顔を出した。
金髪で長い耳、色白の美形だ。
でも、男である。
ちっ……、詰まんない。
そのエルフが上から声を掛けて来た。
「あんた、さっきハイエナコボルトに襲われていた人間だな?」
「ああ、そうだ。矢で助けてくれたのはあんたか?」
「ああ、我々だ」
我々かぁ。
なら、姿は見せてないが他にもエルフが潜んで居るんだな。
「悪いね~。助かったよ。わざわざ武器についた鮮血を拭かなくてすんだからさ」
「そうかい……」
エルフは少し臭い顔を見せた。
「でえ、こんな田舎に人間がなんの用事だ?」
「魔王城に行きたい。なので、ここを通してもらいたいのだが」
「何故、魔王城に行きたいのだ?」
「魔王城に住むからだ」
「はっ……?」
エルフは俺を見下ろしながら目を点にさせている。
「あのぉ……。住んでどうするの?」
「魔王城の周りに町を作るつもりだ」
「はあっ?」
エルフは俺を見下ろしながら首を大きく傾げた。
俺の発言が理解しきれていないようだ。
「すまん、あんたじゃあ話にならんから、村長とか偉い人を出してくれないか?」
「あ、ああ……、わかった……」
そう言うとエルフは奥に引っ込んで行く。
どうやらちゃんとお偉いさんに話に行ったようだ。
しばらく待つと俺の正面の垣根が生きているように動いて入り口を作る。
なんかトリンドルのところの動く茨を思い出したわ。
動く植物なんて懐かしいよ。
そして、出来た垣根の入り口から、さっきのエルフが顔を出した。
「あの~、若様がお会いになるそうですので、どうぞ中にお入りください」
「ありがとう」
エルフがアキレスの手綱を引いて森の中に誘導してくれた。
俺はアキレスに乗ったまま森の中を進む。
そのまましばらく進むと開けた場所に出る。
そして広場の上には、木々の上に民家と思われる家が沢山築かれていた。
村だな。
ここがエルフの村のようだ。
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「ああ、わかったよ」
俺は言われた通りにした。
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プライドが高いんだろうな~。
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イライラしたらどうしよう。
よし、もしもイライラしたら、一丁その鼻をへし折ってやろうじゃあねえか!
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えっ!!
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だが、俺は五人のエルフが顔を上げてから驚いた。
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えっ……?
すげ~、下品な口調だな……。
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口調からしてヤンキーなのか……。
なんか純白衣装だけど、ねじりはちまきを締めてるしさ。
それに特攻服みたいなコート着てるしさ。
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それに一緒に飛び降りて来た四人もヤンキーだよ。
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一人は女だ。
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アフロだ……。
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えっ、日本語!?
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ヤバイは、こいつら……。
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まあ、いい……。
まだ、いい……。
さあ、一番の問題は最後の一人だ。
もう完全にエルフじゃあねえぞ……。
こいつは一言で表現できるよ……。
アンドレだ……。
身長が2メートル10はあるね……。
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もう顔が怖いわ……。
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