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【第四章】ショートシナリオ集パート①

4-2【ゾンビ】

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死人の森の中では、ちょくちょくと死人たちと戦闘になっていた。

森の四方八方からワラワラと出てくるゾンビがおぞましく叫びながら俺に掴み掛かろうと迫ってくる。

「ぁあ、あぁああだあ~」

「あ~、うぜぇ」

俺はヒラリと躱してゾンビの首をショートソードで跳ねた。

腐った首の肉は容易く断ち切れた。

首の骨もカルシューム不足なのか脆い。

首を跳ねられたゾンビの体が力無く倒れるが、地面に転がった頭は口がパクパクと動いていた。

「首を跳ねられると体は動かなくなるが、まだ頭は動くんだな」

俺は地面に転がったゾンビの頭をショートソードで串刺しにする。

「さて、次──」

「だぁああ、ぁあたがぁあ~」

続いて俺はヒラリと避けてゾンビの頭をショートソードでカチ割った。

ゾンビの頭部がパックリと割れる。

「よし、チョロい!」

死人の森に入ってから何度もゾンビと出くわし戦闘になったが、こいつらはトロくて弱いぞ。

だから倒しても経験値は低い。

ゾンビを一体倒しても経験値が3点から5点ぐらいにしかならない。

同じゾンビを倒しても経験値が違っているのだ。

強さと経験値の違いが法則的に分かってきていた。

ゾンビは腐敗が進んで鈍間なヤツほどトロくて弱いが経験値も少ない。

逆にフレッシュなゾンビは動きが速い分だけ厄介だが経験値が高い。

そう言うわけだ。

それにしてもこの森は、ゾンビが倒し放題で、食べ放題だわ。

少し歩けば直ぐにゾンビと行き当たる。

正直なところ休みなしだ。

これは体力配分を気を付けなければスタミナ切れでゾンビどもの波に飲み込まれるかもしれないな。

それだけは注意しなければならないぞ。

それと森の中の状況も、ゾンビが居る以外にも異常な点が幾つか見られる。

森の木々の成長が、異常なほどに凄いのだ。

木の一本一本が太くて大きい。

もう、大木だらけのジャングルだわ。

その太い大木から延びた根っこが地面からむき出しになっていて足場も悪い。

根っ子の隙間を見れば、人骨やボロボロになった衣類が沢山落ちている。

無数に沸いたゾンビの遺体を肥料に、この森は異常なまでに成長しているのだろう。

肥料はいくらでも沸くのだ。

植物からしたら栄養満点な土地なのだろう。

俺はポケットから方位磁石を出して方角を確認する。

砦からゲートまで、北に真っ直ぐだ。

だから方位磁石の指すままに進めば良い。

そして2キロか3キロ先に在るゲートにゾディアックさんから貰った紫水晶の破片を投げ込めば、それで任務完了だ。

ゾンビを無限に吐き出す魔法のゲートは爆発して消えるはずである。

いくら険しい森の中でも、2キロから3キロの距離なら半日で往復できるだろうさ。

念のため異次元宝物庫に食料やらキャンプ道具も居れてある。

万が一には備えてあるのだ。

そして、今回の装備は潤沢である。

いつものショートソードとバトルアックスを背負い、腰のベルトにはダガーが三本刺さっている。

異次元宝物庫の中には、ショートボウと矢が三十本、ショートスピアにハチェットが三個入っていた。

それに武器ならあちらこちらに沢山落ちている。

たぶん、ゾンビが生前装備していた武具だろう。

ほとんど錆び付いて朽ちかけているけれどね。

おっと、またゾンビがやって来た。

前方から三体のゾンビがのろのろとワーワー叫びながら歩いて来る。

俺は異次元宝物庫からショートボウを取り出すと矢を放った。

三体のゾンビを順々に射ぬいて行った。

ゾンビは頭が弱点だ。

脳を破壊されると、簡単に動かなくなる。

「これは良い練習になるぜ」

【おめでとうございます。レベル11になりました!】

おっ、やったね!

俺が三体目のゾンビを射ぬいた直後にレベルアップした。

雑魚で経験値が微量でも、流石に数を倒せばそれなりの経験値になるってことだね。

塵も積もれば大和撫子ってやつだな!

俺はゾンビの頭から矢を引き抜き回収すると、ステータス画面を開いて新スキルを確認してみる。

おお、どうやらショートボウキルLv1がLv2にアップしたようだ。

更に新スキルを習得してるぞ!

【スマッシュアローLv1】
すべての弓矢系武器で強打力が1.25倍された一撃を放てるようになる。一日に撃てる回数は、スキルレベル分だけ撃てる。

ほほう、二つとも弓矢スキルじゃんか。

これは今日の冒険を、弓矢で戦えと言っているのかな?

こんなんだったら、もっと矢を買っておけば良かったかな。

矢の予備が三十本は少なかったかも知れない。

もうほとんど撃ち尽くしちゃったよ。

ゾンビの大群に追われて、撃った矢を回収できなかったりもしたからな。

「残り六本かぁ」

どうせ異次元宝物庫にいくらでも収納できるのだから、もっと買って置けば良かったぜ。

でも、異次元宝物庫を使うにあたって自分ルールを一つ決めてある。

それは、人前でアイテムの出し入れをしないだ。

こんな不思議で便利なアイテムを使っていたら、直ぐに噂になって命を狙われかねない。

便利なマジックアイテムを持ち歩いているイコール大金を持ち歩いているのと一緒だからな。

強盗どもに襲ってくださいって自己アピールしているようなものだ。

それに自分の手の内を知らせる必要もないだろう。

想定外の能力は、秘めておくから、万が一の時に役立つのだ。

秘技は戦力なのである。

まあ、今日はしばらくショートボウで戦おう。

残り六本を撃ち尽くすまでだけどね。

弓矢の練習になるし、矢を百発百中にしておくのも悪くないだろうさ。

スキル上げの練習である。

おっと、言っているさなかにゾンビが出たぞ。

ピュンピュンっと!

うし、楽勝で倒せたぜ!

「さてさて、矢を回収してっと──」

そのような浮かれ気分で俺は死人の森をどんどんと進んで行った。

すると再び森の奥から人影が現れる。

しかし、その数は十数体だった。

「今回は数が多いぞ」

今までのなかで一番大きなゾンビの群れだった。

「ちょっと数が多いかな、どうしよう?」

いや、接近される前に弓矢で数を削ればいいだろう。

「よし、行けるさ!」

強気に出た俺は、接近されるまでに五体のゾンビの頭を矢で射ぬいてやった。

そこでショートボウを置いてショートソードを引き抜き構える。

「ここからは接近戦だ。頭をカチ割ってやるぜぇ!」

俺はゾンビたちに向かってゆっくりと歩んで進んだ。

ショートソードを手首で回しながらゾンビに近づく。

残りは七体だ。

「行ける行ける!」

俺は順々に近付いて来るゾンビにショートソードを突き立てた。

ゾンビの顔を突き刺し、次のゾンビの顔を切り裂く。

次のゾンビは首を跳ねて、次のゾンビの下顎から脳天を串刺しにしてやった。

そこでショートソードがゾンビの頭から引き抜けなくなる。

「やべ、抜けね!」

「うがぁああがぁあがあが!!」

更なるゾンビが俺に迫る。

俺は直ぐにショートソードを諦めて、背負っていたバトルアックスを手に取った。

「やらいでか、なんちゃらねぇええぜぇええ!!」

俺は残り三体のゾンビの頭を次々とバトルアックスで粉砕して行った。

気付けば俺は返り血を浴びてドロドロになっている。

あちゃー……。

くんくん。

「臭い!?」

何これ!?

スゲー臭いの返り血だわ!!

ゾンビの返り血って腐ってるのね!!

かなーーり、臭いぞ!!

これは堪らないぞ!!

うわー、やっちまったな!!

こんなことならスバルちゃんから体臭を消すポーションを買っとけばよかったぜ。

ジャリ……。

「ん?」

気配!?

背後から!?

俺は振り返ると同時にバトルアックスを盾に眼前を守る。

そこに奇襲の剣が振り下ろされた。

ガキィーーンと音が響く。

「不意打ちだと!?」

俺のバトルアックスと敵の刃が激しくぶつかり合い火花を散らした。

「俺の隙を狙ってきやがったぞ、こいつ!」

俺が闇雲にバトルアックスを振り回すと、そいつは僅かに後退して間合いを作る。

「距離を作りやがった。間合いを考えているのか!?」

ゾンビ!?

いや、違う、グールか!?

こいつが話に聞くグールってやつかいな!

てか、デカくない!?

俺は死人の顔を見上げていた。

身長2メートルはあるよね!?

革鎧を着こんで手にはロングソードを構えてやがる!!

大型グールですか!?

巨漢戦士の死体ですか!?

これは、手強いかも!?


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