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第229話【デスナイトバーサーカーの遺跡】

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俺は部屋の中で見つけたブラジャーとパンティーを異次元宝物庫に仕舞うことで、すべてを闇にほおむった。

もうあのブラジャーとパンティーは二度と見ることが無いだろう。

真相を調べれば真実は突き止められるだろうが、それは怖くて俺にはできなかった。

だからすべてを闇に包んで忘れようと考えたのだ。

これは知らないほうがいいことだ。

旅の恥は掻き捨てって言葉を考えた人は天才だな。

まったくもって同感するよ。

さて、騒がしい夜が明けて爽やかな朝がやってきたから俺はベッドから這い出て一階の酒場に向かった。

腹が減ったわ。

兎に角朝食だな。

「マスター、朝食と水とブラジャーとパンティーをくれ」

「えっ!?」

店のマスターが目を丸くして俺を見ていた。

んん?

何か俺は変なことを言ったかな?

「どうしたの、マスター?」

「飯と水は分かるが、次の注文は使用済みか、それとも新品か?」

「何を言ってるんだ、マスター?」

「いや、何を言ってるって、なんだよ?」

「それはこっちの台詞だ……」

「わけが分からんな。兎に角飯をくれ」

「あ、ああ……」

俺は酒場で朝食を食べ終わると冒険者用の掲示板を見た。

「デスナイトバーサーカー討伐かぁ……」

掲示板のド真ん中には、デカデカとデスナイトバーサーカー討伐の依頼書が貼られていた。

ところでデスナイトバーサーカーってなんだよ。

名前が長過ぎじゃあね?

でも、長い名前なだけあって、凶悪差が分かるぞ、マジでさ。

兎に角だ。

どうやら今一番の注目な依頼なのだろう。

これだけデカデカと貼られているのに討伐が叶わないってことは、既に挑んで失敗している冒険者が出ているのだろうさ。

これは手強そうな依頼っぽいな。

でも、報酬は無しか。

ただし遺跡内で見つけた物はすべて冒険者の物か。

これは博打性が高いな。

それでも──。

こりゃ~、ワクワクするぞ!

俺は店のマスターに訊いて見た。

「なあ、マスター。このデスナイトバーサーカーってどんな依頼だい?」

マスターはグラスを磨きながら答えてくれた。

「鉱山を掘っていたら埋もれた遺跡エリアが出てきてな。そこにアンデットがわんさかと湧いててな。その遺跡のボスがデスナイトバーサーカーって言われているんだ」

「もう既に冒険者が挑んだんだろ?」

「ああ、勿論だ。だが、ザコのスケルトンとかは倒せたが、ボスのデスナイトまでは倒せなかったらしいぞ」

「じゃあ、遺跡に残っているのはデスナイトだけか?」

「それがな、そのデスナイトがザコのスケルトンを無限に産み出すらしいんだ。だから今は遺跡に進む通路を閉鎖して閉じ込めているらしいぞ」

「なるほど、冒険者が入る時だけ開けられるのね」

「もしかして、お前さん一人で挑む積もりかい?」

「ああ、面白そうだから挑む積もりだ」

「そうか、頑張れよ」

あれ、普通俺一人だから止められるか笑われるかのどちらかなんだけどな。

ちょっと訊いてみるか。

「止めたりしないのか?」

「あんたこの町の鉱夫たちを腕相撲で捩じ伏せたんだぞ。そんな怪力の持ち主を止めるかってんだ」

「なるほど……」

そうか~。

俺も怪力って呼ばれる時代がやって来たんだな~。

なんか気付かないうちに、俺も成長したんだねぇ~。

よし、とりあえずデスナイトバーサーカー討伐依頼を受けに行こうかな。

受け付け先は、ランバラルル鉱山組合事務所までか。

「なあ、マスター。この鉱山組合事務所って、どこにあるん?」

「大通りを真っ直ぐ進んだ先に、青い旗が立ってる建物が在るから、そこが組合の事務所だ」

「サンキュー」

俺はすぐさま酒場を飛び出して組合事務所を目指した。

青い旗を発見!

「ここか、場所はすぐに分かったぞ」

俺は組合事務所に入ると受け付けのカウンターで痩せた爺さんに説明を受ける。

「はいはい、それじゃあここに名前を記入してくださいね。名前、書けますか?」

「名前だけでいいのか?」

「はい、結構です」

「それではいつから遺跡に入ります?」

「すぐにだ」

「分かりました。それじゃあ私がご案内いたします。ちょっと鍵を取ってきますね」

そう言って痩せた爺さんは奥に鍵を取りに行った。

しかしなかなか帰ってこない。

すると事務所の奥から痩せた爺さんの声が聴こえて来る。

「なあ、婆さんや、遺跡の鍵を知らないかね~?」

「昨日爺さんがトイレに持って行ったじゃあないですか~」

「そうだったかの~」

なんでトイレに?

「あれ~、婆さんや、トイレに鍵が無いぞ~」

「ああ、ごめんなさい、爺さん。鍵は私に刺さってましたわ~」

なんで!?

婆さんのどこに刺さってるんですか!?

「どこだい、婆さん?」

「ここですよ~」

「じゃあ婆さん、外すぞ~」

「はいはい」

「よっと」

「あんっ」

えっ、なに今の声は!?

そして痩せた爺さんが奥から帰って来る。

「すみません、お待たせしました」

「あ、ああ……」

「じゃあ、私が遺跡の入り口までご案内いたしますね」

「た、たのみます……」

そして俺は痩せた爺さんに案内されて遺跡の入り口まで移動した。

まだ鉱夫が働いているトンネルの中を進む。

するとすれ違う鉱夫が痩せた爺さんに話し掛けて来た。

「よう、ジム爺さん、婆さんとやってるかい?」

「ああ、昨日もこれで楽しんだぞい」

言いながら手に有る鍵をグリグリと回す爺さん。

何をやってますか、このジジイは!?

備品を使うなよ!!

そして俺たちはトンネルを進んで閉鎖された扉の前に到着する。

「この先に進むとデスナイトバーサーカーの遺跡が有ります。もしも途中で諦めて帰って来るんなら、扉の覗き窓から私に知らせてくださいな」

「ずっとここに居るのか?」

「夜までここにいますよ。ただし帰って来なければ死んだと見なして放置しますがね」

「それは酷いな」

「ですが一日一回は見回りに来ますから、生きていたら扉の前でお待ちしててください」

「ああ、分かったよ」

「では、お気を付けてお入りくださいませ」

そう言うと痩せた爺さんは木製の扉をゆっくりと開けた。

扉の向こうに鉱山の闇が広がっている。

俺はショートソードにマジックトーチを掛けると一人で先に進んだ。

ここからはアンデットの巣窟だ。

倒すべき相手はデスナイトバーサーカーである。

そいつを倒せばすべての決着が付くはずだ。

いざ、出陣だぜ!!


【つづく】
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