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【最終章】魔王城の決戦編

最終章-30【アンの幸せ】

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「それじゃあ、帰っておやつでも食べようねぇ、テイアーちゃん」

『そうだね~、ガイアちゃん』

仲直りしたガイアとテイアーが手を繋いで歩き出す。幼女二人は繋いだ手を振ってルンルン気分で歩み出した。足取りはスキップである。その後ろをメタルキャリアが追いかけた。

三人が帰って行くと、物陰に隠れて見ていた者たちがワラワラと姿を表す。

「行っちまったぞ……」

「行ったわね……」

「なんだったんでしょうね……」

壁の隅からトーテムポールのように頭を重ねて並べるアスラン、ドクトル・スカル、ゾディアックの三名が呟いた。

「あの合法ロリたちは、なんで戦い出したんだよ。しかも、あいつらが破壊した町の被害のほうが大きくねえか……?」

アスランの質問にゾディアックが答える。

「でも、これでグレーターデーモンは、あと二体だ」

三人は近くの建物の三階に開いた穴を見上げた。レッドドラゴンのアンを追いかけてグレーターデーモンが向かった穴だ。

「どれどれ~、自然災害見たいなガキどもは帰ったから、そろそろこちらも決着を着けましょうか」

言ったのは大通りを堂々と歩く少女Aだった。その横には指をポキポキ鳴らしながらグレーターデーモンが勇ましく並んでいる。

アスランも壁の陰から姿を出した。魔女と悪魔に向かって歩き出す。覚悟が決まったのかアスランは表情を真面目に引き締めていた。

腰の鞘からグラディウスを引き抜くと、異次元宝物庫から黄金剣も取り出した。二刀を両手にぶら下げて歩む。

「やっぱり、決着を着けなきゃあならんのだろうな」

黒山羊頭を被った少女Aが足を止めた。

「覚悟が決まったようね、坊やちゃん」

「少し年上だからって舐めるなよ、キチぴーが!」

「でも、こちらにまだグレーターデーモンが一体残ってるわよ」

するとグレーターデーモンが一歩前に出た。先ずは自分と戦えと言っているような表情である。悪魔の眼光が鋭く勇ましい。

「ふんっ!!」

アスランが両剣を高く振り上げてから左右に力強く振り下ろした。気合いにブンっと風が鳴り地面から砂埃が舞う。

「ならば、先ずはそいつからぶっ倒してやるよ」

「あらあら、勇ましい。じゃあ、倒して見せてよ」

少女Aが言うなりグレーターデーモンが魔法を詠唱し始めた。灰色の巨漢の前に二つの赤い魔法陣が渦巻き出した。その魔法陣から地獄の業火が漏れ出ている。

グレーターデーモンが凄む。

「食らえ、ダブルナパームボール!!」

二つの火炎魔法が放たれた。ファイアーボールの上位魔法であるナパームボールは球体からしてファイアーボールより大きい。しかも、その大きな火球が二つ同時に飛び迫る。

アスランが腰を落として双剣を構えた。下半身に力を溜める。体は斜め、右手のグラディウスが前で左手の黄金剣が後ろだ。

「打ち落とす!」

火球の一つにアスランがスキルを飛ばす。

「ソニックウェーブ!!」

横降りの黄金剣から斬激破が発射された。その飛翔する斬激がナパームボールの一つを切り裂いて爆発させる。

直後、灼熱の業火が周囲に吹き荒れた。まるで砂漠の大火災のような灼熱突風だった。その火炎の中からもう一発のナパームボールが飛んで来る。

「ウェポンスラッシュ!!」

今度はグラディウスでスキル技を繰り出すアスラン。縦切りの斬打。その一撃で切り裂かれた火球が二つに割れてアスランの左右を過ぎて行く。

そして、背後で二つが爆発した。その爆風を背に浴びたアスランが勢いを乗せて前に跳ねる。

爆炎に押されたアスランの動きは、まるで弾丸のようなダッシュだった。10メートルほどあったグレーターデーモンとの間合いを瞬時の跳躍で詰める。

「蹴り返してやる!」

グレーターデーモンの中段廻し蹴り。

だが、アスランは地面を一つ蹴ってジャンプした。膝を胸元に引き寄せクルリと回転しながら廻し蹴りを飛び越える。

「チョロい!」

そして、回避しながら前に出る。

前に出るだけじゃあなかった。空中で回転しながら刃を突き出してグレーターデーモンの蹴り足を攻めていた。グレーターデーモンの脹脛から鮮血が舞い散る。傷は浅いがグラディウスの刀身はヒットしていた。その一打がグレーターデーモンの隙を広げる。

「むっ!」

若干の苦痛。それがグレーターデーモンの次の反応に遅れを生じさせていた。

「もろうたぜっ!!」

グレーターデーモンの眼前に迫るアスランが空中で身体を伸ばして双剣を振り上げる。弓形にしなる全身が勢いを溜めていた。二本のロングソードが高く振り上げられている。

「畜生っ!!」

アスランの攻撃を回避出来ないと悟ったグレーターデーモンが相貌を見開く。その視界にアスランの股間が飛び迫って来た。

「えっ……!?」

キィーーーーン!!

「ぐほっ!!」

「ぬおっ!!」

アスランの攻撃が失敗した。跳びすぎたアスランが間合いを見誤り股間をグレーターデーモンの顔面に激突させたのだ。そのままグレーターデーモンを押し倒す。

股間を顔面に食らったグレーターデーモンは転倒して後頭部を地面に叩き付けた。しかも、顔面の上にアスランの股間が押し潰すように降って来る。

「ぎゃふんっ!!」

「うほほっ!!」

グレーターデーモンの顔面に股間を押し付けるように転倒したアスランの漢塊にも激痛の雷撃が走った。女性には理解出来ない激痛が前進を上下して暴れまわる。

「ぐぅぞぉぉ……」

「ふぬぬぬっ!!」

股間を押さえながら横たわるアスランは小刻みに痙攣して動かない。一方のグレーターデーモンは鼻を両手で押さえながらのたうち回っていた。

そんなお間抜けを見ていた少女Aが脱力しながら呟く。

「何をしてるんだ、このバカどもは……」

周りの者たちも呆れて脱力していた。その場に立ち込めていた緊張感が一気に薄らぎ消えて行く。

全員が呆れていた。そんな中で、建物の三階に開いた穴から二つの声が飛んで来る。

「みんな!」

「デビル嬢様!」

「えっ?」

皆の視線が声の主たちに集まった。

三階の穴にはレッドドラゴンのアンとグレーターデーモンの一体が並んで立っていた。二人は何故か仲良く手を繋いでいる。

そして、グレーターデーモンが声を張った。

「デビル嬢様、それに皆様にご報告があります!」

何事かと、その場に居る全員が二人を見上げていた。

二人が声を揃える。

「僕たち!」

「私たち!」

「「結婚します!!」」

「「「はぁ~~~~~~~~~!!!」」」

アンとグレーターデーモンの台詞に全員が全力で脱力した。

ドクトル・スカルが問う。

「あ、あんたら、何をいきなり言い出すんだ。今までその部屋で何をしていたんだい!!」

アンとグレーターデーモンは俯きながら頬を赤らめると恥ずかしそうに答えた。その手と手は熱く握り締められている。

「二人で愛を確かめあってました、てへ♡」

「初めてを捧げてました、てへ♡」

「「「「……………」」」」

呆れ返った周囲が完全に静まり返っていた。誰も何も語ろうとしない。

愛する者同士で手を繋ぐアンとグレーターデーモンは、ただただ赤面しながらモジモジしている。しかし、何だか幸せそうである。

皆が唖然とする中で股間の激痛を耐えながら立ち上がったアスランが脂汗を流すと一言述べた。

「し、幸せになれよ……」

アンが満面の笑みで応える。

「ありがとう、アスラン!」


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