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第189話【ダンジョンハウス】
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意識を取り戻したダグラス・ウィンチェスターは、首を押さえながらグリグリと回していた。
ジャンヌからヒールを貰ったが、首筋に違和感が残っているのだろう。
浮かせのアッパーから始まって、トータル12発も打ち込んでやったあとに、頭から地面に叩き付けてやったんだもんな。
まあ、無理もないか。
さて───。
「これで俺の完全勝利でいいよな!」
「ああ、お前さんの実力を認めてやるわい……」
「二人とも、もう戦わないでくださいね」
俺とダグラスはジャンヌに注意されたが返事を返さなかった。
この糞爺は、隙有れば仕掛けて来る気だろう。
だから警戒は怠れないな。
呆れ顔のジャンヌが話を戻した。
「ダグラス様、こちらのアスラン殿がメガロ・ガイスト様の討伐に挑みます」
「それは構わん。あの糞爺はワシの可愛がっていた息子や娘を殺したんだ。ただでは済まさんわい」
この糞爺は、飼い猫を息子や娘だと思ってやがるんだな。
めでたい頭をしてやがるぜ。
まあ、いいさ。
俺は俺でやるべきことをやらねばならない。
まずは質問だ。
「なあ、今までの冒険者はメガロを何故に倒せなかったんだ?」
地面に胡座をかいたままのダグラスが答えた。
「冒険者が弱くて、メガロが強かっただけだ。そもそも今までの冒険者の半分は、ワシに負けてたからの」
冒険者の半分は、この糞爺がホフっていたんかい。
「それとだ。何故にメガロの霊は、ウィンチェスター家に籠ったあんたを見つけられないんだ。そんなに迷路は複雑なのか?」
そう、それが一番の疑問だ。
壁ぬけができる霊体のメガロが、何故にウィンチェスター家の迷路で、悩むのかが分からない。
「なら、お前さんの目で、ワシの家を確かめて見るかい?」
「是非に」
「よし、じゃあこれからワシの家に行くぞ」
「仕事中だろ。いいのかい?」
「あとは弟子どもに任せるから、心配無いだろう」
そう言うとダグラスは、作業中の一人に声を掛ける。
「ヤス、ワシはこれから家に帰る。あとは任せるぞ!」
「へい、棟梁。任せてください!」
元気良く角刈りの一人が答えた。
どうやらダグラスの弟子たちは全員が角刈りのようだ。
おそらく大工は角刈りが決まりなのだろう。
そこでジャンヌが提案する。
「じゃあ私の馬車で向かいましょう」
「ああ、頼むぜ、お嬢さん」
そう言うと立ち上がったダグラスが荷馬車に向かって歩き出した。
俺はダグラスの背後に続く。
すると突然ダグラスが、振り向くことなく後ろ蹴りを繰り出して来た。
「おらっ!!」
「っ!?」
狙いは俺の股間である。
俺の金的を狙ってやがった。
だが、俺は退かずに前に出る。
ダグラスの後ろ蹴りは俺の両足の間を抜けて行く。
そして俺はダグラスの首に背後から組み付いた。
両腕でダグラスの首を締め上げる。
「ぐぅぅ!!」
「スリーパーホールドだぜ!!」
俺にはスキルでスリーパーホールドマスタリーが有るのだ。
↓これである。
【スリーパーホールドマスタリー。このスキルで相手を落とすことが容易くなる】
「ぅぅぅ……う……」
スリーパーホールドでダグラスは瞬時に落ちた。
まさかこのスキルが披露される機会が来るとは思わなかったぜ。
俺は気絶しているダグラスを抱え上げるとジャンヌの荷馬車に乗せた。
「じゃあジャンヌちゃん、ウィンチェスター家に向かおうか」
「は、はい……」
ジャンヌは黙って荷馬車を走らせた。
完全に呆れているな。
そして、しばらくするとダグラスが目を覚ます。
「はっ、ここは!?」
「天国です──」
「ワシは死んだのか!?」
「あなたは死にました」
「何故に死んだのじゃ!?」
「そんなことはどうでもいいでしょう。あなたは転生して異世界に飛ばされるのです」
「異世界転生だと!?」
「そうです。あなたはチート的なスーパー能力を手に入れて、異世界で大暴れするのです」
「ほ、本当か!?」
「ウソに決まってるだろうが、糞爺!!」
俺はダグラスの目をVの字で突いた。
「うがぁぁあああ!!!」
「ほら、お前の家に着いたぞ」
「ぐぁぁああ、ジャンヌちゃん、この糞餓鬼が私の目を潰しやがった!!」
ダグラスがジャンヌに泣きつこうとしたが、黒猫のジルドレが飛び掛かり糞爺の顔面を引っ掻いた。
「ニィャーー!!」
「ぎぃぁぁあああ!!!」
ダグラスの顔面に深い爪の傷が刻まれる。
その一撃でドバッと血飛沫が飛ぶ。
「顔が! 顔がぁぁああ!!」
流血した顔面を押さえながらダグラスが、地面をゴロゴロと転がりながら叫んでいた。
完全に呆れてしまったジャンヌは、もうヒールを掛けに行かない。
俯いて溜め息を吐いている。
勿論ながら俺もダグラスなんかにヒールは掛けてなんかやらない。
そして、顔面を血だらけにしたダグラスが立ち上がった。
ダグラスは冷静に語り出す。
「ここがワシの屋敷だ。入ってくれたまえ……」
なに、この糞爺?
まだクールキャラを気取りますか。
俺とジャンヌは招かれるまま屋敷に入った。
「なんじゃこりゃあ!!」
屋敷のロビーに入った俺が驚愕を口に出してしまう。
そのロビーには、正面の壁に13枚の扉が並んでいた。
正面の壁だけじゃない。
右の壁にも、左の壁にも、俺が入って来た出入り口の壁にも13枚ずつの扉が並んでいるのだ。
ロビーには、扉しか無いのだ。
「なんで54枚も扉が……」
ダグラスが訂正する。
「13×4=56だ」
更にジャンヌが訂正した。
「52です……」
訂正を無視してダグラスが自慢気に言う。
「ウィンチェスター家のダンジョンハウスにようこそ」
ここが迷路の始まりらしい。
「これから家の中を案内するが、ワシから離れるなよ。一人だと迷路で迷ってしまうからの」
なるほどね。
メガロの幽霊が毎晩迷うだけの仕掛けが、ふんだんに有るのだろう。
幽霊が迷うダンジョンハウスか。
これは面白いな。
【つづく】
ジャンヌからヒールを貰ったが、首筋に違和感が残っているのだろう。
浮かせのアッパーから始まって、トータル12発も打ち込んでやったあとに、頭から地面に叩き付けてやったんだもんな。
まあ、無理もないか。
さて───。
「これで俺の完全勝利でいいよな!」
「ああ、お前さんの実力を認めてやるわい……」
「二人とも、もう戦わないでくださいね」
俺とダグラスはジャンヌに注意されたが返事を返さなかった。
この糞爺は、隙有れば仕掛けて来る気だろう。
だから警戒は怠れないな。
呆れ顔のジャンヌが話を戻した。
「ダグラス様、こちらのアスラン殿がメガロ・ガイスト様の討伐に挑みます」
「それは構わん。あの糞爺はワシの可愛がっていた息子や娘を殺したんだ。ただでは済まさんわい」
この糞爺は、飼い猫を息子や娘だと思ってやがるんだな。
めでたい頭をしてやがるぜ。
まあ、いいさ。
俺は俺でやるべきことをやらねばならない。
まずは質問だ。
「なあ、今までの冒険者はメガロを何故に倒せなかったんだ?」
地面に胡座をかいたままのダグラスが答えた。
「冒険者が弱くて、メガロが強かっただけだ。そもそも今までの冒険者の半分は、ワシに負けてたからの」
冒険者の半分は、この糞爺がホフっていたんかい。
「それとだ。何故にメガロの霊は、ウィンチェスター家に籠ったあんたを見つけられないんだ。そんなに迷路は複雑なのか?」
そう、それが一番の疑問だ。
壁ぬけができる霊体のメガロが、何故にウィンチェスター家の迷路で、悩むのかが分からない。
「なら、お前さんの目で、ワシの家を確かめて見るかい?」
「是非に」
「よし、じゃあこれからワシの家に行くぞ」
「仕事中だろ。いいのかい?」
「あとは弟子どもに任せるから、心配無いだろう」
そう言うとダグラスは、作業中の一人に声を掛ける。
「ヤス、ワシはこれから家に帰る。あとは任せるぞ!」
「へい、棟梁。任せてください!」
元気良く角刈りの一人が答えた。
どうやらダグラスの弟子たちは全員が角刈りのようだ。
おそらく大工は角刈りが決まりなのだろう。
そこでジャンヌが提案する。
「じゃあ私の馬車で向かいましょう」
「ああ、頼むぜ、お嬢さん」
そう言うと立ち上がったダグラスが荷馬車に向かって歩き出した。
俺はダグラスの背後に続く。
すると突然ダグラスが、振り向くことなく後ろ蹴りを繰り出して来た。
「おらっ!!」
「っ!?」
狙いは俺の股間である。
俺の金的を狙ってやがった。
だが、俺は退かずに前に出る。
ダグラスの後ろ蹴りは俺の両足の間を抜けて行く。
そして俺はダグラスの首に背後から組み付いた。
両腕でダグラスの首を締め上げる。
「ぐぅぅ!!」
「スリーパーホールドだぜ!!」
俺にはスキルでスリーパーホールドマスタリーが有るのだ。
↓これである。
【スリーパーホールドマスタリー。このスキルで相手を落とすことが容易くなる】
「ぅぅぅ……う……」
スリーパーホールドでダグラスは瞬時に落ちた。
まさかこのスキルが披露される機会が来るとは思わなかったぜ。
俺は気絶しているダグラスを抱え上げるとジャンヌの荷馬車に乗せた。
「じゃあジャンヌちゃん、ウィンチェスター家に向かおうか」
「は、はい……」
ジャンヌは黙って荷馬車を走らせた。
完全に呆れているな。
そして、しばらくするとダグラスが目を覚ます。
「はっ、ここは!?」
「天国です──」
「ワシは死んだのか!?」
「あなたは死にました」
「何故に死んだのじゃ!?」
「そんなことはどうでもいいでしょう。あなたは転生して異世界に飛ばされるのです」
「異世界転生だと!?」
「そうです。あなたはチート的なスーパー能力を手に入れて、異世界で大暴れするのです」
「ほ、本当か!?」
「ウソに決まってるだろうが、糞爺!!」
俺はダグラスの目をVの字で突いた。
「うがぁぁあああ!!!」
「ほら、お前の家に着いたぞ」
「ぐぁぁああ、ジャンヌちゃん、この糞餓鬼が私の目を潰しやがった!!」
ダグラスがジャンヌに泣きつこうとしたが、黒猫のジルドレが飛び掛かり糞爺の顔面を引っ掻いた。
「ニィャーー!!」
「ぎぃぁぁあああ!!!」
ダグラスの顔面に深い爪の傷が刻まれる。
その一撃でドバッと血飛沫が飛ぶ。
「顔が! 顔がぁぁああ!!」
流血した顔面を押さえながらダグラスが、地面をゴロゴロと転がりながら叫んでいた。
完全に呆れてしまったジャンヌは、もうヒールを掛けに行かない。
俯いて溜め息を吐いている。
勿論ながら俺もダグラスなんかにヒールは掛けてなんかやらない。
そして、顔面を血だらけにしたダグラスが立ち上がった。
ダグラスは冷静に語り出す。
「ここがワシの屋敷だ。入ってくれたまえ……」
なに、この糞爺?
まだクールキャラを気取りますか。
俺とジャンヌは招かれるまま屋敷に入った。
「なんじゃこりゃあ!!」
屋敷のロビーに入った俺が驚愕を口に出してしまう。
そのロビーには、正面の壁に13枚の扉が並んでいた。
正面の壁だけじゃない。
右の壁にも、左の壁にも、俺が入って来た出入り口の壁にも13枚ずつの扉が並んでいるのだ。
ロビーには、扉しか無いのだ。
「なんで54枚も扉が……」
ダグラスが訂正する。
「13×4=56だ」
更にジャンヌが訂正した。
「52です……」
訂正を無視してダグラスが自慢気に言う。
「ウィンチェスター家のダンジョンハウスにようこそ」
ここが迷路の始まりらしい。
「これから家の中を案内するが、ワシから離れるなよ。一人だと迷路で迷ってしまうからの」
なるほどね。
メガロの幽霊が毎晩迷うだけの仕掛けが、ふんだんに有るのだろう。
幽霊が迷うダンジョンハウスか。
これは面白いな。
【つづく】
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