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第230話【悪霊の悲鳴】

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【霊体関知スキル。パッシブで霊体を関知する確率が向上する】

この鉱山トンネルに入ってからビンビンと来ますがな~。

いつぞやに覚えた霊体関知スキルの影響ですね。

トンネルの奥から複数の霊体を関知できていますよ。

てか、関知しすぎてザワザワしますわ。

もう体全身の産毛が立っちゃってますがな。

ここまで敏感だと邪魔なスキルに思えてきますぞ。

でも、これで緊張感が引き締まる思いになるぜ。

俺は現在5メートル幅のトンネルを進んでいた。

天井は2メートル30センチぐらい有るだろうか。

戦うには広すぎず狭すぎずって感じかな。

どちらかって言ったらソロの俺には少し通路の幅が広いかな。

あ、来るな……。

アンデットがこっちに迫って来るぞ。

気配で分かるぜ。

前言撤回だな。

やっぱり霊体関知スキルは使えるのかな。

迫り来るアンデットの気配はさほど強くないな。

でも、数が多いぞ。

それでも、分かるぜ。

俺なら余裕で勝てるレベルだ。

そして、俺なら余裕で勝てる人数だな。

「よし、準備運動代わりに、一丁暴れるかな~」

俺は左手にマジックトーチが掛かったショートソードと、右手にロングソードを持って待ち構える。

【ショートソード+1。攻撃力向上】

【ロングソード+2。攻撃速度向上。アンデットにダメージ特効向上】

更に左腕には小型盾バックラーを付けているのでディフェンスシールドを掛けて置こう。

更にディフェンスアーマーにフォーカスアイだ。

ついでにファイアーエンチャントウェポンもロングソードに掛けとくか。

今回はバフ全開だぜ。

よし、こいや!

いや、俺から行くぞ!!

俺が待ち構えているとトンネルの暗闇からガシャガシャと骨が鳴る音が聴こえて来る。

話に聞いたスケルトンだな。

「うし、行くぜ!!」

俺は闇の中に向かって走り出した。

やがてショートソードから放たれる明かりがスケルトンたちを映し出す。

「やったぜ、スケルトンファイターか!」

スケルトンの群れは様々な武器や防具で武装している。

ラッキーだぜ。

今さら、ただの武器無しスケルトンじゃあゴミ過ぎる。

もうスケルトンファイタークラスじゃあないと、経験値にも成らないものな。

「うりゃぁぁあああ!!!」

俺は双剣を振り回しながらスケルトンファイターのド真ん中に飛び込んで行った。

そして飛び込み一番で数体のスケルトンファイターの首を跳ねる。

髑髏が数個、空を飛んだ。

気持ちいいぜぇ~!!

「そらそらそらそら!!」

俺は押し寄せるスケルトンファイターの波を押し戻す勢いで大暴れした。

次々とスケルトンファイターを撃破して行く。

緩い、緩い、緩いぞ!!

もう弱いぜ!!

スケルトンファイターが何体来ても敵では無いわ!!

無限に倒せるぞ!!

俺ってば、無敵だぜ!!

五分ぐらい暴れただろうか。

やがて俺は、スケルトンファイターの群れを、すべて撃破する。

ザコの壊滅完了だぜ。

たぶん五十体ぐらいは倒しただろうか。

周りを見舞わせば、一面人骨と錆びれた装備だらけだった。

「マジックアイテムは有るかな~。ねーなー……。詰まらん!」

まあ準備運動程度には成っただろう。

二日酔いで鈍った身体には、丁度いい運動だったぜ。

よし、先に進もうかな。

んん?

なんか強い気配がこっちに進んで来るぞ。

デスナイトバーサーカーかな?

いや、違う。なんだろう……。

バーサーカーって言う感じの荒々しさは感じられないぞ。

なんだか静かで物哀しい気配だ。

でも、儚さの中に不純な凶器も感じられるな。

間違いなく恨み辛みを持った悪霊の気配だぞ。

デスナイトバーサーカーって、スケルトン以外にも、別のアンデットを召喚出来るのかな?

まあ、いいや。

兎に角だ。

ここからが本番かな。

気を引き締めて行こうかな。

さあ、蛇が出るか、鬼が出るか……。

あれ、鬼が先だっけ?

まあ、いいか~。

さあ、ドーーンとかかってきなさい!!

んん?

姿を現したぞ。

敵は一体だな。

レイスかな?

幽体っぽいぞ。

女か?

いや、ババアだな。

ババアのレイスかな?

手にはダガーを持ってやがる。

赤く光ってやがるからマジックアイテムだぞ。

ババアのレイスは上を向いて口を開いた。

何をする積もりだ?

『キィィァァアアアアアア!!!』

んぬ!!!!!!

俺は咄嗟に両手の剣を捨て両耳を手でふさいだ。

「ぐっあ!!!」

『キィィァァアアアアアア!!!』

ひ、悲鳴!?

ひ、ひでえっ!!!

なんだ、この悲鳴は!?

叫び声や大声とは質が違う。

これは絶叫レベルの悲鳴だ。

魔力を持ってやがるぞ。

耳から手が放せない。

鼓膜が破れるどころか、鼓膜が破裂しそうだ。

ババアの悲鳴が身体の奥まで届いて、脳味噌と脊髄をガタガタと揺すっているような衝撃だった。

身体の力が抜ける。

否、入らないが正しいか。

この悲鳴は……。

このババアのレイスは、レイスじゃあないぞ。

こいつはバンシーだ。

この悲鳴はバンシーの悲鳴だ。

俺の魂が、抜き取られそうなぐらい揺れている。

ババアのバンシーは、首を左右に振りながら悲鳴を上げて、少しずつ俺に向かって歩み寄って来る。

片手に持った赤いダガーの光が恐ろしく見えた。

動けない……。

バンシーの悲鳴に身体と魂が収縮して固まってしまっている。

そして、バンシーが片膝を付いている俺の前に立った。

俺は悲鳴を上げ続けるババアに見下ろされる。

目がギョロリと青白く輝いてやがる。

ババアはゆっくりと赤く光るダガーを振りかぶった。

このままでは、殺られる!!

「のぉぁああああ!!!」

俺は死力を振り絞って立ち上がった。

そのままの勢いで脳天をバンシーの顎に叩き付けた。

頭突きである。

『はふんっ!!』

悲鳴が止んだ!!

右フックからの左フックのコンビネーション。

更に上段前蹴りでバンシーの顎を蹴り上げる。

瞬時に打ち込んだマーシャルアーツの三打。

その三打でバンシーの双眸は別々のほうを見ていた。

首が座り、腰が砕けかけ、立っているのもやっとなのか、完全にフラフラしていた。

「とどめだ!!」

俺はバンシーの腰に腕を回すと流れるような動きで背後に回り込む。

クラッチ!!

かーらーのー!!

「ジャーマンスープレックスだ!!」

俺は軽々とバンシーを持ち上げると反り投げで地面に後頭部を叩き付けた。

更に!!

俺はブリッチから跳ね飛ぶと、再びバンシーをジャーマンスーブレックスの体勢で持ち上げていた。

「ダブルジャーマンだぜ!!」

連続二発目のジャーマンスープレックスが炸裂した。

俺がブリッチを築きながら投げ技の余韻に浸っていると、バンシーの体が浄化されたかのように消えて無くなった。

手にしていた深紅のダガーがチャリンと音を鳴らして床に落ちる。

俺はブリッチをしたまま言った。

「スリーカウントを数える必要すら無かったか!」

スケルトンファイターの群れ&ババアのバンシーを撃破完了。

残るはデスナイトバーサーカーだけかな?

他にもまだ居るのかな?


【つづく】
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