上 下
27 / 47

27【オルゴール】

しおりを挟む
さて、少し泡銭を手に入れたからチルチルたちの晩御飯でも買いに行ってから帰ろうか。今日の晩御飯は何にしようかな。迷ってしまう。

買った食材はアパートの冷蔵庫に入れておけば問題なかろう。向こうで半日過ぎてもこちらでは1時間程度しか時間が過ぎていないのだ。食材を買い込んでおいても商品の消費は異世界のほうが早くなる。だから少しぐらい買い込んでも問題ないはずだ。

それとシャンプーとリンスも在庫を買って置かなければなるまい。ならばホームセンターで段ボール買のほうがお得だろうな。

よし、これからホームセンターで買い物だ。確かホームセンターの入り口横に小さなフードコーナーのテラスがあったはずだ。そこで焼きそばでもお土産に買って帰ろうかな。

たぶんチルチルは麺類を食べたことがないはずだ。焼きそばなんて珍しくってビックリするだろう。またまたチルチルの驚く顔が見れそうだぞ。それだけでワクワクしてくる。

それから俺はホームセンターでシャンプーとリンスの詰め替え用パックを段ボールで買い込んだ。普通に生活していてシャンプーの段ボール買いなんでしないから少し不思議な感覚である。流石にこれだけの量のシャンプーなんて一人では使い切れない量だからな。

それと店内を回っていてオルゴールを見つける。これは珍しいなっと俺は小型のオルゴールを手に取った。

それは手の平サイズの小型で、小さな回転式のレバーが付いているクラシックな作りのオルゴールだった。中身の仕組みが丸見えで丸い筒が回転してピンを弾くことで音色が奏でられているのがすべて見える作りである。

先程の金券ショップのカウンターでオルゴールで暇つぶしをしていたから懐かしさが蘇ったのだろう。それでついつい手に取ったのだ。

俺は試しにオルゴールのレバーを廻してみた。すると可愛らしい音楽が奏でられる。

ティンコンティコンテンテンテン、テンテテテン、テンテテテン。

この曲はなんだったっけな。よく聴く海外の曲である。確かエリーゼの憂鬱だったような。んん~、思いだせん……。

まあ、いいか……。

これをチルチルたち二人のメイドにお土産として買って行く。たまには娯楽用品などで喜んでくれると俺も嬉しいのだが、どうだろうか。少し自信はない。この程度で喜んでくれるかな。

最後にはフードコーナーで注文しておいた焼きそばを受け取ってから俺はアパートに帰った。焼きそばを冷蔵庫に仕舞うと異世界に戻る。すると帰ってきたばかりの俺にチルチルがクンカクンカしながら近づいてきた。

「御主人様。何か美味しそうな匂いがしますね。もしかして、何か美味しい食べ物でも差し入れがあるのですか!?」

チルチルは大きな吊り目を見開きながら口元から涎を垂らしていた。期待に瞳が潤んている。

流石は鼻が効く狼族だな。俺のジャージにこびり付いた焼きそばの香りを嗅ぎつけたらしい。

これは晩飯の匂いだから少し我慢するようにと俺はチルチルに言い付ける。チルチルはモフモフの尻尾をバタつかせながら納得してくれた。待てが出来る娘で助かった。偉い偉い。

それに外を見ればまだ昼だ。昼食ですらまだなのだ。流石に晩飯の話をするのは早いだろう。

それから俺はジャージのポケットからオルゴールをふたつ取り出した。そのオルゴールをお見上げだとチルチルとワカバに差し出す。

チルチルもワカバもオルゴールがなんなのかも解らずに首を傾げていた。やはりこの異世界にはオルゴールなんてないのだろう。だから使い方もわからないのだ。なので俺はレバーを廻して音楽を奏でてやる。

チルチルは奏でられた音楽にビックリしたあとは楽しげにはしゃいでいたが、ワカバのほうは冷めた眼差しでオルゴールを見詰めているばかりである。ワカバは音楽にも興味がないらしい。

「御主人様、これはなんでありますか。こんな小さな物が音楽を奏でるなんて不思議ですよ!」

俺からオルゴールを受け取ったチルチルが無邪気にレバーを廻しながら音楽に耳を澄ましていた。その表情は可愛らしい。

しかし興味がないワカバはムスリとしていた。まるでコンサートの握手会で塩対応するアイドルのように冷めた口調で述べる。

「なんじゃ、この雑音は。これならばコウロギのほうが綺麗に鳴いていると思われるぞ」

やっぱりワカバは気に入ってないらしい。しかもオルゴールの音色をコウロギなんかと比べてやがる。更には自分の分のオルゴールを俺に対して差し戻した。マジで可愛くないな、この独眼娘は……。

だが、この反応がワカバである。有難うと感謝しながら長くて細い生脚にキスがしたくなるほとであった。確実に俺のM心を擽ってくるのだ。

まあ、要らないならいらないでいいさ。ならばこのオルゴールはお金に替えよう。この異世界にオルゴールが無いのならば高く売れるはずだ。チルチルの反応を見るからに評価は上々だからな。

そう思いながら俺が窓の外を見てみると、中庭の木の下でショリーンお嬢様を見つける。

彼女はショセフ夫妻の一人娘で、まだ6歳か7歳程度の幼女である。背丈もチルチルよりも小さいし幼く見える。

そして、ショリーンお嬢様は木の下で若いメイドと一緒に何かを作っていた。どうやら周りに咲いているお花を摘んで髪飾りを作っているようだ。なんとも乙女チックで可愛らしいことである。

俺は自分の骨手の中に残るオルゴールに視線を落とした。そして思いつく。

そうだ、これをショリーンちゃんにあげよう。彼女ならばチルチルのように笑顔で喜んでくれるはずだ。

それに彼女もショスター家の一員である。彼女と物々交換するのもありだろう。あの作り立ての花の髪飾りとオルゴールを交換するのもロマンチックで悪くない。ありである。

そう思いついた俺は裏庭に出向く。俺のロリコン心が疼いていた。ルンルンである。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メイドからのお嬢様〜まるでシンデレラの階段の様に〜

桜乃みなも
恋愛
メイド養成専門学校に通うヒロインのサクセスシンデレラストーリー!

ステップガ―ルとワイバ―ンの領主

六葉翼
ファンタジー
19世紀舞台はサバトの街ロンドン。一人の心霊現象に悩む英国紳士が訪れた霊能者は美しい少女だった。それは魔女と魔女の開戦を告げるほんの序章に過ぎなかった。サバトの街ロンドンを舞台に繰り広げられる魔女と魔法使いたちの物語今開幕!!!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ご主人様が大好き過ぎる新人メイドクレアちゃん

〒072-6969
恋愛
ご主人様のことが大好きなメイドさんクレアちゃんとご主人様との物語。 コメディ要素多めでいくつもりです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...