契約に失敗した俺は……。

ど~はん

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24.渦と魔剣

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あらゆるものを飲み込む光ホワイトホール。』

サタナエルは右手を、幸多たちの方に突き出しそう唱えた。

するとその右手には少しずつ黄色い光が集まりだし、渦を作り始める。

「ホワイトホール?」

「幸多、沙夜、頭上に注意を!」

フレイヤが忠告した瞬間、サタナエルの右手の渦は一瞬にして消えた。

開門オープン……。』

そしてサタナエルが呟くとフレイヤの忠告通り、幸多たちの頭上に小さな渦が出来始めた。

「なっ、なんだこれは!」

「それはある空間と繋がっています!吸い込まれないように注意してください!」

渦はみるみるうちに広がっていく。

中心は黒、周りを光が渦を巻いているこの攻撃はあらゆるものを吸い込む。
吸い込まれたものは使用者(この場合サタナエル)が作り出した異空間に飛ばされる。

渦が大きくなると同時に吸い込む力は増す一方。

「くっ……!フレイヤ、瞬間移動は……つ……使えないのか?」

「その渦は追尾してきますので無理です。幸多、召喚の剣を使ってください!それで渦を斬るのです!」

フレイヤは幸多たちを吸い込まれないように食い止めることで精一杯。

「それがあったか!」

幸多は両手で剣を握る。

「目覚めよぉ!!」

すると、今回は成功した……のだがレーヴァテインの時とは様子が違った。

召喚の短剣から紫のオーラが沸きだした。
それは短剣を包み込むように渦巻く。
そして短剣は伸びていく。

「これは……。」

「やりましたね、幸多。」

フレイヤが微笑んだ。

「幸多っ!はやく!」

沙夜が叫んだ。

「あっ……ああ!」

剣を包み込んでいたオーラが散った。
それは明らかにレーヴァテインとは違った。
レーヴァテインよりやや太めの刃を持ったの剣が召喚された。

「うぉぉぉぉぉ!!」

幸多はその剣を両手で頭の上に、天高く掲げると渦に向かって振り下ろした。

その剣の斬撃は紫だった。

渦を断ち斬りそのまま数十メートルに渡って紫の斬撃とそれを取り巻く霧が広がった。

『その剣、まさかグラム……。』

サタナエルの言う通り、幸多が召喚したのは魔剣グラム。
その意味は怒り。

沙夜の家襲撃、そして何より…
元警視庁公安部部長小林さんを殺された怒り…。

その怒りが魔剣グラムの召喚成功に繋がったのだろう。

渦は光の粒となって、綺麗な星空に消えていった―。
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