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第316話【ランダムダンジョン】

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俺はランダムダンジョンの最初の部屋に居た。

四方に通路が見える部屋である。

ルークさんとレイラ姫様が通路の一つに消えて行った後に俺は方位磁石を出して確認した。

二人が進んで行ったのは北である。

ならば俺は、反対の南に進んでみるか。

俺は虫除けのランタンを翳して通路の奥に進んだ。

今回は腰にロングソード+2を二本下げている。

【ロングソード+2。攻撃速度向上。アンデットにダメージ特効向上】

【ロングソード+2。攻撃力小向上。攻撃速度向上】

いつもなら大小のソードだが、今回は大大のソードである。

いつもは左手はショートソードなのだが、左腕が鋼鉄になった上にパワーが増しているので、ロングソード×2の二刀流にチャレンジしようと思うのだ。

まあ、このぐらいのチャレンジは妥当だろう。

たぶん行けるはずだ。

どんどんと自分を強化しなくてはならないからな。

ここが魔女やロード・オブ・ザ・ピットに何かしら関係している場所ならば、今後はあいつらとの戦いも激しさを増して行くだろう。

前回は魔女に圧倒的な遅れを取ってしまった。

死にかけて、見逃された……。

だが、次に剣を交える時は勝つ気で戦わなくてはならない。

いつまでも美少女や悪魔に遅れを取っていられないのだ。

何せこっちとら、いずれは女神を撃ち取ろうと考えているぐらいだからな。

兎に角だ。

このランダムダンジョンで魔女攻略のヒントと極上のマジックアイテムをゲットしたいのだ。

俺のハクスラスキルがブーストしたのならば、このダンジョンで、ダンジョン製作者の意図以上にマジックアイテムがわんさかわんさか沸いて出るはずだ。

わーーい、楽しみだな~~。

そんなわけで俺は、幅3メートルほどの通路を歩いていた。

天井はかなり高い。

高さは10メートルぐらいあるのかな?

そのせいか、俺の足音が石畳や石の壁に良く響く。

「あっ、アンデッドが来るぞ」

俺の霊体感知スキルに早くも引っ掛かったな。

俺が目を細めて前方の闇を見つめていれば、緑色の淡い光がいくつも迫って来る。

「アンデッドならば、これで丁度良いぜ」

俺はランタンを通路の隅に置くと、腰のロングソード二本を鞘から抜いて構えた。

一本はアンデッド特効のロングソードだ。

そして、敵が接近してきて黙視で確認できる距離になる。

緑の光はローブを纏った骸骨だった。

2メートル幅の通路いっぱいに列なるアンデッドは何体居るか分からない。

「モンスターネーム判定」

【ワイトです】

ワイトってアンデッドモンスターのランクだとグールの上でレイスの下だよな。

レイスより弱いのならば、何体居ようか問題なかろう。

まあ、念のためにエンチャントぐらい掛けておくか。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、フォーカスアイ、ファイアーエンチャントウェポン、ファイアーエンチャントウェポン」

よし、これでいいかな。

さて、ワイトちゃん、遊びましょうか!!

俺は緑色に光るワイトに向かって二刀流で立ち向かった。

ワイトがマジックアローを売って来るが俺は気合いでレジストした。

ダメージはほとんど無い。

「うーーっら!!」

二刀流の同時逆水平斬り。

二体並んで居たワイトの首を同時に斬り落とす。

髑髏が二つ転がると二体のワイトが霧と化して消える。

うし、弱い!!

これなら何体居ようとも勝てるぞ!!

「うりゃ! とりゃ! とーーう!!」

次々とワイトを撃破して行く俺様。

強いぞ!!

まさに無双だ!!

俺は十一体目のワイトを兜割りで真っ二つに斬り裂いた。

これで最後である。

「ふう~、多少怪我をしたけれど楽勝に近いな」

俺は傷をセルフヒールで癒すとレイスが落としたアイテムを漁る。

その中からマジックアイテムだけを拾い集めた。

スモールシールド、ブレスレット、水筒。

この三つが拾えたマジックアイテムだった。

この程度の弱い敵から三つなら儲け物だな。

この先が楽しみだぜ。

大漁の予感である。

俺はホクホクしながら三つのマジックアイテムを異次元宝物庫に仕舞い込む。

るんるんるん~。

さーーて、奥に進もうかな~。

俺はロングソード二本を腰の鞘に戻すとランタンを持って先に進む。

しばらく同じ感じの通路が続いていたが、少し可笑しなことに気付いた。

「この一本道は、少しカーブしてないか?」

間違いない。

少し曲がってるな。

そんなことより先に部屋があるぞ。

俺はソロリソロリと歩み寄り部屋の中を覗き込んだ。

広い部屋だ。

床や壁の素材は岩だが、壁に何かが画かれている。

「壁画かな?」

室内にモンスターが居ないことを確認した俺は部屋の中に入って行った。

四方の壁に壁画がミッシリと画かれていた。

その壁画の上にアーチ型の出入口が幾つも並んでいる。

階段は無い。

その複数在るアーチ型の通路が臭かったが俺はその下の壁画を見て回る。

壁画は二色で画かれていた。

黒と赤だけだ。

その二色で画かれている物は、黒山羊頭の悪魔と、それを崇める人々だった。

やっぱりここはロード・オブ・ザ・ピットを崇めているダンジョンだな。

あれ、ここに黒山羊頭にワンピース姿の人物が画かれているぞ?

これって、あの魔女か?

てか、この壁画は新しくないか?

結構新しく描かれた壁画だぞ。

「チュー、チュー……」

んん?

ネズミかな?

俺が鳴き声が聞こえたほうを見上げる。

その鳴き声は、壁画の上に在るアーチ型の通路の一つから聞こえた。

何か居るな……。

俺がアーチ型の通路を睨んで居ると、その通路から人影が二体現れる。

矮躯で粗末な服。

しかし二体は手にショートボウを持っている。

そして、その頭はネズミだった。

俺がネーム判定をすると【ラットマン】と出る。

ラットマンってそんなに強く無いモンスターだ。

おそらくゴブリンと同等ぐらいだと思う。

そんなのが二匹ぐらい出て来ても問題無いわ。

さっきのワイト同様に容易く蹴散らしてやるぜ!

って、俺が思っていると、全方向のアーチ型の通路からゾロゾロとラットマンが湧いて出て来る。

四方向の壁画の上に並ぶアーチ型の通路は、一面に付き五つ。

計二十の通路から二体から三体ずつのラットマンがショートボウを持って出て来たのだ。

ラットマンの数は約五十匹。

その全員が俺より2.5メートルほど高い場所からショートボウで俺を狙っている。

しかも上れる階段は無いのだ。

更にラットマン全匹から殺気が感じられた。

何せ俺の殺気感知スキルが感じ取っちゃってますもの、ビンビンっとさ……。

こりゃあヤバイかな……。

相手が雑魚でも数が多すぎるぞ。

それに立地が悪い。

そして、武器が悪い。

俺の完全不利だ。

よし、ここは判断を謝ってはならない。

「レディーーー、GO!!」

俺は走った。

猛ダッシュで向かった先は、入って来た入り口。

通路に逃げ込むのが一番の正解だ。

だが、ラットマンたちが矢を撃って来る。

俺は複数の矢が乱れ飛ぶ中を走った。

「いたっ!!」

お尻に矢が刺さったぞ!!

糞!!

覚えてやがれよネズミ男め!!

もうちょっとで出入り口に飛び込める。

あそこに逃げ込めれば!!

「あっ!?」

あれ!?

足の感覚が無い?

床の感覚が消えた?

俺は下を見た。

足元が無い。

闇!?

四角い闇が広がっている!?

落とし穴かな!?

うん、俺の体が引力に引かれて落ちて行ったわ……。

「あーーれーーー!!??」

俺は落とし穴に引っ掛かり、闇の中に急降下して行った。

高いぞ!!

この落とし穴、高くね!?

俺、まだ落ちてます!?


【つづく】
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