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第22話【新たなる旅立ち】

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【おめでとうございます。レベル7に成りました!】

俺がコボルトキングを倒した直後にレベルが上がった。

一息ついて辺りを見回すと、ハーレムの雌コボルトたちが目に入る。

雌コボルトたちは俺と視線が合うと、ビビったのか一斉に逃げ出した。

俺は追わない。

もう、面倒臭いや。

ほぼほぼコボルトの群れは壊滅させたので、雌コボルトまでは追い回す必要が無いだろうと思う。

それに、傍からみたら水着姿の犬人間に猥褻な行為を働こうとして追っかけている変態野郎に見えるやも知れない。

誰も居ないけど、そんな誤解は受けたくなかった。

とりあえず、アイテムと現金の回収だけはちゃんとやらなくてはならないだろう。

俺は時間が掛かったが、廃鉱内を探索してから外に出た。

コボルトの死体や荷物を漁って得られた金額は121Gだった。

マジックアイテムは、コボルトキングが持っていたシミターと、廃鉱内の荷物から掘り出したランタンだけだった。

今回、俺の怒りの燃料になったスクロールは一枚も無い。

鑑定の結果はこうだ。

【シミター+2。勇気向上。筋力向上】

おそらく勇気向上は、勇敢になるってことだろうか?

筋力向上は、そのままだろう。

コボルトキングがパワフルに感じられたのは、この効果が追加されていたからかも知れないな。

続いてランタンの鑑定結果は、と言うと──。

【魔法のランタン+1。油の消費量が1/10に減る】

なんとも自然環境に配慮された省エネ家電製品だろう。

正直、要らん……。

まあ、なかなか苦労した廃鉱攻略戦だったが、実入りはこんなもんだった。

これが少ないのか多いのかは、まだ冒険者としての経験数が少ない俺には判断が出来なかった。

さてさて、お楽しみの新スキルのチェックだ。

今回はレベルが上がるまで、かなり戦闘を繰り広げていたから、きっと戦闘スキルを習得しているはずだ。

俺は期待を込めてステータス画面を呼び出した。

「ステータス、かも~ん」

そして半透明のステータス画面が開かれた。

やはり新スキルを一つ習得している。

どれどれ、どんなスキルかな?

【バーサーカースイッチ】

あー……。

なんかスキル名を見ただけで、やな感じがするのは何故だろう。

心当たりが有りすぎて怖い……。

ともあれ説明文を読む。

【バーサーカースイッチ。ON/OFFが出来るスキル。効果中は冷静な判断が失われるが、戦闘力全般が1.25倍向上する】

うむ、やっぱり微妙だな……。

悪くもないが、良くもない。

空を見上げれば暗くなりはじめていた。

しゃあないか、日も落ちてきたし村に帰るべ。

俺が村に到着すると、外で村人が数名ほど待っていてくれた。

あの鼻垂れ坊主も居た。

俺の帰還を見ると駆け寄って来てハグしてくる。

これがせめて幼女だったら嬉しかったのにな。

あ、ちょっぴり胸が痛い……。

その後は一軒の広い家に招かれた。

生き残った村人たち全員が集まっている。

そこでコボルト壊滅の報告を村人たちに告げた。

皆が仇が取れたと喜んでいる。

俺は、これで良かったのかなと、少し考えた。

それで出た回答は、『まあ、いいや』だった。

深刻に考えるのは止めよう。柄じゃない。

そして今晩はこの家で飯を頂き寝床も提供してもらえた。

正直、飯は美味しくなかった。

黒パンは何日も放置されて固くなった食パンよりも固いし、スープは薄い塩味しかしない。具も芋だけだ。

よく異世界転生してからスローライフとか言って食堂経営を始める異邦人の気持ちが良く分かった。

こんな不味い飯ばかり食ってる異世界ならば、開店早々から店も繁盛するだろう。

ちなみに俺は炊事の一つも出来ない。

調理どころか掃除も洗濯物も全て母ちゃんにやってもらっていた。

そうか、俺にも母ちゃんぐらい居るよな。

転生前のことは、少しずつ思い出せている。

そして、異世界に転生しても、炊事洗濯なんてヤル気は微塵も無かった。

そもそも俺には、家事全般が無理だと思う。

冒険でお金が貯まって家を買う機会がきたら、メイドさんを雇わなければ、マイホームの維持は出来ないだろう。

下手をしたらゴミ屋敷を作り上げるかもしれない。

俺はそれだけズボラだ。

そんでもってメイドさんは可愛い女の子を面接で選んでセクハラ行為ギリギリの生活を……ぅぉぉおおおおおッ!!!

の、ろ、い、がぁぁあああ!!!

く、くそ~……。

自分の学習能力の低さが疎ましい……。

とりあえず、不味かったが空腹には勝てない。

俺は燃料補給だと割りきって飯を腹に詰め込んだ。

そして、食ったから寝る。

提供してもらった空きベッドが、コボルトの襲撃が理由で空いたばかりのベッドだと知ったのは、翌朝の朝食の最中だった。

早く言ってもらいたかったが、よくよく考えれば眠れなくなったかも知れないので良しとする。

そして、俺は村を出で旅立つことにした。

この村から東に三日ぐらい歩いた場所に、大きな町が在るらしい。

その町を目指すことにした。

そして、三日分の食事と、革の水筒を貰った。

あと、毛布もだ。

それらを、一緒に貰ったバックパックに詰め込んで背負う。

コボルト討伐のお礼代わりだそうな。

ただでくれると言うのだから貰っとく。

村人に言われなければ、また旅の装備を持たずに旅立つところだった。

また、旅立ってから慌てるギャグパターンになるところだったぜ。

危ない、危ない……。

それで一話分無駄話を作り出すところだったと思う。

そして俺は手を振って村を出た。

鼻垂れ小僧や村人たちが見送ってくれる。

さてさて、俺の新たなる旅は、どんなスリリングな冒険が待っているのだろうか楽しみだな。

きっとロマン溢れる冒険と、昼も夜もイチャラブOKなヒロインとの出会いがまっているに決まってっぅぅううわあああ!!!

痛いーーー!!!

呪いが、苦しい!!!

糞女神が、逆に呪ってやるぞ!!!

絶対に!!!



【完】

【第18話に、つづく】
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