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第214話【大蜥蜴のトレイン】

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俺はパンダの剥製とアキレスにニケツして、サザータイムズの町に向かって全力で疾走していた。

流石のアキレスも人一人と剥製一体を同時に背負って走っているせいか、いつもよりスピードが落ちている。

それも原因なのだろう。

しかし俺には、止まってパンダの剥製を異次元宝物庫にしまっている暇がなかった。

何せ久々のパターンであるからだ。

全力疾走するアキレスの後ろを、ジャイアントリザードの群れが追っかけて来ているからだった。

「何故やねん!?」

理由は分からない。

何故に俺が大量のジャイアントリザードに追い掛けられているのかは不明だが、追い掛けられているのは確かである。

その数は十匹や二十匹ではない。

たぶんだが、百匹は居るだろう。

そう、いま俺は、その百匹のジャイアントリザードに追いかけられながらサザータイムズを目指してアキレスを走らせていたのだ。

今回のトレインはジャイアントリザードである。

そして、もう少しでサザータイムズに到着するだろう。

頼む、アキレス!!

サザータイムズまでもってくれ!!

突然アキレス腱とか切れるなよ!!

ここでアキレスが潰れたら、俺一人でジャイアントリザード百匹を相手にせにゃならんのだからな!!

てかよ!!

ジャイアントリザードってワニみたいなサイズなのに、足が速くね!?

足が速すぎだろ!!

そもそもなんで蜥蜴風情が魔法の神馬のアキレス様と同じ速さで走れるのさ!?

インチキじゃあね!?

爬虫類が馬類と同じ速さで走るなよ!!

あ、サザータイムズの防壁が見えて来ましたぞ!!

あそこに飛び込めば、めでたくゴールですがな!!

でも、昔のパターンだと、まずは大量の弓矢が飛んで来るんだよね!!

さて、俺は異次元宝物庫からシルバーシールドを取り出してうでに到着した。

さあ、来いや!!

ほら来たぞ!!

防壁の上から矢が大量に飛んで来ましたよ!!

俺は盾を頭に添えて身を守った。

盾に矢が当たる音が何度か聞こえたが、その他にも後方のジャイアントリザードたちが矢に射ぬかれてバタバタと脱落する音も聞こえて来た。

くっくっくっ、これも経験値の差だな。

何度も同じパターンを体験してるから対策もバッチリだぜ!!

すると後ろにニケツしているパンダの剥製が俺の肩を叩いてきた。

「ん、なに? どうしたの?」

俺が振り返るとパンダの片目に矢が刺さっていた。

「パァーーンーーダァーーがーー!!」

いやいや、どうせこいつはポンコツだ。

ただで貰った子だ。

矢が一本刺さったぐらい……。

あ、そうだ。

次のパターンはファイアーボールが複数飛んで来るんだっけな。

俺は対魔法防御も耐火防御も万全だけど……。

あー、飛んで来たわ……。

ファイアーボールがヒュンヒュンと飛んで来たわ~……。

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16発かぁー……。

あの防壁の上には、そんなに魔法使いがスタンバって居るんですかぁ~……。

多くね!!!

そして俺の周りで飛来して来たファイアーボールが爆発を繰り返した。

十六発分のファイヤーボールがドッカンドッカンと爆発すると、後方のジャイアントリザードが数を減らす。

でも、まだまだ相当の数は残って居そうだな。

するとパンダの剥製が俺の肩をトントンと叩いた。

「なに……?」

俺が振り返ると顔半分が焼け焦げたパンダの無惨な姿があった。

「こぉーーげぇーーてぇーーるーー!!」

せっかく貰ったパンダの剥製が!!

壊れているのは中身だけだったのに!!

まあ、しゃあないか……。

とりあえずサザータイムズの正門まで到着できそうだ。

そして正門の中からパイクとラージシールドを持った兵士たちが沢山出て来て横一列に並んだ。

やはりこのパターンだよね!!

そして門は閉まるんでしょう!?

あー、やっぱり閉まりましたがな!!

しゃーないか、兵士たちに混ざって俺も戦うか!!

俺はアキレスを止めることなく突っ走った。

そしてアキレスが兵士たちの頭を飛び越える。

すると俺はアキレスから飛び降りて異次元宝物庫からロングソード+2を取り出して盾と一緒に構えた。

「アキレス、パンダの剥製を頼んだぞ!!」

アキレスは「ヒヒィ~ン!!」と唸るとパンダの剥製を背負ったまま走りさって行った。

これでパンダの剥製は安心だろう。

それから俺は、兵士に声を掛けた。

「俺も戦うぜ!!」

「当たり前だろ、ボケ!!」

あー、怒られたわ~……。

確かに当たり前だよね、うん……。

だって俺がジャイアントリザードを引き連れて来たんだもの……。

そして、ジャイアントリザードの群れが横一列に並んだ兵士たちの盾に激突した。

まるで高波が堤防に当たって砕けるような感じだった。

それを合図にジャイアントリザードたちと人間たちとの団体戦が始まった。

「うりゃぁあああ!!」

「キィィイイイイ!!」

サザータイムズの正門前が死闘のステージと化す。

兵士たちが必死に戦う中で俺も経験値を稼ぐために戦った。

そして俺は多くのジャイアントリザードを叩きのめした。

おそらく一緒に戦った戦士の中で一番ジャイアントリザードを倒しただろう。

レベルも25に上がった。

正門前には多くのジャイアントリザードの死体が横たわる中で、俺は一緒に戦った兵士たちと勝利を祝ってハイタッチを繰り返した。

そして───。

「じゃあ、逮捕するぞ」

「はい……」

やっぱり俺は捕まった。

俺は投獄される……。

まあ、お約束のパターンだよね。

後々聞いた話なのだが、俺が牢屋にぶちこまれている間、サザータイムズの町では黒馬に乗ったパンダの騎士が目撃されていたとか……。


【つづく】
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