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第272話【百足女郎のアイラ】
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百足女郎のアイラが俺の周りを大きく廻りだした。
顔は女性で胴体は赤茶色のムカデだ。
そんな奇怪な彼女が毒の森の木々に紛れながら移動して、俺の隙を窺っている。
俺も斬馬刀を腰の高さに置いて身構えていた。
アイラが移動を繰り返すたびにガサガサと草木が鳴る。
「さて、どこから食べてやろうかね。腕からかね。足からかね。それとも一気に頭からかね。やっぱり生きたまま内臓から食べてやろうかしら~」
ちっ……。
この森の雌どもは、本当におしゃべりが多いよな。
それがいちいち癇に障るわ。
「おい、無駄口ばかり叩いてねえで、さっさとかかってこいよな。お前のほうが移動速度が速いんだから、先に攻めて来るのがマナーだろ。いつまでも人の周りをグルグルと回ってるんじゃあねえよ!」
「無駄口って、どっちだい。私より台詞が長いじゃあないか!」
「そんなことあるか。お前のほうが話し出したら長いだろ!」
「何を言いますか。あなたに私の何が分かるって言うのさ!」
「なんも知らねーよ。だって知り合ったばかりだもんな!」
「じゃあ、戦いで語り合いましょう!!」
アイラが長い巨体で森から飛び出して来た。
波打ちながら動くムカデの体が俺の前で高く鎌首を上げる。
「行くわよ!」
そして上空から俺に襲い掛かって来る。
「頭から一口で食べてやるわ!!」
「そうは行くかってんだ!!」
俺は横から振り上げる一太刀で上から降って来るアイラの顔面を狙った。
だが──。
ガブリっ!!
アイラは大きな口で噛み付いて俺の振るった斬馬刀を受け止める。
「なろう!!」
「はぐはぐ!!」
俺とアイラの力比べが始まった。
どちらも引かない。
力は五分五分だ。
しかし、横からアイラの体が動いて迫る。
カタカタと百足を動かして俺の周囲を囲んだ。
「こりゃあ、不味いかな……」
ムカデの体が少しずつ輪を縮めて来る。
このままでは巻き取られるのか?
巻き取られるのはいいが、ムカデの足で触れられるのが嫌だわ。
カタカタと動いててキモチ悪そうなんだもん!!
俺は斬馬刀から手を離して、迫って来たムカデの胴体から逃げるように飛んだ。
「よっと!」
俺がムカデの体に手を付いて飛び越えると、アイラが加えていた斬馬刀を遠くに放り投げる。
「これでも食らえ!!」
俺は斬馬刀を加え投げたホームのままのアイラに魔法を打ち込む。
「ライトニングボルト!!」
「ぎぃぁああっ!!」
俺が放ったライトニングボルトがアイラの頭に命中した。
ムカデの巨体が大きく揺らめく。
その間に俺は異次元宝物庫からバトルアックス+1を取り出す。
久々に戦斧でGOだぜ!!
「おーーら!!」
そしてアイラの巨体を横殴る。
狙いはちゃんとジョイント部分だ。
だが、硬い!?
戦斧の刃先は1ミリもめり込んでいない。
「甘いわね!!」
電撃魔法のダメージから回復したアイラが上から攻めて来た。
「げっふ!!」
頭突きだった。
アイラがデカイ頭を俺の頭に叩き落として来たのだ。
俺の視界に星が煌めく。
「いたぁ~~~~………」
なに、このい石頭はさ!?
硬いのは体だけじゃあ無いじゃんか。
「もう一丁行くわよ!!」
アイラが頭を振りかぶる。
「そりゃ!!」
そして再び掛け声と共に石頭を振り下ろして来た。
俺はバトルアックスを盾の代わりにして頭突きを防ぐ。
ガンっと音が鳴った。
「ぐぐっ!」
頭突きの衝撃に俺の膝が沈む。
防いだのに衝撃に内蔵が激しく揺れたのだ。
「もう一丁行っちゃうわよ!!」
調子に乗ったアイラが再び石頭を振りかぶった。
そして振り下ろす。
この馬鹿女が!!
なんども同じ技が通じるかってんだ!!
俺は素早くバトルアックスを横に振りかぶるとアイラの頭突きを横殴る。
俺の横振りの戦斧がアイラの左こめかみにヒットした。
「うぎゃ!!」
その反動でアイラの動きが止まった。
しかし、バトルアックスの刃でアイラの顔は切れていない。
こいつの顔面は鋼かよ!?
人間の肌のように見えるが、やっぱりムカデの甲冑なんだな。
ならば!!
「今度は俺がもう一丁!!」
更にアイラの顔面を左からぶん殴った。
今度はアイラの右こめかみを強打する。
「げふっ!!」
やはり感触は、刃物で切っているのに鈍器で打っている感覚だった。
「こうなったら往復だ!!」
俺は右左右左右左と戦斧でアオラの顔面を殴り続けた。
「おら、おら、おら、おら!!」
「あん、あん、あん、あん!!」
往復ピンタのように繰り返される乱打にアイラの顔面が激しく揺れる。
「これでどうだ!!」
俺は左右十往復したところで戦斧のコースを変えた。
「ぜぇあ!!」
掬い上げるアッパーカットのラインで振るわれたバトルアックスが、アイラの顎をかち上げる。
「ぎゃふん!!」
その一撃にアイラの頭が上を向いた。
まだ、俺の攻撃が続く。
ジャンプからの~~~!!
「ヘルムクラッシャー!!」
ジャンプで高さを合わせた俺が必殺スキルを乗せた会心の一撃を繰り出した。
俺の戦斧がアイラの額にヒットする。
「ぜぇぁぁあああ!!」
気合いを入れて振りきられる俺の戦斧の強打にアイラの顎が地面に叩きつけられた。
畜生、切れてないぞ!!
だが、衝撃は完璧だったはずだ!!
しかし、俺が着地するのと同時にアイラが動いた。
地面に叩きつけられた位置から俺の土手っ腹に突っ込んで来る。
「グフッ!!」
頭突きかよ!!
いや、体当たりかな!?
アイラは俺の腹に頭を付けたまま高く体を伸ばす。
俺は持ち上げられる。
そして5メートル近くの高さから放り投げられた。
落ちて行く俺は背中から地面に叩きつけられる。
それでもゴロンと転がり素早く立ち上がった。
おおう!?
受け身スキルが成功したらしい。
思わぬところで思わぬスキルが発動しましたがな。
「坊屋、なかなかやるわね~」
「てめーこそ、なんちゅう硬さだよ。なんべん斬ったと思ってやがるんだ……」
やーべ~……。
思ったよりもピンピンしてませんか、こいつ……。
俺的には、だいぶ攻撃したつもりなんだけどさ……。
「この森に人間が居るから、食べたら旨そうだと思ったけれど、ちょっと考えを改めようかしら」
「考えを改めて、どうするつもりだい!?」
「どう、あなた。私と交尾をしない?」
クソぉーーーーーーーー!!!
またこのパターンですか!!!
なんで今回の俺はモテモテなの!?
なんで昆虫にばかりモテちゃうのかな!?
殿様バッタにモテて、高足蜘蛛にモテて、今度は顔面女ムカデにモテモテですか!!
このパターンから行ったら、おそらくサソリにも交尾を求められる天丼パターンに続きそうだよね!!
なに、いま俺モテ期が来てるの!?
いーやー、今じゃあないだろ、俺のモテ期さー!!
なんでこんな昆虫しか居ない森の中でモテ期が到来しちゃうかな!!
ぜってー、神様のイタズラだわ!!
「どうだ。私と交尾をするなら生かしてやるぞ。私は蜘蛛やカマキリと違って交尾のあとに雄を食べたりしないからさ」
「うわー……。それは有難いわ~……」
どうしようかな……。
頭はおばさんだけど人間だしさ。
少しハードルが下がってるしさ。
でも、やっぱり無理だよね。
ぜんぜん燃えてこないし、萌えてもこないわ……。
頭だけ人間でも無理だわ……。
そんなことを俺が考えていると、森の中からピンクの固まりが飛び出して来た。
それはアイラの背後から彼女の体に飛び掛かる。
「隙ありだ、百足女郎のアイラさんよ!!」
「ぎぃゃぁあああ!!」
ピンクの固まりがアイラの体にのし掛かるとアイラが悲鳴を上げた。
そのピンクの固まりは、人間の女性が露出度の高い甲冑を付けているような姿だった。
禍々しいビキニアーマーだ。
ただし彼女のお尻からはサソリの尻尾が生えている。
そのサソリの尻尾がアイラの体を刺しているのだ。
「なに、あいつの甲羅を貫いているのかよ!?」
「はっはっはっはっ! 私の毒を食らえば流石のアイラもおしまいよね!!」
「うぎゃゃぁああぁああ!!」
アイラが苦しそうにのたうち回る。
毒が効いているんだ!!
「おまえ、もしかして、蠍男爵婦人のグレーテか!?」
サソリ甲冑の少女はヘルムの隙間から伸び出た長い金髪を片手で書き上げると言った。
「蠍男爵婦人は、私のお母様よ。私は娘のバーバラ。よろしくね、人間さん」
か、可愛い!!
この子なら昆虫でも出来るぞ!!
ぐぁぁああぁっあがあががが!!
呪いがーーー!!!
久々に呪いがーーー!!!
【つづく】
顔は女性で胴体は赤茶色のムカデだ。
そんな奇怪な彼女が毒の森の木々に紛れながら移動して、俺の隙を窺っている。
俺も斬馬刀を腰の高さに置いて身構えていた。
アイラが移動を繰り返すたびにガサガサと草木が鳴る。
「さて、どこから食べてやろうかね。腕からかね。足からかね。それとも一気に頭からかね。やっぱり生きたまま内臓から食べてやろうかしら~」
ちっ……。
この森の雌どもは、本当におしゃべりが多いよな。
それがいちいち癇に障るわ。
「おい、無駄口ばかり叩いてねえで、さっさとかかってこいよな。お前のほうが移動速度が速いんだから、先に攻めて来るのがマナーだろ。いつまでも人の周りをグルグルと回ってるんじゃあねえよ!」
「無駄口って、どっちだい。私より台詞が長いじゃあないか!」
「そんなことあるか。お前のほうが話し出したら長いだろ!」
「何を言いますか。あなたに私の何が分かるって言うのさ!」
「なんも知らねーよ。だって知り合ったばかりだもんな!」
「じゃあ、戦いで語り合いましょう!!」
アイラが長い巨体で森から飛び出して来た。
波打ちながら動くムカデの体が俺の前で高く鎌首を上げる。
「行くわよ!」
そして上空から俺に襲い掛かって来る。
「頭から一口で食べてやるわ!!」
「そうは行くかってんだ!!」
俺は横から振り上げる一太刀で上から降って来るアイラの顔面を狙った。
だが──。
ガブリっ!!
アイラは大きな口で噛み付いて俺の振るった斬馬刀を受け止める。
「なろう!!」
「はぐはぐ!!」
俺とアイラの力比べが始まった。
どちらも引かない。
力は五分五分だ。
しかし、横からアイラの体が動いて迫る。
カタカタと百足を動かして俺の周囲を囲んだ。
「こりゃあ、不味いかな……」
ムカデの体が少しずつ輪を縮めて来る。
このままでは巻き取られるのか?
巻き取られるのはいいが、ムカデの足で触れられるのが嫌だわ。
カタカタと動いててキモチ悪そうなんだもん!!
俺は斬馬刀から手を離して、迫って来たムカデの胴体から逃げるように飛んだ。
「よっと!」
俺がムカデの体に手を付いて飛び越えると、アイラが加えていた斬馬刀を遠くに放り投げる。
「これでも食らえ!!」
俺は斬馬刀を加え投げたホームのままのアイラに魔法を打ち込む。
「ライトニングボルト!!」
「ぎぃぁああっ!!」
俺が放ったライトニングボルトがアイラの頭に命中した。
ムカデの巨体が大きく揺らめく。
その間に俺は異次元宝物庫からバトルアックス+1を取り出す。
久々に戦斧でGOだぜ!!
「おーーら!!」
そしてアイラの巨体を横殴る。
狙いはちゃんとジョイント部分だ。
だが、硬い!?
戦斧の刃先は1ミリもめり込んでいない。
「甘いわね!!」
電撃魔法のダメージから回復したアイラが上から攻めて来た。
「げっふ!!」
頭突きだった。
アイラがデカイ頭を俺の頭に叩き落として来たのだ。
俺の視界に星が煌めく。
「いたぁ~~~~………」
なに、このい石頭はさ!?
硬いのは体だけじゃあ無いじゃんか。
「もう一丁行くわよ!!」
アイラが頭を振りかぶる。
「そりゃ!!」
そして再び掛け声と共に石頭を振り下ろして来た。
俺はバトルアックスを盾の代わりにして頭突きを防ぐ。
ガンっと音が鳴った。
「ぐぐっ!」
頭突きの衝撃に俺の膝が沈む。
防いだのに衝撃に内蔵が激しく揺れたのだ。
「もう一丁行っちゃうわよ!!」
調子に乗ったアイラが再び石頭を振りかぶった。
そして振り下ろす。
この馬鹿女が!!
なんども同じ技が通じるかってんだ!!
俺は素早くバトルアックスを横に振りかぶるとアイラの頭突きを横殴る。
俺の横振りの戦斧がアイラの左こめかみにヒットした。
「うぎゃ!!」
その反動でアイラの動きが止まった。
しかし、バトルアックスの刃でアイラの顔は切れていない。
こいつの顔面は鋼かよ!?
人間の肌のように見えるが、やっぱりムカデの甲冑なんだな。
ならば!!
「今度は俺がもう一丁!!」
更にアイラの顔面を左からぶん殴った。
今度はアイラの右こめかみを強打する。
「げふっ!!」
やはり感触は、刃物で切っているのに鈍器で打っている感覚だった。
「こうなったら往復だ!!」
俺は右左右左右左と戦斧でアオラの顔面を殴り続けた。
「おら、おら、おら、おら!!」
「あん、あん、あん、あん!!」
往復ピンタのように繰り返される乱打にアイラの顔面が激しく揺れる。
「これでどうだ!!」
俺は左右十往復したところで戦斧のコースを変えた。
「ぜぇあ!!」
掬い上げるアッパーカットのラインで振るわれたバトルアックスが、アイラの顎をかち上げる。
「ぎゃふん!!」
その一撃にアイラの頭が上を向いた。
まだ、俺の攻撃が続く。
ジャンプからの~~~!!
「ヘルムクラッシャー!!」
ジャンプで高さを合わせた俺が必殺スキルを乗せた会心の一撃を繰り出した。
俺の戦斧がアイラの額にヒットする。
「ぜぇぁぁあああ!!」
気合いを入れて振りきられる俺の戦斧の強打にアイラの顎が地面に叩きつけられた。
畜生、切れてないぞ!!
だが、衝撃は完璧だったはずだ!!
しかし、俺が着地するのと同時にアイラが動いた。
地面に叩きつけられた位置から俺の土手っ腹に突っ込んで来る。
「グフッ!!」
頭突きかよ!!
いや、体当たりかな!?
アイラは俺の腹に頭を付けたまま高く体を伸ばす。
俺は持ち上げられる。
そして5メートル近くの高さから放り投げられた。
落ちて行く俺は背中から地面に叩きつけられる。
それでもゴロンと転がり素早く立ち上がった。
おおう!?
受け身スキルが成功したらしい。
思わぬところで思わぬスキルが発動しましたがな。
「坊屋、なかなかやるわね~」
「てめーこそ、なんちゅう硬さだよ。なんべん斬ったと思ってやがるんだ……」
やーべ~……。
思ったよりもピンピンしてませんか、こいつ……。
俺的には、だいぶ攻撃したつもりなんだけどさ……。
「この森に人間が居るから、食べたら旨そうだと思ったけれど、ちょっと考えを改めようかしら」
「考えを改めて、どうするつもりだい!?」
「どう、あなた。私と交尾をしない?」
クソぉーーーーーーーー!!!
またこのパターンですか!!!
なんで今回の俺はモテモテなの!?
なんで昆虫にばかりモテちゃうのかな!?
殿様バッタにモテて、高足蜘蛛にモテて、今度は顔面女ムカデにモテモテですか!!
このパターンから行ったら、おそらくサソリにも交尾を求められる天丼パターンに続きそうだよね!!
なに、いま俺モテ期が来てるの!?
いーやー、今じゃあないだろ、俺のモテ期さー!!
なんでこんな昆虫しか居ない森の中でモテ期が到来しちゃうかな!!
ぜってー、神様のイタズラだわ!!
「どうだ。私と交尾をするなら生かしてやるぞ。私は蜘蛛やカマキリと違って交尾のあとに雄を食べたりしないからさ」
「うわー……。それは有難いわ~……」
どうしようかな……。
頭はおばさんだけど人間だしさ。
少しハードルが下がってるしさ。
でも、やっぱり無理だよね。
ぜんぜん燃えてこないし、萌えてもこないわ……。
頭だけ人間でも無理だわ……。
そんなことを俺が考えていると、森の中からピンクの固まりが飛び出して来た。
それはアイラの背後から彼女の体に飛び掛かる。
「隙ありだ、百足女郎のアイラさんよ!!」
「ぎぃゃぁあああ!!」
ピンクの固まりがアイラの体にのし掛かるとアイラが悲鳴を上げた。
そのピンクの固まりは、人間の女性が露出度の高い甲冑を付けているような姿だった。
禍々しいビキニアーマーだ。
ただし彼女のお尻からはサソリの尻尾が生えている。
そのサソリの尻尾がアイラの体を刺しているのだ。
「なに、あいつの甲羅を貫いているのかよ!?」
「はっはっはっはっ! 私の毒を食らえば流石のアイラもおしまいよね!!」
「うぎゃゃぁああぁああ!!」
アイラが苦しそうにのたうち回る。
毒が効いているんだ!!
「おまえ、もしかして、蠍男爵婦人のグレーテか!?」
サソリ甲冑の少女はヘルムの隙間から伸び出た長い金髪を片手で書き上げると言った。
「蠍男爵婦人は、私のお母様よ。私は娘のバーバラ。よろしくね、人間さん」
か、可愛い!!
この子なら昆虫でも出来るぞ!!
ぐぁぁああぁっあがあががが!!
呪いがーーー!!!
久々に呪いがーーー!!!
【つづく】
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