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第266話【壁の中へ】

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しめしめである。

村長さんと相談して、もしも魔法使いが亡くなっていたならば、遺品は見つけた人の物と言うことになった。

要するに俺の物だ!

まあ、そもそも危険な巨大昆虫の森だ。

そんなところまで荷物を取りに行ける人間なんて限られている。

だから村長も簡単に諦めが付いたのだろう。

だが、条件として、魔法使いの遺体を手厚く埋葬するようにと言われた。

まあ、埋葬は当然だろうさ。

それは仕方無いので引き受けた。

そんなこんなで俺は、問題の壁にやって来ていた。

現在壁沿いに出入り口を目指して歩いている

壁の一ヶ所に門が在り、中への出入りは、そこしか無いらしいのだ。

俺は村長さんと一緒に壁のゲートを目指している。

その道中で俺は村長さんに訊いてみた。

俺は横に聳える壁を指差しながら言う。

「村長さんは、この壁の中に入ったことがあるのか?」

「昔、少しだけですが、有ります」

「中はどんな感じだったんだ?」

「奇怪な森でした」

なんか淡々としたヤツだな。

会話が弾まないぞ。

「じゃあ、巨大昆虫って見たこと有るのか?」

「はい、有ります」

「どんな感じだった?」

「人間サイズの巨大昆虫がウヨウヨと居ましたよ」

「どんな種類の昆虫が居たんだい?」

「そうですね。確か、バッタ、カナブン、トンボ、蝶、蛾……」

えっ、飛んでるヤツも居るのかよ。

それで壁を越えて来ないってことは、結界の精度が高いのかな?

それとも壁が高すぎるのかな?

俺は直ぐ横の壁を見上げた。

高さは20メートルは有りそうである。

「それに、七不思議、カブトムシ、カマキリ、軍隊蟻……」

うわ~……。

カマキリもヤバイが軍隊蟻なんてかなりヤバくね……。

「あとは、蜘蛛、サソリ、蜂……」

あわわ!

マジでヤバイ昆虫たちが出始めたぞ!!

カマキリや蜘蛛は昆虫界のハンターだし、サソリは毒がヤバそうだよな。

てか、蜂ってヤバくね?

蜜蜂なら可愛いけれど、雀蜂だとマジでヤバイぞ。

蜂って実話言うと蟻科なんだよね。

だから雀蜂って軍隊蟻が飛んできているようなもんなんだよな。

今回の話に置き換えればだ。

巨大軍隊蟻が装甲車の軍団だと例えれば、巨大昆虫雀蜂は武装戦闘ヘリの軍団だよな。

そう考えるとマジで怖いぜ……。

絶対に合いたくないわ……。

そして、まだ村長が昆虫の種類を語り続ける。

「カマドウマ、ムカデ、ダニ、ゴキブリ、ヤスデ、バンデットオオウデムシ、コウガイヒル」

ええっ!?

マジでキモイのキターーー!!

てかよ、カマドウマとかゴキブリのデカイのには合いたくないわ~……。

ダニがウジャウジャってのもキモイぜ……。

てか、ヤスデって、なに……?

それよりもバンデットオオウデムシってなんだよ!?

あと、コウガイヒルって何さ!?

そもそもヒルって昆虫なのか?

まあ、分かったことは良く分からないキモイ虫も沢山居るってことなのね……。

詰まりだ。

この森の巨大昆虫は、ちゃんと生態系が完成しているってことだろう。

魔法使いの研究成果なのかな?

兎に角、生態系が完成しているってことは、小さな人間が侵入するのは危険ってことだ。

普通の人間ならば、この森の中では長生き出来ないだろうさ。

まず巨大昆虫の食料になるだろうね。

やがて俺たちは出入り口がある壁の麓まで到着した。

高い壁に、2メートル四方ぐらいある両開きの扉が設置されている。

その扉の側には掘っ建て小屋が建っており、その周辺には畑が広がっていた。

「何この畑は、野菜か?」

「これは門番の男が耕している畑です。おーい、ホッピーは居るか~」

村長さんがホッピーたる人物を呼ぶと、小屋の中から上半身しか服を着てないおっさんが出て来た。

髪型はボサボサで、下半身丸出しのおっさんは、チ◯コをボリボリとかきながら答える。

「あ~、村長さん、おはようございますだ。どうなされました?」

「ホッピー、それよりだ」

「なんでげしょう?」

「何故に下半身を丸出しなんだね」

良かった~。

ちゃんと訊いてくれたよ。

「あー、これですか~。昨晩も一人でオ◯ニーをやってたんですわ~」

うわーーーー!!

そう言う台詞を簡単に口走るな!!

強制非公開になったらどうするんね!!

「もう朝だぞ。ちゃんとあと始末をしてから眠りなさい」

「はい~。次からそうしますだぁ」

「毎回そう言ってるじゃあないか、お前は」

「へへ、すんません」

毎回かよ!

なに、このズボラな変態野郎はさ!!

てか、唐突にモブな変態が登場したな。

これは要らん演出だろう。

まさに無駄!!

「ホッピー、悪いが門を開けて、この冒険者さんを中に通してもらえないか」

「へい、畏まりました。いまカギを取ってきやす」

そう言うと下半身丸出しのホッピーはボロ小屋に入って行った。

そしてしばらく待っていると、全裸になったホッピーがカギを持って出て来る。

何故に全裸になっとるんね!!

「はいはい、いまカギを開けますだよ~」

「ああ、頼むよ、ホッピー」

えっ、村長さんは全裸になったホッピーを突っ込まないのかよ!?

スルーなの!?

絶対に突っ込むのが正しい瞬間だよね!!

そして俺が声に出して突っ込みたいのを我慢していると、両開きの門を開けたホッピーが言う。

「はい、開きましただよ。カギは安全のために閉めますから、出るときはワシに声を掛けてくださいな。たぶんここら辺に居ますから」

多分かよ……。

ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンみたいに、ちゃんとパーカーさんやピーターさんが出入り口の前で待っててくれたようにはいかないのね……。

こいつが居なくて、出れなくなったらどうしよう……。

その時は、力任せに門を破壊するかな……。

そうなると、中の巨大昆虫が出て来るんじゃあないか?

だって人間サイズの巨大昆虫なんだろ?

この出入り口も通れるだろうさ。

まあ、そうなったら仕方無いよね。

うん、しゃーないか~。

「では、気を付けてくださいな。アスラン殿」

「行ってらっしゃいませだ」

「おう、行ってくるぜ!」

俺は二人のおっさんに見送られながら緑が茂る壁の中に入って行った。

細い道が真っ直ぐ森の中に続いている。

この道を辿れば魔法使いの塔に到着できるのかな?

まあ、兎に角進んでみるか──。

さて、今回の敵は巨大昆虫だぜ。

ちょっと大自然に挑戦する気分だが、大きな胸を借りる感覚で行こうかな。

巨大昆虫だろうが何でも出てきやがれってんだ!

いざ、魔法使いの塔にだ!!

あっ……、しまった。

魔法使いの名前すら訊いて来なかったわ……。

それに村長さんの名前すら訊いて無いぞ……。

知ってる名前はモブキャラ変態野郎のホッピーだけかよ。

まあ、いいか。

どうにでもなるさ。

気楽に行こう。


【つづく】
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