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9【チャレンジャー】
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昨日──。
大剣を背負った青年は馬を走らせ故郷のソドム村を目指していた。
短髪の黒髪に凛々しい顔立ちの青年。
風で靡くローブの下には鉄の胸当てを装備している。
そして、肩には刺々しい肩パット。
彼の名前はセンシロー・ボッケーシャ(25歳)。
7年前に冒険者になるんだと言ってソドム村を飛び出した青年である。
そして冒険者として7年のキャリアを積んで今ではC級冒険者までランクを上げていた。
C級とは冒険者として強いほうのランクである。
軍隊で言えば小隊長ぐらいの実力だろうか。
センシローは数年間の下隅を経て、確実な努力の末にC級にまで昇格した実力派の冒険者である。
特に剣士としての腕前はかなりの強者。
大剣の腕前はゴブリンならば一太刀で両断できるほどである。
彼は冒険者ギルドでも若手のホープなのだ。
そんなセンシローが早馬を走らせて故郷を目指すのには理由があった。
それはセンシローが所属する冒険者ギルドまで噂が届いたからである。
噂とは「ソドム村とゴモラ村の境界線に金鉱が発見されたぞ。しかも、その金鉱の権利を掛けて村の代表者同士が戦うらしい」っと言った話であった。
センシローは知っている。
故郷のソドム村には、戦いに慣れた男は一人も居ないことを──。
あの村は平和で退屈な村である。
周囲に外敵らしいモンスターも少ない。
だから村人が武器を取って戦うこともない。
故に刺激を求めていたセンシローは村を飛び出したのだ。
なのでゴモラ村の住人と戦えるような人材はソドム村には居ないはずだ。
ならば、ソドム村で育った自分が故郷に帰って代表者として戦うのが一番の得策だろう。
そう考えたのだ。
一人前の冒険者となっての凱旋。
更には金鉱争奪戦で勝利すれば大手柄だ。
まさにソドム村の英雄に成れるだろう。
そうなれば自分を穀潰しだと馬鹿にしていた村の老人たちの鼻も明かせるってものである。
だから実家の両親に甘いお菓子の手土産を持って村に帰ってきたのだ。
父も母も息子の久々な里帰りに喜んでくれた。
二人の弟たちもセンシローの手土産に歓喜している。
弟たちがワイワイと騒ぎながらお菓子を食べていた。
「このワンパクどもめ、お菓子は旨いか?」
「はぐはぐ、美味しいよお兄ちゃん!」
「うめー!」
弟たちは満面の笑みで喜んでくれている。
ちょっと無理して高いお菓子を買ってきたかいがあったってものだ。
そしてセンシローは父に問う。
「金鉱争奪戦の代表は決まったのか?」
「ああ、村長さんが決めたぞ」
「それは誰だ。ザゴディスか、ボコスクか。まさかデブナンデスってことはないよな。ハッハッハッ」
半笑いで問い掛けるセンシローは、この三人では役不足だと言うのが分かっていた。
どいつもこいつも弱いからだ。
剣も使えない、魔法も出来ない。
彼らはザ・村人だ。
そんな奴らが代表で戦うなんて無理である。
今のセンシローならば、あの三人と戦ったとしても、愛剣の大剣を使わなくても容易く勝てる相手だろう。
負ける理由が見つからない。
村人と冒険者とでは、そのぐらいの戦力差が開いている。
だが、余裕の態度を見せていたセンシローですら驚く名前が父の口から出てきた。
「戦いの代表は、異世界転生者様だ」
「い、異世界転生者だと!?」
「ああ、しかもかなりのゴリラ顔の御仁だったわい」
「ゴリラ顔!?」
センシローは仰天した。
ゴリラ顔の噂に仰天したのではない。
異世界転生者──。
それは冒険者ギルドにも居る超人たちだ。
どいつもこいつもA級冒険者まで登り詰めている強者な連中である。
そんな存在が代表として選ばれていたことに仰天したのだ。
「な、なんでだよ……」
センシローは親指の爪を噛みながら考える。
なんでこのような小さな村のいざござにA級レベルの異世界人が出てくるのだろうか?
しかもゴリラ顔……。
そもそも異世界転生者を雇うにはかなりの高額報酬が必要だ。
こんな貧乏村が容易く払える金額出はない。
もしも金で雇えるとしても普通のB級冒険者がやっとのはずである。
「分かったぞ!」
センシローは閃いた。
「そいつは異世界人を名乗る偽物だ。高額報酬に目が眩んで、名前を語っている詐欺野郎だ!」
町のほうでもよくある話しだ。
目立ちたがり屋のホラ吹き野郎が異世界人を語っていきがっている話はしばしば聞かれる。
そのような嘘付き野郎は許せない。
ましてや自分の手柄を横取りするなんてもってのほかだ。
「ここは俺自らの手で成敗してやらねばなるまい!」
そしてセンシローは実家を飛び出し村長邸に走って向かう。
「どんな野郎か知らないが、このセンシロー様には嘘は通じないぜ。化けの皮を剥がしてやるぞ!」
村長邸に到着したセンシローはノックもなしに扉を開いた。
乱暴な仕草に扉が騒音を響かせる。
「村長は居るか!!」
センシローの怒鳴り声が室内に響く。
そしてセンシローの視線に大きな背中が目に入った。
高い身長は190センチはありそうだ。
更には逆二等辺三角形な背中。
頭が三つ並んでいるのかと思えるような肩の筋肉に、異常なまでに括れた腰。
その体に極太の手足がついている。
極上な筋肉ボディー──。
その人物を一目見て感じた印象は、それだった。
故に理解できた。
こいつが、件の異世界転生者だ───。
偽物ではないと───。
そして、センシローの大声に筋肉超人が振り返る。
その顔面を見てセンシローは連続して驚愕した。
「ウホ?」
ゴリラ顔……。
話に聞いていたが、それ以上のゴリラ顔だった。
っと、言いますか、ゴリラその物の顔に窺える。
深い堀に窪んだ瞳。
瞑れた大鼻と猿のように突き出した大口。
露骨に出っぱった脳天。
まさにマウンテンオスゴリラ。
この世界でのゴリラは神獸の類いだと言われている。
ジャングルの奥に生息していて、怪力で神具を振るい、更に高レベルの魔法すら使ってくるモンスターだ。
故に森の賢者と語られて恐れられていた。
その昔、A級冒険者の中隊パーティーが金毛のマウンテンゴリラ一匹に挑んで壊滅されたと言われている。
マウンテンゴリラとは、それだけ強いのだ。
その神獣級のモンスターに瓜二つの人間が、そこには居たのだ。
だが、ここでビビっても居られない。
センシローは全力で去勢を張った。
「テメーがゴリラ顔の異世界転生者か!!」
限界までの怒鳴り声。
しかし、センシローの脚はガタガタと震えていた。
野生への恐怖が押さえきれていないのだ。
異世界人の放つ野性的なオーラに飲まれてしまう。
そのぐらいゴリラ顔が怖かったのだ。
何せ人間の顔には見えない。
これが異世界人か……。
戦慄するセンシローの脳裏に、そのような感情が過った。
これがA級冒険者の世界。
まだまだ自分の未熟さを知る。
だが、それだけでは引けない。
センシローは一世一代の大博打に出た。
「こ、このゴリラ野郎!俺と勝負さやがッがッがれ!!」
噛んだ。
緊張のあまりに台詞を噛んでしまう。
大剣を背負った青年は馬を走らせ故郷のソドム村を目指していた。
短髪の黒髪に凛々しい顔立ちの青年。
風で靡くローブの下には鉄の胸当てを装備している。
そして、肩には刺々しい肩パット。
彼の名前はセンシロー・ボッケーシャ(25歳)。
7年前に冒険者になるんだと言ってソドム村を飛び出した青年である。
そして冒険者として7年のキャリアを積んで今ではC級冒険者までランクを上げていた。
C級とは冒険者として強いほうのランクである。
軍隊で言えば小隊長ぐらいの実力だろうか。
センシローは数年間の下隅を経て、確実な努力の末にC級にまで昇格した実力派の冒険者である。
特に剣士としての腕前はかなりの強者。
大剣の腕前はゴブリンならば一太刀で両断できるほどである。
彼は冒険者ギルドでも若手のホープなのだ。
そんなセンシローが早馬を走らせて故郷を目指すのには理由があった。
それはセンシローが所属する冒険者ギルドまで噂が届いたからである。
噂とは「ソドム村とゴモラ村の境界線に金鉱が発見されたぞ。しかも、その金鉱の権利を掛けて村の代表者同士が戦うらしい」っと言った話であった。
センシローは知っている。
故郷のソドム村には、戦いに慣れた男は一人も居ないことを──。
あの村は平和で退屈な村である。
周囲に外敵らしいモンスターも少ない。
だから村人が武器を取って戦うこともない。
故に刺激を求めていたセンシローは村を飛び出したのだ。
なのでゴモラ村の住人と戦えるような人材はソドム村には居ないはずだ。
ならば、ソドム村で育った自分が故郷に帰って代表者として戦うのが一番の得策だろう。
そう考えたのだ。
一人前の冒険者となっての凱旋。
更には金鉱争奪戦で勝利すれば大手柄だ。
まさにソドム村の英雄に成れるだろう。
そうなれば自分を穀潰しだと馬鹿にしていた村の老人たちの鼻も明かせるってものである。
だから実家の両親に甘いお菓子の手土産を持って村に帰ってきたのだ。
父も母も息子の久々な里帰りに喜んでくれた。
二人の弟たちもセンシローの手土産に歓喜している。
弟たちがワイワイと騒ぎながらお菓子を食べていた。
「このワンパクどもめ、お菓子は旨いか?」
「はぐはぐ、美味しいよお兄ちゃん!」
「うめー!」
弟たちは満面の笑みで喜んでくれている。
ちょっと無理して高いお菓子を買ってきたかいがあったってものだ。
そしてセンシローは父に問う。
「金鉱争奪戦の代表は決まったのか?」
「ああ、村長さんが決めたぞ」
「それは誰だ。ザゴディスか、ボコスクか。まさかデブナンデスってことはないよな。ハッハッハッ」
半笑いで問い掛けるセンシローは、この三人では役不足だと言うのが分かっていた。
どいつもこいつも弱いからだ。
剣も使えない、魔法も出来ない。
彼らはザ・村人だ。
そんな奴らが代表で戦うなんて無理である。
今のセンシローならば、あの三人と戦ったとしても、愛剣の大剣を使わなくても容易く勝てる相手だろう。
負ける理由が見つからない。
村人と冒険者とでは、そのぐらいの戦力差が開いている。
だが、余裕の態度を見せていたセンシローですら驚く名前が父の口から出てきた。
「戦いの代表は、異世界転生者様だ」
「い、異世界転生者だと!?」
「ああ、しかもかなりのゴリラ顔の御仁だったわい」
「ゴリラ顔!?」
センシローは仰天した。
ゴリラ顔の噂に仰天したのではない。
異世界転生者──。
それは冒険者ギルドにも居る超人たちだ。
どいつもこいつもA級冒険者まで登り詰めている強者な連中である。
そんな存在が代表として選ばれていたことに仰天したのだ。
「な、なんでだよ……」
センシローは親指の爪を噛みながら考える。
なんでこのような小さな村のいざござにA級レベルの異世界人が出てくるのだろうか?
しかもゴリラ顔……。
そもそも異世界転生者を雇うにはかなりの高額報酬が必要だ。
こんな貧乏村が容易く払える金額出はない。
もしも金で雇えるとしても普通のB級冒険者がやっとのはずである。
「分かったぞ!」
センシローは閃いた。
「そいつは異世界人を名乗る偽物だ。高額報酬に目が眩んで、名前を語っている詐欺野郎だ!」
町のほうでもよくある話しだ。
目立ちたがり屋のホラ吹き野郎が異世界人を語っていきがっている話はしばしば聞かれる。
そのような嘘付き野郎は許せない。
ましてや自分の手柄を横取りするなんてもってのほかだ。
「ここは俺自らの手で成敗してやらねばなるまい!」
そしてセンシローは実家を飛び出し村長邸に走って向かう。
「どんな野郎か知らないが、このセンシロー様には嘘は通じないぜ。化けの皮を剥がしてやるぞ!」
村長邸に到着したセンシローはノックもなしに扉を開いた。
乱暴な仕草に扉が騒音を響かせる。
「村長は居るか!!」
センシローの怒鳴り声が室内に響く。
そしてセンシローの視線に大きな背中が目に入った。
高い身長は190センチはありそうだ。
更には逆二等辺三角形な背中。
頭が三つ並んでいるのかと思えるような肩の筋肉に、異常なまでに括れた腰。
その体に極太の手足がついている。
極上な筋肉ボディー──。
その人物を一目見て感じた印象は、それだった。
故に理解できた。
こいつが、件の異世界転生者だ───。
偽物ではないと───。
そして、センシローの大声に筋肉超人が振り返る。
その顔面を見てセンシローは連続して驚愕した。
「ウホ?」
ゴリラ顔……。
話に聞いていたが、それ以上のゴリラ顔だった。
っと、言いますか、ゴリラその物の顔に窺える。
深い堀に窪んだ瞳。
瞑れた大鼻と猿のように突き出した大口。
露骨に出っぱった脳天。
まさにマウンテンオスゴリラ。
この世界でのゴリラは神獸の類いだと言われている。
ジャングルの奥に生息していて、怪力で神具を振るい、更に高レベルの魔法すら使ってくるモンスターだ。
故に森の賢者と語られて恐れられていた。
その昔、A級冒険者の中隊パーティーが金毛のマウンテンゴリラ一匹に挑んで壊滅されたと言われている。
マウンテンゴリラとは、それだけ強いのだ。
その神獣級のモンスターに瓜二つの人間が、そこには居たのだ。
だが、ここでビビっても居られない。
センシローは全力で去勢を張った。
「テメーがゴリラ顔の異世界転生者か!!」
限界までの怒鳴り声。
しかし、センシローの脚はガタガタと震えていた。
野生への恐怖が押さえきれていないのだ。
異世界人の放つ野性的なオーラに飲まれてしまう。
そのぐらいゴリラ顔が怖かったのだ。
何せ人間の顔には見えない。
これが異世界人か……。
戦慄するセンシローの脳裏に、そのような感情が過った。
これがA級冒険者の世界。
まだまだ自分の未熟さを知る。
だが、それだけでは引けない。
センシローは一世一代の大博打に出た。
「こ、このゴリラ野郎!俺と勝負さやがッがッがれ!!」
噛んだ。
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