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第108話【冒険者ギルドでの昼食】
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俺が無駄な四日間の旅から帰った次の日である。
俺は冒険者ギルドの酒場でゾディアックさんと昼食を食べていた。
彼も既にゴモラタウンで行われた魔法使いギルドの会議から帰って来たらしい。
店の中には、他にも多くの冒険者が酒を飲んでいたが、半数ぐらいは俺に冷たい視線を向けていた。
ゾディアックさんはギルガメッシュに会いに来たらしく、その際に食事中の俺を見つけて席を共にしたらしいのだ。
ゾディアックさんがスープの中のジャガイモをホークで突っつきながら俺に問う。
「キミは冒険者ギルド内で、いつもこんな感じなのかい?」
「こんな感じって?」
「なんだか半数以上のギルメンがキミに敵意を持ってないか?」
「あー、それね。そいつらは全部アマデウス派だよ。俺はギルガメッシュ派の人間だからね」
「なるほど。冒険者ギルドが分裂しているってのも本当なんだね」
「ああー、パッカリのポッカリのモッチリの分裂状態だよ」
「モッチリ?」
「俺も最初は不思議だったが、大人には大人の事情があるようだからな」
「なんでキミはギルガメッシュ派に入ったんだい?」
「アマデウスと少し揉めてね。その後に、どこのパーティーにも入れて貰えなくなったんだ。それが原因でギルガメッシュからソロの仕事を貰っているんだよ」
「キミはずっとソロなのかい?」
「ああ、この町に来てからソロの仕事しか受けたことがないぜ」
「それは不便だね……」
ゾディアックさんが憐れそうに俺を見た。
「まあ、俺はいろんな魔法が使えるし、いろんなスキルを盛っているから、一人でもそれなりに行けるんだよね。辛いのは多勢に無勢な場合かな。やっぱり一人だと大勢と戦い切れないんだよ」
「今キミは、何種類ぐらいの魔法が使えるのかね?」
「えーっと……」
俺は両手の指を使って覚えている魔法の種類を数え始める。
「アタッカー、シャーマン、エンチャント、ヒーラー、コンビニエンス、アストラ、ドルイド、サマナー、デビルサマナー、……かな?」
多分これだけだろう。
「全部で九種類ですか!?」
「ほとんど使ってもいない魔法も多いけれどね」
ゾディアックさんは唖然としていた。
まあ、そうだろうさ。
本来なら有り得ないパターンのはずだ。
魔法を複数習得すれば魔力で身体が食われて病弱になって行く。
普通なら才能的に考えても三種類が限度のはずだと聞いていた。
普通の魔法使いは二種類で止めるのだ。
覚え過ぎると魔力に体力が食われて私生活すら辛くなるとか。
それを俺は九種類だからな。
普通なら干からびて死んでいるレベルだ。
そりゃあ度肝を抜かれるよ。
俺は自慢気に言った。
「なんなら全魔法を見せようか?」
「いや、信用しているからいいよ……」
ちぇ、折角ここで見ている連中にも見せびらかしてやりたかったのにさ。
空気を読んでくれよな。
「それだけの神的な才能を有しているんだ。魔女キルケを倒したのも疑えないよ」
「じゃあ、賞金をくれるか!?」
「それは上げられませんね~」
「なんでだよ!」
「ほら、証拠が無いじゃんか」
「だって信用してくれるって言ったじゃんか!」
「それとこれとは話は別だよ」
「ケチ!」
「ケチで結構!!」
「じゃあ、スカル姉さんのパンティーを上げるからさ」
「もってるのかい!?」
「冗談だよ~ん」
「大人をからかうなよ……」
「大人なら今のは信じないぞ」
「いや、ほら、キミは変態だから、その辺は信用できるかなって」
「変態を信じるな!」
俺が突っ込みを入れると酒場の入り口からパーティーの一団が入って来た。
先頭は戦士風の男が二人だ。
クラウドとゴリである。
その六人パーティーはアマデウスの一行だった。
アマデウスのパーティーが酒場に入って来た途端に、空気の色が変わった。
少し暗くて重たい空気感に染まる。
一行が俺たちのテーブルの側を横切って行く。
クラウドは俺を一瞥したが声は掛けてこない。
アマデウスと一緒の時はいつもそうだ。
クラウドもアマデウスに気を使って居るのだろうさ。
アマデウスたちは酒場の一番奥の席に腰かけると食事と酒を注文し始める。
俺がゾディアックさんに言った。
「ゾディアックさん、あんたはアマデウスと知り合いだったよな」
「ああ、昔は一緒のパーティーを良く組んだよ。彼は攻撃魔法が得意で、私はエンチャント魔法が得意だったからね。二人の魔法で攻防一体だったんだよ」
「なるほどね」
「その後に彼が魔法使いギルドを辞めてからはパーティーも組んで居ない。僕が冒険者を辞めたのもあるがね」
「あんたが冒険者を辞めたのは、スカル姉さんが目を病んで冒険者を辞めたからか?」
「いや、えっと、そ、そうかな。うん、多分そうだよ!」
分かりやすいな。この人は……。
俺たちが話しているとゴリが一人だけ席を立ってこちらにやって来る。
あー、喧嘩を売られるな。
「よー、アスラン。元気だったかい?」
声が凄んでるよ。
ちょっと茶化してやろうかな。
「うほ、元気だったよ、うほうほ」
ゴリのこめかみに青筋が走る。
「俺たちは、これから広野にグリフォンの群れを退治しに行くんだが、お前は最近活躍しているのか?」
「うほ、うほうほ、してるよ、うほ」
俺の挑発にゴリの顔がヒクヒクし始めたぞ。
面白いな~、このゴリラ面やろうはよ。
「テメー、舐めてるんか!!」
どなり声を上げながらゴリが剛腕を伸ばして来た直後だった。
ゾディアックさんが魔法を唱える。
「パラライズボディー」
「ぬぐっっっ!!」
腕を伸ばしたポーズで硬直するゴリ。
魔法をかけたゾディアックさんは飲み掛けのコーヒーを一口飲んだ。
流石はベテランだ。余裕だな。
ゾディアックさんが使った魔法は、麻痺魔法だろう。
しかも、かなり純度が高いぞ。
「さあ、行こうかアスランくん。そろそろギルガメッシュさんの時間も良いころだろうさ」
「そうですね~」
俺とゾディアックさんは硬直して動けないゴリを残して席を立った。
チラリとアマデウスのほうを見たら、涼しい表情で酒を飲んでいやがる。
こちらに視線すら向けていない。
子分がやられたのに無視ですか。
お高いですね~。
なんだか、気に食わねえな。
もうちょっとイタズラしてやるか。
俺はゴリの頭の上に、飲み掛けのコーヒーカップを乗せてから、先を進むゾディアックさんの後を追った。
「こ……、この、やろう……」
後ろから切ない声が聞こえて来たが俺は無視する。
そのまま二人で二階を目指した。
これから仕事の話だ。
今回の依頼人は魔法使いギルドらしい。
【つづく】
俺は冒険者ギルドの酒場でゾディアックさんと昼食を食べていた。
彼も既にゴモラタウンで行われた魔法使いギルドの会議から帰って来たらしい。
店の中には、他にも多くの冒険者が酒を飲んでいたが、半数ぐらいは俺に冷たい視線を向けていた。
ゾディアックさんはギルガメッシュに会いに来たらしく、その際に食事中の俺を見つけて席を共にしたらしいのだ。
ゾディアックさんがスープの中のジャガイモをホークで突っつきながら俺に問う。
「キミは冒険者ギルド内で、いつもこんな感じなのかい?」
「こんな感じって?」
「なんだか半数以上のギルメンがキミに敵意を持ってないか?」
「あー、それね。そいつらは全部アマデウス派だよ。俺はギルガメッシュ派の人間だからね」
「なるほど。冒険者ギルドが分裂しているってのも本当なんだね」
「ああー、パッカリのポッカリのモッチリの分裂状態だよ」
「モッチリ?」
「俺も最初は不思議だったが、大人には大人の事情があるようだからな」
「なんでキミはギルガメッシュ派に入ったんだい?」
「アマデウスと少し揉めてね。その後に、どこのパーティーにも入れて貰えなくなったんだ。それが原因でギルガメッシュからソロの仕事を貰っているんだよ」
「キミはずっとソロなのかい?」
「ああ、この町に来てからソロの仕事しか受けたことがないぜ」
「それは不便だね……」
ゾディアックさんが憐れそうに俺を見た。
「まあ、俺はいろんな魔法が使えるし、いろんなスキルを盛っているから、一人でもそれなりに行けるんだよね。辛いのは多勢に無勢な場合かな。やっぱり一人だと大勢と戦い切れないんだよ」
「今キミは、何種類ぐらいの魔法が使えるのかね?」
「えーっと……」
俺は両手の指を使って覚えている魔法の種類を数え始める。
「アタッカー、シャーマン、エンチャント、ヒーラー、コンビニエンス、アストラ、ドルイド、サマナー、デビルサマナー、……かな?」
多分これだけだろう。
「全部で九種類ですか!?」
「ほとんど使ってもいない魔法も多いけれどね」
ゾディアックさんは唖然としていた。
まあ、そうだろうさ。
本来なら有り得ないパターンのはずだ。
魔法を複数習得すれば魔力で身体が食われて病弱になって行く。
普通なら才能的に考えても三種類が限度のはずだと聞いていた。
普通の魔法使いは二種類で止めるのだ。
覚え過ぎると魔力に体力が食われて私生活すら辛くなるとか。
それを俺は九種類だからな。
普通なら干からびて死んでいるレベルだ。
そりゃあ度肝を抜かれるよ。
俺は自慢気に言った。
「なんなら全魔法を見せようか?」
「いや、信用しているからいいよ……」
ちぇ、折角ここで見ている連中にも見せびらかしてやりたかったのにさ。
空気を読んでくれよな。
「それだけの神的な才能を有しているんだ。魔女キルケを倒したのも疑えないよ」
「じゃあ、賞金をくれるか!?」
「それは上げられませんね~」
「なんでだよ!」
「ほら、証拠が無いじゃんか」
「だって信用してくれるって言ったじゃんか!」
「それとこれとは話は別だよ」
「ケチ!」
「ケチで結構!!」
「じゃあ、スカル姉さんのパンティーを上げるからさ」
「もってるのかい!?」
「冗談だよ~ん」
「大人をからかうなよ……」
「大人なら今のは信じないぞ」
「いや、ほら、キミは変態だから、その辺は信用できるかなって」
「変態を信じるな!」
俺が突っ込みを入れると酒場の入り口からパーティーの一団が入って来た。
先頭は戦士風の男が二人だ。
クラウドとゴリである。
その六人パーティーはアマデウスの一行だった。
アマデウスのパーティーが酒場に入って来た途端に、空気の色が変わった。
少し暗くて重たい空気感に染まる。
一行が俺たちのテーブルの側を横切って行く。
クラウドは俺を一瞥したが声は掛けてこない。
アマデウスと一緒の時はいつもそうだ。
クラウドもアマデウスに気を使って居るのだろうさ。
アマデウスたちは酒場の一番奥の席に腰かけると食事と酒を注文し始める。
俺がゾディアックさんに言った。
「ゾディアックさん、あんたはアマデウスと知り合いだったよな」
「ああ、昔は一緒のパーティーを良く組んだよ。彼は攻撃魔法が得意で、私はエンチャント魔法が得意だったからね。二人の魔法で攻防一体だったんだよ」
「なるほどね」
「その後に彼が魔法使いギルドを辞めてからはパーティーも組んで居ない。僕が冒険者を辞めたのもあるがね」
「あんたが冒険者を辞めたのは、スカル姉さんが目を病んで冒険者を辞めたからか?」
「いや、えっと、そ、そうかな。うん、多分そうだよ!」
分かりやすいな。この人は……。
俺たちが話しているとゴリが一人だけ席を立ってこちらにやって来る。
あー、喧嘩を売られるな。
「よー、アスラン。元気だったかい?」
声が凄んでるよ。
ちょっと茶化してやろうかな。
「うほ、元気だったよ、うほうほ」
ゴリのこめかみに青筋が走る。
「俺たちは、これから広野にグリフォンの群れを退治しに行くんだが、お前は最近活躍しているのか?」
「うほ、うほうほ、してるよ、うほ」
俺の挑発にゴリの顔がヒクヒクし始めたぞ。
面白いな~、このゴリラ面やろうはよ。
「テメー、舐めてるんか!!」
どなり声を上げながらゴリが剛腕を伸ばして来た直後だった。
ゾディアックさんが魔法を唱える。
「パラライズボディー」
「ぬぐっっっ!!」
腕を伸ばしたポーズで硬直するゴリ。
魔法をかけたゾディアックさんは飲み掛けのコーヒーを一口飲んだ。
流石はベテランだ。余裕だな。
ゾディアックさんが使った魔法は、麻痺魔法だろう。
しかも、かなり純度が高いぞ。
「さあ、行こうかアスランくん。そろそろギルガメッシュさんの時間も良いころだろうさ」
「そうですね~」
俺とゾディアックさんは硬直して動けないゴリを残して席を立った。
チラリとアマデウスのほうを見たら、涼しい表情で酒を飲んでいやがる。
こちらに視線すら向けていない。
子分がやられたのに無視ですか。
お高いですね~。
なんだか、気に食わねえな。
もうちょっとイタズラしてやるか。
俺はゴリの頭の上に、飲み掛けのコーヒーカップを乗せてから、先を進むゾディアックさんの後を追った。
「こ……、この、やろう……」
後ろから切ない声が聞こえて来たが俺は無視する。
そのまま二人で二階を目指した。
これから仕事の話だ。
今回の依頼人は魔法使いギルドらしい。
【つづく】
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