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【第七章】魔王城へ旅立ち編

7-15【魔王城へ旅立ち】

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その晩の話である。

俺はバイマン&ゴリとの三人で、更地の狭苦しいテントで寝ることにした。

テントの中に右から俺、バイマン、ゴリの順で並んでいる。

男ばかりで寿司積めのテント内は野郎臭くて堪らない。

まさに独身臭が充満しているのだ。

俺は寝袋内でモジモジと動きながら唸る。

「うぅ……、狭い……」

そもそも一人か二人用の小型テントなのだ、3人では狭くて当然である。

「おい、カイマン。もうちょっと詰めてくんないか?」

「バイマンです。それにゴリさんが大き過ぎて狭いんですよ」

「俺がデカイのは産まれつきだ。仕方ないだろ。それより毛布を引っ張るなよ」

「ゴリさんばかり毛布を一人占めして私だけ寒いじゃあないですか……」

「毛布だって一枚しかないんだ、仕方ないだろ。明日になったらテントと毛布を、人数分だけ新しく買ってくるから、今晩だけ我慢しやがれ」

「俺も寝袋が良いな~。ほら、これでも俺は冒険者だからさ」

「私は毛布派ですので、この毛布で構いませんよ」

「ああ、分かったよ。じゃあ寝袋だけ追加で買ってくるよ」

「ちょっとゴリさん、お尻を撫でないでくださいな!」

「俺は撫でてないぞ!」

「すまん、撫でたの俺だわ」

「「なんで!!」」

「もー、五月蝿いな。文句あるヤツは、スカル姉さんのテントで寝ろよな」

「「ありませーん」」

隣のテントから「なんで!!」と声が聞こえたが、男三人は綺麗に無視した。

「てか、カイマンって家があるだろ。そっち行けよな」

「バイマンです。それに、あの家は風通しが良すぎて寒いんですよ」

「そのぐらい我慢せいや」

「何より、寂しくて……」

「じゃあ、隣のテントに行けよ」

「そ、それはちょっと酷くないですか?」

すると再び隣のテントから「なんで!?」と寝言が聞こえてきた。

更にバイマンが言う。

「一人寂しくボロ屋で寝るぐらいならゴリさんの太い腕枕で眠りたいですよ」

「「なるほどね……」」

「じゃあ、寝るぞ」

「「はーーい!」」

俺たち三人は、仲良く添い寝した。

そして朝が来る。

俺は旅の準備を終えるとスカル姉さんに50000Gを預けた。

「とりあえずの建築代と、しばらくの生活費に使ってくれ。それと二人の面倒を見てやってくれないか」

「ああ、分かった。建築代には全然たらんが、このお金は大切に使わせてもらうぞ。間違っても博打で倍に増やしてやるぜ、ひゃっはー。な~んて考えないから安心してくれ」

「マジで、それだけはやめてくれないか……」

「冗談だ。マジでやるわけないだろ。私を信用しろ」

「ゴリ、悪いがスカル姉さんをちゃんと見張っててくれないか」

「うほっ」

ゴリがキリッと敬礼する。

「とりあえず、旅の期間は一ヶ月から二ヶ月ぐらいだと思う。でも転送絨毯を使ってちょくちょく帰って来るからさ」

「ああ、転送絨毯はそのままお前のテント内に広げて置くから心配するな」

「あと、テントを一つ増やしてくれよ。一つはいつでも俺が転送絨毯で帰ってこれるよに、テント内に転送絨毯を敷きっぱなしにしておいてもらいたいんだ」

「それも了解したわ」

そして、ゴリとバイマンが訊いて来る。

「なあ、アスラン。お前が魔王城まで旅をしている間、俺たちは何をしてたらいいんだ。なんなら戦士として俺も付いて行こうか?」

バイマンもゴリに続く。

「体力は無いですが、魔法の腕前なら私も自信がありますよ」

「いや、パーティーは要らないぜ。ソロのほうが俺としては動きやすいからな」

「お前は強いな……」

「まあ、お前たち二人の出番は、俺が魔王城に到着してからだから、それまで他人に迷惑が掛からないように生きてろや」

「分かったぜ。俺も人足の仕事が貰える日は、ちゃんと働くからよ。心配すんな」

「おう」

俺はゴリの分厚い胸を拳で叩いてからバイマンに言う。

「カイマン。お前は火を付けるなよ!」

「そ、それは我慢します……。それとバイマンです」

我慢かよ……。

まあ、いいか。

「あと、アーノルドたちの散歩も頼むぞ」

「ああ、分かってる」

「「「ガルルルゥ」」」

「じゃあ、行ってくるぜ!」

「「「いってらっしゃあ~い」」」

俺は三人と狼三匹に見送られながら空き地を出た。

ソドムタウンを離れる前に、ギルガメッシュにも話さなければならないだろう。

そんなわけで俺は、冒険者ギルドに向かった。

俺が冒険者ギルドに到着すると、一階の酒場でクラウドが酒を煽っていた。

今日は一人である。

朝から酒とは優雅なヤツだな。

俺はアマデウスが居ないからクラウドに歩み寄り、フレンドリーに話しかけた。

「よう、クラウド。朝から酒とは呑気だな」

クラウドはボケーとした眼で俺を見上げた。

「やあ、アスラン君か……」

「なんだ、元気がないな。一人エッチのし過ぎじゃあないか?」

「今、朝稽古から帰ってきたところなんだ……」

「夜の一人稽古もほどほどにな。まあ、朝稽古も大変だな。それで疲れてるのか?」

「ちょっとな……」

俺はクラウドの向かえに座った。

「アマデウスのところは辛いのか?」

「あ、ああ、ちょっとな」

「お前もゴリみたいにクビになるなよ」

「ゴリのことを、知ってたのか……」

「本人から聞いたぜ」

「そうか……。実は俺もヤバイかも……」

「なんでだよ?」

「アマデウスさんは、完璧を求めすぎるんだ。だから厳しい。自分の配下として、使えなければ放り投げるんだ……」

「あー、完璧主義者ってやつだな」

ゴリもバイマンも元はアマデウス派の冒険者だ。

実力の底が知れて切られた口である。

アマデウスとは仲間を使えるか使えないかでしか見ていないのだろう。

まあ、上司には持ちたくないタイプの人間だよね。

俺だったら一瞬でお断りな話だ。

「でも、その分だけ、仲間なら稼ぎも半端ないんだよ……」

「お前は稼ぎの量で、冒険を続けているのか?」

「…………」

クラウドは俯いて答えない。

そのまま黙ってしまう。

「暗いな、まったくよ。まあ、いいけどさ」

俺は椅子から立ち上がると踵を返した。

クラウドに背中を向けながら手を振るう。

「じゃあ、俺は急ぎの仕事があるから、またな~」

そう言うと俺は二階に上がった。

受付に居る七つ子のお兄さんにギルマスとの面会を求めると、すんなり奥に通してもらえた。

そして、ギルマスの部屋に入るとソファーセットでギルガメッシュが朝食を食べていた。

隣にはコックの衣装を纏ったパンダが立っている。

もしかして、この料理はパンダゴーレムが作ったのかな?

「よう、アスラン。おはよう」

「ああ、おはよう」

俺はギルガメッシュの向かえに座った。

「なあ、ギルガメッシュ。この料理はパンダが作ったのか?」

「まさか~。そもそもゴーレムは、何かを運んだりぐらいは出きるが、料理なんて作れるわけがなかろう」

「じゃあなんでコックの格好をしてるんだ?」

「気分の問題だ」

「そうですかー……」

「やっぱりメイド服のほうが良かったかな?」

「うん、どちらかと言ったらメイド服かな~」

「じゃあ次はメイド服を買っておくか」

まあ、いいや。

このおっさんが、納得できるなら問題無いだろう。

「それで、朝から何の用事だ。仕事の注文か?」

「いや、さっそく魔王城に旅立とうと思う」

「決断が早いな」

「スカル姉さんも了解してくれたからな」

「なるほど」

「そこでギルマスに頼みたいことがあるんだ」

「魔王城の土地の権利を得たいと?」

「ああ、そうだ。流石はギルマスだ。話が早くていいやね」

「魔王城となると、こっちも骨が折れるぞ。無人で使われていないとは言え、政治的にも関係するやも知れないからな」

「だから、ギルマスに頼んでんだよ。こう言う仕事は俺には無理だ」

「まあ、金が掛かるぞ。人だって動かさなければならないからな」

「幾らかかる?」

「前金で30000Gだ。あとはかかっただけ経費を請求して、残りは後金で30000Gってところかな」

かなり金が掛かるな。

でも、仕方無いか。

「すまん。今20000Gしか持ち合わせが無い。残りは後払いにしてもらえないか?」

「前金20000Gで、後払いが40000G。その他経費代だな?」

「それで頼む」

「ああ、良かろう」

「ありがとう、助かりますだ!」

「あと、それとだ。冒険者ギルドへの貢献も忘れるなよ。今後もギルドでコキ使うぞ」

「分かってるってばさ!」

そもそも冒険の仕事ならばなんでもかんでもウェルカムだ。

だから俺的には問題が何もない。

俺はソファーから立ち上がると、ギルマスの部屋をあとにした。

残りのお金は、旅の道中で冒険をしながら稼ぐしかないだろうさ。

ハクスラスキルがあれば、マジックアイテムがガンガンと手に入る。

それを売り払えば、お金なんて直ぐに作れるだろうさ。

最悪でも、黄金剣を売れば……。

それは、本当に最悪の事態だな……。

まあ、ネガティブよりポジティブだ。

とにかく、前向きに進もうじゃあないか。

基本は楽しく明るくだぜ!

こうして俺の魔王城への旅が始まったのである。

ここに来て、俺の異世界での大きな目標が出来たような気がしてきた。

とにかく頑張るのみだ。

「いざ、魔王城へ!」


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