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第126話【幽体離脱】
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俺が目を覚ますと真っ白な世界に立っていた。
足元は白い霧に覆われているが、熱さも寒さも感じられない。
空も大地も白い。
白いだけの世界だった。
まるで天国に居るようだ。
えっ、天国?
ここが天国なのか~?
あれ、前にも来たこと有るような、無いような?
そんな気がするけれど?
まあ、いいか。
とりあえず俺はどうしたら良いのかな?
三途の川が在れば渡れば良いのだけれど、ここにはそれらしき物は見当たらない。
やっぱり川どころか真っ白な雲しか見当たらないぞ。
あれれ、この考えもデジャブ?
あっ、俺、全裸じゃんか?
ち◯こがブラブラの丸出しだな~。
てへぺろ~。
なんだろう、この呑気な気分はさ?
てか、俺、なんでここに居るんだ?
死んだのか?
いやいや、死んだ話は前の前だぞ。
もう、死んではいないはずだ。
じゃあ、なに?
何があったっけ?
確か、目が覚めたら全回復していて、腹が減ってたからチゲ鍋を食べて……。
チゲ鍋?
そこからだ……。
そこから今一ながら思い出せないな?
なんだか怪しくって邪悪な妖精になっていたような……。
あれ、誰か居る?
雲の向こうから、人がやって来るぞ?
一人だな?
なんだろう?
おや~、子供かな?
うん、やっぱり子供だ?
人間の子供が一人で歩いて来るぞ?
何故に子供が、こんな雲しか無い天国に居るんだ?
あれ!?
何か苦しみ出したぞ!!
子供が喉をかきむしりながら苦しんでいる!?
ええっ!?
変わり出したよ!?
なんだ、こいつは!?
子供がゴブリンに変わったぞ!!
俺に襲いかかって来る!?
えい!?
とりゃ!!
ドスコーーイ!!
撃破!!
弱くね?
所詮はゴブリンだよな?
あれ……。
なんだ?
目が……覚める?
温かいな……。
ここは……?
「おはようございます。目が覚めましたか?」
あれ、ドラゴンの幽霊じゃあないか?
なんで俺はソファーで寝てるんだ?
「あなた、これを食べましたね?」
ドラゴンの幽霊は、暖炉に吊るされた鍋を指差した。
確かあれはチゲ鍋だな。
「違いますよ。これは私が作っている開発最中の新薬です」
新薬?
「そう、ポーションです」
チゲ鍋じゃあないの?
「まだ、材料を全部は入れていない物でしたが、この段階で人間が口にすると邪悪なゴブリンに変化するとは思いませんでしたよ」
ゴブリンになる?
言っている意味が分からんな。
「覚えて無いのですか?」
ぜんぜん覚えてませんな?
「お腹が空いているのですか?」
いや、なんか夢の中でチゲ鍋を食べた気がするからいいや。
「まったく、もう」
何故に呆れるのだ、ドラゴンの幽霊?
「そうだ、そろそろですね、そのドラゴンの幽霊って呼び方は辞めませんか?」
じゃあ、なんて呼べばいい?
「テイアーでお願いします」
テイアーって、長母音?
「違いますよ」
じゃあ、ティーターンの十二神?
「なんでそれを知ってるの?」
ラノベで読んだことがある。
「ラノベ?」
それは知らないのね。
「あと、もう声が出せるはずですよ」
「マジで!」
あ、出た!?
「心が読まれたくなければ、言葉を使うことね」
今さらいいや。
「いいの?」
うん、どうせエロイことは考えられないし、バレてることはバレているからね。
「潔いわね」
よく言われるぜ。
それでだ、テイアー。
改めて言わせてもらうぞ。
「何かしら?」
助けてくれて有り難う。
俺は深々と頭を下げた。
「いえいえ、いいのよ。私にも企みが有ってのお助けだったのだもの」
何それ?
「私のお願いしますを聞いてくれるかな?」
言いながらテイアーは最初に会った時の女性に容姿を変えた。
痩せてて美しいが、貧乳の美女へ。
やっぱり貧乳キャラじゃんか。
それよりだ。
「お願いってなんだよ?」
俺は声に出して訊いてみた。
「私を助けて貰いたいの」
「助ける?」
「正確には、私の身体を助けて貰いたいの」
悩ましげに身体をくねらせるテイアーが色っぽい。
か、身体ですか!?
貧乳だけど美人さんなのは間違いないし!!
ぐっはっ!!!
うがぁぁぁあああがあがが!!
おーちーつーけー!!
まーけーるーなー、おーれー!!
ふぅ~~~……。
ぜぇはー、ぜぇはー。
やぁ~べ、血を吐いたわ……。
「ああ、そう言う意味じゃあないのよ」
「どちらかって言ったら、そう言う意味のほうが嬉しいのだ、がっはぁあ!!」
また、血を吐いちゃったわ……。
あれ、これはチゲ鍋か?
「正確に述べると、私は今現在、身体と精神が別々に行動しているのよ」
「身体と精神が別って、幽体離脱か?」
「それに近いわね」
なるほど、それで幽霊みたいなんだ。
「そこで身体に帰りたいのだけれど、ここ二百年ぐらい、身体の前の通路に英雄クラスのアンデッドが居てね。それが邪魔で身体に戻れないでいるのよ」
「アンデッドなんて自分で蹴散らせばいいじゃんか?」
「それが出来ないから、頼んでるの」
「何故に出来ない?」
「私は現在精神だけが動き回ってるの」
「見れば分かるが?」
「そして精神だけだと魔法しか使えないの。腕力を有する行動は肉体の役目だから」
「うむ、それも理解できるが?」
「そして私の使える魔法は幻術や精神攻撃系の魔法のみなの」
「あー、男女に変身とか、スリープクラウド見たいな精神攻撃の魔法ね」
「それだと精神魔法が無効なアンデットを倒せないのよ」
「なるほど~」
「しかも、その英雄クラスのアンデットはマジックアイテムやらを装備しているから、霊体でも傷付けられるの」
「あー、そう言うことか」
「そう言うことなの」
「自分の攻撃は効かないけど、相手の攻撃だけは全部喰らうのね」
「そうなのよ。ちょっとしたアンデットなら魂だけでもやり過ごせるけれど、英雄クラスとなると、ちょっと危険なのよね」
「確かにな。ドラゴンの身体があれば一捻りなのにな」
「うんうん、そうなの。だからあいつらを全員倒してもらいたいの。私が安全に身体まで帰れるようにさ」
「あいつら?」
「そう、英雄クラスのアンデットは三体居るわ」
「三体も?」
「私の身体が眠っているエリアに入る通路に三体巣くってるの。最初は誰かがその内に倒してくれるだろうと思ってたけれど、逆に増えたのよね。この二百年の間にさ」
「それは困った話だな」
「もしもそれが果たせたなら、地上に出てベルセルクの坊やに会ってあげるわよ」
「マジで!?」
「もう、このダンジョンにも千年以上は住んでるから、飽きたしね。身体が戻ったら引っ越しのついでにベルセルクの坊やに会ってあげますとも」
「うし、分かったぜ。その三体の英雄アンデットは、俺が倒してやるぞ!」
これはこれてミッションクリアに近付いた気がするぞ。
いや、三体の英雄アンデットを倒さないとならないから、遠ざかったのかな?
【つづく】
足元は白い霧に覆われているが、熱さも寒さも感じられない。
空も大地も白い。
白いだけの世界だった。
まるで天国に居るようだ。
えっ、天国?
ここが天国なのか~?
あれ、前にも来たこと有るような、無いような?
そんな気がするけれど?
まあ、いいか。
とりあえず俺はどうしたら良いのかな?
三途の川が在れば渡れば良いのだけれど、ここにはそれらしき物は見当たらない。
やっぱり川どころか真っ白な雲しか見当たらないぞ。
あれれ、この考えもデジャブ?
あっ、俺、全裸じゃんか?
ち◯こがブラブラの丸出しだな~。
てへぺろ~。
なんだろう、この呑気な気分はさ?
てか、俺、なんでここに居るんだ?
死んだのか?
いやいや、死んだ話は前の前だぞ。
もう、死んではいないはずだ。
じゃあ、なに?
何があったっけ?
確か、目が覚めたら全回復していて、腹が減ってたからチゲ鍋を食べて……。
チゲ鍋?
そこからだ……。
そこから今一ながら思い出せないな?
なんだか怪しくって邪悪な妖精になっていたような……。
あれ、誰か居る?
雲の向こうから、人がやって来るぞ?
一人だな?
なんだろう?
おや~、子供かな?
うん、やっぱり子供だ?
人間の子供が一人で歩いて来るぞ?
何故に子供が、こんな雲しか無い天国に居るんだ?
あれ!?
何か苦しみ出したぞ!!
子供が喉をかきむしりながら苦しんでいる!?
ええっ!?
変わり出したよ!?
なんだ、こいつは!?
子供がゴブリンに変わったぞ!!
俺に襲いかかって来る!?
えい!?
とりゃ!!
ドスコーーイ!!
撃破!!
弱くね?
所詮はゴブリンだよな?
あれ……。
なんだ?
目が……覚める?
温かいな……。
ここは……?
「おはようございます。目が覚めましたか?」
あれ、ドラゴンの幽霊じゃあないか?
なんで俺はソファーで寝てるんだ?
「あなた、これを食べましたね?」
ドラゴンの幽霊は、暖炉に吊るされた鍋を指差した。
確かあれはチゲ鍋だな。
「違いますよ。これは私が作っている開発最中の新薬です」
新薬?
「そう、ポーションです」
チゲ鍋じゃあないの?
「まだ、材料を全部は入れていない物でしたが、この段階で人間が口にすると邪悪なゴブリンに変化するとは思いませんでしたよ」
ゴブリンになる?
言っている意味が分からんな。
「覚えて無いのですか?」
ぜんぜん覚えてませんな?
「お腹が空いているのですか?」
いや、なんか夢の中でチゲ鍋を食べた気がするからいいや。
「まったく、もう」
何故に呆れるのだ、ドラゴンの幽霊?
「そうだ、そろそろですね、そのドラゴンの幽霊って呼び方は辞めませんか?」
じゃあ、なんて呼べばいい?
「テイアーでお願いします」
テイアーって、長母音?
「違いますよ」
じゃあ、ティーターンの十二神?
「なんでそれを知ってるの?」
ラノベで読んだことがある。
「ラノベ?」
それは知らないのね。
「あと、もう声が出せるはずですよ」
「マジで!」
あ、出た!?
「心が読まれたくなければ、言葉を使うことね」
今さらいいや。
「いいの?」
うん、どうせエロイことは考えられないし、バレてることはバレているからね。
「潔いわね」
よく言われるぜ。
それでだ、テイアー。
改めて言わせてもらうぞ。
「何かしら?」
助けてくれて有り難う。
俺は深々と頭を下げた。
「いえいえ、いいのよ。私にも企みが有ってのお助けだったのだもの」
何それ?
「私のお願いしますを聞いてくれるかな?」
言いながらテイアーは最初に会った時の女性に容姿を変えた。
痩せてて美しいが、貧乳の美女へ。
やっぱり貧乳キャラじゃんか。
それよりだ。
「お願いってなんだよ?」
俺は声に出して訊いてみた。
「私を助けて貰いたいの」
「助ける?」
「正確には、私の身体を助けて貰いたいの」
悩ましげに身体をくねらせるテイアーが色っぽい。
か、身体ですか!?
貧乳だけど美人さんなのは間違いないし!!
ぐっはっ!!!
うがぁぁぁあああがあがが!!
おーちーつーけー!!
まーけーるーなー、おーれー!!
ふぅ~~~……。
ぜぇはー、ぜぇはー。
やぁ~べ、血を吐いたわ……。
「ああ、そう言う意味じゃあないのよ」
「どちらかって言ったら、そう言う意味のほうが嬉しいのだ、がっはぁあ!!」
また、血を吐いちゃったわ……。
あれ、これはチゲ鍋か?
「正確に述べると、私は今現在、身体と精神が別々に行動しているのよ」
「身体と精神が別って、幽体離脱か?」
「それに近いわね」
なるほど、それで幽霊みたいなんだ。
「そこで身体に帰りたいのだけれど、ここ二百年ぐらい、身体の前の通路に英雄クラスのアンデッドが居てね。それが邪魔で身体に戻れないでいるのよ」
「アンデッドなんて自分で蹴散らせばいいじゃんか?」
「それが出来ないから、頼んでるの」
「何故に出来ない?」
「私は現在精神だけが動き回ってるの」
「見れば分かるが?」
「そして精神だけだと魔法しか使えないの。腕力を有する行動は肉体の役目だから」
「うむ、それも理解できるが?」
「そして私の使える魔法は幻術や精神攻撃系の魔法のみなの」
「あー、男女に変身とか、スリープクラウド見たいな精神攻撃の魔法ね」
「それだと精神魔法が無効なアンデットを倒せないのよ」
「なるほど~」
「しかも、その英雄クラスのアンデットはマジックアイテムやらを装備しているから、霊体でも傷付けられるの」
「あー、そう言うことか」
「そう言うことなの」
「自分の攻撃は効かないけど、相手の攻撃だけは全部喰らうのね」
「そうなのよ。ちょっとしたアンデットなら魂だけでもやり過ごせるけれど、英雄クラスとなると、ちょっと危険なのよね」
「確かにな。ドラゴンの身体があれば一捻りなのにな」
「うんうん、そうなの。だからあいつらを全員倒してもらいたいの。私が安全に身体まで帰れるようにさ」
「あいつら?」
「そう、英雄クラスのアンデットは三体居るわ」
「三体も?」
「私の身体が眠っているエリアに入る通路に三体巣くってるの。最初は誰かがその内に倒してくれるだろうと思ってたけれど、逆に増えたのよね。この二百年の間にさ」
「それは困った話だな」
「もしもそれが果たせたなら、地上に出てベルセルクの坊やに会ってあげるわよ」
「マジで!?」
「もう、このダンジョンにも千年以上は住んでるから、飽きたしね。身体が戻ったら引っ越しのついでにベルセルクの坊やに会ってあげますとも」
「うし、分かったぜ。その三体の英雄アンデットは、俺が倒してやるぞ!」
これはこれてミッションクリアに近付いた気がするぞ。
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