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第205話【ロード・オブ・ザ・ピット】

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『ぐぅぅぁぁがあああああががががが!!!!!』

ひぃーーー!!!

なに、こいつ!?

頭は黒山羊で上半身は裸の男性。

下半身は獣で背中に蝙蝠の羽が生えてますがな。

恥ずかしく無いのかチ◯コ丸出しですよ。

なんか額に魔方陣が光ってるしさ。

目なんてギョロリとしてて血走ってますよ。

汚ならしい涎を垂らしながら吠えてるしさ。

やべーよ、こえーよ!!

「はいはい、落ち着いてください。ロード・オブ・ザ・ピットさま~♡」

『ぐぅぅぁぁがあああああががががが!!!!!』

魔女が宥めているけど、ぜんぜん落ち着かないじゃんか!?

マジでバーサーカーだよ!!

『ぐぅぅぁぁがあああああががががが!!!!!』

「落ち着けよ!!」

バシンって尻を蹴った!?

魔女が悪魔を蹴ったよ!?

主じゃあねえのかよ!?

『あ、ああ、済まない……。ちょっと調子に乗りすぎました……』

「分かって貰えればよろしいですわ♡」

あら、落ち着いた……?

悪魔さんは落ち着きましたか?

『でえ、今日はなんで呼んだの。俺はもう寝るところだったんだけど?』

「夜分ですが済みませんでした」

悪魔って早寝なんだな……。

「本日お呼びになったのは、こちらの贄を見てもらいたく、お呼びしました」

魔女は悪魔に対して片膝を付いて礼儀を正していた。

悪魔は吊るされた四体の死体を眺めながら言う。

『あー、もうさー、晩御飯は食べたんだよね~。生け贄だったら明日の朝御飯に貰って帰るよ』

「いえ、そちらでは御座いません。こちらの生きた贄で御座います」

『んん~?』

寝ている俺に背を向けて居た悪魔が踵を返した。

俺を野獣の眼差しで見下ろしている。

『えっ、こいつがどうしたん?』

「この贄の奥をご覧くださいませ」

『んん~~?』

悪魔は黒山羊の顔面を俺の顔に近付けた。

獣の眼で俺の双眸を覗き込む。

うわ、臭っ!!

すげー、獣臭いぞ!!

『ああ~~、これはこれは……』

悪魔は黒山羊の頭を放すと、顎を撫でながら言う。

『キミ、面白い者を見付けたね~』

もしかして、俺が異世界転生者だってバレたのかな?

「私も戦うまで気が付きませんでした。ですが、これは貴重なサンプルだと思います」

『キミならどうする?』

「しばらく泳がせるのはどうでしょう?」

『遊ばせて置いて大丈夫かい?』

「おそらく収穫はまだまだ先の話だと推測できます」

『時期は?』

「早くても、十数年。遅ければ数十年かと」

『ん~、時間は少ないね』

「人間の時間なら速いほうです」

なんだろう?

わけの分からん話をしてますよ?

俺は置いてきぼりじゃんか……。

よし、勇気を出して訊いてみるかな。

「あのー、ちょっといいですか?」

『だぁまぁれぇぇええ、いまぁはぁ、はぁなぁしぃいちゅううだぁああ、食うぞ!!』

「ごめんなさい!!!」

うわっ!!

メッチャ怒られたぞ!?

そして魔女が俺の顔面に包丁を近付けながら言う。

「今は黙ってらしてね。私と主様との相談中なの♡」

包丁の先っぽが、俺の眼球の寸前で揺れていた。

こわいよ、こいつらは!?

なんか和やかに話してるから行けるかなって思ったけど、俺が話し掛けたら態度を急変させるんだもの。

マジでキチぴーだわ……。

『えーと……。どこまで話したっけ?』

「この四体の生け贄は朝御飯に持ち帰るってところじゃあありませんでしたっけ?」

だいぶ戻ったな……。

またリピートパターンか……?

『いやいや、違うだろ。確か、次の飲み会はどこでやるかじゃあなかったっけ?』

「それは昨日の話ですよ、やだな~♡」

マジでこいつら何を話してるんだ?

さっぱり分からんは……。

『あっ、そうだ。こいつだよ』

悪魔が俺を指差した。

やっと話が元に戻るのかな。

「ああ、この人の話ですね。そうそう、この人って、けっこう私の好みなんですよね~♡」

おっと、逸れたぞ……。

『ええ、マジマジ!? どの辺がいいわけ~?』

「私って、そんなに面食いじゃあないですから、素朴なところって言いますか、平凡ってところが……。ぽっ♡」

何が、ぽっ♡だよ!!

無いから、俺的には絶対に無いからな!!

そもそも、オカルト満載なかっこうしながらガールズトークを繰り広げてんじゃあねーぞ!!

『あー、あんた昔っから、平均点が低い子がタイプだったもんね~』

「褒めないでくださいよ~♡」

『褒めてなんてないぞ……』

うわー、ツッコミてー!!

メッチャツッコミてーー!!

それに俺ってそんなに平均点が低いのか!?

嘘つけや!!

『じゃあさ~、あなたがこの子を飼うの?』

「それは無理です。私のマンションはペット禁止だもん……」

マンションって、この世界に在るんかい!?

『それならさ~、ボーナスが出たばっかりなんだから、ペット有りのマンションに引っ越して飼っちゃえば?』

ボーナスとかもあるの!?

「でも、私にちゃんと飼えるかしら?」

えっ、なに??

俺、飼われるの??

ペットになるの??

それって女の子と同棲生活を過ごすの??

マジで!?

初めての同棲が可愛いけどサイデレとですか!?

悪くないけど、こえーよ!!

んん?

それって紐かな?

『じゃあ、飼えないならどうするの?』

「ビーコンを付けて放し飼いかな~」

『あー、それがいいんじゃあない。餌も与えなくてもいいし、散歩に連れてかなくってもいいからさ』

 「うん、じゃあそうします♡」

魔女は明るく答えると無空から指輪を取り出した。

今のは異次元宝物庫だな。

この魔女も異次元宝物庫を持ってやがるのか……。

『そんな旧式の探知機しか無いの?』

「まさかこんなことになるなんて考えてもいなかったから、ビーコンの予備がこれしか無いんですよ」

指輪だな。

あれが探知機だかビーコンだと言うのなら、俺の指に嵌めるのか。

『ちゃんと心臓に嵌められるの?』

「たぶん出来ますよ♡」

ちょーーと待て!!

今、サラリと心臓に嵌めるとか言いましたよね!!

マジですか!?

指輪なんだから指でいいじゃんか!!

「じゃあ、始めますね~♡」

魔女は俺の胸の上に指輪を置いた。

「いざ、投入~♡」

指輪は俺の胸の中に落ちるように入って行った。

俺に痛みは無い。

だが、指輪が体に入ったのは感じられた。

そして、すぐに指輪が心臓に到達して、動脈の一つに引っ掛かる。

そう俺には感じられた。

『上手く行ったみたいだね』

「はい♡」

『じゃあ、あとの監理は頼むわよ』

「はい、畏まりました。ロード・オブ・ザ・ピットさま!」

『さー、寝ようかな~。明日は朝から忙しいのよね~』

そう言うと悪魔は出て来た血黙りの中に飛び込んだ。

そして消える。

さて、魔女と二人っきりになったよ。

これからどうなるの?

「さ~て」

魔女が黒山羊のマスクを外した。

黒山羊の下からポニーテールの美少女が現れる。

ポニーテールの美少女は柔らかく微笑みながらしゃがみ込むと俺に言った。

「あなたの命はしばらく生かして置いてあげるわ。だから、もっと強くおなりなさい♡」

わけが分からん……。

それよりもだ。

俺の眼前でしゃがみ込んだ彼女のパンツが見えてますがな!!

白だ!!

純白だ!!

ぐっぁだたただだだだだただっだだだあああ!!!!!

心臓がぁぁぁあああああ!!!

マジで怖い魔女だけどパンツに罪は無いぞぉぉおおお!!!

純白ならば俺の呪いが発動するよねぇぇええええ!!!

落ち着けよ!!!

でも、パンツから目が放せないィイィイィイ!!!

てか、魔女さんよ、パンツを見られているのに気付けよな!!!

「あら、あなたは女神にペナルティーを貰っているのね♡」

なにぃ!?

そんなことまで分かるのか!!

そこまで分かってるなら、パンツが見られているのぐらい気付けよな!!

こっちは苦しくったって、目が放せないんだからよぉぉおおお!!!

「じゃあ、私も帰るわね。あっ、ロード・オブ・ザ・ピットさまったら、朝食を持って帰らなかったわ。四体も私一人じゃあ食べれないわよ」

魔女は立ち上がると四体の死体を眺めながらぶつくさ言っている。

てか、俺の頭の真横で立つなよな!!

まだ、パンツが見えてますがな!!

もうスカートの中を下から覗き放題ですわ!!!

もう、心臓が爆発するぅぅううう!!!

マジで拷問だぁぁああああがかががき!!!

「よし、じゃあ一体だけ持って帰るわ。あとの死体はあなたにあげるから、好きにしていいわよ♡」

魔女は俺の側から離れると、吊るされていた死体の一つを下ろして異次元宝物庫に入れる。

あれ、異次元宝物庫内なら死体は腐らないはずだろ?

四体全部持ってかないの?

もしかして、魔女の異次元宝物庫は俺のと機能が違うのかな。

時間停止機能が無いんだね。

「じゃあね、また会いましょう♡」

そう言うと魔女は納屋を出て行った。

夜の闇に姿を消した。

「ふぅ~~……」

とりあえず命拾いしたな……。


【つづく】
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