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第79話【グール】
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俺の前に現れた大柄のグールは頭が良い。
俺の背後から武器を振るって不意打ちを仕掛けて来たのだ。
それすなわち知恵が有るってことだ。
この賢さがゾンビとグールの違いなのか。
侮れないね、グールってさ。
しかもこのグールは体格が凄い。
おそらく身長は2メートルを超えているだろう。
名付けてジャイアントグールだな。
しかも随分とフレッシュだ。腐敗が少ない。
後ろから撃たれたのか喉に矢が貫通して刺さっている。
それに歯形だらけのお腹は破けて内蔵がちょっぴりだけはみ出ていた。
それがキモイかな。
武器はロングソードで革鎧を纏っているし、頭には革製のヘルムを被っていやがる。
鎧は兎も角としてヘルムは邪魔だな。
何より頭が急所なのに、身長が高いのが問題だ。
簡単に述べれば、届かねーよ。
それにこいつのロングソードは刃こぼれどころか投身がピカピカだった。
そこらに落ちている朽ちた武具とは違っている。
これ、マジックアイテムじゃね?
おっと、そんなことよりだ。
ジャイアントグールのほうから仕掛けて来たぞ。
ロングソードを力強く振るって来る。
グールの連続攻撃が始まった。
左右の袈裟斬り、逆水平斬り、兜割り、そして突き技で胴体だけじゃなく、脚まで狙ってくる。
しかも巨漢から繰り出される攻撃は、腕の長さが有利に変わって、リーチも長いぞ。
それらを総合すると、完全に剣技を心得た戦術的な攻撃の数々だった。
これはアンデットを相手にしていると言うよりも、訓練された猛者を相手にしているようだ。
半端無いな!
だが、こっちだって負けてられない。
「マジックアロー!」
「グルルっ!?」
俺は魔法の矢でジャイアントグールの右膝を貫いた。
ジャストで膝の皿を貫いただろう。
ジャイアントグールはよろめくが倒れない。
痛覚が無いのだろうさ。
痛みを感じる人間なら転倒してても可笑しくない攻撃だ。
だが、痛みを感じないジャイアントグールはよろめいただけで平然と立っている。
しかし、俺はジャイアントグールの右に右にと回り込む。
ジャイアントグールは俺を追って身体を捻るが思う通りに身体を方向転回できないでいた。
そりゃあそうさ。
何せ右足が機能していないのだ。
痛みは感じなくても動かないものは動かないはずだ。
俺は転回出来ずによろめいているジャイアントグールに飛び掛かった。
大きくバトルアックスを頭の上まで振りかぶり、小ジャンプから力一杯振り下ろす。
ジャイアントグールは何とかロングソードで俺の強打を受け止めた。
しかし魔法で貫かれた右膝が折れて片膝をついてしまう。
よし、作戦どうりだ。
今の強打は直撃を策したものではない。
強打の衝撃で、ジャイアントグールのバランスを崩すのが目的であった。
案の定、ジャイアントグールは射ぬかれて壊れた膝が衝撃に耐えられず片膝を付いてしまう。
これでジャイアントグールの機動力が死んだ。
何より、低くなった。
頭の位置がよ。
もう一度俺は大きくバトルアックスを振り上げてから、力一杯振り下ろす。
それをグールはロングソードを横にして何とか受け止めた。
俺は、今度は横にバトルアックスをフルスイングした。
その一振で、ジャイアントグールがロンクソードを持っていた右腕を肘の辺りから斬り落とした。
ザッパリとね。
そして、ロングソードを握ったままの右手が、勢い良く飛んで行き、大木に突き刺さる。
よし、これで完全に無防備&頭の高さも丁度良い!
俺は止めのバトルアックスをジャイアントグールの頭に力一杯振り下ろした。
ザックリとジャイアントグールの頭をカチ割る。
俺の勝利であった。
「ふぅ~~」
流石の俺も溜め息を吐いた。
このサイズの戦士は辛いな。
大きいってだけで強いんだもの。
しかも貴重な攻撃魔法まで使ってしまった。
まあ、このジャイアントグールは特別だろうさ。
いくらグールが賢いアンデットでも、こんな体格に恵まれたグールは、そうそう居ないだろう。
貴重な実弾魔法を割くだけの価値はあっただろうさ。
それにこいつが持っていたロングソードはマジックアイテムの可能性が高かったしな。
俺はゾンビたちの死体から武器や弓を回収し終わると、大木に突き刺さったロングソードの元に歩む。
「魔力感知」
おお、やっぱりこのロングソードはマジックアイテムだぜ、ラッキー!
俺は柄を握ったままのグールの手を外すと、ロングソードを大木から引っこ抜いた。
すぐさまアイテム鑑定をする。
【ロングソード+2。攻撃速度向上。アンデットにダメージ特効向上】
おおお!
なんと+2のアイテムじゃあないか!
しかも攻撃速度向上にアンデット特効だよ!
この森じゃあベストな武器じゃんか!
あれ……?
何でだ?
あのジャイアントグールはお腹に歯形が付いてたってことはゾンビに襲われた死体だ。
ゾンビはゾンビを襲わないし、食べない。
あいつの腹に歯形があったってことは、生きていて食われてグールになったってことだよな。
それすなわち、ゲートから沸いたアンデットじゃなくて、余所から入って来た冒険者の死体だ。
こんないいマジックアイテムを有しているヤツが、この森で殺られたってことか?
その辺に、合点が行かない。
そう俺が悩んでいると、ロングソードを持っていた腕に痛みが走る。
「痛っ!?」
俺は突然の痛みにロングソードを手放し落としてしまう。
衝撃!?
痛み!?
熱い!?
なに!?
矢が刺さっている!?
俺の腕に矢が刺さっているだと!?
すげー痛いじゃんか!?
それより、どこからだ!?
どこから攻撃された!?
右から飛んで来たのか!?
俺は咄嗟に大木の陰に隠れる。
すると俺が立っていた位地に二発目の矢が飛んできて後方の木に突き刺さった。
狙撃されたのか!?
敵はアーチャーなのか!?
俺は大木の陰から顔を出して、矢が放たれたと思う方向の様子を窺った。
だが、人影は見られない。
しかし、風切り音が聞こえた。
何かが飛んで来るのが感じられる。
やばい!
俺が頭を引っ込めると、その場所に矢が突き刺さる。
なに!?
これもグールの攻撃なのか!?
姿を隠して、弓で撃って来るだと?
そんなアンデットが居るのかよ!?
これじゃあ、ただのアーチャーじゃあねえぞ!
これはスナイパーだ!!
次の敵はスナイパーグールかよ!!
【つづく】
俺の背後から武器を振るって不意打ちを仕掛けて来たのだ。
それすなわち知恵が有るってことだ。
この賢さがゾンビとグールの違いなのか。
侮れないね、グールってさ。
しかもこのグールは体格が凄い。
おそらく身長は2メートルを超えているだろう。
名付けてジャイアントグールだな。
しかも随分とフレッシュだ。腐敗が少ない。
後ろから撃たれたのか喉に矢が貫通して刺さっている。
それに歯形だらけのお腹は破けて内蔵がちょっぴりだけはみ出ていた。
それがキモイかな。
武器はロングソードで革鎧を纏っているし、頭には革製のヘルムを被っていやがる。
鎧は兎も角としてヘルムは邪魔だな。
何より頭が急所なのに、身長が高いのが問題だ。
簡単に述べれば、届かねーよ。
それにこいつのロングソードは刃こぼれどころか投身がピカピカだった。
そこらに落ちている朽ちた武具とは違っている。
これ、マジックアイテムじゃね?
おっと、そんなことよりだ。
ジャイアントグールのほうから仕掛けて来たぞ。
ロングソードを力強く振るって来る。
グールの連続攻撃が始まった。
左右の袈裟斬り、逆水平斬り、兜割り、そして突き技で胴体だけじゃなく、脚まで狙ってくる。
しかも巨漢から繰り出される攻撃は、腕の長さが有利に変わって、リーチも長いぞ。
それらを総合すると、完全に剣技を心得た戦術的な攻撃の数々だった。
これはアンデットを相手にしていると言うよりも、訓練された猛者を相手にしているようだ。
半端無いな!
だが、こっちだって負けてられない。
「マジックアロー!」
「グルルっ!?」
俺は魔法の矢でジャイアントグールの右膝を貫いた。
ジャストで膝の皿を貫いただろう。
ジャイアントグールはよろめくが倒れない。
痛覚が無いのだろうさ。
痛みを感じる人間なら転倒してても可笑しくない攻撃だ。
だが、痛みを感じないジャイアントグールはよろめいただけで平然と立っている。
しかし、俺はジャイアントグールの右に右にと回り込む。
ジャイアントグールは俺を追って身体を捻るが思う通りに身体を方向転回できないでいた。
そりゃあそうさ。
何せ右足が機能していないのだ。
痛みは感じなくても動かないものは動かないはずだ。
俺は転回出来ずによろめいているジャイアントグールに飛び掛かった。
大きくバトルアックスを頭の上まで振りかぶり、小ジャンプから力一杯振り下ろす。
ジャイアントグールは何とかロングソードで俺の強打を受け止めた。
しかし魔法で貫かれた右膝が折れて片膝をついてしまう。
よし、作戦どうりだ。
今の強打は直撃を策したものではない。
強打の衝撃で、ジャイアントグールのバランスを崩すのが目的であった。
案の定、ジャイアントグールは射ぬかれて壊れた膝が衝撃に耐えられず片膝を付いてしまう。
これでジャイアントグールの機動力が死んだ。
何より、低くなった。
頭の位置がよ。
もう一度俺は大きくバトルアックスを振り上げてから、力一杯振り下ろす。
それをグールはロングソードを横にして何とか受け止めた。
俺は、今度は横にバトルアックスをフルスイングした。
その一振で、ジャイアントグールがロンクソードを持っていた右腕を肘の辺りから斬り落とした。
ザッパリとね。
そして、ロングソードを握ったままの右手が、勢い良く飛んで行き、大木に突き刺さる。
よし、これで完全に無防備&頭の高さも丁度良い!
俺は止めのバトルアックスをジャイアントグールの頭に力一杯振り下ろした。
ザックリとジャイアントグールの頭をカチ割る。
俺の勝利であった。
「ふぅ~~」
流石の俺も溜め息を吐いた。
このサイズの戦士は辛いな。
大きいってだけで強いんだもの。
しかも貴重な攻撃魔法まで使ってしまった。
まあ、このジャイアントグールは特別だろうさ。
いくらグールが賢いアンデットでも、こんな体格に恵まれたグールは、そうそう居ないだろう。
貴重な実弾魔法を割くだけの価値はあっただろうさ。
それにこいつが持っていたロングソードはマジックアイテムの可能性が高かったしな。
俺はゾンビたちの死体から武器や弓を回収し終わると、大木に突き刺さったロングソードの元に歩む。
「魔力感知」
おお、やっぱりこのロングソードはマジックアイテムだぜ、ラッキー!
俺は柄を握ったままのグールの手を外すと、ロングソードを大木から引っこ抜いた。
すぐさまアイテム鑑定をする。
【ロングソード+2。攻撃速度向上。アンデットにダメージ特効向上】
おおお!
なんと+2のアイテムじゃあないか!
しかも攻撃速度向上にアンデット特効だよ!
この森じゃあベストな武器じゃんか!
あれ……?
何でだ?
あのジャイアントグールはお腹に歯形が付いてたってことはゾンビに襲われた死体だ。
ゾンビはゾンビを襲わないし、食べない。
あいつの腹に歯形があったってことは、生きていて食われてグールになったってことだよな。
それすなわち、ゲートから沸いたアンデットじゃなくて、余所から入って来た冒険者の死体だ。
こんないいマジックアイテムを有しているヤツが、この森で殺られたってことか?
その辺に、合点が行かない。
そう俺が悩んでいると、ロングソードを持っていた腕に痛みが走る。
「痛っ!?」
俺は突然の痛みにロングソードを手放し落としてしまう。
衝撃!?
痛み!?
熱い!?
なに!?
矢が刺さっている!?
俺の腕に矢が刺さっているだと!?
すげー痛いじゃんか!?
それより、どこからだ!?
どこから攻撃された!?
右から飛んで来たのか!?
俺は咄嗟に大木の陰に隠れる。
すると俺が立っていた位地に二発目の矢が飛んできて後方の木に突き刺さった。
狙撃されたのか!?
敵はアーチャーなのか!?
俺は大木の陰から顔を出して、矢が放たれたと思う方向の様子を窺った。
だが、人影は見られない。
しかし、風切り音が聞こえた。
何かが飛んで来るのが感じられる。
やばい!
俺が頭を引っ込めると、その場所に矢が突き刺さる。
なに!?
これもグールの攻撃なのか!?
姿を隠して、弓で撃って来るだと?
そんなアンデットが居るのかよ!?
これじゃあ、ただのアーチャーじゃあねえぞ!
これはスナイパーだ!!
次の敵はスナイパーグールかよ!!
【つづく】
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