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【第三章】青龍クラブル編

3-1【三人の盗賊】

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丸太を並べて建てられた防壁に囲まれた町。

町は大陸の辺境に近い場所に位置していた。

その町には四千人から五千人の人々が暮らしている。

その他に旅商人や観光の人々も少なくない。

町の中心部には砦を改装して作られた酒場が経営しており、更には巨大な塔には多くの魔法使いが日夜魔法の研究に励んでいる。

その町は昼も夜も違った意味で騒がしい。

町全体が活気に溢れているのだ。

冒険者と水商売の町、ソドムタウン──。

俺がこのソドムタウンにやって来てどのぐらいの月日が過ぎただろうか?

今俺は、この町でソロ冒険者として頑張っている。

知合いも何人か出来て、町の雑踏にもだいぶ慣れて来たころである。

しかし、この町は誘惑がてんこ盛りなのだ……。

フードを不覚被って目線を隠せばエロイお姉さんたちのセクシー姿を見ないでも済んでいた。

何故に俺が怪しげな仕草で町を歩いているかって?

それは──。

もしも俺が誘惑的なエロイお姉様たちの姿を見てしまえば、若さ溢れる己の煩悩が無邪気なままにはしゃぎ出して、糞女神に掛けられた呪いが俺の心臓を無慈悲なままに締め上げて苦しめるからである。

その呪いは酷く苦しいのだ。

心臓が爆発しそうになる。

場合によっては死んでしまうらしい……。

死んだことがないから分からんけれどね。

流石にこれは実験出来ないもの……。

まあ、そんなわけでたぶん死ぬ……。

だからエロエロ衣装のお姉さまたちを爪先から頭の天辺まで舐めるように見回したいが、折れにはそれが出来ないのである。

俺はこの呪いを解くためにレベル100を目指さなければならない。

レベル100になったら御褒美で、この忌々しい呪いを解いてもらえるのだ。

だから俺は冒険をこなしてガンガンとレベルを上げなければならない。

そして俺がレベル100を達成できたのならば、そこからが俺の本当の異世界冒険が始まるのだ。

それは、まだ見ぬ未知の洞窟を探検して蜂蜜が溢れる甘美な泉を発見するかのように、お姉さまたちの股ぐらをぉおがぉがあががかがぁあがが!!!

しーんーぞーがー!!

ぐぅーるぅーじぃーぃいいい!!!

ぜぇはー、ぜぇはー……。

っと、こんな感じで如何わしい妄想を廻らせただけで心臓がヤバイことになるのですよ……。

だから早くレベル100になって呪いを解除してもらわなければ、結婚すらできないのである。

初夜なんて夢のまた夢なのだ。

でも、まだ俺のレベルは10なんだよね。

まだ目標の100レベルまで先は遠いのだ。

でも、冒険者の仕事もソロ専門だが、順調にこなしている。

何故にソロ専門になったかと言えば、冒険者ギルドの派閥抗争に巻き込まれたのが原因なのだが、まあ、それはそれでどうにかこうにかなっているから問題ないだろう。

何故か冒険者ギルドのギルドマスターであるギルガメッシュに気に入られてギルマスから直接仕事を斡旋してもらっている。

そして、次の仕事は山賊の討伐である。

なんやかんやあったが、俺は山賊討伐の仕事を引き受けたのだ。

俺は冒険者であって戦争屋ではない。

だから相手が山賊であっても殺したくない。

冒険者だからモンスターはぶっ殺すが、戦争屋ではないので人殺しはしないってわけである。

故に山賊を殺さずに生け捕りにする積もりだ。

モンスターを殺しても人は殺さない。

それが俺の冒険者としてのポリシーなのだ。

そう昨晩決めたのだ。

本当、決めたばかりの誓いだけれどね。

スカル姉さんも「それでいいんじゃない」って言ってくれたしね。

なんかそう言ってくれる人が居るだけで、なんだか落ち着くのである。

俺は現在のところ冒険者ギルドの酒場で昼食を食べていた。

ギルマスの部屋を出た俺は一階の酒場で、一人昼食を取りながら依頼の書かれた羊皮紙を眺めていた。

今日の昼食は黒パンに鳥の手羽先と、ニンジンとオニオンの塩スープだ。

正直なところ、どの料理も塩と僅かな胡椒に作り手の愛情でしか味付けされていない料理ばかりで美味しくない。

はっきり言って不味い。

でも、俺ならそれすら作れないから仕方がないのだ。

腹ごなしはお金で解決するしかない。

何とも寂しい話である。

とにかくこの異世界は料理文化が低いのだ。

誰でもいいから料理の伝導師的な人が異世界転生して来て、料理文化に革命を起こしてもらいたいほどである。

そう言う異世界転生物語も、最近では少なくないんだから頑張ってくれよって感じだ。

食堂でも居酒屋でもいいからとにかくオープンを早く願います。

チェーン店を全国に広げるのはその後にしてくれ。

まあ、少なくともそれらは俺の役目ではない。

他の転生者にお任せする。

俺の役目は、ホチャラケた冒険を繰り広げて、この異世界を明るく愉快に茶化して回るぐらいだろう。

そのぐらいしか俺には出来ない。

とりあえず俺は、手羽先を咥えながら羊皮紙に書かれた仕事の内容に目を通す。

依頼の内容はこうだった。

ソドムタウンと山道沿いの小さな町スダンを繋ぐ道中に最近ピン商人だけを狙った山賊が現れて悪さを働いているらしい。

まだ旅商人に死亡者は出ていないが、それも時間の問題だろうと言われている。

なんでもその山賊は一人旅の商人しか狙わなかったために、いままであまり問題視されずに放置されていたが、とうとう被害者が分かっているだけで20人を越えたらしく商人ギルドも重い腰を上げたらしいのだ。

だが、依頼料が300Gとだいぶ少額のために、どの冒険者も敬遠しているらしく、仕方なく俺に依頼が回ってきたとのことだ。

商人ギルドも旅商人たちに出来るだけピンで旅をせずにキャラバンを組めばいいと対策を取っている。

その為にことは急がれていない。

ただ、まだ事情の知らない旅商人たちが被害に合っているのだろう。

それを商人ギルドは防ぎたいのだ。

それで件の山賊について分かっている情報は、三人組だと言うことと、外見が年増女、痩せっぽち、チビマッチョだそうな。

三人とも武具で武装を整えているらしい。

魔法を使う者も居るとか居ないとか……。

なんか昔のアニメで見たことがあるような昭和臭い設定だと思ったが、出落ちが済むまで突っ込みは控えておこうと思う。

まあ、その辺も俺の優しさである。

とりあえず、このぐらいしか情報がない。

さて、どうするかだ。

相手は三人の小グループだ。

思ったより少人数だが、こちらは一人だから、やはり三人の相手は少しキツイかもしれん。

でも、山賊三人組と主級リバーボアと比べてどちらが強そうかと考えれば、やっぱり主級リバーボアのほうだろう。

だとすれば、主級リバーボアに勝っている俺のほうが山賊三人組より強くね?

てか、やっぱり強いよね?

そもそも三人がかりで一人の旅商人しか襲えないのだ。

おそらく戦闘力的にも小物だと思える。

だから今回の仕事も余裕だよね。

仕事の内容は山賊の退治だ。

考えようによっては三人を退治すればいいだけだ。

別に殺さなくても良い。

三人の内、一人二人を取っ捕まえて、山賊活動を出来なくすればいいのだ。

それで丸く話は収まるだろう。

そう、その時の俺は、そう安易に考えていた。

俺はスカル姉さんの診療所に帰って直ぐに旅の支度を始めた。

今回の仕事を出来るだけ早く終わらせたかったので、俺はその晩のうちに旅立った。

スカル姉さんは、気張りすぎだと言ってたが、俺はとにかく頑張りたかったので直ぐに旅立つことを変更しなかった。

とにかく早くレベルを上げたいのである。

スカル姉さんは、心配しながらも俺を見送ってくれた。

まず俺は山道沿いの小さな町スダンを目指す。

バトルアックスをバックパックの中に隠し、ショートソードも布で包んで出来るだけ目立たなくする。

そんな風貌で俺はソドムタウンを旅立った。

これで俺をピンの旅商人と見間違えてくれれば幸いである。

途中で件の山賊が出る山道も通るので、そこでもしも山賊に襲われたら、すぐさま勝負を着けてやる積もりだった。

そのほうが話が早くてシンプルで良い。

俺自身が囮になってやるぜ。

来るならこいだ。

襲って来るならきやがれだ。

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