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第213話【今回の結末】

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俺はボロ屋の中で正座するミノタウロス(雌)と謎の男と向かい合って座っていた。

俺は胡座をかいて茣蓙の上に座って居たが、ミノタウロス(雌)と謎の男は地べたに正座している。

なんだかとても反省している感は伝わって来る。

ミノタウロス(雌)は爆乳を隠すために新しい服を着ていた。

「で、あんたは誰だ?」

俺が謎の男に問う。

中年で粗末な服を着ている男はオズオズと答えた。

「私の名前はバンリと申します……」

あー、こいつがアンリさんの兄のバンリさんか~。

生きとったんね。

「で、こちらの彼女は?」

俺がミノタウロス(雌)を見ながら言うとバンリさんが答える。

「妻のモーです」

妻!?

結婚しているんかい!?

てか、結婚式とか上げたのかな?

それに役所に結婚の届け出とかしたのかな?

してないなら、ただの事実婚なのかな?

てかさ、牛と結婚とか認められてるのかよ?

ミノス王国の奥さんは、牛と浮気してミノタウロスくんを孕んだんだけど……。

それを考えれば人間と牛との間にも子供は設けられるから、結婚も有りなのかな?

てか、名前がモーって安直すぎね?

「疑問を思われるのは、良く分かります……」

考え込んでいる俺を察してバンリが話し始める。

「私とモーちゃんが出会ったのは、半年ぐらい前の話です……」

モーちゃんだって。

なに、ちゃん付けですか、やたらとラブラブだな。

「その当時の私は妹のアンリを嫁に出して、生きる目的を見失っていました。ただただ、日々をダラダラと生きていたのです……」

うん、それは知ってる。

お前が極度のシスコンなのも知っていたぞ。

「そんな時です。彼女と山で出会ったのは!」

バンリさんは、急に話す言葉に力を込め始める。

「最初は私も彼女を見て驚きました!」

それが何故?

「しかし、私は見てしまったんです!」

だから、何を?

「彼女は池で水浴びをしていたのですが、その時に彼女の裸体を見て私は驚きました!!」

もしかして……。

「彼女の豊満な胸を見てしまったんです!!」

あー、やっぱりー……。

「その豊満な胸は、もう人の娘たちを越える大きさで、私は一目で虜に成りました!!」

これは新種の変態さんの登場だな。

爆乳好きを越える本物の牛乳爆乳うしちちばくにゅう好きだもんな……。

「私はその場で勇気を出して告白しました!!」

その場かよ、勇気が有るね。

普通なら食われたりするぞ、たぶん……。

「でも、彼女は私の告白を拒みました……」

どう拒んだか見てみたいわ。

そもそも言葉が通じるのか?

「しかし彼女の牛のような豊満で豊かな胸を見てしまった私は、一目惚れ以上の虜でしたからね。諦めきれませんでした……」

てか、頭は牛だよ。

まあ、体は人型だけどさ。

それを比較してみれば、確かに爆乳は魅力的だな。

いやいや、言ってて俺も意味分からんわ!!

「拒まれた私は、それでも諦めきれずに彼女を水辺で力任せに押し倒したのです!!」

すげー力だな!!

煩悩が雄としてのリミッターを解除しちゃったのかな!?

「私は彼女の合意が無いまま、彼女を抱いたのです!!」

それは世間ではレ●プって呼びますが!?

野生の世界じゃなければ犯罪だよ!!

かなりの女性たちが人権問題だって騒ぐ案件だよ!!

「それ以来私たちは一緒に暮らすように成りました」

すげー話が飛んだな!!

新婚生活がスタートしちゃったよ!!

てかよ、ミノタウロス(雌)も合意しちゃったの!?

そんなにバンリさんは凄い逸物だったのかな!?

「でも、サムスンの村では彼女と一緒に過ごせません。何せ彼女はミノタウロスですから……」

あー、良かった。

彼女がミノタウロス(雌)だって自覚は残ってたんだ……。

「そこで私はモーちゃんを連れて山に籠りました。二人でこの家を建て、私が畑を耕し、モーちゃんがジャイアントリザードを狩るなどして生活をたてていました……」

「そこに俺が現れたと」

「はい……。モーちゃんも武装しているあなたを見て、身の危険を感じたのでしょう。思わず襲いかかったんだと思います……」

まあ、しゃあないよね。

元々はモンスターなんだもの。

「んー、困ったな……」

俺は両腕を組んで考え込んだ。

「どうなさいました……?」

「だって俺は、モーちゃんを討伐するように依頼されて来たんだよ。それが人妻になって、イチャラブで幸せに暮らしているとなると、どうしたらいいか分からんわ」

俺が人でなしの鬼畜野郎なら、問答無用で二人をぶっ殺してモーちゃんの首だけを持ち帰ればOKなんだけど、ほら、俺ってば善人じゃんか、流石にそれは出来ないよね。

「では、私たち夫婦がもっと山奥に入って暮らします。もう二度と人里には近付きません……」

「いやいや、それだと駄目なんだよね。だってモーちゃんを倒した証拠として、彼女の首を持ち帰らないとならないからさ」

牛の家畜が居れば、その首を持ち帰って騙せるかも知れないが、そんな小細工が通じるかな?

そもそもここに牛の家畜なんて居ないしさ。

サムスン村や、道中のバンク村でも牛なんて見なかったぞ。

そう言えばヒュンダイ村でも牛を見なかったな。

この辺は牛を飼ってないのかな?

じゃあ、転送絨毯でソドムタウンに帰って牛の頭だけを調達すれば……。

たぶん市場で買えるだろう。

いや、まて、今は転送絨毯は使えないか……。

俺が悩んでいると、バンリさんが何かを決意した双眸で言い出した。

「分かりました!」

えっ、どうしたの変態さん?

何が分かったんだ?

「私は逃げません。モーちゃんを連れて村に下ります。私とモーちゃんの関係を村人たちに説明して認めて貰います!!」

「お、おう……」

引いて駄目なら押してみなって感じですか……?

発想の転換が激しいな……。

「だ、大丈夫なの、それで……?」

「愛が有れば大丈夫です!!」

あー、完全に盲目パターンだわ……。

こりゃあアカンな……。

「分かった、俺も力を貸すよ。まずは依頼人のアンリさんに手紙を書こうよ。彼女に状況を説明したほうがいいかな」

「えっ、妹が依頼人なの?」

「あれ、言わなかったっけ?」

「はい……」

「まあ、向こうはあんたが行方不明になってると思っているから、あんたが健在だと知っただけで安心するんじゃあないかな。それに妻を迎えているって知ったらダブルでハッピーじゃあないの?」

「なるほど!!」

こうして俺がバンリさんの手紙をアンリさんに届けると話は丸く収まった。

アンリさんが周辺の村に兄のことを知らせて、兄嫁のモーちゃんのことも理解して貰えるよう努力すると言ったのだ。

アンリさん的には、ずっと自分を犠牲にして妹であるアンリさんを育ててくれた兄に報いたかったのだろう。

例え兄がモンスターと結ばれたと言え、幸せに新婚生活を送れるように尽くしたかったようだ。

そして、俺は───。

「確かに依頼料は頂きました」

俺はヒュンダイ村の村長の家でアンリさんから15000Gを受け取ると、客間の隅に置かれた壊れているパンダの剥製を見詰めた。

「なあ、アンリさん」

「なんでしょうか?」

「あの壊れたパンダゴーレムを俺に譲ってくれないか?」

「あれをですか?」

「どうせ壊れてるんだろ。それとも修理するのか?」

「修理するにはゴモラタウンまで運ばないとならないんですよ。そうすると輸送代と修理費で相当かかると言われています」

「じゃあ、安値で俺に売ってくれないか?」

「それでは今回のお礼に持って帰ってくれませんか」

「ただでいいの?」

「正直言いますと、粗大ゴミとして捨てようかと思ってたんですよ」

「やったー、サンキュー!!」

俺は喜んでパンダの剥製をおんぶした。

そして村長の家を出る。

本当は異次元宝物庫で簡単に持ち運べるのだが、嬉しさから背負いたかったのだ。

このままアキレスにパンダとニケツして帰ろう。

俺はパンダと一緒にサザータイムズの町に帰った。

道中何度かパンダに首を締められながら……。


【つづく】
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