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成人の日 前日 2

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「……はぁ」 「……はぁ」

 少年は息を荒々しくさせながら、家の扉を重たそうに開けた。

「お帰りなさいガル。もう少し経ったら畑仕事をするから、汗をきちんと拭いておくのよ」

「お母さんただいま。」

 いつものように、挨拶を交わした少年は、部屋の中に、入っていく。

「あれ、そういえば父さんは?」

「お父さんはまだ寝室で寝ているはずよ。ねぇガル、お父さんを起こしにいってくれない?」

「ったく、お母さんは相変わらず人使いが荒いね。」

「私は、良いのよ……。ところで、ガルお父さんに何か用事でもあるの?」

「お父さんに、もう一度成人の日について聞きたくてね。」

「ふふっ。そういえば明日は成人の日だったわね。明日は、とても大切な日だから今日は、早く寝るのよ。」

「分かってるよ。それじゃお父さんを起こしにいってくるね。」

「頼むわねガル。」

(この、やり取りも明日以降、少なくなるのね……。)

 ガルがいなくなった、部屋で独り呟く母親が居た。




 少し経つと、ガルがお父さんを連れて家の前の畑にやって来た。

「遅かったじゃない。早く畑の作物を収穫するわよ。」

「えっ、でも収穫は三日後って言ってなかったっけ。」

「ガル、明日が何の日か忘れたのか。さっき、父さんと話をしていただろ。」

「そっか明日は、成人の日だ」

「そうよ、ガル。成人の日は昨日収穫した、作物を食べるといいスタートが切れると言うでしょ。今日収穫するのはそのためよ。」

「あっ、そういえばそんなこと言われたなぁ」

「はぁ。成人の日を忘れている奴がどこに居るんだ。お父さんは、お前が誰かに騙されないか心配だぞ。」

 父親は、成人の日を忘れていた息子に対し、心配そうな顔を向けた。

「大丈夫だって、少し気が抜けていただけだよ。」

(父さんは、お前のそういうところを心配しているんだ。)

 父親の心配は、全く息子には伝わっていなかった。



 太陽の日差しが強くなり始めた頃、親子三人は収穫を終え、家の中に戻っていった。

「ガル、手をしっかり洗いなさい。」

「母さん、流石の僕でも毎日言われれば、手を洗うことくらい覚えられるよ。」

「……そうね。なら、手を洗い終わったガルには、料理を運ぶのを手伝ってもらおうかしら。」

「うん。それじゃあ野菜炒めとパンを机に運んでおくね」

「ありがとうガル。また明日も……いややっぱり何でもないないわ、ガル。頑張り屋のガルには、野菜炒め少し多めにしておくわね。」

「うん。ありがとう。」

 ガルは、野菜炒めに夢中で、母の言葉に違和感を感じることはなかった。

(いつの間にか、ガルも大人になっていたのね……」

 母親は、息子の成長を改めて実感していた。

(明日から、ガルはこの村を出るから、ガルとの日常を今のうちに味わっておかないと。)

 母親は、少しの時間しかないが、後悔をしないようにしようと決心した。

「「お母さん、まだ?」」

「今、行く」

 その日の、食事は、いつもより会話が多かったが、その分沈黙も多かった。






 夕食を食べ終えた頃。

「後で、父さんの部屋に来てくれないか?」

「うん、分かった。少し休んでから行くね。」

 少年は、いつもより少し大きいお腹を触りながら、自分の部屋へと入っていった。




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