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【第十五章】暗闇のハイランダーズ編
15-12【ハムナプトラ】
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「ハムナプトラ、ここがお前の部屋か?」
「はい、そうですよ。どちらかと言えば工房でしょうかね。寝室はもう少し奥です」
俺が案内された場所は、上の階の墓地にあった正面の扉をくぐった先だった。
その扉をくぐってしばらく歩いたところにハムナプトラの工房があるのだが、入るまで厳重な戸締まりが施されていた。
三重のシークレットドアの先にフォーハンドスケルトンが二十体控えていて、そこに巨大なフォーハンドスケルトンが一体立っていた。
もう巨大過ぎてスケルトンと呼ぶよりゴーレムだ。
「こりゃあ~、立派なボーンゴーレムだな」
俺は3メートルほどある高さのフォーハンドボーンゴーレムを見上げながら呟いた。
するとドヤ顔でハムナプトラが訊いて来る。
「流石のアスラン殿でもこのフォーハンド巨人には勝てないでしょう。何せ私の自信作ですからね!」
俺は横に立つハムナプトラのミイラ顔を見ながら言う。
「じゃあ、戦ってみてもいいか?」
「えっ……?」
ハムナプトラは予想外の言葉に惚けていた。
剥き出しとなった眼球が丸々と驚いている。
「俺は4メートルのサイクロプスにも勝ってるから、このぐらいなら勝てると思うぞ。それに丁度良い経験値稼ぎになるから戦ってみたいぜ」
ハムナプトラが鼻水を垂らしながら訊く。
「サイクロプスに勝ってるのですか……?」
「ああ、勝ってるよ」
「一人でですか……?」
「当然だ。しかも今は和解して仲間だぞ。今は一緒に旧魔王城で暮らしてる」
「うわぁ……。凄いですね……」
「まあ、ここがお前の工房であり、最終防衛ラインなんだな」
「はい、そうです。奥が寝室になります」
俺は奥の寝室に通される。
「確かこの辺にあったと思ったのですが……」
俺を寝室に招き入れたハムナプトラは、部屋の隅にある大きな木箱の中を掻き回すように何かを探していた。
部屋のサイズは15メートル四方ぐらいの部屋だろうか。
くたびれた感は強いがベッドやテーブルなどの家具がちゃんと揃っていた。
しかし食器らしい物は少ない。
確かこいつは僅かな水だけで生きられるらしいから、食器は要らないのかな。
その代わりに樽が幾つか置いてあった。
たぶん中身はスライムから絞った水なのだろうさ。
俺はなんとなく好奇心に引かれて樽の蓋を開けてみる。
中を覗き見ると、そこには赤色のスライム自体が詰まっていた。
「み、水じゃあねえぞ……」
げんなりした俺が樽の蓋を閉めると同時にハムナプトラが声を上げた。
「ありましたー。ありましたよ、アスラン殿!」
「おっ、あったか、ハムナプトラ!」
ハムナプトラが木箱内から探しだした物は、四枚に折り畳まれた羊皮紙だった。
魔力感知で見てみれば、青く輝いている。
間違いない、あれはマジックアイテムだ。
「ではでは、早速中身を見てみましょう」
ハムナプトラは折り畳まれた羊皮紙を開いてテーブルの上に広げた。
その羊皮紙は白紙である。
「本当にこれにダンジョンの構造が浮かび上がるのか?」
「はい、それは本当ですよ。変革大移動の度に周囲を探るのに私が使っていますから」
「ならば、信用してやろう」
そんな会話を俺たちがしている間にも、テーブルの上に広げた羊皮紙に、ダンジョンの構造が浮かび上がって来る。
「おお、本当だ!」
「でしょう~」
確かに羊皮紙にはダンジョンの構造が浮かび上がって来ていた。
だが、その図面は今俺たちが居る部屋を中心に、おそらく半径50メートル範囲の構造っぽい。
「これは昔この閉鎖ダンジョン内で手に入れたマジックアイテムですが、どうやら閉鎖ダンジョン内しか自動マッピングしないようなのですよ」
「あら、万能じゃあないのね……」
俺は羊皮紙のマップを手に取りアイテム鑑定を試みた。
【魔法の閉鎖ダンジョンマップ+1】
マップを中心に半径50メートル以内を自動マッピングして図面とし表示する。
「なるほど、この閉鎖ダンジョン限定なのね」
「ですが、貸すだけですからね。テイアー様の研究室を見つけたら、ちゃんと返してくださいね」
「ああ、分かってる。ちゃんと返すよ」
「道中で死んだりしないでくださいよ。そんな詰まらないことで紛失とかされたら堪らないですからね」
「死ぬか、ボケ!」
「なんならフォーハンドの護衛を付けましょうか?」
「要るか、ボケ!」
「本当に大丈夫かな~?」
「五月蝿いぞ、このハゲ野郎!!」
「はいはい、分かりました分かりました。あなただってハゲてるのに……」
ウザイ!!
このオカン見たいな対応がウザイぞ!!!
「ハムナプトラ。あと、もう一つ頼みたいことがあるんだが、いいか?」
「なんですか、アスラン殿?」
「ちょっとこの部屋に絨毯を敷かせてもらいたいんだが、いいか?」
「絨毯?」
「そう、転送絨毯だ」
「転送絨毯とは?」
説明が面倒臭いと思った俺は、許可をもらうよりも早く転送絨毯を部屋の中央に敷いた。
「これで魔王城のキャンプと繋がるんだ」
「まだ、言っている意味が分かりませんが?」
「じゃあ俺と一緒にここに乗れ」
「はい……」
ハムナプトラは俺と一緒に転送絨毯に乗った。
それから俺は合言葉を口にする。
「チ◯コ」
「!!!!!!」
俺たちは瞬時に魔王城のキャンプに転送された。
俺がテントの中から出て行くと、恐る恐るハムナプトラもテントから出る。
「ここは……」
テントの外は夕暮れだった。
まだ作業員のエルフたちが土木作業に励んでいる。
サイクロプスのミケランジェロも木材を担いで運んでいた。
「ほ、本当にサイクロプスが居るんですね……」
「ここが俺が建設中の町だ。あれを見て見ろ」
俺は湖に浮かぶ魔王城を指差した。
バックに夕日を映す魔王城が聳えている。
「あれが、魔王城……」
「中古物件だがな。ハムナプトラ、魔王城を見るのは初めてか?」
「はい、何せ地上に出るのが1000年ぶりぐらいですから……」
「うわっ、超長寿!?」
てか、こいつ──。
「お前、アンデッド見たいな姿だけど、日差しを浴びても平気なんだな?」
ハムナプトラは夕日を背負う魔王城を眺めながら答えた。
「ええ、私は人間ですからね。ただ、この世界に転生してくる際に、不老を望んだんですよ」
異世界転生者キターー!!
しかもチートスキルが不老かよ!!
「ですが月日が経つに連れて、この外見に変貌して、結局地下に逃げたわけです……」
俺とハムナプトラが話していると、そろそろ作業を終了するエルフたちの声が響いた。
「よーし、今日の作業は終わりだ~。村に帰って一杯やるぞ!」
「おーー!!」
ぞろぞろとエルフとミケランジェロが帰って行くと、夕日がクレーター山脈に沈んで周囲が一気に暗くなる。
すると大臣ズの亡霊を引き連れたゴリがやって来た。
「よう、アスラン」
「おう、ゴリ。これから夜勤か?」
「ああ、大臣ズのボーンゴーレムを使って土木だよ。てか、なんでお前ハゲてるん……。ぷぷっ」
「笑うな、ゴリ。お前だってツルッパゲだろ!」
俺とゴリが話していると、ハムナプトラが大臣ズの亡霊を指差しながら言う。
「なんで人間とレイスが一緒に居るんですか……?」
ゴリが不思議そうな顔で言う。
「何を言ってるんだ、こいつは?」
俺も「さあ?」と答える。
同様を露にするハムナプトラがゴリに訊いた。
「あなたはネクロマンサーですか!?」
「いや、違うけど?」
「じゃあなんでレイスたちと一緒に居るんですか!?」
「だって俺は夜間監督だからな。ボーンゴーレムを操る大臣たちに的確な指示を出さないとならん」
「いや、そうじゃあなくって!!」
「んん?」
首を傾げるゴリ。
俺はハムナプトラのハゲ頭に片手を乗せながら言う。
「まあ、落ち着け」
ハムナプトラが俺の手を払う。
「落ち着いてられますか。だって私の外観を見ても驚かないのですよ!?」
今度はゴリがハムナプトラのハゲ頭に手を乗せながら言う。
「だってただのミイラだろ?」
ゴリも手を払われた。
「ただの……?」
ハムナプトラがゴリの言葉に呆然としている。
その時であった。
俺は背後に強い霊気を感じ取る
「この霊気は!?」
その刹那だった。
俺が振り返るよりも早く背後から抱き付かれた。
完全にバックを取られている。
動けない。
冷たい腕の感触だったが俺の頭を挟み込むふくよかな二つの球体は心地好かった。
俺の頭はマミーレイス婦人の魔乳の谷間に挟み込まれている。
「旦那様、お帰りなさいませでございますわ~♡」
「リッチ!!!!!」
ハムナプトラはビー玉のような眼球が飛び出しそうなぐらいに驚いていた。
「何故にリッチが!!!」
マミーレイス婦人が俺の頭を胸元に挟み込んだまま問う。
「あら、旦那様。こちらの御方はどなたですか?」
「ああ、こいつはハムナプトラだ」
俺を胸の谷間から解放したマミーレイス婦人が丁寧にお辞儀をしながら言う。
「いつも夫がお世話になっております」
「いつもお世話になってねーし! 何より夫じゃあねーーし!!」
ハムナプトラは鼻水を垂らしながら述べた。
「レイスにリッチ……。なるほどです……。ここの住人はアンデッドに慣れているようで……」
「ここは変態が多いからな。差別が少ないんだよ」
「お前が一番の変態だろ!」
ゴリに肘打ちで突っ込まれた。
ハムナプトラは俯いたまま呟く。
「す、素晴らしい……」
そして、一気に顔を上げる。
「アスラン殿、私もここに住んで良いでしょうか!!」
「いいよ」
俺は安易に答えた。
まあ、悩むことは無いだろう。
「ただしだ。ここは人間と他種族が平和に暮らせる町を目指している。だから暴力は許すが差別や弱いもの苛めはダメだぞ。泥棒だからって直ぐに殺すも駄目だ」
「ああ、地上ルールってやつですね」
「あと、労働も絶対だ。働かざる者食うべからず。ここでは労働をしないやつは、居場所も無いからな」
「労働ですか──。それなら問題無いです。私はネクロマンサーでゴーレムマスターですよ。それに閉鎖ダンジョン内にあるフォーハンドスケルトンを連れて来たならば、相当の労働力になりますぞ!」
あー、あのフォーハンドスケルトンは労働力に頼もしいな。
今は労働者不足で作業が進んでいない。
魔王城の町建設に大いに役立つかも知れんぞ。
「よし、分かった。明日の朝スカル姉さんに話して旧魔王城の住人として登録してもらうから!」
「感謝しますぞ、アスラン殿!!」
するとゴリが俺に耳打ちしながら訊いてきた。
「住人登録って、あったのか?」
「今後その辺の管理も検討だな……」
「はい、そうですよ。どちらかと言えば工房でしょうかね。寝室はもう少し奥です」
俺が案内された場所は、上の階の墓地にあった正面の扉をくぐった先だった。
その扉をくぐってしばらく歩いたところにハムナプトラの工房があるのだが、入るまで厳重な戸締まりが施されていた。
三重のシークレットドアの先にフォーハンドスケルトンが二十体控えていて、そこに巨大なフォーハンドスケルトンが一体立っていた。
もう巨大過ぎてスケルトンと呼ぶよりゴーレムだ。
「こりゃあ~、立派なボーンゴーレムだな」
俺は3メートルほどある高さのフォーハンドボーンゴーレムを見上げながら呟いた。
するとドヤ顔でハムナプトラが訊いて来る。
「流石のアスラン殿でもこのフォーハンド巨人には勝てないでしょう。何せ私の自信作ですからね!」
俺は横に立つハムナプトラのミイラ顔を見ながら言う。
「じゃあ、戦ってみてもいいか?」
「えっ……?」
ハムナプトラは予想外の言葉に惚けていた。
剥き出しとなった眼球が丸々と驚いている。
「俺は4メートルのサイクロプスにも勝ってるから、このぐらいなら勝てると思うぞ。それに丁度良い経験値稼ぎになるから戦ってみたいぜ」
ハムナプトラが鼻水を垂らしながら訊く。
「サイクロプスに勝ってるのですか……?」
「ああ、勝ってるよ」
「一人でですか……?」
「当然だ。しかも今は和解して仲間だぞ。今は一緒に旧魔王城で暮らしてる」
「うわぁ……。凄いですね……」
「まあ、ここがお前の工房であり、最終防衛ラインなんだな」
「はい、そうです。奥が寝室になります」
俺は奥の寝室に通される。
「確かこの辺にあったと思ったのですが……」
俺を寝室に招き入れたハムナプトラは、部屋の隅にある大きな木箱の中を掻き回すように何かを探していた。
部屋のサイズは15メートル四方ぐらいの部屋だろうか。
くたびれた感は強いがベッドやテーブルなどの家具がちゃんと揃っていた。
しかし食器らしい物は少ない。
確かこいつは僅かな水だけで生きられるらしいから、食器は要らないのかな。
その代わりに樽が幾つか置いてあった。
たぶん中身はスライムから絞った水なのだろうさ。
俺はなんとなく好奇心に引かれて樽の蓋を開けてみる。
中を覗き見ると、そこには赤色のスライム自体が詰まっていた。
「み、水じゃあねえぞ……」
げんなりした俺が樽の蓋を閉めると同時にハムナプトラが声を上げた。
「ありましたー。ありましたよ、アスラン殿!」
「おっ、あったか、ハムナプトラ!」
ハムナプトラが木箱内から探しだした物は、四枚に折り畳まれた羊皮紙だった。
魔力感知で見てみれば、青く輝いている。
間違いない、あれはマジックアイテムだ。
「ではでは、早速中身を見てみましょう」
ハムナプトラは折り畳まれた羊皮紙を開いてテーブルの上に広げた。
その羊皮紙は白紙である。
「本当にこれにダンジョンの構造が浮かび上がるのか?」
「はい、それは本当ですよ。変革大移動の度に周囲を探るのに私が使っていますから」
「ならば、信用してやろう」
そんな会話を俺たちがしている間にも、テーブルの上に広げた羊皮紙に、ダンジョンの構造が浮かび上がって来る。
「おお、本当だ!」
「でしょう~」
確かに羊皮紙にはダンジョンの構造が浮かび上がって来ていた。
だが、その図面は今俺たちが居る部屋を中心に、おそらく半径50メートル範囲の構造っぽい。
「これは昔この閉鎖ダンジョン内で手に入れたマジックアイテムですが、どうやら閉鎖ダンジョン内しか自動マッピングしないようなのですよ」
「あら、万能じゃあないのね……」
俺は羊皮紙のマップを手に取りアイテム鑑定を試みた。
【魔法の閉鎖ダンジョンマップ+1】
マップを中心に半径50メートル以内を自動マッピングして図面とし表示する。
「なるほど、この閉鎖ダンジョン限定なのね」
「ですが、貸すだけですからね。テイアー様の研究室を見つけたら、ちゃんと返してくださいね」
「ああ、分かってる。ちゃんと返すよ」
「道中で死んだりしないでくださいよ。そんな詰まらないことで紛失とかされたら堪らないですからね」
「死ぬか、ボケ!」
「なんならフォーハンドの護衛を付けましょうか?」
「要るか、ボケ!」
「本当に大丈夫かな~?」
「五月蝿いぞ、このハゲ野郎!!」
「はいはい、分かりました分かりました。あなただってハゲてるのに……」
ウザイ!!
このオカン見たいな対応がウザイぞ!!!
「ハムナプトラ。あと、もう一つ頼みたいことがあるんだが、いいか?」
「なんですか、アスラン殿?」
「ちょっとこの部屋に絨毯を敷かせてもらいたいんだが、いいか?」
「絨毯?」
「そう、転送絨毯だ」
「転送絨毯とは?」
説明が面倒臭いと思った俺は、許可をもらうよりも早く転送絨毯を部屋の中央に敷いた。
「これで魔王城のキャンプと繋がるんだ」
「まだ、言っている意味が分かりませんが?」
「じゃあ俺と一緒にここに乗れ」
「はい……」
ハムナプトラは俺と一緒に転送絨毯に乗った。
それから俺は合言葉を口にする。
「チ◯コ」
「!!!!!!」
俺たちは瞬時に魔王城のキャンプに転送された。
俺がテントの中から出て行くと、恐る恐るハムナプトラもテントから出る。
「ここは……」
テントの外は夕暮れだった。
まだ作業員のエルフたちが土木作業に励んでいる。
サイクロプスのミケランジェロも木材を担いで運んでいた。
「ほ、本当にサイクロプスが居るんですね……」
「ここが俺が建設中の町だ。あれを見て見ろ」
俺は湖に浮かぶ魔王城を指差した。
バックに夕日を映す魔王城が聳えている。
「あれが、魔王城……」
「中古物件だがな。ハムナプトラ、魔王城を見るのは初めてか?」
「はい、何せ地上に出るのが1000年ぶりぐらいですから……」
「うわっ、超長寿!?」
てか、こいつ──。
「お前、アンデッド見たいな姿だけど、日差しを浴びても平気なんだな?」
ハムナプトラは夕日を背負う魔王城を眺めながら答えた。
「ええ、私は人間ですからね。ただ、この世界に転生してくる際に、不老を望んだんですよ」
異世界転生者キターー!!
しかもチートスキルが不老かよ!!
「ですが月日が経つに連れて、この外見に変貌して、結局地下に逃げたわけです……」
俺とハムナプトラが話していると、そろそろ作業を終了するエルフたちの声が響いた。
「よーし、今日の作業は終わりだ~。村に帰って一杯やるぞ!」
「おーー!!」
ぞろぞろとエルフとミケランジェロが帰って行くと、夕日がクレーター山脈に沈んで周囲が一気に暗くなる。
すると大臣ズの亡霊を引き連れたゴリがやって来た。
「よう、アスラン」
「おう、ゴリ。これから夜勤か?」
「ああ、大臣ズのボーンゴーレムを使って土木だよ。てか、なんでお前ハゲてるん……。ぷぷっ」
「笑うな、ゴリ。お前だってツルッパゲだろ!」
俺とゴリが話していると、ハムナプトラが大臣ズの亡霊を指差しながら言う。
「なんで人間とレイスが一緒に居るんですか……?」
ゴリが不思議そうな顔で言う。
「何を言ってるんだ、こいつは?」
俺も「さあ?」と答える。
同様を露にするハムナプトラがゴリに訊いた。
「あなたはネクロマンサーですか!?」
「いや、違うけど?」
「じゃあなんでレイスたちと一緒に居るんですか!?」
「だって俺は夜間監督だからな。ボーンゴーレムを操る大臣たちに的確な指示を出さないとならん」
「いや、そうじゃあなくって!!」
「んん?」
首を傾げるゴリ。
俺はハムナプトラのハゲ頭に片手を乗せながら言う。
「まあ、落ち着け」
ハムナプトラが俺の手を払う。
「落ち着いてられますか。だって私の外観を見ても驚かないのですよ!?」
今度はゴリがハムナプトラのハゲ頭に手を乗せながら言う。
「だってただのミイラだろ?」
ゴリも手を払われた。
「ただの……?」
ハムナプトラがゴリの言葉に呆然としている。
その時であった。
俺は背後に強い霊気を感じ取る
「この霊気は!?」
その刹那だった。
俺が振り返るよりも早く背後から抱き付かれた。
完全にバックを取られている。
動けない。
冷たい腕の感触だったが俺の頭を挟み込むふくよかな二つの球体は心地好かった。
俺の頭はマミーレイス婦人の魔乳の谷間に挟み込まれている。
「旦那様、お帰りなさいませでございますわ~♡」
「リッチ!!!!!」
ハムナプトラはビー玉のような眼球が飛び出しそうなぐらいに驚いていた。
「何故にリッチが!!!」
マミーレイス婦人が俺の頭を胸元に挟み込んだまま問う。
「あら、旦那様。こちらの御方はどなたですか?」
「ああ、こいつはハムナプトラだ」
俺を胸の谷間から解放したマミーレイス婦人が丁寧にお辞儀をしながら言う。
「いつも夫がお世話になっております」
「いつもお世話になってねーし! 何より夫じゃあねーーし!!」
ハムナプトラは鼻水を垂らしながら述べた。
「レイスにリッチ……。なるほどです……。ここの住人はアンデッドに慣れているようで……」
「ここは変態が多いからな。差別が少ないんだよ」
「お前が一番の変態だろ!」
ゴリに肘打ちで突っ込まれた。
ハムナプトラは俯いたまま呟く。
「す、素晴らしい……」
そして、一気に顔を上げる。
「アスラン殿、私もここに住んで良いでしょうか!!」
「いいよ」
俺は安易に答えた。
まあ、悩むことは無いだろう。
「ただしだ。ここは人間と他種族が平和に暮らせる町を目指している。だから暴力は許すが差別や弱いもの苛めはダメだぞ。泥棒だからって直ぐに殺すも駄目だ」
「ああ、地上ルールってやつですね」
「あと、労働も絶対だ。働かざる者食うべからず。ここでは労働をしないやつは、居場所も無いからな」
「労働ですか──。それなら問題無いです。私はネクロマンサーでゴーレムマスターですよ。それに閉鎖ダンジョン内にあるフォーハンドスケルトンを連れて来たならば、相当の労働力になりますぞ!」
あー、あのフォーハンドスケルトンは労働力に頼もしいな。
今は労働者不足で作業が進んでいない。
魔王城の町建設に大いに役立つかも知れんぞ。
「よし、分かった。明日の朝スカル姉さんに話して旧魔王城の住人として登録してもらうから!」
「感謝しますぞ、アスラン殿!!」
するとゴリが俺に耳打ちしながら訊いてきた。
「住人登録って、あったのか?」
「今後その辺の管理も検討だな……」
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