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第308話【草原の白い町】
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「あ~~、危なかったぜ……」
俺は呆然としながら崩れ落ちたトンネルの入り口を見ていた。
流石の俺でも生き埋めにされたら死んじゃうよね。
助かって良かったわ~。
俺は崩れたトンネルから離れると、道の端に在った岩の上に腰を下ろした。
一息つく。
そして、空を見上げれば太陽がてっぺんにあった。
まだ、昼頃らしいな。
「まずは休憩がてら、とっとと新スキルチェックでも済ませちゃおうかな~。ステータスかも~ん!」
どれどれ~、今回覚えた新スキルは三つか~。
【パッシブ・ポールウェポンマスタリー。薙刀系武器の戦闘技術が向上】
うんうん、斬馬刀でゴブリンどもを何百匹もぶった斬ったもんな。
これは今回ランクアップして当然なマスタリーだよね。
さて、次は~。
【言語スキル・ゴブリン語。ゴブリンの言葉を理解して会話出来るようになる】
あら、なんだか言語系スキルって初めてだよね。
まあ、今までに他種族の言語を使って交渉らしい交渉はしたこと無かったもんな。
ならば、ランゲージリング+2を使ってモンスターと会話を繰り広げれば、どんどんモンスターの言語を習得出来るってことかな。
じゃあ今度からモンスターと会話が出来そうなときは、出来るだけ会話をして、言語を習得していこうかな。
そうすれば、俺のコミュニケーション能力も向上するだろうさ。
さてさて、最後の新スキルは~。
【パッシブ・マジックマスタリー。魔力が向上する】
うぬ~?
これは魔力が向上したってことなんだろうが、魔法の威力が向上したでいいのかな?
たぶんそうなのかな?
てか、ここの説明は曖昧なことが多くて、本当に良く分からんわ……。
まあ、新スキルチェックはこんなもんだ。
今回は全部使えるスキルで良かったわ~。
よし、先に進もうかな。
俺はアキレスに股がると、倒壊したトンネル跡地をあとにした。
そして山沿いの緩やかな坂道を下って森を抜ける。
すると草原に出た。
周囲の景色は緑が生い茂る草原で、遥か先には防壁を設けた白い町が見える。
町の反対側には、丘の上に古城が凛々しく建っていた。
なんだか長閑な風に草木が揺れている。
清々しいな~。
如何にも平和そうな田舎町って感じだ。
旧魔王城までの道のりも、そろそろ終盤である。
この町が地図上では最後の町であった。
この先には村が幾つか在るだけである。
「町の名前は、イルミナルか──」
イルミナルって、照らすって意味だよな。
あの町は、何を照らすんだろう?
まあ、兎に角だ。
町に向かって見るかな。
町は畑に囲まれていた。
そして古い壁だが防壁にも囲まれてもいる。
しかし、壁の出入り口には番兵が居ない。
あれ、兵力に乏しい町なのかな?
俺はアキレスで町の中に入って行った。
正門から進むと、美しい町並みが広がっている。
白くて綺麗な壁の家が並んでいるのだ。
純白の町並みだった。
そして、露店が幾つか並んでいる。
人の数は少ないが、賑わっていないわけでもない。
町並みは、荒れた感じも無いし、汚くもない。
人々も笑顔で行き来している。
雰囲気が綺麗で美しい町だ。
なんだか地中海のリゾート観光地のイメージがする。
おそらく食料にも困らず、モンスターにも困っていないのだろう。
とりあえず俺は宿屋を探してみた。
「あれかな」
ベッドと蝋燭の絵が彫り困れた看板を見つける。
「蝋燭の油亭かぁ。今日はここで宿を取るか」
俺はアキレスを仕舞うと宿屋に入った。
店の中には昼まっから入り浸ってる飲んだくれの客が数人テーブルを囲んで居た。
どこにでも居るんだな、飲んだくれってさ。
でも、明るく賑やかで他人に絡んで来そうな感じは無い。
人が良さそうに飲んでいる。
俺はカウンター席に腰掛けると店の親父に昼食を頼んだ。
「マスター、なんでもいいから昼食を食べさせてくれないか?」
「あいよ、お任せでいいんだな」
「辛いのは無しな……」
激辛は、もう御免である……。
「分かったぜ。でえ、酒は何にする?」
「すまん、俺はゲコだから、水でいいや」
「なら、しぼりたてのオレンジジュースがあるが、飲むかい?」
「のっ、飲むう!!」
マジか!?
マジでオレンジジュースが飲めるの!!
この異世界に来てから果物を絞ったドリンクなんて飲んだことないぞ!!
「なあ、マスター。なんでオレンジジュースなんてあるんだ?」
「この町はオレンジとリンゴ、それに酒の仕込みようの葡萄などが名産なんだがね。輸送路が悪くて毎年余るんだよ。だから綺麗な真水よりもオレンジジュースやリンゴジュースのほうか安くてね」
「なるほど……」
俺はこうしてオレンジジュースを堪能しながら昼飯を食べた。
オレンジジュース旨い~~。
昔の世界でオレンジジュースを飲んで、こんなことを思ったことすらないのにな~。
オレンジジュースって幸せの味がするよ。
そして、昼飯を食べ終わった俺は、部屋を借りてから冒険者用の掲示板を眺めた。
掲示板にはゴブリン退治と荷馬車の護衛の依頼書ばかりが貼られていた。
「なあ、マスター。この辺は、ゴブリンが多いのか?」
まあ、洞窟にあれだけ居たもんな。
「ああ、昔っからゴブリンが沢山湧いてな。他のモンスターは少ないんだけどな~」
あのトンネルから湧いて出て来てたのかな?
それともあのトンネルにゴブリンが外から入って来て溜まってたのかな?
まあ、どちらにしろこの辺は、多くのゴブリンの生息地なんだろう。
これも魔王城の影響なのかな?
いや、まだ魔王城まで距離があるから関係ないか。
俺は掲示板を離れて階段を登った。
ゴブリン退治や護衛の仕事だとギャラも安いから、俺の出番でも無いだろう。
たぶんこの感じからして、荷馬車の護衛が町に到着すると、帰りの荷馬車が出発するまでの間にゴブリン退治をして稼ぐのが、この辺の冒険者のルーティングなのだろうさ。
ならば、この仕事はこの辺の冒険者に任せておくべきだ。
稼ぎを横取りするまでも無いだろう。
そんな感じで俺が階段を登り始めると、宿屋の外が騒がしくなった。
男の叫び声が聞こえて来る。
「大変だ~!! 姫様が来るぞーー!!」
えっ、姫様が来るの?
すると店のマスターが慌てて出入り口の扉を閉めると鍵を掛けた。
更に閂まで掛ける。
さっきまで賑やかに飲んだくれていたお客たちも慌ててテーブルのしたに隠れた。
「な、なんだ? 何が起きてるんだ?」
怯えている?
お客もマスターも怯えているな。
「どうなってるんだ!?」
俺が階段の上から大きな声でマスターに問うと、マスターは口に人差し指を当てて、しっーー!っと言った。
その表情は、鬼気迫るって感じだった。
静にってことですか……?
なに?
そんなに姫様って怖いわけ?
俺は階段を降りると扉の前にしゃがみ込んでいるマスターの側に進んだ。
今度は小声で問う。
「姫様がそんなに怖いのか?」
「ああ、古城に住んでいる姫様は、化け物だ……。この町で一番の災いなんだ……」
「へぇ~~」
俺は窓の隙間から外を眺める。
もう町の人は逃げ去ったのか、大通りは人影一つ無くなっていた。
その静かになった大通りを一つの人影が歩んで来る。
ノシリノシリと大きな頭を揺らしていた。
俺は、その人物を見て震えだす。
俺の本能が怯えたしたのだ。
「うそぉ~~~ん、なんで~~……」
その人物は、黒山羊の頭を頭に被って歩いていたのだ。
「まぁ~じょ~だぁ~~……」
恐怖!?
俺はマスターの横にヘタレ込んでしまう。
【つづく】
俺は呆然としながら崩れ落ちたトンネルの入り口を見ていた。
流石の俺でも生き埋めにされたら死んじゃうよね。
助かって良かったわ~。
俺は崩れたトンネルから離れると、道の端に在った岩の上に腰を下ろした。
一息つく。
そして、空を見上げれば太陽がてっぺんにあった。
まだ、昼頃らしいな。
「まずは休憩がてら、とっとと新スキルチェックでも済ませちゃおうかな~。ステータスかも~ん!」
どれどれ~、今回覚えた新スキルは三つか~。
【パッシブ・ポールウェポンマスタリー。薙刀系武器の戦闘技術が向上】
うんうん、斬馬刀でゴブリンどもを何百匹もぶった斬ったもんな。
これは今回ランクアップして当然なマスタリーだよね。
さて、次は~。
【言語スキル・ゴブリン語。ゴブリンの言葉を理解して会話出来るようになる】
あら、なんだか言語系スキルって初めてだよね。
まあ、今までに他種族の言語を使って交渉らしい交渉はしたこと無かったもんな。
ならば、ランゲージリング+2を使ってモンスターと会話を繰り広げれば、どんどんモンスターの言語を習得出来るってことかな。
じゃあ今度からモンスターと会話が出来そうなときは、出来るだけ会話をして、言語を習得していこうかな。
そうすれば、俺のコミュニケーション能力も向上するだろうさ。
さてさて、最後の新スキルは~。
【パッシブ・マジックマスタリー。魔力が向上する】
うぬ~?
これは魔力が向上したってことなんだろうが、魔法の威力が向上したでいいのかな?
たぶんそうなのかな?
てか、ここの説明は曖昧なことが多くて、本当に良く分からんわ……。
まあ、新スキルチェックはこんなもんだ。
今回は全部使えるスキルで良かったわ~。
よし、先に進もうかな。
俺はアキレスに股がると、倒壊したトンネル跡地をあとにした。
そして山沿いの緩やかな坂道を下って森を抜ける。
すると草原に出た。
周囲の景色は緑が生い茂る草原で、遥か先には防壁を設けた白い町が見える。
町の反対側には、丘の上に古城が凛々しく建っていた。
なんだか長閑な風に草木が揺れている。
清々しいな~。
如何にも平和そうな田舎町って感じだ。
旧魔王城までの道のりも、そろそろ終盤である。
この町が地図上では最後の町であった。
この先には村が幾つか在るだけである。
「町の名前は、イルミナルか──」
イルミナルって、照らすって意味だよな。
あの町は、何を照らすんだろう?
まあ、兎に角だ。
町に向かって見るかな。
町は畑に囲まれていた。
そして古い壁だが防壁にも囲まれてもいる。
しかし、壁の出入り口には番兵が居ない。
あれ、兵力に乏しい町なのかな?
俺はアキレスで町の中に入って行った。
正門から進むと、美しい町並みが広がっている。
白くて綺麗な壁の家が並んでいるのだ。
純白の町並みだった。
そして、露店が幾つか並んでいる。
人の数は少ないが、賑わっていないわけでもない。
町並みは、荒れた感じも無いし、汚くもない。
人々も笑顔で行き来している。
雰囲気が綺麗で美しい町だ。
なんだか地中海のリゾート観光地のイメージがする。
おそらく食料にも困らず、モンスターにも困っていないのだろう。
とりあえず俺は宿屋を探してみた。
「あれかな」
ベッドと蝋燭の絵が彫り困れた看板を見つける。
「蝋燭の油亭かぁ。今日はここで宿を取るか」
俺はアキレスを仕舞うと宿屋に入った。
店の中には昼まっから入り浸ってる飲んだくれの客が数人テーブルを囲んで居た。
どこにでも居るんだな、飲んだくれってさ。
でも、明るく賑やかで他人に絡んで来そうな感じは無い。
人が良さそうに飲んでいる。
俺はカウンター席に腰掛けると店の親父に昼食を頼んだ。
「マスター、なんでもいいから昼食を食べさせてくれないか?」
「あいよ、お任せでいいんだな」
「辛いのは無しな……」
激辛は、もう御免である……。
「分かったぜ。でえ、酒は何にする?」
「すまん、俺はゲコだから、水でいいや」
「なら、しぼりたてのオレンジジュースがあるが、飲むかい?」
「のっ、飲むう!!」
マジか!?
マジでオレンジジュースが飲めるの!!
この異世界に来てから果物を絞ったドリンクなんて飲んだことないぞ!!
「なあ、マスター。なんでオレンジジュースなんてあるんだ?」
「この町はオレンジとリンゴ、それに酒の仕込みようの葡萄などが名産なんだがね。輸送路が悪くて毎年余るんだよ。だから綺麗な真水よりもオレンジジュースやリンゴジュースのほうか安くてね」
「なるほど……」
俺はこうしてオレンジジュースを堪能しながら昼飯を食べた。
オレンジジュース旨い~~。
昔の世界でオレンジジュースを飲んで、こんなことを思ったことすらないのにな~。
オレンジジュースって幸せの味がするよ。
そして、昼飯を食べ終わった俺は、部屋を借りてから冒険者用の掲示板を眺めた。
掲示板にはゴブリン退治と荷馬車の護衛の依頼書ばかりが貼られていた。
「なあ、マスター。この辺は、ゴブリンが多いのか?」
まあ、洞窟にあれだけ居たもんな。
「ああ、昔っからゴブリンが沢山湧いてな。他のモンスターは少ないんだけどな~」
あのトンネルから湧いて出て来てたのかな?
それともあのトンネルにゴブリンが外から入って来て溜まってたのかな?
まあ、どちらにしろこの辺は、多くのゴブリンの生息地なんだろう。
これも魔王城の影響なのかな?
いや、まだ魔王城まで距離があるから関係ないか。
俺は掲示板を離れて階段を登った。
ゴブリン退治や護衛の仕事だとギャラも安いから、俺の出番でも無いだろう。
たぶんこの感じからして、荷馬車の護衛が町に到着すると、帰りの荷馬車が出発するまでの間にゴブリン退治をして稼ぐのが、この辺の冒険者のルーティングなのだろうさ。
ならば、この仕事はこの辺の冒険者に任せておくべきだ。
稼ぎを横取りするまでも無いだろう。
そんな感じで俺が階段を登り始めると、宿屋の外が騒がしくなった。
男の叫び声が聞こえて来る。
「大変だ~!! 姫様が来るぞーー!!」
えっ、姫様が来るの?
すると店のマスターが慌てて出入り口の扉を閉めると鍵を掛けた。
更に閂まで掛ける。
さっきまで賑やかに飲んだくれていたお客たちも慌ててテーブルのしたに隠れた。
「な、なんだ? 何が起きてるんだ?」
怯えている?
お客もマスターも怯えているな。
「どうなってるんだ!?」
俺が階段の上から大きな声でマスターに問うと、マスターは口に人差し指を当てて、しっーー!っと言った。
その表情は、鬼気迫るって感じだった。
静にってことですか……?
なに?
そんなに姫様って怖いわけ?
俺は階段を降りると扉の前にしゃがみ込んでいるマスターの側に進んだ。
今度は小声で問う。
「姫様がそんなに怖いのか?」
「ああ、古城に住んでいる姫様は、化け物だ……。この町で一番の災いなんだ……」
「へぇ~~」
俺は窓の隙間から外を眺める。
もう町の人は逃げ去ったのか、大通りは人影一つ無くなっていた。
その静かになった大通りを一つの人影が歩んで来る。
ノシリノシリと大きな頭を揺らしていた。
俺は、その人物を見て震えだす。
俺の本能が怯えたしたのだ。
「うそぉ~~~ん、なんで~~……」
その人物は、黒山羊の頭を頭に被って歩いていたのだ。
「まぁ~じょ~だぁ~~……」
恐怖!?
俺はマスターの横にヘタレ込んでしまう。
【つづく】
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