上 下
112 / 604

第112話【豪華絢爛】

しおりを挟む
俺は正式に君主ベルセルクから依頼を受けた。

そして、銀のプレートネックレスを渡される。

これがあれば、いろいろな場所がすんなりと通れると言う通行証のような物らしい。

これで町のゲートは顔パスらしいし、城の中も一部は通れるとかだ。

今回の仕事をこなしている間だけ許可されたアイテムである。

今回の仕事の期間は無制限だったが、それでは駄目だろうと考えて、とりあえず一ヶ月間の期間限定を設けた。

俺の提案に君主の爺さんも納得してくれる。

何事にも始まりと終わりは必要だからな。

まあ、一ヶ月も頑張って、ドラゴンの幽霊を見付けられなかったら、俺もその程度ってことだよ。

兎に角だ。

ベルセルクの爺さんを喜ばしてやりたいから、出来るだけ頑張るけどね。

あの爺さんの冥土の土産ってことだよ。

そんなこんなで俺はダンジョンの手入り口が在るって言う城の裏庭にやって来た。

城壁に囲まれた不自然な庭だな。

芝生の真ん中に兵士の詰所が建っている。

二階建ての古びた石作りの建屋だ。

あの詰所にダンジョンの出入り口が在るらしい。

あそこに俺も寝泊まりしろとのことだ。

俺が中に入ると兵士が二人居た。

テーブル席に向かい合い、退屈そうな顔でチェスを指していやがる。

「どうも~。今日からここを使わせて貰う冒険者でぇ~す」

俺が陽気に挨拶を飛ばしたが、兵士たちは変事を返さない。

こちらをチラリと見ただけだった。

なんだろうな。

この城の兵士にしては、マナーがなってないぞ。

他の兵士はキビキビと動いているのにさ。

まあ、無視するなら勝手に部屋でも見てくるか。

そう思いながら俺が奥に進もうとすると、ポーンの駒を摘まみながら兵士の一人が言う。

「二階の一番奥の部屋だ。そこを使え」

言い終わると駒を置いて顎を撫でる。

すると次に、もう一人の兵士がルークを摘まみ上げながら言う。

「俺の名前はピーターで、そっちがパーカーだ。今日は休みだが、もう一人スパイダーってのがいる」

「飯は俺らが三食作るから、ちゃんと食べに来いよ」

「はぁ~い」

なんだよ。

結構いい奴らじゃあねえか。

そう思った俺は二階の奥の部屋を目指した。

そして、扉を開けて愕然とする。

そこは、すげー荷物の山で一杯だったからだ。

部屋に入るどころか、扉のギリギリまで荷物が詰まれている。

俺は一階に戻って二人に言う。

「なあ、ピーターとパーカー。二階の一番奥は物置小屋だったぞ」

二人はチェス盤から視線を外さずに言った。

「そうだ。そこしか空いてない」

「他の部屋は俺たちが使っているからな」

空いてない?

あれは空いているとは言えないだろう。

荷物で満杯じゃあないか。

「なるほど~。じゃあ部屋の荷物はどうしろと?」

「知るか、俺らの荷物じゃあないからな」

「昔の番人の物だ。好きにしろ」

「分かった」

俺は二階に戻ると、荷物の山で踏み入れられない部屋の前に立った。

異次元宝物庫の窓を開けると中に問う。

「これ、全部入れられるかい?」

異次元宝物庫の窓から亡者が頷いているのが見えたので、あとは任せた。

すると黒い窓が部屋の中に移動して、床に広がり一気に荷物を落とし入れた。

一瞬で部屋の中が空になる。

綺麗さっぱりの部屋の完成だ。

「ん~、困ったな。ベットが無いな。しゃあない、買いに行くか」

俺は建物を出ると、建屋の横に、異次元宝物庫内に吸い込んだ荷物を全部ださせた。

ズシンと重々しい音を立てて部屋の中にあった荷物が降って来る。

かなりの地鳴りが起きたので、チェスを指していた兵士二人が慌てて見に来た。

そして、唖然とした表情で述べる。

「な、なんだ、これは……?」

「部屋の中の荷物だ。邪魔だったから出して置いたぞ」

「だ、出したって、どうやって……?」

「冒険者には、いろいろな術が有るんだよ。じゃあ俺はちょっと買い物に行って来るからさ。またね~」

なんかちょっぴりいい気分だったぜ。

そう言い残して俺は町に出る。

そして、君主ベルセルクから預かった銀のプレートネックレスは絶大だった。

本当にゲートは顔パスだったのだ。

あの生意気な役人も、俺が城から戻って来たら、こんな物を持っていたからビックリしていやがった。

なんか偉くなった気分がして、悪くないって感じだったぜ。

そんな感じで俺は、もう一度ワイズマンの店を目指す。

とりあえずベットぐらいは部屋に欲しいので、ワイズマンの店で買おうと思う。

でも、売ってるかな?

そもそも、ワイズマンの店って、何屋さんなのだろう?

まあ、いいや。

兎に角この町で知っている人物はワイズマンぐらいだから、彼に頼るしかない。

俺が銀のプレートネックレスを下げて店に入ると店員の態度がぜんぜん違っていた。

このプレートは、そこまでの力が有るのかと実感する。

なので、今度はワイズマンの居場所を聞き出せそうだ。

そして俺がワイズマンの居場所を定員に訊こうとした刹那だった。後方から声を掛けられる。

「やあ、アスランくんじゃないですか」

「え?」

俺が振り返って見ると、そこにはマヌカハニーさんが立って居た。

あー、もう一人この町に知人が居たか。

巨乳の会計士さんの登場である。

いつ見ても、見事なスイカップさんだなぁぁあだだたたっだただた!!!

畜生、呪いがぁぁああ!!!

耐えてやる!!

負けるもんか!!

ぜぇはー、ぜぇはー。

直ぐに落ちついたぞ、こん畜生めが!

「ど、どうも、マヌカハニーさん……」

「どうしたの。何か辛そうだけど……?」

「いえ、なんでも有りませんから。ニコリ!」

なんか俺の顔に笑顔が勝手に浮かび上がる。

なんか安堵してるわ、俺。

マヌカハニーさんは、スイカップをユッサユッサと凶器的に揺らしながら近寄って来る。

それは俺に取ってご褒美な光景だが、再び心臓が傷んだ。

しゃあないから視線を反らす。

そして、マヌカハニーさんに問われた。

「どうしたんですか。いつこの町に?」

「今日来たばかりですよ。お城の仕事でね」

俺はマヌカハニーさんに銀のプレートネックレスを見せた。

するとマヌカハニーさんは驚きながら言う。

「それは貴族の札ですよ。なんでアスランさんが?」

へぇー、これは貴族を現す証なのか。

通りで商人たちがペコペコするわけだ。

「これも仕事でね。そうだマヌカハニーさん」

「なにかしら?」

「ワイズマンと会いたいんだが、連絡は取れないかい?」

「あ~、それなら私もこれから会う用事が有るから一緒に行きますか?」

「おお、いいのかい?」

「勿論ですとも」

マヌカハニーさんは笑顔で答えてくれた。

弟のマヌカビーが行方不明だったころは、深刻に沈んでいたが、今はめっきり元気になって良かったって感じである。

この人は明るい表情のほうが美人に見えるのだ。

うんうん、善きかな善きかなだ。

それから俺は、マヌカハニーさんが用意した豪華な黒々とした馬車で町を出た。

俺たち二人は城壁を出て直ぐの屋敷まで馬車を走らせる。

「ここに居るのか、あのスケベなモッチリオヤジは……」

なんか幾つも部屋がある豪華で巨大な屋敷だった。

「ええ、ワイズマン様の御屋敷ですわ」

この屋敷のサイズを見て俺は思う。

本当にあのモッチリオヤジが金持ちなんだと分かった気分だった。

馬車が玄関前に到着して止まる。

「さあ、こちらに」

「ああ」

俺はマヌカハニーさんの後ろに続いて屋敷に入った。

なんとも豪華絢爛なロビーである。

甲冑の置物や、大きな肖像画が飾られていた。

ロビー内の財力だけで圧倒されてしまう。


【つづく】
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...