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【第三章】青龍クラブル編

3-20【異次元宝物庫】

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ドラゴン兄妹のアンとグラブルが山に飛び立ってから三日が過ぎた。

ワイズマンの話では、もう洋館には改装の大工が入ったらしい。

まあ、なんだかんだあったが仕事は終わったのである。

俺は冒険者ギルドから報酬も貰い、次の依頼を受けるまでの間、のんびりと長閑な日々をソドムタウンで送っていた。

次の依頼内容に関しては俺からも注文を出してある。

それは冒険者らしいバトル溢れる過激な内容で、更に長期に渡る依頼を希望したのだ。

長期に渡ると言うのはスカル姉さんが診療所の二階を改装する間、俺が留守にしたいからである。

俺が冒険中に診療所を改装してもらえれば、俺が何処か別の部屋を間借りしなくても済むからだ。

俺のわがままだが、一石二鳥だと思った。

そのために依頼内容を吟味しているがために、なかなか次の仕事が決まらないのである。

ソロで長期って仕事が特殊で数が少ないのだろう。

だから俺は暇な日々をのんびりと送っていた。

なのでグラブルから譲り受けたドラゴンルビーの指輪を使って、いろいろと実験をして見ることにしたのだ。

ドラゴンルビーの指輪の大体の能力は聞いている。

一つ、異次元宝物庫。

異次元にアイテムを無制限に収納できる。

ただし無生物のみと言っていた。

二つ、盗難防止能力。

盗まれても念じれば帰ってくるそうな。

今まで何度かマジックアイテムを盗まれたり取られたりしたけれど、これがあればもう大丈夫だろう。

かなり安全なセーフティーシステムだよね。

もしかしたら、ドラゴンルビーの指輪を質屋に入れてお金を貰ったあとに、帰って来いと念じれば俺の手元に帰ってくるのだろうか?

質屋の厳重な金庫からでも帰ってくるのだろうか?

帰って来そうだよね……。

今度試してみるか……。

もしも質屋に入れてお金を貰ったのに指輪が帰ってくるなら無限にお金を稼げないか?

売ったら手に戻す、売ったら手に戻す。

それで無限ループだよね。

これ、行けるか!?

いやいやいや、それは駄目だろう。

無限に稼げても俺と言う人物にヘイトが溜まるだろうさ。

俺の悪名だけが高まっちまうな。

名案だが却下である。

そして最後の能力は──。

三つ、盗んだ人を呪い殺す。

…………。

これは使う日が来ないことを祈ろう。

さてさて、では初収納と行きますか!

俺は愛用のショートソードを手に取った。

これは普通に店売りしていたショートソードだ。

万が一があっても欲しくない代物である。

実験には丁度良いだろう。

俺は心の中で「収納」と呟いた。

すると眼前に不思議な黒い穴が現れる。

その黒穴は、空中に浮くように口を開いていた。

「穴だよね。これが異次元宝物庫の入り口かな?」

直径10センチ程度の黒い穴が空中に現れたのだ。

裏を見てみると、二次元状態の薄い穴である。

「ここにアイテムを突っ込めばいいのかな?」

俺は穴に差し込むようにショートソードを突っ込んだ。

するとスルスルと抵抗もなくショートソードが闇の穴に入って行った。

「あれ?」

そしてショートソードを半分ぐらい入れたところで剣の重みが何かの台座に乗せたかのように軽減したのだ。

「固定感があるな」

俺が手を離すと、まるで反対側で誰かが持っているようにショートソードが穴の中に入って行く。

そして、ショートソードが根元まで入ると黒い穴が閉じて消えた。

収納完了である。

「おお、入ったな!」

さて、取り出す時はどうするのかな?

基本は念じればいいのだろうから、俺はショートソードと念じてみた。

すると眼前に再び黒い穴が開いて中から誰かが差し出すようにショートソードの柄がニョキニョキっと突き出された。

そして俺がショートソードを手に取って引き抜くと、黒い穴は再びふさがり消えうせた。

「なるほど、こう使うのか。ドラゴンルビーの指輪、かなり便利だな。これで無制限に収納出来るとは」

でも、黒い穴は直径10センチ程度だったぞ。

それ以上の大きさのアイテムは入れられないのかな?

穴の枠に引っ掛かるのかな?

「よし、試してみよう。何事も実験である!」

続いて俺はバトルアックスを手に取った。

このバトルアックスならサイズ的に両刃の幅が50センチ以上あるから丁度良かろう。

俺は念じて異次元宝物庫の入り口を呼び出す。

また眼前に10センチぐらいの黒い穴が現れる。

俺は穴のほうが小さいのにバトルアックスを頭から収納しようと試みた。

本来なら入らないサイズだが、自動で穴が大きさを変えてバトルアックスを招き入れた。

バトルアックスのサイズでもすんなりと穴に入る。

「なるほど、穴の入り口が広がってバトルアックス程度なら難なく入るのね」

ならばと俺は、ベッドの横に置いてあった椅子を手に取った。

「これはバトルアックスより大きいから入るかな?」

実験、実験、実験!

入ったーーー!!

椅子も入りましたよ!!

これなら結構なサイズまで入るんじゃあないのかな?

じゃあ次はベッドでも行ってみるか!?

うーーーん!!

だ、駄目だ……。

ベッドが重たくって持ち上がらんわ……。

持ち上がらない物は収納は無理か……。

「てか、それじゃあ穴の中はいったいどうなってるんだろう。ちょっと中身が興味があるな」

グラブルの奴が収納できるのは無生物だけって言ってたけど、なんでかな?

ちょこいと椅子を取り出すふりをして、中に頭を突っ込んでみようか!

そして俺は作戦通り椅子を取り出すふりをして頭を穴の中に突っ込んでみた。

「フェイントだぜ!」

異次元宝物庫の穴に頭が入る。

あれー、薄暗いけど真っ暗ってわけではない。

んん?

何か見えるぞ?

椅子を支えている物が見える。

物じゃあないな……。

椅子を支えている者だわ!!

物じゃない、者だ!!

こわ!!

なに、これ!?

死霊かな!?

すっごいヤバそうな人が椅子を支えているよ!!

ガリガリでカサカサで肌色が不健康だわ!!

まるでミイラじゃんか!!

アンデッドかな!?

ん、んん!!

こ、呼吸ができないぞ!!

や、やばい!?

俺は即座に頭を引っこ抜いた。

「ぜえはー、ぜえはー……」

どうやら穴の中は無酸素状態らしい。

だから生物は駄目なのか。

それに温度も変化しないって言ってたよな。

入れた直後の状態が保たれるらしいから、いろいろと生物だと問題あるのだろうさ。

だから中の人はアンデッドなのか。

まあ、分かったことは、中の人が俺の思念を感じ取って、中のアイテムを手渡しで出してくれてるってわけだ。

なんか思った以上にアナログだな……。

でも、魔法のアイテムっぽいって言えばそれらしいかも知れない。

そもそも現代のハイファンタジーラノベに出てくるアイテムボックスのほうが理屈を無視していて仕掛けも曖昧過ぎるのかも知れないな。

アイテムボックスの中に作業員が居る。

それのほうが理に叶っている。

だからあまり大きな物や重い物は無理だよね。

何せ出し入れは人力なんだもんな。

それにしても、まさか労働者が入っていたとは……。

まったくもってご苦労だな……。

労働者に感謝しながら使わないとね。

でも、だいぶドラゴンルビーの指輪の使い方と原理が分かったわ。

俺は今一度ながら異次元宝物庫の出入り口を開けた。

そして、黒穴の中に問い掛ける。

「あの~、中の人~、名前はなんて言うんだ~?」

すると驚いたことに返答が帰ってきた。

「サトウ……」

「へ、へぇ~……。サトウさんって言うんだ……」

「仕事中ナノデ、アマリ話カケナイデクダサイ……」

「ご、ごめんごめん。気を付けるわ~……」

注意されたよ……。

って、俺がオーナーなんだけれど……。





【第三章】青龍グラブル編・完



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