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第28話【冒険者ギルド登録】

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スカル姉さんに冒険者ギルドの場所を教えてもらった俺はローブのフードで視線を隠しながらソドムタウン内を進んだ。

冒険者ギルド本部はソドムタウンのほぼ中央に在るらしい。

そして、まもなくして冒険者ギルド本部に到着する。

そこは大きな古い砦だった。

ここからこの町が広がり発展していったのが一目で分かった。

冒険者ギルドが始まりなんだ。この町の──。

俺は門をくぐり砦の中に入って行った。

そこは酒場だった。

広くて大きな酒場だ。

酒場のサイズの割には客は少ない。

でも、すべての客が完全武装だった。

武器を下げ、防具を身に付けている。

いつでも戦える姿であった。

武器しか下げていない軽装なのは、俺だけだ。

酒場内は、バーテンダーに数人のウェイトレスが業務に励んでいる以外は、すべての人が冒険者のようだった。

冒険者以外の一般客はいない。

この酒場からは、ソドムタウンを欲にまみれて闊歩している男たちとは違う匂いがした。

勇者の匂いだ。

勇ましさを感じ取る。

とりあえず俺は受付を探した。

まずはギルドに会員登録せにゃならん。

だが、良く分からないのでウェイトレスさんを捕まえて訊いてみた。

俺が礼儀を正すためにフードを取ると視界が広がる。

だが、ウェイトレスさんのセクシーな制服が飛び込んで来てドキッとした。

もう、ノーパンメイド喫茶のようだった。

きわどい制服を若くてべっぴんな娘さんたちが身に付けているのだ。

すげーサービス豊富な酒場だと思った。

これが無料で堪能できるのだ。

なんともお得なお店だろう。

だが、目の毒であり、呪いが心臓を苦しめる。

俺は悔しかったが、すぐさまフードを被り直して視線を隠す。

それからウェイトレスさんに訊いた。

「すみません、冒険者の登録をしたいのですが、どこでやればいいのですか?」

俺はウェイトレスさんの顔も上半身も見れないから、かなりの不審者っぽかったんだろうな。

ウェイトレスさんは怪訝そうな声で答えてくれた。

「に、二階です……」

あー、完全に怪しまれている。

女の子に嫌われるって悲しいよね。

落ち込みながらも俺は辺りを見回して階段を見つけると、そちらに向かって進んでいった。

スタスタと階段を上がる。

二階に上がると数人の冒険者たちが、何枚もの依頼書だと思われる紙が貼られた掲示板を眺めていた。

その他に受付の人が座るカウンターが幾つかあった。

何故かこの世界の文字が読める俺は、その内の一つから会員登録のカウンターの看板を見付ける。

他のカウンターは依頼受付とアイテム鑑定のカウンターだった。

俺が会員登録のカウンターに進むとカウンター内にはマッチョで大柄の中年男性が座っていた。

鋭い眼光にモヒカンヘアー。上半身が全裸で乳首を二本のサスペンダーで隠している。

ああ、変態だ……。

そう思ったが、何故か安心した。

俺の物語らしいキャラが出て来たぞと安堵する。

フードから顔を出した俺は、モヒカンマッチョマンに話し掛けた。

「すみません、会員登録したいんですが?」

「あらぁ」

モヒカンマッチョマンは羊皮紙と羽ペンを差し出しながら言う。

「あらぁ、あらぁ、可愛いわねぇ。あなたぁ、文字は読めるのぉ~。それと書けるかしらぁ~?」

あー、オカマだ。

俺はモヒカンオカママッチョマンのキャラ建てに感心した。

モブのくせして、そこまでして目立ちたいのかと思う。

モブはモブでレギュラー化したくて必死なのだと感じた。

「文字よ、文字ぃ~。書けるのぉ?」

「読めるから書けると思いますが」

書いたことがないから分からなかったが、読めるのだからかけるだろうと安易に思う。

俺は羽ペンを取って羊皮紙を見た。

契約書だった。

入会料が1000G。

依頼料金の一割をギルドが頂く。

ギルドで受けた依頼に関してのパーティーはギルドメンバー内でのみ組む。

毎年の年末に年会費として1000Gを徴収する。

契約書の規約を破ったらソドムタウンから追放される。

規約はこんなもんだった。

最後にクラスと名前を書く欄がある。

俺が契約書を読んでいるとモヒカンオカママッチョマンが言う。

「読み終わったらぁ、クラスと名前を書いて、血判を押してねぇ」

「クラスって?」

「クラスよ~。あなた何が得意なのかしら。剣とか魔法とかさぁ」

「そのクラスですか……」

悩む、俺。

俺は何が得意なのか?

どんなクラスなのかな?

ステータス画面にはクラスまでは書いてないしな。

俺が悩んでいるとモヒカンオカママッチョマンが言う。

「分からないなら見習いね。その内に、何が得意か分かってくるはずよ」

「じゃあ、それで──」

「書くのは名前だけでいいわよぉ~」

「はい」

俺は促されるままに名前を書いた。

さて、問題は血判だ。

血判って、あれでしょう。

指を切って血を出して推す判子でしょう。

痛いの怖いわ……。

「血判をやるんですか……」

俺が嫌そうな顔で述べるとモヒカンマッチョマンが赤い朱肉を差し出した。

「嫌ならぁ、拇印でいいわよぉ~」

「いいんかい!」

俺は突っ込みの後に名前を書いて拇印を押すと契約書を完成させた。

そして1000Gを差し出す。

「おめでとう。これであなたも立派なギルドメンバーよぉ。うふん♡」

モヒカンオカママッチョマンが片目でウィンクをしてハートマークを飛ばして来た。

キモイ……。

すると奥の扉が開いて女性が顔を出す。

「ギルドマスター、お客様です。こちらに御越しください」

「ええ、分かったわぁ~」

女性に呼ばれて俺の前のモヒカンオカママッチョマンが立ち上がる。

なに!

この人がギルマスなのかよ!!

ただの受付役のモブじゃあないじゃん!!

「なんでギルドマスターが受付を!?」

最後にギルマスが述べる。

「暇を持て余したギルドマスターの戯れだ!!」

「そ、そうですかぁ……」

「ちなみに俺はオカマじゃあないからな!」

口調が普通に戻っていた。

「えっ、どう言うこと……?」

「だからただの戯れだっ!!」

あー、はいはい……。

分かりましたとも……。


【つづく】
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