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第274話【官能作戦】
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俺は腰の二本差しを抜いて両手で構えた。
ロングソードとショートソードだ。
長剣を右手で前に、短剣を左手で頭上に構えた。
攻防一体の構えを築く俺に、蠍美少女のバーバラが甲高い声で話しかけて来る。
「人間、よくも乙女の顔を殴ってくれたわね。なんて酷い話しなのでしょう!」
「お前は昆虫なんだろ。ならば女とか関係無いだろ」
「何を言うの。私は半分人間よ!!」
「えっ、マジで……?」
「私の母が蠍男爵婦人と呼ばれているのは、人間の男爵と結婚しているからですよ!」
「マジか!?」
いやいや、ちょっと待てよ?
俺は構えを緩めて考え込んだ。
そして、独り言を呟くように言った。
「じゃあ、こいつの母親が人間なのか? そうなると男爵が虫なのか? いや、逆かな? いやいや、何か可笑しいぞ。よく分からんな……」
まあ、人型サソリ女なら、行けないこともないかな?
バーバラがこんなに美少女なんだから、母親のグレーテもかなり美人な蠍人間の可能性も高いしな。
すると俺の疑問にバーバラが答えてくれた。
「母が蠍で、父が人間よ」
「えっ……。じゃあ、お前の父親は、蠍人間とやったのか……?」
バーバラが首を傾げる。
「やったって、何を?」
「いや、ほら、あれだよ……」
「あれって、なんですか?」
「だから、そこまで言わせるなよ……」
「言ってくれなければ分からないわよ?」
「だーかーらーさー、交尾だよ、交尾!」
「えっ……。お父様とお母様が交尾だなんて、はしたないですわ……」
バーバラは両手で頬を挟むように押さえるとイヤイヤと首を左右に振って照れていた。
なんだよ、可愛いな……。
こいつは無垢かよ……。
それじゃあ~。
「そりゃあ夫婦なんだから交尾の一つや二つ、毎晩やってるだろ~」
「ええっ! そうなの!?」
「そうだよ。もう毎晩毎晩二人は熱い体と燃える心をベッドの中でぶつけ合いながら愛し合っているのさ。その汗と快楽の結晶がキミなんだよ」
「そ、そ、そんなななっ!!」
「想像してごらん、両親が夜になると裸で互いの肌に触れ合っているところをさ。優しく頬を撫で、その指は首筋を通って胸元に滑り込む」
「あわわわ!!」
「やがて指先が乳首に到達して乳輪の周りをゆっくりと滑らかに回るんだ」
「そ、そ、それから!?」
「乳首を撫でられた母は思わず「あうっ!」って、はしたなくも切ない声を漏らしてしまう。それは女性ならば仕方ないことなんだ。女体の生理現象なんだからさ。好いた殿方に敏感なところを触れられているんだ。感じない女性なんか居るわけないだろ」
「そ、そうよね。私もそう思うわ!」
「だが、父の指は止まらない。新たな攻略を求めて母の秘密を探ろうと進行を続けるんだ」
「あわわわ~。ど、どこに進行するの!?」
「それは決まってるじゃないか」
「えええっ、どこですの!?」
「それは女性のデリケートゾーンだよ」
「デ、デリケートゾーン!!」
「そう。そこは女性の神秘が潜んだ神話の洞窟。止まることなく溢れでる魅惑の蜂蜜がテラテラと輝く官能の底さ。そこを殿方に触れられた女性は……」
「じょ、女性は……!?」
「触れられた瞬間に、電気が走るんだ」
「電気が走る?」
「そう。どんな電気だと思う?」
「ど、どんな電気って……」
「分からないかい?」
「わ、分からないわ、私には……」
「じゃあ、想像してごらん」
「想像……?」
「そう、肩の力を抜いて、気を楽にして想像するんだ」
「う、うん……」
「うんじゃあないだろ。はいだろ」
「は、はい……」
「素直で可愛いな」
「うぬぬ……」
「それじゃあ、目蓋を閉じて想像するんだ」
「はい……」
俺は話しながらバーバラに近付いて行った。
そして彼女の背後に無言で回り込むと耳元に軽く息を吹き掛ける。
「あっ……!」
「し~~。声を出さない。静かに」
バーバラは黙ったまま頷いた。
「さあ、体の力を抜くんだ。もっとリラックスしてごらん。そしてすべてを受け入れるんだ」
そして、完全にバーバラの体から力みが消えたのを確認した俺は、彼女の背後から両腕を回して首もとに抱きついた。
それは優しく包み込むようにだ。
俺の優しい温もりを感じたバーバラは、一瞬だけ強張ったが、直ぐに全身から力を抜け落とす。
完全に体も心も俺に委ねたようだった。
そして俺は彼女にスリーパーホールドを仕掛けた。
瞬時に力を入れてバーバラの頸動脈を圧迫しながら締め上げる。
彼女の毒針尻尾は自分の背中と俺の体に挟まれ動かせない。
「うっ、うぐぐぐぐぅ!!!」
バーバラが締め上げる俺の腕をパンパンと叩いていた。
だが、離さない。
本来ならば、タップで解放するのが筋だが、今は違う。
真剣勝負中だ。
ギブアップなんて存在しない。
戦いの最中に女を見せた彼女が悪いのだ。
自分の幼さを恨めってんだ。
そして俺はバーバラが気絶するまでの数秒間を、スリーパーホールドで締め上げた。
やがてバーバラが俺の腕の中で力尽きて動かなくなる。
気絶したのだろう。
その体を俺に預けてきた。
俺は意識を失った彼女の体をお姫様だっこで抱え上げると広場の隅まで運んでやった。
そして木の下に降ろすと彼女の体を漁る。
すると甲冑の隙間から小瓶を見つけ出す。
小瓶のラベルには律儀にも解毒剤と書いてあった。
「おーーい、アイラ。解毒剤を見つけたぞ~」
「ほ、本当に!?」
俺は小瓶を持って丸まっているアイラの側に寄って行った。
「なんだ、お前、顔が赤いぞ?」
「い、いや、ちょっとドキドキしただけだから……」
「そうか。じゃあ解毒剤を飲むか?」
「私を助けてくれるのかい!?」
「ただし、もう俺を襲うなよ」
「分かったわ……」
「子分たちにも襲うなって伝えろよ」
「分かっているわ……」
俺は小瓶の蓋を開けるとアイラの口に運んで飲ませてやった。
すると森の中から大声が聞こえて来る。
「バーバラ!?」
女性の声である。
ガサガサと草木が揺れたあとに、巨大なサソリが飛び出して来たのだ。
その巨大サソリを見てアイラが叫ぶ。
「蠍男爵婦人グレーテ!?」
えっ、なに、この巨大サソリがバーバラの母ちゃんなのかよ!?
人型じゃあないじゃんか!!
モロに巨大サソリじゃんか!?
蠍男爵が人間ならば、そいつはこいつとエッチしてバーバラを儲けたのかよ!!
なんともストライクゾーンが広すぎじゃあね!?
【つづく】
ロングソードとショートソードだ。
長剣を右手で前に、短剣を左手で頭上に構えた。
攻防一体の構えを築く俺に、蠍美少女のバーバラが甲高い声で話しかけて来る。
「人間、よくも乙女の顔を殴ってくれたわね。なんて酷い話しなのでしょう!」
「お前は昆虫なんだろ。ならば女とか関係無いだろ」
「何を言うの。私は半分人間よ!!」
「えっ、マジで……?」
「私の母が蠍男爵婦人と呼ばれているのは、人間の男爵と結婚しているからですよ!」
「マジか!?」
いやいや、ちょっと待てよ?
俺は構えを緩めて考え込んだ。
そして、独り言を呟くように言った。
「じゃあ、こいつの母親が人間なのか? そうなると男爵が虫なのか? いや、逆かな? いやいや、何か可笑しいぞ。よく分からんな……」
まあ、人型サソリ女なら、行けないこともないかな?
バーバラがこんなに美少女なんだから、母親のグレーテもかなり美人な蠍人間の可能性も高いしな。
すると俺の疑問にバーバラが答えてくれた。
「母が蠍で、父が人間よ」
「えっ……。じゃあ、お前の父親は、蠍人間とやったのか……?」
バーバラが首を傾げる。
「やったって、何を?」
「いや、ほら、あれだよ……」
「あれって、なんですか?」
「だから、そこまで言わせるなよ……」
「言ってくれなければ分からないわよ?」
「だーかーらーさー、交尾だよ、交尾!」
「えっ……。お父様とお母様が交尾だなんて、はしたないですわ……」
バーバラは両手で頬を挟むように押さえるとイヤイヤと首を左右に振って照れていた。
なんだよ、可愛いな……。
こいつは無垢かよ……。
それじゃあ~。
「そりゃあ夫婦なんだから交尾の一つや二つ、毎晩やってるだろ~」
「ええっ! そうなの!?」
「そうだよ。もう毎晩毎晩二人は熱い体と燃える心をベッドの中でぶつけ合いながら愛し合っているのさ。その汗と快楽の結晶がキミなんだよ」
「そ、そ、そんなななっ!!」
「想像してごらん、両親が夜になると裸で互いの肌に触れ合っているところをさ。優しく頬を撫で、その指は首筋を通って胸元に滑り込む」
「あわわわ!!」
「やがて指先が乳首に到達して乳輪の周りをゆっくりと滑らかに回るんだ」
「そ、そ、それから!?」
「乳首を撫でられた母は思わず「あうっ!」って、はしたなくも切ない声を漏らしてしまう。それは女性ならば仕方ないことなんだ。女体の生理現象なんだからさ。好いた殿方に敏感なところを触れられているんだ。感じない女性なんか居るわけないだろ」
「そ、そうよね。私もそう思うわ!」
「だが、父の指は止まらない。新たな攻略を求めて母の秘密を探ろうと進行を続けるんだ」
「あわわわ~。ど、どこに進行するの!?」
「それは決まってるじゃないか」
「えええっ、どこですの!?」
「それは女性のデリケートゾーンだよ」
「デ、デリケートゾーン!!」
「そう。そこは女性の神秘が潜んだ神話の洞窟。止まることなく溢れでる魅惑の蜂蜜がテラテラと輝く官能の底さ。そこを殿方に触れられた女性は……」
「じょ、女性は……!?」
「触れられた瞬間に、電気が走るんだ」
「電気が走る?」
「そう。どんな電気だと思う?」
「ど、どんな電気って……」
「分からないかい?」
「わ、分からないわ、私には……」
「じゃあ、想像してごらん」
「想像……?」
「そう、肩の力を抜いて、気を楽にして想像するんだ」
「う、うん……」
「うんじゃあないだろ。はいだろ」
「は、はい……」
「素直で可愛いな」
「うぬぬ……」
「それじゃあ、目蓋を閉じて想像するんだ」
「はい……」
俺は話しながらバーバラに近付いて行った。
そして彼女の背後に無言で回り込むと耳元に軽く息を吹き掛ける。
「あっ……!」
「し~~。声を出さない。静かに」
バーバラは黙ったまま頷いた。
「さあ、体の力を抜くんだ。もっとリラックスしてごらん。そしてすべてを受け入れるんだ」
そして、完全にバーバラの体から力みが消えたのを確認した俺は、彼女の背後から両腕を回して首もとに抱きついた。
それは優しく包み込むようにだ。
俺の優しい温もりを感じたバーバラは、一瞬だけ強張ったが、直ぐに全身から力を抜け落とす。
完全に体も心も俺に委ねたようだった。
そして俺は彼女にスリーパーホールドを仕掛けた。
瞬時に力を入れてバーバラの頸動脈を圧迫しながら締め上げる。
彼女の毒針尻尾は自分の背中と俺の体に挟まれ動かせない。
「うっ、うぐぐぐぐぅ!!!」
バーバラが締め上げる俺の腕をパンパンと叩いていた。
だが、離さない。
本来ならば、タップで解放するのが筋だが、今は違う。
真剣勝負中だ。
ギブアップなんて存在しない。
戦いの最中に女を見せた彼女が悪いのだ。
自分の幼さを恨めってんだ。
そして俺はバーバラが気絶するまでの数秒間を、スリーパーホールドで締め上げた。
やがてバーバラが俺の腕の中で力尽きて動かなくなる。
気絶したのだろう。
その体を俺に預けてきた。
俺は意識を失った彼女の体をお姫様だっこで抱え上げると広場の隅まで運んでやった。
そして木の下に降ろすと彼女の体を漁る。
すると甲冑の隙間から小瓶を見つけ出す。
小瓶のラベルには律儀にも解毒剤と書いてあった。
「おーーい、アイラ。解毒剤を見つけたぞ~」
「ほ、本当に!?」
俺は小瓶を持って丸まっているアイラの側に寄って行った。
「なんだ、お前、顔が赤いぞ?」
「い、いや、ちょっとドキドキしただけだから……」
「そうか。じゃあ解毒剤を飲むか?」
「私を助けてくれるのかい!?」
「ただし、もう俺を襲うなよ」
「分かったわ……」
「子分たちにも襲うなって伝えろよ」
「分かっているわ……」
俺は小瓶の蓋を開けるとアイラの口に運んで飲ませてやった。
すると森の中から大声が聞こえて来る。
「バーバラ!?」
女性の声である。
ガサガサと草木が揺れたあとに、巨大なサソリが飛び出して来たのだ。
その巨大サソリを見てアイラが叫ぶ。
「蠍男爵婦人グレーテ!?」
えっ、なに、この巨大サソリがバーバラの母ちゃんなのかよ!?
人型じゃあないじゃんか!!
モロに巨大サソリじゃんか!?
蠍男爵が人間ならば、そいつはこいつとエッチしてバーバラを儲けたのかよ!!
なんともストライクゾーンが広すぎじゃあね!?
【つづく】
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