上 下
117 / 604

第117話【穴】

しおりを挟む
まずはレベルアップしたので新スキルの紹介から始めよう。

新しく覚えたスキルは二つでした。

【スライディングマスタリー。スライディングの距離が1.25倍される】

うんうん、これは役に立つよね。

スライディングは戦法の一つですから。

さて、次は~。

【モンスターネーム判定。モンスターのネームが分かるようになる】

うんうん、これも有るべきスキルだよね。

んん~~。

今回は役に立つスキルばかりだが、寂しさが積もる感じだったわ。

まあ、先は長いから、まだまだレベルアップもするだろうさ。

とりあえずネーム判定って、死体にも使えるのかな?

この殺したモンスターの名前が知りたいわ。

そんでもって新スキルを使ってみたら、名前が判明した。

どうやら死体にも使えるようだ。

モンスターの名前は【トロール】だった。

なるほどね~。

こいつが名高いトロールですか。

さて、マジックアイテムは持っているかな?

おおっ!

スクロールを持ってやがるぞ。

それにズボンのポッケにお金と宝石が入っていたな。

お金は10Gだ。

なんだろう、この黒色の宝石?

「魔力感知スキル」

おー!

この黒い宝石はマジックアイテムだな。

他には反応無しっと。

では、これは異次元宝物庫に保管ってことで~。

よし、先に進むか。

俺はその後もダンジョン内のマップを羊皮紙に書き込みながら進んだ。

念のために垂らして置いた糸にも異変は無い。

おお、これはさっきの落とし穴の上の部屋かな。

ここから落ちると、さっきの部屋で串刺しなのね。

てかよ、下なんか見えないぞ。

もう、ここから落ちたら落下死だろう。

それにしても随分と上に登ったのかな。

んん?

なんだ?

壁に小さな光が見えるな?

なんだろう。

俺が近寄って見ると、それは小さな穴だった。

そこから光が漏れ出ている。

しかも穴から白い煙りが上がっていた。

いや、煙りじゃあないな?

湯気かな?

暖かいな。

うん、湯気だわ。

近付いたら分かったぞ、これは湯気だ。

湯気が壁の向こうから漏れ出てきている。

俺は穴から奥を覗き見た。

なんだろう、部屋……だな?

真っ白な湯気で良く見えないわ。

でも、なんか音が聴こえて来るな?

いや、これは話し声かな?

しかも女性かな?

少し耳を澄まして聞いてみようか。

「メイド長様、お疲れさまです」

「あら、あなたも夜勤でしたか?」

「はい、今日はプリンセス様のお付きでした」

「あらあら、それは大変でしたね」

なんだ?

メイドの会話なの?

なんでだ?

「メイド長様は君主様がお呼びになった冒険者様をご覧になりましたか?」

「ええ、始めて謁見室に現れた時に見ましたわ」

なんか水の音がするな?

もしかして、この壁の向こうはお風呂なのか?

女湯なのか!?

てっ、ことは……。

この向こうでお風呂に入っているのはメイド長とメイドさん!?

ぐぅぁぁああああだあだたぁだだ!!

糞女神の呪いがぁぁあああ!!

落ち着け、俺ぇえ!!

無だ!!

無を感じ取れ!!

ぜぇはー、ぜぇはー!!

よ、よし、落ちついてきたぞ……。

それにしても何故にダンジョンの壁の向こうが女湯なんだよ!?

しかも、こんなところに穴が開いているとは不思議過ぎるだろ!?

この穴は神の穴か!?

ゴットホールですか!?

それにメイドさんたちは俺の話をしてますよね!!

「でぇ、どんな方でした?」

「なに、あなたも、冒険者なんかに興味が有るの?」

「だって冒険者って、逞しいイメージがあるじゃあないですか~」

「謁見室に来た冒険者はお子様でしたわよ」

おいおい、俺をお子様扱いですか。

メイド長様は、老いた婆ですか?

「メイド長様から見てお子様だったってことは、まだおち◯ちんに毛すら生えてない子供でしたか……」

「いや、さすがにそこまでお子様じゃあなかったけれど、まだまだ子供っぽかったってだけですよ」

 「あら、そうなんですか~」

なに、じゃあまだメイド長様も若いのか。

「でも、何しに来ているのかしら。泊まり込みまでして」

「なんでも北の裏庭に居るらしいわよ」

「北の裏庭って、オンボロな詰所が在る場所ですよね?」

「そうらしいわよ」

「なんで、あんなところに?」

「さあね。私は上がるわよ、アンナ」

「メイド長様、私も上がりますわ」

二人が湯から上がって気配が消える。

んー、俺って案外とお城内で有名人?

注目の人物なの?

少なくともアンナちゃんは俺に興味津々だったよね。

これってもしかして!!

恋の始まりか!?

チャンスか!?

よし、まだエロイことは想像していないぞ!!

これなら行けるか!?

ならば冒険は中止だ!!

直ぐに地上に戻ってアンナちゃんにアタックだ!!

俺は糸をそこで千切ると引き返す。

ルンルンのウハウハ気分でダンジョンを出た。

俺が出入り口に戻るとパーカーさんが待っていた。

「よ~、アスランくん。無事に戻ったのかい」

「なあ、パーカーさん!」

俺は階段を駆け登るとパーカーさんの両肩を掴んで訊いた。

「あんた、アンナって言うメイドさんを知ってるかい!?」

「な、なんだよ、血相を変えて?」

「知ってるかどうかだよ!?」

「アンナってメイドなら知ってるぞ。食料を調理場に取りに行った時に、何度か話したことがあるが……」

「可愛いか!?」

「え、アンナがかい?」

「そうだ、アンナちゃんは可愛いかって、聞いているんだよ!?」

「可愛いかどうかは人によると思うが……」

「あんたから見てどうなんだ。可愛いのか!?」

「ちょっと太り過ぎかな~」

「えっ……」

「だから、太り過ぎだと思うが?」

「デブですか?」

「うん、デブだな」

俺は踵を返してダンジョンに向かった。

「あれ、またダンジョンに入るのか?」

「うん、だって仕事だもの……」

覚めきった俺は、こうして仕事に戻ったのである。

男は真面目に働かないとね。

仕事は大事である。


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~

薄味メロン
ファンタジー
領地には魔物が溢れ、没落を待つばかり。 【伯爵家に逆らった罪で、共に滅びろ】 そんな未来を回避するために、悪役だった男が奮闘する物語。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

処理中です...