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第143話【私は神だ】

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俺は気絶した自分を斜め上の空から見下ろしていた。

5メートルぐらい離れた空からだ。

俺は気絶しながら幽体離脱しているようだな。

俺の本体はだらしなく白目を向いて倒れている。

あーあ、情けなく口から涎が垂れてるよ。

それにしても始めてだな、幽体離脱なんてよ。

こんな機会は滅多に無いから楽しんで見るか~。

あれ?

何だか音が聞こえなくなってきたな?

ポラリスのしゃべっている声が聞こえなくなったぞ。

全裸のパーカーさんが駆け寄って来て、俺の意識を取り戻そうと往復ピンタを食らわしていやがる。

うわ、痛そうだ。

やめてくれよ……。

丸太で頭を強打されたんだから、もうちょっと優しく起こしてくれてもいいじゃあないか。

目が覚めたら往復ピンタを倍返ししてやるぞ。

それにしても目が覚めないな。

あれ、ピーターさんが俺の胸に耳を当ててるぞ?

それから慌てるとおデブなアンナを呼び寄せる。

アンナが気絶している俺の手首を持って脈をはかり始めやがったわ。

もう~、おおげさだな。

ポラリスも何をオロオロしているんだよ。

んん?

どうした、アンナ?

何故に暗い顔で首を左右に振るんだ?

おいおい、ポラリスが慌てて狼狽し始めたじゃあないか。

パーカーさん、何故に白目を向いている俺の目蓋を手で閉じちゃうの?

それから両手を胸の上で組ませるなよ。

まるで俺の死体を丁寧に扱ってるみたいじゃあないか。

もう、やめてくれよ~、やだな~。

まるで俺が死んだみたいじゃあないか~。

あ~……。

まさか……。

俺、死んだの?

マジで!!

マジで俺が死んじゃったのか!?

嘘だろ!?

だって俺ここで元気にしているじゃんか!?

この俺の意識は何ですか!?

ああ、幽体離脱だっけ!?

そんなことよりだ!!

ど、どうしよう俺はマジで死んじゃったのか!?

いやいやいや、嘘でしょう!?

だって俺はまだやるべきことが沢山残ってるよ!!

閉鎖ダンジョンだって攻略の途中だしさ!

英雄クラスのアンデットも、あと二体残ってるんだよ!

それにまだ俺は童貞なんだぜ!

なのに死ぬとか有り得ないわ!!

しかも、こんな間抜けな死にかたがあるかよ!!

どうせ死ぬなら、もっと派手にかっこよく豪快に死にてえよ!!

こんな裏庭で丸太にボコられて死ぬなんていやですわ!!

誰か助けてくれ!!

『私がお助けいたしましょうか』

えっ!?

誰だよ!?

『私は神だ』

えっ!?

神さまだって!?

し、信じるかよ、神なんてよ!!

『だが、私は神だ』

信じねえぞ、神なんて!!

お前は誰だ!?

『だから神だ』

信じるかって言ってるだろ!!

そんなモンスターエンジン見たいな登場をする神なんて信じられるか!!

『いや、信じなさい。私は神だ』

だから信じないぞ!!

そうか、お前は俺を騙そうとしているな!?

『いやいや、騙そうなんてしてないから』

いいや、きっとお前は悪魔だな!!

俺を騙して魂を乗っ取ろうと企んでいるだろ!?

『そんな企みはないから、信じなさい。私は神だ!』

そんな馬鹿な話があるか、悪魔野郎が!!

『だから悪魔じゃあないってば、私は神だ!!』

信じられるか、お前が神様なら証拠を見せてみろよ!?

『証拠と言われましても、それは信じてもらうしかないかな』

証拠が無いだと!?

やっぱり怪しいぞ!!

お前はやっぱり絶対に悪魔だろ!?

『だから悪魔じゃないってば、神だってば!!』

いいや、悪魔だ、悪魔だ、悪魔だよ!

『いやいやいや、よりによって悪魔なんかと間違わないで、私は神だからさ!!』

昔から怪しいヤツほど自分を神だとか仏だとかぬかすんだよ!?

『えー、じゃあどうやったら私が神だと信じてくれるのさ!!』

俺を生き返らせたら信じてやろう!!

『いやー、それは駄目かな~』

ほーーら、やっぱり悪魔じゃあねえか!?

『それとこれとは話が別だよ!!』

いいや、神様なら俺を必ず生き返らせてくれるもの。

それが出来ないならあんたは悪魔だ!!

『う~わ、この人、面倒臭いな……』

神様なら面倒臭いとか言うなよ、悪魔野郎!!

『あー、もー、もう用件だけ伝えるよ』

なに?

『えっーと、なんだったっけな。もう慌てたから台詞を完全に忘れたわ……』

台本見てもいいよ。

『えっ、いいの?』

うん、俺はそう言うの気にしないからさ。

『悪いね~。今回がこの仕事の初日なんだよね』

あー、それは大変だね。

なのに面倒臭いこと言ってすまなかったよ。

ほら、俺も死んだばかりだから気が動転してたからさ。

『いやいや、いいんだよ。私が神だって理解して貰えればさ』

いや~、それはまだちょっと……。

『えぇ~、まだ信じてくれないの?』

うん、最近さ、たちの悪い糞女神に引っ掛かってさ、えらい呪いをかけられたばかりなんだよね。

『それは厄介だったね。ちなみにその女神って誰ですか?』

あー、なんて名前だったかな~。

いつも糞女神としか読んでないからさ、名前なんか覚えてないわ。

『そうですか。ですが貴方には転生者の御加護が施されているから私が参上したわけなんだけれど』

あー、そうだ。

糞女神の特徴で語尾にハートマークをよく付けやがるんだわ。

『あー、大体誰だか分かりましたよ……』

そいつに転生させられたのよね。

『それは本当に厄介な女神に転生させられましたね。私だったら泣いてますよ……』

えっ、わかって貰えるの?

『ええ、分かりますとも。その女神様はおそらく私の上司ですから……』

うわぁ~、あんたあんなのの下で働いているの?

辛くね?

会社辞めたくね?

『ええ、正直辞めたいですわ……』

同情するよ、あんたにさ。

分かった、あんたを神様だって信じるよ。特別だからな。

『有り難うございます』

じゃあ、なんで来たかに話を戻そうか?

『はい、では、途中はもう省きまして、貴方を復活させます』

なんだよ、生き返らせてくれるんじゃんか。

『まあ、転生者ですからね』

じゃあ、早く生き返らせてくれよ。

『ただしペナルティーを授けます』

えー、呪いかよ~。

『呪いじゃあありません。ペナルティーですよ』

どっちでも構わないが、お手柔らかに頼むぞ。

まあ、死んだのは俺が未熟だったのが原因だし、文句も言えないわな。

『ペナルティーとは、貴方に死と同様の不幸を授けます』

また、豪快にヤバそうなペナルティーだな。

でぇ、内容はなんだい?

『あなたが性欲を抱くと苦しみだして、挙げ句は行為に至ると死んでしまうペナルティーです!』

へぇ?

『驚きましたか』

ああ、スゲー驚いてるわ。

だってその呪いは糞女神に転生された時に食らってる呪いだからよ。

『えっ……?』

だから糞女神にもう食らっている呪いだよ、それ。

『そ、そんな記録は記載されてませんよ……?』

いやいや、そんなことは無いぞ。ちゃんと調べろよ!

『あなたの書類には、そんな記載は一切有りませんが……』

じゃあよ、俺の体を調べろよ。本体を見てみろよ。

『分かりました。では、調べさせて…………本当だ!!??』

だろ~~。

『な、何故ですか!?』

だからさ、何度も言ってるだろ。

この呪いは糞女神に転生された時に食らった呪いだってばよ。

『そんな記載は無いのに、貴方には呪いが掛かってますね!』

なんだ?

嬉しそうだな?

『これは使えますぞ~。公文書偽造ですね~』

なに、急に悪そうな口調に変わったな……。

『これをネタに上司の失脚を狙えるかも知れませんぞ!』

マジか!?

『じゃあ、あなたをさっさと復活させて私は帰ります。上司を失脚させたい同僚と作戦を組まなければ!』

おいおい、同胞が居るのかよ。

てか、あの糞女神は恨まれ過ぎじゃあね?

まあ、構わんけれどさ。

『では、貴方を復活させます、それでは然らば!!』

早いな………。

そして、俺は目を覚ました。

裏庭の芝生の上で意識が戻る。

「あたたた……。首と頭が痛いな……」

「うわぉ~~~ん、アスランが目を覚ましたわ~~!!」

俺が目を覚ますと泣きじゃくるポラリスが抱き付いて来た。

スケールメイス越しにだが、純粋無垢な乙女の甘い香りが鼻に届くと俺の煩悩を煽る。

ええ~、匂いだな~。

ムクムクとおっ立ちそうだわ~。

油断───。

直後、心臓が爆発しそうに痛み出す。

「ぐっぁぁああがああがが!!!」

俺はポラリスを引き剥がそうと力んだが、怪力娘はびくともせずに抱き付いていた。

「畜生ぅぅうう、呪いはそのままかよ!!!」


【つづく】
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