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第222話【キノコの森】

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サザータイムズの町を出た俺は、とある旅商人のキャラバンと一緒に旅をしていた。

彼らと一緒に旅をしているのには、なんの意味も無い。

ただ向かう方向が一緒だったからだ。

だが、ここでお別れだ。

俺は二股に別れる街道で旅商人のキャラバンと別れることにした。

別れ際にキャラバンのオヤジが、心配そうに言って来る。

「あんた、本当に、そっちに進むのかい……?」

「ああ、行くよ」

「悪いことは言わねえから、俺らとこっちの道を進めってば。近道なんてしても、死んだらもともこもないぞ……」

「いや、近道が目的じゃあないんだ」

「じゃあ、なんでそんな危険な道を選ぶんだい?」

「ちょっとしたケジメでね」

「ケジメ……?」

「あんたらこそ、気を付けて旅をするんだぞ。じゃあな~」

俺はキャラバンと別れて別の道を進む。

次の町はランバラルルって言う青い巨星っぽい名前の町なのだが、こちらの道のほうが近道らしい。

だが、危険な森を通らなければならないために、一般の旅人たちは通らない道だ。

皆が森を迂回するようにランバラルルの町を目指す。

何故にこの森が危険かって言うと、マタンゴって言うモンスターの巣窟だからだ。

マタンゴって言うモンスターはキノコの化け物である。

本体は動きも噛みつきもしないキノコなのだが、寄生している動物や人間を操り、更なる寄生先を襲って確保するって言うたちの悪いモンスターらしい。

マタンゴはその森から出ることはないから、伝染病のように極度な広がりは見せないが、マタンゴに寄生されたら終わりだと言われている。

そんな危険なモンスターが住んでいる森に俺は向かっていた。

何故に俺がその森に入るかって言ったら、さっきも言ったが近道が目的ではない。

そう、ケジメである。

ケジメとは、魔女が俺の心臓に植え付けた探知指輪を、そのマタンゴに嵌めてやるためだった。

どうせ捨てる要らない指輪だ。

ならば少しでも嫌がらせをしてやろうと考えた結果、この結論に達したわけだ。

もしも指輪を探知して、俺の動きを魔女が観察しているのならば、動き回るマタンゴを一生追ってやがれって感じだわ。

超ザマーって、感じですがな!!

くっくっくっ、我ながらナイスな作戦である。

そんなわけで俺はマタンゴが居る森にやって来たんだが、森の入り口で、早くも後悔し始めた。

「なに、この森は……」

森だと聞いてたから、木々に囲まれた普通の森だと思っていたが、木々なんて一本も生えていない。

生えているのはキノコばかりだ。

しかも大きく高くて太いキノコだ。

大木のようにキノコが沢山聳えている。

その高さは10メートルは有るだろう。

まさにキノコの森だ……。

しかも、小さな様々な種類のキノコも生えている。

それが毒々しくてキモイのだ。

最低最悪のビジュアルですわん……。

なんか細菌だらけのゴミ屋敷を想像する、温泉マークの部屋ですがな……。

ちょっとネチョネチョしてるし、キノコが粉吹いて空気が淀んでいるしさ……。

まさに腐海の森ですわ~……。

この森に入ったら、 マタンゴに襲われなくっても肺炎で死んじゃうんじゃあねえの?

マジでそんな感じだった。

入るの止めよっかな……。

いや、これだけ酷い場所なんだ!

探知指輪を捨てるのに最適なんじゃあないのか!?

ここに捨てれば魔女が探しに来たさいに、最高の嫌がらせになるんじゃあないんかい!?

よし、頑張ろう!!

俺は他人の嫌がることには実力を発揮するタイプの人間なんだから、絶対に成功するはずだ!!

絶対にマタンゴを見つけ出して、探知指輪を嵌めてやるぞ!!

そう意気込んで俺はキノコの森に入って行った。

「うわぁ~~、キモーーイ……」

うーーむ……。

菌類がこれほどにキモイとは思わなかったぜ……。

てか、俺の足の裏から糸引いてない……?

なんでそんなにネチョネチョしてるんですか、この森は……。

早くマタンゴを見つけないと成らんな。

でないと俺の精神がもたんぞ……。

てか、動物なんて居ないじゃんか……。

鳥すら見当たらないぞ。

居るのは虫だけだ。

マタンゴって、動物とかに寄生するんだろ?

その寄生先が森に居ないのに、どうやって寄生するんだよ?

あー、分かったぞ。

この森に、外から迷い込んで来るんだな。

今の俺みたいに、勝手に入って来た動物とかに寄生するんだ~。

って、ことは?

今の俺はハントされるターゲットってことか?

あれ、なんだ?

今、森の中で何かが動いたぞ。

でも俺にはキノコしか見えない。

何か居るのか?

「よし、確かめよう……」

俺は異次元宝物庫からロングソード+2を取り出して警戒した。

左腕にはショートソード+1を持つ。

以前覚えたパッシブ・ツーハンドマンを使ってみたいのだ。

二刀流って格好いいじゃんか。

早くマスタリーにまで上げて、ガンガンと格好を付けたいのだ。

さてと──。

「うーーむ……」

俺は何かが動いたと思われた場所に行って見たが、何も見当たらない。

周りを見回したがキノコの塊ばかりだ。

俺の気のせいだったかな?

「んん?」

なんだ、このキノコの塊は?

なんか太い枝の先から、何かが出てないか?

俺はその何かに顔を近づけて良く観察した。

鉄だな……。

細身のダガーの先っぽかな?

なんで木の枝先からダガーが突き出てるんだ?

「うぬっ!!」

突然その枝が動いた。

ダガーの先で俺を突いて来るが、スピードは遅かった。

俺は難無くその突きを躱して後退した。

「こいつがマタンゴか~」

俺が見ていたキノコの塊が、ノソノソと動き出す。

それは複数のキノコの塊だったが、動き出して完全に理解した。

それは完璧に人型だ。

そして手と思われる部分にはダガーを持っている。

しかもそのダガーで突いて来たってことは、こいつらマタンゴは武器を使う知能が有るってことだ。

もしかしたら、寄生された人間の知能が残ってるのかな?

「まあ、細かいことはどうでもいいか。さっさとこいつに指輪を埋め込んで森を出ようかな」

しかし、話はそんなに甘くなかった。

周りの多くの塊が、ノソノソと動き出す。

周りの何気ないキノコの景色が全てマタンゴだった。

その数は、四十体から五十体は居そうである。

後悔先に建たずだわ~……。

俺はマタンゴの群れの中に入っていたようだ。

「あらら~、俺、囲まれてますか……?」

振り返れば来た道もマタンゴに塞がれていた。

「うん、逃げ道も塞がれたな……」


【つづく】
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