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第12話【貧乏そうな村】

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俺は紐付きの巾着袋に、ルビーの原石を入れると首に下げた。

これが今一番大切なマジックアイテムだ。大事にしなくてはならない。

ルビーの原石+3。

魔法の効果は戦闘時の幸運向上×3だ。

今思い出してみても、なんだか戦闘時に幸運だったのかも知れない。

ダンジョンっぽい通路で一列に走って来るスケルトンが、重なり合うように転んでくれたり、コボルトが転がした岩にぶつかってくれたりとかだ。

もしかしたら、このルビーの原石のお陰だったのかも知れない。

だとすると、なかなか良い物を拾ったことになる。

流石は俺様の【ハクスラスキル】だ。凄いぜ。

まあ、勝ちは勝ちだ。

マジックアイテムも所有者の実力の内って、誰かが言ってたっけな。

誰だか覚えていないけれど──。

とりあえず、もう一度ステータス画面で、色々と確認しておこう。

まず、レベルは3まで上がった。

経験値は100までゲット中。

スキルを覚えて、若干は便利になったが、強くなっているかは不明だ。

実感は無いが、少しは強くなっていることを祈ろう。

そして、覚えたスキルは、【アイテム鑑定】と【魔力感知】だ。

どちらも冒険には必須だが、強さには関係無いのが寂しいな。

俺は、もっと派手にバトルをしたり、冒険したりしたかったんだがな~。

まあ、それは今後の楽しみに取っておこう。

それと、覚えた魔法は【マジックトーチ】だな。

暗い場所やダンジョンでしか役に立たない。

いいや、ここは文明が低いファンタジー世界っぽいから、簡単に光を作れるのは凄いかもしれないな。

その辺は、そこの村に下りたら、人の営みを観察してみてから結果を出そう。

先ずは世界観を正確に掴んでみないと分からんな。

あと、拾った物と言えば、ダガー+1だ。

これも【ライト】の魔法が掛かっている。

しかし、マジックトーチと効果が被っている。

あまり必要なさそうだから、金に替えようかな。

正直なところ要らないや。

お金も11Gしかないし。

よし、村に下りるぞ!

腰巻きの両脇に、ショートソード二本を刺してから俺は歩き出す。

山を下った。

目指すは麓の村だ。

そして、あっという間に到着したぞ。

村の規模は、かなり小さい。

山の上から見ていて分かってたけれど、家の数は十軒程度だった。

村の入り口には、門もなければ防壁もない。

だから警備も居ない。

どこからでも村には入れたから、俺は正面から堂々と入って行った。

村の中は呑気なものだった。

村人と思われる老人たちが、家畜の羊と一緒に日向ぼっこをしていたり、子供たちが棒を振り回してチャンバラをして遊んでいたりする。

平和そのものである。

コボルトたちに狙われていたことに気付いてないのだろう。

さて、どうしたものか……。

とりあえず、宿屋でも探そうかな。

ファンタジーで冒険の始まりと言えば宿屋だ。

この世界も宿屋と酒場はセットだろう。

てか、探すのは面倒臭いから人に訊こう。

とりあえず、チャンバラをやってる三人のキッズに訊いてみる。

「なあ、坊やたち。この村には宿屋は無いかい?」

キッズたちはチャンバラをやめて俺の周りに掛けよって来た。

身形は粗末な男の子たちであった。

ズボンしか穿いていない子。

頭に十円ハゲが出来ている子。

鼻水を垂らしている子。

どの子も埃っぽくて汚らしいし、マヌケ顔だった。

やはりこの村は貧乏なんだなと思った。

そして、上半身裸の小僧が言った。

「なんで、おにーちゃんは、靴があべこべなの?」

「俺にも色々とあったんだよ……」

俺は青い空を見上げながら言った。

ガキどもは不思議そうに俺の顔を見上げていた。

すると、俺の後方から女性の声が飛んで来る。

「あんたたち、いつまで遊んでるの。仕事を手伝いなさい!」

若い女性の声だった。

声からして可愛い。

俺が振り返ると、そこには16歳ぐらいの少女が立っていた。

ポニーテールのスカート姿。

ちょっと怒ってるような表情がいなせで可愛かった。

一目みて俺は思った。

「一目惚れ!」

だが、次の瞬間───。

「きぃぃぁぁああああ!!!」

糞女神の呪いに胸を押さえながら仰け反った俺は、地面に倒れて転がった。

まさか自分の脳内連結が、一目惚れイコール煩悩に直結しているとは本人ですら思わなかったのだ。

不覚である。

俺は死にそうなぐらいの痛みに気を失ってしまった。


【つづく】
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