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第85話【アイアンシップ攻略】
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俺はソドムタウンの武器屋を回って矢を買い漁っていた。
流石は冒険者の町である。
武器屋の数は大小合わせて十五軒もあった。
俺が見つけていないだけで、もしかしたら他にももっと在るのかも知れない。
潜りの店とかも在りそうだ。
まあ、何で俺が矢を買い漁っているかっていえば、そりゃあ異次元宝物庫があるからだ。
無限にアイテムを持てるのだ。
ならば無限に備えておいて損はないだろう。
十五軒の武器屋を回った結果、矢を1000本ちょっと買えた。
これだけあれば、もう年単位で買わなくて済むだろうさ。
やったね!
まあ、そんなこんなで夕暮れごろに俺はスカル姉さんの下宿に帰った。
俺は自分の部屋に入ると持ち物チェックを始める。
食料、水筒、ランタンの油、火口箱、おやつ500円分。
どれもこれも一ヶ月分は用意した。
すべて異次元宝物庫に納める。
これで旅の準備は万全だ。
明日の朝から次の仕事に出発しようと思う。
今回は近場なのだが、何日か泊まりになるかもしれない。
今回のオーク討伐はゲリラ作戦で行こうかと考えているからだ。
オークは一体一体が強い。
オーク一匹は、人間の戦士一人分の戦力と同等だと聞く。
だから、侮れない。
間違いなく、一度に複数を相手に出来ないだろう。
ならば個別撃破を心がけなくてはならない。
冒険者ギルドの調査だと、オークたちの群れは、平原に在るアイアンシップと呼ばれる遺跡に巣くって居るらしい。
そこを拠点にして旅商人を襲っているのだ。
しかもオークの数が10匹も居るから、そこそこの大きさのキャラバンですら襲われるとからしい。
だから商人ギルドは即座に討伐を願っている。
そんな仕事に俺が一人で挑まなくてはならないのだ。
そこで今回は弓矢でゲリラ的な攻撃を繰り返そうと策したわけである。
最初は数匹に軽傷を負わせる程度にゲリラ攻撃を仕掛ける。
そのゲリラ攻撃でオークの数を減らせなくても構わない。
兎に角、相手に怪我を追わせて、僅かでも戦力を削りたい。
何故に怪我なのかといえば、相手に足手纏いを増やしておきたいのだ。
お荷物が出来れば相手の行動力も落ちる。
怪我人が居たら仕事も満足に出れなくなるだろう。
見張りや警護も無傷の兵力で行わなくてはならなくなる。
そして今度は、その無傷の兵士から集中的に襲って殺して行く。
そうやって少しずつ相手の戦力を削って行こうと思う。
そのための矢である。
だから弓矢でゲリラ戦に専念するつもりだ。
うむ、我ながら悪よのぉ~。
ただ、俺が企んだ通りのモラルがオークに備わっているかは知らない。
備わってるといいよね~って感じだ。
そして今回オークたちが住み着いているアイアンシップと呼ばれる遺跡は、岩場が多い平原に在るらしいので、隠れる場所は問題ないらしい。
その辺は現地に到着したら、もっとちゃんと地理を観察して作戦を立てるつもりだ。
俺は晩飯の際にスカル姉さんに訊く。
「スカル姉さん、アイアンシップって遺跡を知ってるかい?」
スカル姉さんはスープの中のジャガイモをフォークで突っつきながら答える。
「ああ、知ってるぞ。ちょくちょくモンスターが巣くう有名なポイントだからな」
「ちょくちょくなんだ」
「ああ、亜種のモンスターには住みやすい遺跡なんだろうさ」
「なんでそんな遺跡を残して置くのさ。さっさと取り壊せばいいのに」
「鉄で出来てる遺跡なんだ。取り壊したくても壊せはしないのさ」
「鉄で?」
「そうだ。だからアイアンシップって呼ばれてるんだよ」
いったい何の遺跡なんだろう?
この時代設定が低い異世界で、鉄製の建造物とかって普通じゃあないよな。
「その遺跡って、なんの遺跡なんだい?」
「さあな、なんの遺跡かは私も知らない。ただ分かっているのはアイアンシップって呼ばれているだけあって、船の形に見えるんだ」
「船?」
この辺には海もない。
船を浮かせるほどの広い川や池も少ないはずだ。
ましてや10匹のオークが住みかにするほどの遺跡ならば、それなりのサイズの船になる。
それほどの大きさの船が運行出来るほどの水辺は無いはずだ。
なのに船が平原に在るのか?
ちょっと不思議な話だな。
スカル姉さんがジャガイモを刺したフォークを折れに向けながら言う。
「まあ、いい経験だろうから、自分の目で確認してくるんだな。おそらくソドムタウンで長く冒険者を続けるのなら、一度や二度は、アイアンシップに掃除しに入ることがあるだろうからさ」
「もう、定番の討伐ポイントになっているのね。冒険者の観光名所かよ」
「そうだ」
「でも、取り壊しが出来ない遺跡ならばさ、逆に砦とかにして、利用できないのか?」
「あの辺は交通が不便だし、別に守る物も少ない。せいぜいキャラバンがたまに通る街道が在るぐらいだ。それにランドワームもうじゃうじゃ生息しているからな。アイアンシップにモンスターを住み着かせないためだけに、砦化して人員も割いてられんだろ」
「なるほどね」
周辺にはランドワームも生息しているのか。
それは気を付けないとな。
死人の森に行く道中でランドワームに襲われたけれど、あれは狂暴なモンスターだったもんな。
3メートルほどの体長に、ぶっといサイズの大ミミズだ。
しかも口には獣のような鋭い牙を持っていやがって、食欲旺盛なのかグイグイと攻めてきやがる。
あの時は一匹だけだったから良かったが。
あれが群れだったらヤバイよな。
あのハングリーさはオークよりもヤバイかもしれん。
俺が考え込んでいるとスカル姉さんがアドバイスをくれた。
「ランドワームは、どちらかって言ったら夜行性だ。それに火に弱いから松明を持っていけ。それだけで近寄って来なくなるぞ」
「へぇ~、そうなんだ」
「寝る時は焚き火の側で寝てれば、ランドワームに襲われることはない」
「流石は先輩冒険者だな。アドバイス、サンキュー」
しかしそれだとゲリラ作戦が出来ないな。
松明を持ったままでは灯りが目立ってオークたちに居場所がバレてしまう。
これはこれで難しい選択だな。
まあ、現地でランドワームが頻繁に現れるようなら考えようか。
それまでは、ゲリラ作戦で攻めてやる。
俺は次の日にスカル姉さんの下宿を出てアイアンシップを目指すことになる。
そんな俺を朝早くからスカル姉さんが見送ってくれた。
「アスラン、気を付けて行ってくるんだぞ」
「任しときな」
俺はクールに気取った。
「アスラン、もうビキニアーマーは着てないよな?」
「ふっ、見てみるかい?」
「別にいいよ」
「そう言わず、見な!!」
俺はローブの前を両手で開いた。
チラッ!
「ぶっ!!!」
よし、スカル姉さんが吹いたぞ。
そりゃあそうさ。
だって俺は、ビキニアーマーを着ているもの!!
【つづく】
流石は冒険者の町である。
武器屋の数は大小合わせて十五軒もあった。
俺が見つけていないだけで、もしかしたら他にももっと在るのかも知れない。
潜りの店とかも在りそうだ。
まあ、何で俺が矢を買い漁っているかっていえば、そりゃあ異次元宝物庫があるからだ。
無限にアイテムを持てるのだ。
ならば無限に備えておいて損はないだろう。
十五軒の武器屋を回った結果、矢を1000本ちょっと買えた。
これだけあれば、もう年単位で買わなくて済むだろうさ。
やったね!
まあ、そんなこんなで夕暮れごろに俺はスカル姉さんの下宿に帰った。
俺は自分の部屋に入ると持ち物チェックを始める。
食料、水筒、ランタンの油、火口箱、おやつ500円分。
どれもこれも一ヶ月分は用意した。
すべて異次元宝物庫に納める。
これで旅の準備は万全だ。
明日の朝から次の仕事に出発しようと思う。
今回は近場なのだが、何日か泊まりになるかもしれない。
今回のオーク討伐はゲリラ作戦で行こうかと考えているからだ。
オークは一体一体が強い。
オーク一匹は、人間の戦士一人分の戦力と同等だと聞く。
だから、侮れない。
間違いなく、一度に複数を相手に出来ないだろう。
ならば個別撃破を心がけなくてはならない。
冒険者ギルドの調査だと、オークたちの群れは、平原に在るアイアンシップと呼ばれる遺跡に巣くって居るらしい。
そこを拠点にして旅商人を襲っているのだ。
しかもオークの数が10匹も居るから、そこそこの大きさのキャラバンですら襲われるとからしい。
だから商人ギルドは即座に討伐を願っている。
そんな仕事に俺が一人で挑まなくてはならないのだ。
そこで今回は弓矢でゲリラ的な攻撃を繰り返そうと策したわけである。
最初は数匹に軽傷を負わせる程度にゲリラ攻撃を仕掛ける。
そのゲリラ攻撃でオークの数を減らせなくても構わない。
兎に角、相手に怪我を追わせて、僅かでも戦力を削りたい。
何故に怪我なのかといえば、相手に足手纏いを増やしておきたいのだ。
お荷物が出来れば相手の行動力も落ちる。
怪我人が居たら仕事も満足に出れなくなるだろう。
見張りや警護も無傷の兵力で行わなくてはならなくなる。
そして今度は、その無傷の兵士から集中的に襲って殺して行く。
そうやって少しずつ相手の戦力を削って行こうと思う。
そのための矢である。
だから弓矢でゲリラ戦に専念するつもりだ。
うむ、我ながら悪よのぉ~。
ただ、俺が企んだ通りのモラルがオークに備わっているかは知らない。
備わってるといいよね~って感じだ。
そして今回オークたちが住み着いているアイアンシップと呼ばれる遺跡は、岩場が多い平原に在るらしいので、隠れる場所は問題ないらしい。
その辺は現地に到着したら、もっとちゃんと地理を観察して作戦を立てるつもりだ。
俺は晩飯の際にスカル姉さんに訊く。
「スカル姉さん、アイアンシップって遺跡を知ってるかい?」
スカル姉さんはスープの中のジャガイモをフォークで突っつきながら答える。
「ああ、知ってるぞ。ちょくちょくモンスターが巣くう有名なポイントだからな」
「ちょくちょくなんだ」
「ああ、亜種のモンスターには住みやすい遺跡なんだろうさ」
「なんでそんな遺跡を残して置くのさ。さっさと取り壊せばいいのに」
「鉄で出来てる遺跡なんだ。取り壊したくても壊せはしないのさ」
「鉄で?」
「そうだ。だからアイアンシップって呼ばれてるんだよ」
いったい何の遺跡なんだろう?
この時代設定が低い異世界で、鉄製の建造物とかって普通じゃあないよな。
「その遺跡って、なんの遺跡なんだい?」
「さあな、なんの遺跡かは私も知らない。ただ分かっているのはアイアンシップって呼ばれているだけあって、船の形に見えるんだ」
「船?」
この辺には海もない。
船を浮かせるほどの広い川や池も少ないはずだ。
ましてや10匹のオークが住みかにするほどの遺跡ならば、それなりのサイズの船になる。
それほどの大きさの船が運行出来るほどの水辺は無いはずだ。
なのに船が平原に在るのか?
ちょっと不思議な話だな。
スカル姉さんがジャガイモを刺したフォークを折れに向けながら言う。
「まあ、いい経験だろうから、自分の目で確認してくるんだな。おそらくソドムタウンで長く冒険者を続けるのなら、一度や二度は、アイアンシップに掃除しに入ることがあるだろうからさ」
「もう、定番の討伐ポイントになっているのね。冒険者の観光名所かよ」
「そうだ」
「でも、取り壊しが出来ない遺跡ならばさ、逆に砦とかにして、利用できないのか?」
「あの辺は交通が不便だし、別に守る物も少ない。せいぜいキャラバンがたまに通る街道が在るぐらいだ。それにランドワームもうじゃうじゃ生息しているからな。アイアンシップにモンスターを住み着かせないためだけに、砦化して人員も割いてられんだろ」
「なるほどね」
周辺にはランドワームも生息しているのか。
それは気を付けないとな。
死人の森に行く道中でランドワームに襲われたけれど、あれは狂暴なモンスターだったもんな。
3メートルほどの体長に、ぶっといサイズの大ミミズだ。
しかも口には獣のような鋭い牙を持っていやがって、食欲旺盛なのかグイグイと攻めてきやがる。
あの時は一匹だけだったから良かったが。
あれが群れだったらヤバイよな。
あのハングリーさはオークよりもヤバイかもしれん。
俺が考え込んでいるとスカル姉さんがアドバイスをくれた。
「ランドワームは、どちらかって言ったら夜行性だ。それに火に弱いから松明を持っていけ。それだけで近寄って来なくなるぞ」
「へぇ~、そうなんだ」
「寝る時は焚き火の側で寝てれば、ランドワームに襲われることはない」
「流石は先輩冒険者だな。アドバイス、サンキュー」
しかしそれだとゲリラ作戦が出来ないな。
松明を持ったままでは灯りが目立ってオークたちに居場所がバレてしまう。
これはこれで難しい選択だな。
まあ、現地でランドワームが頻繁に現れるようなら考えようか。
それまでは、ゲリラ作戦で攻めてやる。
俺は次の日にスカル姉さんの下宿を出てアイアンシップを目指すことになる。
そんな俺を朝早くからスカル姉さんが見送ってくれた。
「アスラン、気を付けて行ってくるんだぞ」
「任しときな」
俺はクールに気取った。
「アスラン、もうビキニアーマーは着てないよな?」
「ふっ、見てみるかい?」
「別にいいよ」
「そう言わず、見な!!」
俺はローブの前を両手で開いた。
チラッ!
「ぶっ!!!」
よし、スカル姉さんが吹いたぞ。
そりゃあそうさ。
だって俺は、ビキニアーマーを着ているもの!!
【つづく】
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