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第322話【ランダムダンジョン】
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レイラ姫様たちと別れてしばらく経った。
俺が見えない扉がある部屋を離れてランダムダンジョンを探索していると、大きな動きが起こったのだ。
グラグラと足元が揺れだす。
「始まったかな……」
俺が周囲の様子を観察していると、壁や床、天井までもがバラバラに動き出したのだ。
壁は上下に進み、床は左右に滑り出す。
そして、天井は高く広がり出した。
部屋と言うよりも──。
壁や床と言うよりも──。
ダンジョンその物が全体的に動いていた。
いや、強弱を重ねて一つ一つが組み直されているようだった。
「危なっ!!」
俺が唖然と見ていると、一本の四角い柱が俺に向かって突っ込んで来た。
俺は咄嗟に避けて難を逃れる。
そして、今度はサイドの壁が俺を挟み潰そうと迫って来た。
「やばっ!!」
俺は走ってから広い空間に向かって飛んだ。
なんとか壁に挟み潰されないで済む。
「こりゃあ、凄いな……。まるで生き物だ……。生き物の腹の中だな……」
俺が周囲の変格に注意していると、ダンジョンの移動がゆっくりと止まった。
「終わったかな? 終わったよね……?」
どうやら止まったようだ。
おそらく十二時間ぐらいでランダムダンジョンの構造が変わるのかな。
たぶんそうだろう。
「さて、これだと本当にマップ製作は意味が無いな。まあ、兎に角歩くかな」
俺は呑気に考えて、新しく姿を変えたダンジョン内を歩き出した。
とりあえず行き当たりばったりな作戦だぜ。
こう言うときは、それが一番良かろうて。
俺はランタンを片手に変貌したダンジョンを進んだ。
「あっ、まだへったくそな壁画は有るんだな」
俺が狭い一本道の廊下を進んでいると、上に登る階段に行き当たる。
俺は階段をしばらく上った。
すると部屋に出る。
「何だろう……?」
生臭いな?
腐った臭いじゃあない。
もっと生き物の生臭さだ。
部屋の中は広い。
果てはランタンの光が届かないぐらいだ。
そして、天井も高い。
同じくランタンの光が届かないぐらいだ。
そして、部屋の中には障害物が複数有った。
様々なサイズの岩の柱だ。
太かったり細かったり、丸かったり四角かったり、様々だ。
共通しているのは石柱ってことぐらいである。
そんな様々な柱が高い天井まで伸びている。
「まるで石柱の森だな」
俺は警戒しながら石柱の森を進んだ。
「何か居るな……」
僅かに音がする。
絹が擦れる音──。
鉄が擦れる音──。
呼吸をする音──。
音は上からだ。
複数だな。
二匹……。
否、三匹だ。
俺の殺気感知スキルにビンビンっと引っ掛かって来ますわ~。
完全に敵だね。
やる気満々ですよ。
そして、頭上から聞こえて来る。
「シャーーー……」
声?
唸り声かな?
蛇か?
それっぽい唸り声だったな。
ネズミの次はヘビですか。
今度は捕食者登場って感じだね。
あのラットマンたちを補食するサイズのヘビならば、相当の大きさだろう。
俺はかなり大きなヘビが出て来ると予想した。
そして俺は、腰からロングソードを二本抜くと、一本の柱を背にして警戒する。
相手は俺をラットマン同様に補食する気だろう。
ラットマンだろうと人間だろうと関係無いんだろうさ。
まあ、大口を開けて飛び掛かって来たところを真っ二つにしてやるぜ。
そう、俺が心を決めて待っていると、闇の中で何かが光った。
「光り?」
斜め上、上空の闇の中だ。
その光が真っ直ぐこちらに飛んで来る。
速い飛翔体だ!
「光る矢だと!?」
俺は咄嗟に身を屈ませた。
その頭をスレスレに光る矢が突き刺さる。
「うそぉ~~……」
光っていた矢は石の柱に突き刺さると光を失う。
矢が岩に刺さりましたよ……。
漫画やアニメじゃあ無いんだから、矢が岩に刺さるわけが無いじゃんか……。
この光る矢は、魔力で威力が強化されてますね。
だが、光るってのがミスだ。
矢を放ったヤツの場所が大体だが分かったぞ。
こっちも矢で反撃だ。
俺は異次元宝物庫からロングボウ+1を取り出した。
今回は狙撃戦かな。
しかし、こちらから向こうが見えやしねえ……。
あっ、殺気!!
上か!!
俺が背にした柱を見上げれば、頭上から剣と盾を持った影が降って来たのだ。
二匹目か!?
回避!!
俺は柱から跳ね飛んで床を転がった。
敵が振るった剣が空振る。
俺はすぐに立つ。
そして俺は、目に入った敵の正体に驚いた。
手にはシミターと鏡のような丸い盾を持っている。
頭からフードを被り、顔はスケスケのベールで隠していたが、長い髪と裸体は隠していなかった。
なかなかのサイズのおっぱいとセクシーなクビレ。
女だ!!
女子ですよ!?
しかし下半身は大蛇だったのだ。
残念!!!
モンスターじゃんか!!!
もう、これだけ見ればネーム判定スキルを使う必要すら無いぜ。
「ラミアか!!」
殺気!
光り!
俺の鼻先を光の矢が過ぎた。
危ないわ!!
なんとかギリギリで避けられたぞ!!
俺が放たれた二発目の光の矢に戸惑っていると、隙を付いてシミターを持ったラミアは下半身の蛇をくねらせて柱を器用に登って行く。
直ぐに闇に消えた。
矢と剣盾の二体か……。
いや、最初に感じた殺気からすると三体居るはずだ。
畜生……。
盾持ち接近戦キャラと弓矢の狙撃キャラかぁ~。
それにまだ、もう一体潜んでやがる。
魔法キャラとかかな?
どちらにしろ、ラミアは柱の上に潜んでやがるから、降りて来ないと剣では斬れないな。
ここは弓矢や魔法の飛び道具だけで戦わないとならないぞ。
【つづく】
俺が見えない扉がある部屋を離れてランダムダンジョンを探索していると、大きな動きが起こったのだ。
グラグラと足元が揺れだす。
「始まったかな……」
俺が周囲の様子を観察していると、壁や床、天井までもがバラバラに動き出したのだ。
壁は上下に進み、床は左右に滑り出す。
そして、天井は高く広がり出した。
部屋と言うよりも──。
壁や床と言うよりも──。
ダンジョンその物が全体的に動いていた。
いや、強弱を重ねて一つ一つが組み直されているようだった。
「危なっ!!」
俺が唖然と見ていると、一本の四角い柱が俺に向かって突っ込んで来た。
俺は咄嗟に避けて難を逃れる。
そして、今度はサイドの壁が俺を挟み潰そうと迫って来た。
「やばっ!!」
俺は走ってから広い空間に向かって飛んだ。
なんとか壁に挟み潰されないで済む。
「こりゃあ、凄いな……。まるで生き物だ……。生き物の腹の中だな……」
俺が周囲の変格に注意していると、ダンジョンの移動がゆっくりと止まった。
「終わったかな? 終わったよね……?」
どうやら止まったようだ。
おそらく十二時間ぐらいでランダムダンジョンの構造が変わるのかな。
たぶんそうだろう。
「さて、これだと本当にマップ製作は意味が無いな。まあ、兎に角歩くかな」
俺は呑気に考えて、新しく姿を変えたダンジョン内を歩き出した。
とりあえず行き当たりばったりな作戦だぜ。
こう言うときは、それが一番良かろうて。
俺はランタンを片手に変貌したダンジョンを進んだ。
「あっ、まだへったくそな壁画は有るんだな」
俺が狭い一本道の廊下を進んでいると、上に登る階段に行き当たる。
俺は階段をしばらく上った。
すると部屋に出る。
「何だろう……?」
生臭いな?
腐った臭いじゃあない。
もっと生き物の生臭さだ。
部屋の中は広い。
果てはランタンの光が届かないぐらいだ。
そして、天井も高い。
同じくランタンの光が届かないぐらいだ。
そして、部屋の中には障害物が複数有った。
様々なサイズの岩の柱だ。
太かったり細かったり、丸かったり四角かったり、様々だ。
共通しているのは石柱ってことぐらいである。
そんな様々な柱が高い天井まで伸びている。
「まるで石柱の森だな」
俺は警戒しながら石柱の森を進んだ。
「何か居るな……」
僅かに音がする。
絹が擦れる音──。
鉄が擦れる音──。
呼吸をする音──。
音は上からだ。
複数だな。
二匹……。
否、三匹だ。
俺の殺気感知スキルにビンビンっと引っ掛かって来ますわ~。
完全に敵だね。
やる気満々ですよ。
そして、頭上から聞こえて来る。
「シャーーー……」
声?
唸り声かな?
蛇か?
それっぽい唸り声だったな。
ネズミの次はヘビですか。
今度は捕食者登場って感じだね。
あのラットマンたちを補食するサイズのヘビならば、相当の大きさだろう。
俺はかなり大きなヘビが出て来ると予想した。
そして俺は、腰からロングソードを二本抜くと、一本の柱を背にして警戒する。
相手は俺をラットマン同様に補食する気だろう。
ラットマンだろうと人間だろうと関係無いんだろうさ。
まあ、大口を開けて飛び掛かって来たところを真っ二つにしてやるぜ。
そう、俺が心を決めて待っていると、闇の中で何かが光った。
「光り?」
斜め上、上空の闇の中だ。
その光が真っ直ぐこちらに飛んで来る。
速い飛翔体だ!
「光る矢だと!?」
俺は咄嗟に身を屈ませた。
その頭をスレスレに光る矢が突き刺さる。
「うそぉ~~……」
光っていた矢は石の柱に突き刺さると光を失う。
矢が岩に刺さりましたよ……。
漫画やアニメじゃあ無いんだから、矢が岩に刺さるわけが無いじゃんか……。
この光る矢は、魔力で威力が強化されてますね。
だが、光るってのがミスだ。
矢を放ったヤツの場所が大体だが分かったぞ。
こっちも矢で反撃だ。
俺は異次元宝物庫からロングボウ+1を取り出した。
今回は狙撃戦かな。
しかし、こちらから向こうが見えやしねえ……。
あっ、殺気!!
上か!!
俺が背にした柱を見上げれば、頭上から剣と盾を持った影が降って来たのだ。
二匹目か!?
回避!!
俺は柱から跳ね飛んで床を転がった。
敵が振るった剣が空振る。
俺はすぐに立つ。
そして俺は、目に入った敵の正体に驚いた。
手にはシミターと鏡のような丸い盾を持っている。
頭からフードを被り、顔はスケスケのベールで隠していたが、長い髪と裸体は隠していなかった。
なかなかのサイズのおっぱいとセクシーなクビレ。
女だ!!
女子ですよ!?
しかし下半身は大蛇だったのだ。
残念!!!
モンスターじゃんか!!!
もう、これだけ見ればネーム判定スキルを使う必要すら無いぜ。
「ラミアか!!」
殺気!
光り!
俺の鼻先を光の矢が過ぎた。
危ないわ!!
なんとかギリギリで避けられたぞ!!
俺が放たれた二発目の光の矢に戸惑っていると、隙を付いてシミターを持ったラミアは下半身の蛇をくねらせて柱を器用に登って行く。
直ぐに闇に消えた。
矢と剣盾の二体か……。
いや、最初に感じた殺気からすると三体居るはずだ。
畜生……。
盾持ち接近戦キャラと弓矢の狙撃キャラかぁ~。
それにまだ、もう一体潜んでやがる。
魔法キャラとかかな?
どちらにしろ、ラミアは柱の上に潜んでやがるから、降りて来ないと剣では斬れないな。
ここは弓矢や魔法の飛び道具だけで戦わないとならないぞ。
【つづく】
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