上 下
167 / 604

第167話【常識】

しおりを挟む
名前がエスキモーだと?

なんとも舐めた名前だな。

だが、顔は可愛い……。

スタイルもグッドです……。

金髪ロングで、クビレと臍が見える白いタンクトップにアメリカンなホットパンツだ。

さらに革製のロングブーツは女性用でヒールが高い。

これで恋人募集中の健全な男子だと言うのだから、まさに犯罪レベルのビューティフルなルックスである。

おチンチンが生えてなければ、呪いの存在を忘れて、完全に口説いていたわ。

なんといいますか、俺のストライクゾーンのド真ん中を、針の糸を通すかのように貫いてますわ。

悔しい……。

こいつが男なのが悔しいぜ!!

まあ、いつまでも悔しんでいても仕方がないか。

外見は美女寄りでも、中身は完璧におチンチンランドの従業員なぐらいに同性なんだからな。

それが変わらない以上は、俺が何をしても現実は動かないか。

うし、心を入れ替えて、放火犯を探そう。

それがこの悲しみを乗り越えるためにも良かろうて。

まずは情報収集だ。

てか、それより挨拶からかな。

俺は礼儀を正して挨拶をした。

「どうも、ソロ冒険者のアスランです」

続いてカルフォルニア系美男子も挨拶を返す。

「僕は魔法使いギルド火消し班責任者のエスキモーです。よろしく」

エスキモーはキラリと微笑んだ。

うは、輝く歯が眩しいぜ!!

南国の海岸を照らす太陽のように眩しいじゃあねえか!!

うわーー、一々俺のホルモンを擽るヤツだな!!

なんだか逆にイラついてきたぞ!!

乙女チックな美男子は、これだから嫌いだぜ!!

「ど、どうかしましたか? 何やらイラついて居るようですが……」

「い、いや、すまぬ。昼飯が油っぽかっただけだ……」

「はぁ……?」

やばいな。

不審がられているぞ。

俺は不審者のことを訊きに来たのに、俺が不審がられてどうするんだ。

「ああ、すまないが、訊きたいことがあるんだ」

「なんでしょうか?」

「放火の話なんだが、ここ最近火災があった家を知りたいんだが」

「えー、確か……。あー、憶えてないてすね」

「何か記載した書類とか無いのか?」

「無いですね~」

「なんで……?」

「なんでと言われましても?」

エスキモーは金髪ロン毛を揺らしながら小首を傾げた。

俺がゾディアックさんのほうを見たが、彼も首を傾げている。

あれれれ~?

もしかして??

俺は二人の魔法使いに訊いた。

「誰が、可笑しなことを言ってますか?」

すると二人の魔法使いは、揃って俺を指差した。

「もしかして、この世界には、起きた事件を記載しておく習慣が無いのか?」

「何故にそんなことをしなければならないのかね?」

ゾディアックさんが言うと、エスキモーも頷いていた。

流石は旧世界並みの文化レベルだぜ!

書類を作るって作業は伝言の意味合いだけで、保管の義務はないと言うのか!?

そもそも書類を保管するっていう文化を持っていないのね!

俺が住んでいた現代の常識が、こうもあっさりと通じない異世界ってのも凄いな!

「これだから放火犯も捕まらないわけだ……」

ゾディアックさんが腕を組みながら言う。

「何かアスランくんは、勘違いをしてないか?」

「何を?」

今度は俺が小首を傾げた。

ゾディアックさんが持論を呈する。

「我々魔法使いギルドには逮捕権も捜査権もないんだ。それどころか火災の原因を調べる義務もない。我々は町に火の手が上がったら、被害を広げないように消火するのみだ。そもそもの役目が違う」

エスキモーが続く。

「我々は一回火を消してなんぼの報酬です。それをソドムタウンの君主から貰うだけですからね~」

「なるほどな」

調査の権限は、すべて番兵側なのね。

エスキモーが更に述べる。

「まあ、僕がここ最近で消火作業に関わったのは、七件中五件ですが、それで良ければお教えしますけれど?」

「是非とも頼む。できたら残り二件の場所も知りたいのだが?」

「聞いた話で良ければ」

「それで構わないよ」

エスキモーが満面の笑みで手の平を俺に差し出した。

この美男子野郎が、俺から小銭を稼ぎたいようだな。

よし、くれてやろう!!

俺はエスキモーの手の平に自分の手の平を重ねてコインを召喚した。

チャリチャリン~と、数枚のお金が落ちて来る。

それを見てエスキモーは満足げに微笑むと、ホットパンツのポケットから羊皮紙の切れ端を取り出した。

「もう、七件全部をメモしてありますよ」

そう言いエスキモーは羊皮紙の切れ端をヒラヒラと振った。

この糞美男子野郎がっ!!!

あー、もー、この小悪魔と結婚したいわ!!!


【つづく】
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

元Sランク冒険者のお爺さんの残した遺品は、物凄い宝の詰まった指輪でした。

チョコクッキー
ファンタジー
元Sランク冒険者で貴族の祖父を持つユウマ。彼が死に際の祖父から遺品として頂いた指輪には、実は宝物庫よりも物凄いお宝が隠されていた。ちょうど、10歳になり王国貴族学院に入学し卒業後には、冒険者を目指す予定のユウマ。祖父の遺産もあり、また様々な出会いや出来事から祖父の素晴らしさと偉大さを改めて実感して成長していくハイファンタジー物語。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...