上 下
57 / 604

第57話【三人組の山賊】

しおりを挟む
ギルマスの部屋を出た俺は一階の酒場で、一人昼食を取りながら依頼の書かれた羊皮紙を眺めていた。

今日の昼食は黒パンに鳥の手羽先と、ニンジンとオニオンのスープだ。

正直なところ、どの料理も塩と作り手の愛情でしか味付けされていない料理ばかりで美味しくない。

でも、俺ならそれすら作れないから仕方がないのだ。

腹ごなしはお金で解決するしかない。

何とも寂しい話である。

兎に角この異世界は料理文化も低いのだ。

誰でもいいから料理の伝導師的な人が異世界転生して来て、料理文化に革命を起こして貰いたいほどである。

そう言う異世界転生物語も、最近では少なくないんだから頑張ってくれよって感じだ。

食堂でも居酒屋でもいいから兎に角オープンを早く願います。

チェーン店を全国に広げるのはその後にしてくれ。

まあ、少なくともそれらは俺の役目ではない。

他の転生者にお任せする。

俺の役目は、ホチャラケた冒険を繰り広げて、この異世界を明るく愉快に茶化して回るぐらいだろう。

そのぐらいしか出来ない。

とりあえず俺は、手羽先を咥えながら羊皮紙に書かれた仕事の内容に目を通す。

依頼の内容はこうだった。

ソドムタウンと山道沿いの小さな町スダンを繋ぐ道中に最近ピン商人だけを狙った山賊が現れて悪さを働いているらしい。

まだ旅商人に死亡者は出ていないが、それも時間の問題だろうと言われている。

なんでもその山賊は一人旅の商人しか狙わなかったために、いままであまり問題視されずに放置されていたが、とうとう被害者が分かっているだけで20人を越えたらしく商人ギルドも重い腰を上げたらしいのだ。

だが、依頼料が300Gとだいぶ少額のために、どの冒険者も敬遠しているらしく、仕方なく俺に依頼が回ってきたとのことだ。

商人ギルドも旅商人たちに出来るだけピンで旅をせずにキャラバンを組めばいいと対策を取っている。

その為にことは急がれていない。

ただ、まだ事情の知らない旅商人たちが被害に合っているのだろう。

それを商人ギルドは防ぎたいのだ。

それで件の山賊について分かっている情報は、三人組だと言うことと、外見が年増女、痩せっぽち、チビマッチョだそうな。

三人とも武具で武装を整えているらしい。

なんか昔のアニメで見たことがあるような昭和臭い設定だと思ったが、出落ちが済むまで突っ込みは控えておこうと思う。

まあ、その辺も俺の優しさである。

とりあえず、このぐらいしか情報が無い。

さて、どうするかだ。

相手は三人の小グループだ。

思ったより少人数だが、こちらは一人だから、やはり三人の相手は少しキツイかもしれん。

でも、山賊三人組と主級リバーボアと比べてとちらが強そうかと考えれば、やっぱり主級リバーボアのほうだろう。

だとすれば、主級リバーボアに勝っている俺のほうが山賊三人組より強くね?

てか、やっぱり強いよね?

そもそも三人がかりで一人の旅商人しか襲えないのだ。戦闘力的にも小物だと思える。

だから今回の仕事も余裕だよね。

仕事の内容は山賊の退治だ。

考えようによっては三人を退治すればいいだけだ。

別に殺さなくても良い。

三人の内、一人二人を取っ捕まえて、山賊活動を出来なくすればいいのだ。

それで丸く収まるだろう。

そう、その時の俺は、そう安易に考えていた。

俺はスカル姉さんの診療所に帰って直ぐに旅の支度を始めた。

今回の仕事を出来るだけ早く終わらせたかったので、俺はその晩のうちに旅立った。

スカル姉さんは、気張りすぎだと言ってたが、俺は兎に角頑張りたかったので直ぐに旅立つことを変更しなかった。

スカル姉さんは、心配しながらも俺を見送ってくれる。

まず俺は山道沿いの小さな町スダンを目指す。

バトルアックスをバックパックの中に隠し、ショートソードも布で包んで出来るだけ目立たなくする。

そんな風貌で俺はソドムタウンを旅立った。

これでピンの旅商人と見間違えてくれれば幸いである。

途中で件の山賊が出る山道も通るので、そこでもしも山賊に襲われたら、すぐさま勝負を着けてやる積もりだった。

そのほうが話が早くてシンプルで良い。

俺自身が囮になってやるぜ。

来るならこいだ。

襲って来るならきやがれだ。


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

処理中です...