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第16話【真面目に戦えば】
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俺が魔女の束縛から解放されて、地下室をやっと出ると、上の階は派手に燃えていた。
家に火が付けられている。
火の広がりは早く、室内のあちらこちらが燃えていた。
家全体が燃えているに近い。
「やばいな!」
俺は焦った。慌てて出口を探す。
本当は衣類を調達してから家を出たかったのだが、この炎では堪らない。
何せ全裸に炎は、かなり熱い。
兎に角、退避を優先させた。
そして、出入口は直ぐに見つかる。
そこには一人のおっさんが倒れていた。
右肩から背中に掛けて、ザッパリと切られている。
おっさんは、目を見開いて死んでいた……。
おそらくは一撃で絶命したのだと思われる。
俺は炎から逃れるために、おっさんの遺体を跨いで外に飛び出した。
全裸のままでだ……。
外は夜だった。
辺りを見回せば、他にも燃えている家が何軒かあった。
そして、村のあちらこちらから悲鳴が聴こえて来る。
騒がしさは戦場さながらであった。
コボルトたちが逃げ惑う村人たちを追い回している。
無抵抗な老人でも殺していた。
俺はとりあえず武器になるような物を探す。
とある家の壁際に沢山の薪が積まれていた。
その横に薪割り用の斧が置いてあったので、俺はそれを取って武装する。
全裸のままでだ……。
そして、子供を追いかけていたコボルトに向かって走り出す。
追われている子供は、昼間の一人だった。
あの鼻垂れ小僧である。
コボルトは子供を追いかけ回すのに夢中で、横から走り寄った俺に気付いていなかった。
俺は全力で薪割り斧をコボルトの頭部に振り下ろす。
「おらぁッ!!」
全力で打ち下ろされた薪割り斧は、コボルトの頭を一撃でカチ割った。
頭を割られたコボルトは、噴水のように血飛沫を上げながら倒れて死んでしまう。
鼻垂れ小僧は尻餅をついて居た。
全裸の俺を呆然としながら見上げている。
「大丈夫だよな?」
俺が訊くと鼻垂れ小僧は、無言のまま一つ頷いた。
「よし、次に行くか!」
俺は全裸でもコボルトが相手なら行けると感じた。
そして俺は、薪割り斧を犬頭から引っこ抜くと、落ちていたショートソードも拾う。
「魔力感知!」
息を止めた俺はショートソードやコボルトの死体を見るが、魔法の反応は何もなかった。
「ちぇ──」
マジックアイテムは持っていないようだった。
ハズレである。
俺が舌打ちをすると、仲間が殺られるのを見ていたコボルトたち三匹が、俺に向かって走り出した。
仲間を殺されて怒り心頭のようだった。狂犬の形相である。
そもそもこの襲撃も、昼間に仲間を殺されたからだろう。
俺にだ………。
そう、コボルトを最初に殺めたのは俺である。
きっとこれは、その報復の襲撃だ。
この村への攻撃は報復戦だろう。
村はとばっちりを受けたのかも知れない。
コボルトたちは村人の誰かに仲間を殺されたのだと、勘違いしているのだろう。
だとするならば、俺には責任がある。
ここでコボルトたちと戦う義務がある。
例え、全裸でもだ!
俺はこちらに向かって走って来るコボルト三匹を、堂々と全裸で待ち構える。
そして、残り五メートルぐらいのところでコボルトの一匹に薪割り斧を投げ付けた。
薪割り斧はザクリとコボルトの胸に突き刺さる。
斧がヒットしたコボルトは、もんどりうって倒れた。それっきり動かなくなる。
これであと二匹だ!
「うしゃあ、行ける行ける!」
順々に迫るコボルト二匹。
二匹目がショートソードを頭より高く振りかぶったので、俺は素早く腕を限界まで長く伸ばしてショートソードの切っ先を突き立てた。
刀身がコボルトの胸に突き刺さる。
手応え有りだ。
背中まで貫通したのが、刺さった長さで分かった。
持っていたショートソードを手から落としたコボルトの重心が、俺のショートソードにのし掛かって来た。
絶命したと分かるぐらいの重さだった。
刺さったショートソードを抜くよりも、こいつが落としたショートソードを拾ったほうがはやそうだったので、俺はショートソードが刺さったままのコボルトの死体を、三匹目に目掛けて蹴り跳ばした。
仲間の死体を避けたコボルトが、僅かに動きを止める。
俺はその隙に、落ちていたショートソードを拾い上げた。
そして、三匹目のコボルトに振るう。
三匹目のコボルトは俺の一太刀をショートソードで受け止めた。
ここで、鍔迫り合いが始まる。
だが、こっちは一人だったから呑気に力比べをしてられない。
新手が来る前に勝負を決めたい。
なので、一気に攻める。
俺は全力で押した次の瞬間にショートソードを引いて身体を横に逃がした。
すると、勢い余ったコボルトが前につんのめる。
その隙に俺はショートソードでコボルトの腹を切った。
しかし、一撃では決まらない。
傷は浅い。
コボルトはよろめくが倒れなかったので、とどめの一振を繰り出した。
コボルトの喉仏をカッ切る。
「決まっただろ!」
喉を切られたコボルトは、鮮血を散らしながら倒れた。
間違いなくの致命傷。
俺の勝ちである。
その時であった。
頭の中に女性の声が響く。
【おめでとうございます。レベル4になりました!】
よし、レベルアップだ。
コボルト一匹25点の経験値のはずだから、四匹倒して100点だな。
すると現在の経験値トータルは200点のはずである。
ステータス画面を出して見るまでもない。
て、ことはだ。
レベル5に成るのに、あと200点ぐらい稼げは良いだろう。
合計経験値400点ぐらいが、次のレベルアップの妥当な数値のはず。
と、なるとだ。
あとコボルト八匹分かな。
まだ辺りには暴れ回っているコボルトたちが沢山居る。
これなら今晩中にレベル5まで達成できそうであった。
レベルアップしながら村を救う。まさに一石二鳥である。
俺は村人を追い回しているコボルトを、逆に追った。
ばたばたとコボルトたちを狩って行く。
全裸で……。
レベルアップして、確実に強くなっている実感はあった。
【つづく】
家に火が付けられている。
火の広がりは早く、室内のあちらこちらが燃えていた。
家全体が燃えているに近い。
「やばいな!」
俺は焦った。慌てて出口を探す。
本当は衣類を調達してから家を出たかったのだが、この炎では堪らない。
何せ全裸に炎は、かなり熱い。
兎に角、退避を優先させた。
そして、出入口は直ぐに見つかる。
そこには一人のおっさんが倒れていた。
右肩から背中に掛けて、ザッパリと切られている。
おっさんは、目を見開いて死んでいた……。
おそらくは一撃で絶命したのだと思われる。
俺は炎から逃れるために、おっさんの遺体を跨いで外に飛び出した。
全裸のままでだ……。
外は夜だった。
辺りを見回せば、他にも燃えている家が何軒かあった。
そして、村のあちらこちらから悲鳴が聴こえて来る。
騒がしさは戦場さながらであった。
コボルトたちが逃げ惑う村人たちを追い回している。
無抵抗な老人でも殺していた。
俺はとりあえず武器になるような物を探す。
とある家の壁際に沢山の薪が積まれていた。
その横に薪割り用の斧が置いてあったので、俺はそれを取って武装する。
全裸のままでだ……。
そして、子供を追いかけていたコボルトに向かって走り出す。
追われている子供は、昼間の一人だった。
あの鼻垂れ小僧である。
コボルトは子供を追いかけ回すのに夢中で、横から走り寄った俺に気付いていなかった。
俺は全力で薪割り斧をコボルトの頭部に振り下ろす。
「おらぁッ!!」
全力で打ち下ろされた薪割り斧は、コボルトの頭を一撃でカチ割った。
頭を割られたコボルトは、噴水のように血飛沫を上げながら倒れて死んでしまう。
鼻垂れ小僧は尻餅をついて居た。
全裸の俺を呆然としながら見上げている。
「大丈夫だよな?」
俺が訊くと鼻垂れ小僧は、無言のまま一つ頷いた。
「よし、次に行くか!」
俺は全裸でもコボルトが相手なら行けると感じた。
そして俺は、薪割り斧を犬頭から引っこ抜くと、落ちていたショートソードも拾う。
「魔力感知!」
息を止めた俺はショートソードやコボルトの死体を見るが、魔法の反応は何もなかった。
「ちぇ──」
マジックアイテムは持っていないようだった。
ハズレである。
俺が舌打ちをすると、仲間が殺られるのを見ていたコボルトたち三匹が、俺に向かって走り出した。
仲間を殺されて怒り心頭のようだった。狂犬の形相である。
そもそもこの襲撃も、昼間に仲間を殺されたからだろう。
俺にだ………。
そう、コボルトを最初に殺めたのは俺である。
きっとこれは、その報復の襲撃だ。
この村への攻撃は報復戦だろう。
村はとばっちりを受けたのかも知れない。
コボルトたちは村人の誰かに仲間を殺されたのだと、勘違いしているのだろう。
だとするならば、俺には責任がある。
ここでコボルトたちと戦う義務がある。
例え、全裸でもだ!
俺はこちらに向かって走って来るコボルト三匹を、堂々と全裸で待ち構える。
そして、残り五メートルぐらいのところでコボルトの一匹に薪割り斧を投げ付けた。
薪割り斧はザクリとコボルトの胸に突き刺さる。
斧がヒットしたコボルトは、もんどりうって倒れた。それっきり動かなくなる。
これであと二匹だ!
「うしゃあ、行ける行ける!」
順々に迫るコボルト二匹。
二匹目がショートソードを頭より高く振りかぶったので、俺は素早く腕を限界まで長く伸ばしてショートソードの切っ先を突き立てた。
刀身がコボルトの胸に突き刺さる。
手応え有りだ。
背中まで貫通したのが、刺さった長さで分かった。
持っていたショートソードを手から落としたコボルトの重心が、俺のショートソードにのし掛かって来た。
絶命したと分かるぐらいの重さだった。
刺さったショートソードを抜くよりも、こいつが落としたショートソードを拾ったほうがはやそうだったので、俺はショートソードが刺さったままのコボルトの死体を、三匹目に目掛けて蹴り跳ばした。
仲間の死体を避けたコボルトが、僅かに動きを止める。
俺はその隙に、落ちていたショートソードを拾い上げた。
そして、三匹目のコボルトに振るう。
三匹目のコボルトは俺の一太刀をショートソードで受け止めた。
ここで、鍔迫り合いが始まる。
だが、こっちは一人だったから呑気に力比べをしてられない。
新手が来る前に勝負を決めたい。
なので、一気に攻める。
俺は全力で押した次の瞬間にショートソードを引いて身体を横に逃がした。
すると、勢い余ったコボルトが前につんのめる。
その隙に俺はショートソードでコボルトの腹を切った。
しかし、一撃では決まらない。
傷は浅い。
コボルトはよろめくが倒れなかったので、とどめの一振を繰り出した。
コボルトの喉仏をカッ切る。
「決まっただろ!」
喉を切られたコボルトは、鮮血を散らしながら倒れた。
間違いなくの致命傷。
俺の勝ちである。
その時であった。
頭の中に女性の声が響く。
【おめでとうございます。レベル4になりました!】
よし、レベルアップだ。
コボルト一匹25点の経験値のはずだから、四匹倒して100点だな。
すると現在の経験値トータルは200点のはずである。
ステータス画面を出して見るまでもない。
て、ことはだ。
レベル5に成るのに、あと200点ぐらい稼げは良いだろう。
合計経験値400点ぐらいが、次のレベルアップの妥当な数値のはず。
と、なるとだ。
あとコボルト八匹分かな。
まだ辺りには暴れ回っているコボルトたちが沢山居る。
これなら今晩中にレベル5まで達成できそうであった。
レベルアップしながら村を救う。まさに一石二鳥である。
俺は村人を追い回しているコボルトを、逆に追った。
ばたばたとコボルトたちを狩って行く。
全裸で……。
レベルアップして、確実に強くなっている実感はあった。
【つづく】
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