上 下
59 / 604

第59話【追跡】

しおりを挟む
俺は全裸のおっさんと別れて山沿いの街道を進む。

全裸のおっさんが言うように、まだ山賊どもがそこらに潜んでいるやも知れないので、周囲を気にして進んだ。

俺は周囲を警戒するだけでなく、足元も良く見て歩みを進める。

何を見ているかって言えば、足跡である。

この辺は乾燥地帯で埃っぽいし砂地も少なくない。

だから地面に足跡も残りやすいのだ。

その証拠に全裸おっさんの裸足の足跡もハッキリと残っていた。

素人の俺ですらちゃんと分かるぐらいに足跡が見えている。

これなら辿れるだろう。

そして足跡を追う俺は、しばらくして目的のポイントを発見する。

全裸おっさんが山賊どもに襲われたと思われるポイントだ。

複数の足跡が広がっている。

ここで全裸おっさんが襲われて、身ぐるみをすべて剥がされてから素足が始まったのだろう。

更に複数の足跡は、右側の山に続いていた。

そちらから来て、そちら側に戻って行ったのだろう。

足跡からして、件の三人組だと分かった。

一つは大きな足跡で、もう一つは普通サイズだ。

更にもう一つ有る足跡は明らかにハイヒールである。

こんな荒れていて足元が悪い土地をハイヒールで歩むなんて、かなりビジュアルを気にした女なんだろうなって思った。

出来ればエロイ女で無いことを祈る。

もしもエロエロ衣装の女だったら、俺の場合は強面の強者より強敵になるだろうさ。

そこは特別に気を付けなければならないだろう。

俺は右側の山へ上って行く複数の足跡を追って、山を登り始める。

兎に角ヤツらを追跡する。

それに確かこちら側には、スカル姉さんから貰った情報のキャンプ候補地の一つがある方向だった。

それは古い神殿跡地らしい。

かなり昔の悪魔教団が築いた神殿らしいのだが、数百年経っているために、ほとんどが崩壊していて、建物の壁が僅かに残っているだけだそうな。

しかし、壁があれば、埃っぽい風だけは防げる。

それだけでもキャンプ地としては上等なのだろう。

おそらくヤツらは、そこにキャンプを張っているはずだ。

正確な場所は分からないから、やはりこの足跡を追跡するのが得策だろう。

俺はひたすらに山を上り足跡を追った。

やがて山の頂上に到着して、辺りを見回す。

すると山の裏側を下った先に、話に聞いた神殿跡地の壁を見つける。

10メートル四方ぐらいの崩れかけたレンガ造りの壁が建っていた。

天井は一つも残っていない。

扉らしい物も見当たらない。

高さは大体2メートルぐらいしかないだろうか。

それと、そちら側に向かう三人組の背中も見つけた。

よし、ビンゴだ!

ヤツらとアジトを見つけたぞ。

三人組の先頭は、黒いマントと長い黒髪を靡かせている女性だった。

その後ろを全裸おっさんから奪ったと思われる荷物を背負った矮躯な男が続き。

更に両手に荷物鞄を下げた、痩せた男が続いていた。

これで後は不意打ちをやり放題だ。

隙を突くも寝首を刈るも作戦は自由である。

俺は身を隠して三人の動向を見守った。

さてさて、ヤツらの次の行動次第でこちらの動きも変わってくる。

三人組を見張っていると、ヤツらは壁の裏側に姿を隠した。

やはりあそこがキャンプ地だな。

しかしだ。しばらく待ったが出てこない。動きが止まった。

今日の仕事は終わりだろうか?

朝一から獲物を刈れたから満足したのかな?

それとも休憩中かな?

飯なのかな?

俺は適当な岩陰に荷物を下ろすと、バトルアックスとショートソードを取り出して装備した。

戦斧を背負い、短剣の鞘を腰に下げた。

三本の短剣符が刺さった腰ベルトも確認する。

戦闘準備は万全であった。

それからしばらく神殿の壁を見張っていたが、ヤツらに動きは無い。

本当に休憩中かな?

痺れを切らせた俺は坂道を下って神殿の壁を目指す。

少し迂回して進む。

そしておそらく見付かることなく壁際に到着してから、念のためにショートソードを鞘から抜いておく。

それから俺は、壁に張り付き裏側を覗き込めそうな場所を探した。

すると壁に小さな窓らしき穴が有ったので、そぉ~と覗き混んだ。

内側の様子は結構凄かった。

沢山の荷物が山積みになっている。

おそらく何人もの旅商人から奪った荷物だろう。

こりゃあ随分と溜め込んでいるな。

それと驚いたのは、その山積みの荷物の前に置かれた豪華なソファーだった。

その深紅で値打ち物の豪華なソファーに、女性が色っぽく横たわって居る。

黒髪の長い女性は、肩に黒いフサフサの羽が飾られた黒いマントを羽織り、その下には魅惑的な黒革のボンテージを身に付けていた。

そしてロングブーツを履いているだけで太股が露になった両脚をセクシーに組んでいる。

ヤバい!

俺のエロス探知機が反応しちゃったぞ!

ピコピコ言ってますわ!!

すると心臓が、チクチクと痛み出す!!

あ、それと……。

女はこっちを見てやがる。

怪しい垂れ目で薄笑いながら、俺のほうを見てやがった。

俺と目が合う。

バレている!?

その刹那だった。

俺の背後でジャシリと砂利を踏み締める音が僅かに聴こえた。

俺は咄嗟に振り返る。

振り返った俺の視界に飛び込んで来たのは、棘付きの棍棒だった。

勢い良く棘付き棍棒が眼前に迫る。

俺は尻餅をつくように腰を落として棘付き棍棒を躱す。

すると棘付き棍棒が神殿の壁を強打した。

ボコンっといい音が鳴ると、俺の頭に砕けた壁の破片がバラバラと降って来る。

棘付き棍棒を振るったのは、チビマッチョの男だった。

四角い強面の口元は、青髭が目立って見えた。

俺は這いつくばりながら逃げる。

その俺を追っかけながらチビマッチョが棘付き棍棒をハチャメチャに振り回していた。

俺のお尻に棘付き棍棒で煽られた風が当たる。

あんな棘々しい物で、お尻を殴られたら切れ痔どころじゃあ済まないぞ!

畜生、これでも食らえ!

「ファイヤーシャード!」

四つん這いで逃げていた俺は体を返すと同時に魔法を放った。

「ふばぁっ!!」

チビマッチョが炎の飛礫に怯んでいる隙に俺は立ち上がってショートソードを構える。

殺気っ!?

俺は咄嗟に強い気配を感じ取って、そちらを見る。

すると痩せた男がクロスボウを構えてこちらを狙っていた。

今度は飛び道具か!?

痩せた男は狙いが定まったのか引き金を引いた。

クロスボウから発射された矢が俺の間近を飛んで行く。

矢は当たらなかった……。

あいつ、外しやがったぜ!

間抜けめ!

痩せた男がクロスボウの弦を引き直している間に俺は走って壁の陰に隠れた。

俺は壁の蔭で息を整えながら作戦を考える。

不意打ちは失敗した。

逆に待ち伏せ的な不意打ち攻撃を食らっちまったぜ。

だが、敵のターンは凌いだぞ!

敵は棍棒の接近戦キャラと、クロスボウの飛び道具キャラの組み合わせか。

まあ、どうにでもなる。

こっちだって剣と魔法を使える魔法戦士だ。

接近戦も遠距離攻撃も可能なのだから、戦力は同等だろう。

問題は、あのエロイ姉ちゃんが、どう出てくるかだ。

それで戦況は異なって来るだろう。

さてさて、きたる三対一の戦いだ。

さーて、楽しんで行こうかな!


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...