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【第十三章】魔王城攻略編

13-17【ラブロマンス再び】

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ソドムタウン外れの洋館で行われた町作り会議が終わった。

俺は食堂を出た廊下をスカル姉さんたちと歩んでいる。

そして、洋館の出口を目指す。

俺とギルガメッシュの背後に続くスカル姉さんの横には、当たり前のようにゾディアックさんが並んで歩いていた。

二人は何やら真面目な話をしている。

ほとんどスカル姉さんがゾディアックさんに幾ら出せるかと、お金の話ばかりを振っていた。

まるでゆすりたかりのようである。

でも、それでありながらゾディアックさんは微笑みながら会話を続けている。

正直、ゾディアックさんはスカル姉さんの何処が好きなのだろうか?

俺には今一理解できない。

年増だし、お金にはガメついし、暴力的だし、髑髏の変な仮面をいつも被ってるしさ。

まあ、女性の好みも十人十色ってことなのだろう。

俺たちが玄関を出ると黒馬車がこちらに向かって来る。

その黒馬車を待っている間にギルガメッシュが言った。

「アスラン。お前がポラリス嬢と親しくて助かったぞ」

「そうなのか、ギルマス?」

「魔王城の取得に口利きしてくれたのは彼女だ。彼女が王国を動かしたと言えるぞ」

「へー、そーなんだー」

俺は詰まらなそうに相槌を入れた。

「お前、ポラリス嬢と何があった?」

「以前ゴモラタウンで仕事をしたときにいろいろとね……」

「ラブロマンスか?」

ギルガメッシュが悪ガキっぽく微笑みながら肘で俺の肩を小突く。

俺はムスっとした表情で答えた。

「そんなんじゃあねえよ……」

確かにポラリスは美人だが、ちょっとツンツンしすぎなんだよね。

あと、ゴリラパワーだしよ。

俺は淑やかで巨乳系の美少女が好みなのだ。

まあ、俺の好みは置いといて──。

そんな話をしていると、俺らが乗って来た黒馬車が目の前に到着する。

「じゃあ、俺ら帰るから……」

そう言い残し俺は黒馬車に乗り込んだ。

しかし、なかなかスカル姉さんが馬車に乗り込んで来ない。

何故だろうと俺が外を見たら、スカル姉さんがゾディアックさんと一緒に後退りながら馬車から離れて行く。

えっ、なに?

これから二人でデートでもして行くのかな?

いや、そんなわけないか。

「おーーい、スカル姉さん。どうしたんだ?」

そう、俺が外に声を掛けた刹那だった。

ドガァアアアンンーーーン!!!

っと、俺の乗った黒馬車が粉砕した。

「なんだっ!!??」

俺は粉砕した馬車から投げ飛ばされる。

壊れた馬車の破片と一緒に飛んだ後に芝生の上を転がった。

なんなんだ!?

マジで分からねえぞ!?

爆弾テロか!?

俺が粉砕した黒馬車のほうを見たら、馭者が馬と一緒に慌てて逃げて行くところだった。

砕けて潰れた黒馬車から粉塵が上がり、周囲の空気を濁していた。

その埃の中からポラリスが現れる。

「かっかっかっ~」

ニヤリと怪しく笑っていやがる。

その姿は先程までのドレス姿ではなく、フルプレートに羽根つきの赤いマントを靡かせていた。

着替えて来たのかな?

そして、肩には巨大戦鎚を背負っていやがった。

ジャイアントハンマーだ。

俺はスーツに付いた埃を払いながら立ち上がる。

そして、ポラリスを睨みながら言った。

「てめー、ポラリス……」

「カッカッカッ。久しぶりじゃのお、アスラン様!」

この野郎!!

不意打ちをぶちかましといて笑っていやがるぞ。

完全にふざけているな。

「どうです、久々にスパーリングでもシャレこみませんか?」

「上等だ!!」

俺は異次元宝物庫から斬馬刀を引き出した。

防具は付けて無いが、まあいいだろうさ。

この勝負、承けてたってやるぞ。

「ほほう、ハルバードですか」

「そっちのジャイアントハンマーに、長さだけでも合わせてやったんだよ」

「レディーにお気遣い感謝しますぞ」

何がレディーだ。

このゴリラパワーガールが!!

「では、参ります!!」

巨大戦鎚を振りかぶったポラリスが走って来た。

本人より重たそうなジャイアントハンマーを持った乙女の走りでは無いな。

力強く速い。

「ぜぇぇえええいい!!」

そして、巨大戦鎚での横振り攻撃。

そのスイング速度は鋭利な長剣並みの速さだった。

前より攻撃速度も上がってやがるぞ。

俺は斬馬刀を縦に立てて巨大戦鎚を受け止める。

「のぉぁあああ!!」

重い!!

なんつうパワーじゃ!?

俺は打ち飛ばされて後退する。

そこに今度は縦振りのハンマー攻撃。

切り返しも速いな。

だが俺は、二打目の攻撃を半身だけ動かして容易く躱した。

狙いを外したジャイアントハンマーが地面を抉りながら突き刺さった。

地面が衝撃に轟く。

かなりパワーもスピードもアップしているぞ。

──しているが、それは俺とて同じだ。

「相変わらず単純なパワープレイだな!」

言いながら頭部を地面にめり込ませたハンマーの首を俺は足で踏んで動きを封じる。

「芸がワンパターンだぞ、ポラリス!」

俺は武器を封じたポラリスの首を狙って斬馬刀を振るった。

当然ながら寸止めするつもりだ。

しかし──。

「ワンパターンも、極めればスタイルなのじゃ!!」

「なにっ!?」

ポラリスがハンマーを踏んでいる俺の体ごと武器を振り上げた。

そのパワーに俺の体が宙に飛ばされる。

「わぁーおー!!」

ポラリスもやるな。

ワンパターンなパワープレイを自分のスタイルまで磨き上げているよ。

パワーを更に極めて超パワーで攻めてきやがった。

ちょっとやそっとで対策できないレベルまで高めてますな~。

「だが!」

俺は着地と同時に前に走った。

斬馬刀を槍のように構えて突進する。

「その強気な思い、どこまでやれるかな!?」

突き!!

俺はポラリスの腹部を狙って斬馬刀で突いた。

その一打をポラリスは横に回避した後に、ハンマーの頭で引っかけるように地面へ叩き付ける。

「ぬっ!?」

抜けない!?

斬馬刀の刀身が巨大戦鎚に引っ掛かって抜けない。

だが、これではお互いに武器が封じられているも同じだ。

ポラリスが次の攻撃のためにハンマーを振り上げた瞬間に、よーいドンになる。

それならば、まだ軽い斬馬刀のほうが有利だ。

ならば、勝ったな!!

「甘いですわぁ!」

「えっ……?」

ポラリスの手元から閃光が煌めいた。

刃物の光だ。

俺は斬馬刀から手を離し、煌めく閃光から身を躱した。

俺の鼻先を刃物の切っ先が過ぎる。

「ちっ……」

ポラリスが振るったのは細身の短刀だった。

巨大戦鎚の柄を鞘にして、根元から引き抜かれた隠し武器だ。

「今の不意打ちを躱すなんて、流石はアスラン様ですわ」

「うわ~……。パワープレイ一辺倒に見せかけて、あざとい高速攻撃か。目が慣れてない分だけ怖かったぞ……」

こいつ、策を弄して来やがった。

パワープレイヤーだからって馬鹿だと思い込んでいたぜ。

小賢しい小細工も出きるのね。

危ない危ない……。

「今日はこの辺にしておきましょう、アスラン様」

ポラリスはハンマーの柄鞘に短刀を戻すと、斬馬刀を絡めとるように巨大戦鎚を振り上げた。

そして、巨大戦鎚を巧みに振り回し、同時に斬馬刀おも絡めるように宙で振り回す。

うわ、器用だな……。

本当にジャイアントハンマーを体の一部にしているよ。

こいつ、パワーだけでなく、技術も磨いてやがったな。

「武器をお返しします、アスラン様」

ポラリスが巨大戦鎚を軽々振るうと、斬馬刀が俺のほうに飛んで来る。

俺は回避しながら斬馬刀をキャッチした。

「ポラリス……」

「何かしら?」

「お前、相当稽古しているだろ?」

「花嫁修業ですからの~」

「とんでもないマナー講座だな……」

「うふっ♡」

ポラリスが満足気に微笑んだ。

褒められて嬉しいのかな?

単純な奴め。

「リストレイントクロス!!」

「ぎぃゃやああ!?」

突如俺の放った✕の字魔法にポラリスが動きを封じられた。

【魔法リストレイントクロスLv2】
攻撃力は無し。束縛属性。X 字の弾丸が敵の動きを封じる。射程距離5メートルの魔法。一日に撃てる回数は、スキルレベル分だけ撃てる。

よし、逃げるぞ!!

いや、その前に、折角拘束された娘が目の前に居るのだから、乳でも一揉みしてから……、あたったったぁ……。

心臓が……。

まあ、今日は逃げるかな。

走り出した俺はスカル姉さんに言う。

「スカル姉さーーん。俺、先に帰ってるから~!!」

「はーーい、気を付けてな~」

最後にポラリスの怒声が聞こえて来た。

「アスラン様ーー、酷ぃぃいい、ぐぐぐうう!!!!」




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