契約に失敗した俺は……。

ど~はん

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10.静かな日没

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「俺が行ったところで…大丈夫かな。」

「問題ありません。私がいますから。」

胸に右手を当ててフレイヤは自信満々で言った。

「とは言ってもさ…。足手まといになったりとか…。」

「そんなこと考えてるんですか?」

「そんなことって…。」 

落ち込むと同時に、発覚した幸多の心配性気味なところ。

そして、火に油を注ぐかのようなフレイヤの発言…。

「足手まといになるくらいにあなたが使えなかったら、気絶させて近くに置いといて私が片付けますよ。」

「それはやめて!気絶はまずいって。」

「だって殺して復活させるのも酷いと思うのです。ちょこまか逃げてもらっても…まぁ困るので気絶かなと。」

「邪魔ってことじゃん!」

そんな会話をしながら過ごしていると、速くも夕方5時。

「幸多、提案があります。」

フレイヤが幸多を呼ぶ。

「提案?」

「沙夜とブリュンヒルデに協力を要請してみては?」

「あ、そうだな。危険なことに協力させるのは少し申し訳ないけど。」

「危険なことを避けるなら、天使なんて召喚しないと思いますが?」

「そうだな。」

フレイヤはブリュンヒルデに連絡を取り、事情をすべて話す。

「いいわ、手伝うよ。」

沙夜はすぐにokした。

「とりあえず家に7時までにな。」

「わかったわ。」



1時間後―。

インターホンが鳴る。

「誰だ?」

「沙夜とブリュンヒルデですよ。今回はさすがに正規のルートで入ってきたみたいです。」

「もう侵入者じゃないからな。普通に呼ばれたから来たって言えばいいのでは…。たしかに正規のルートだけども。」

「とりあえず出てください。呼んだのはこちらですから。」

幸多はリビングから玄関へ向かい、念のため掛けている鍵を開けてドアを開けた。

夜の冷たい空気が彼の体を通りすぎて、家中を駆け回った。

「こんばんは。久しぶりってほど時間は経ってないけど、とりあえず久しぶり。」

「おう、まだ時間はある。中に入ってゆっくりしてくれ。」

「じゃ、お邪魔するわ。」

「失礼します。」

沙夜とブリュンヒルデを中に入れる。

そして幸多は玄関のドアを閉めて、入り込む外の冷たい空気を遮断する。

「あ、こんばんは~。お兄ちゃんこの人は?」

「美奈ちゃんこんばんは~。」

「わっ、私の名前を知ってる!?」

「幸多から聞いたわ。私は水子乃沙夜、よろしくね。」

「よろしくです!」

美奈と沙夜はすぐに仲良くなり、楽しそうにずっと話をしていた。



それから数分後、またインターホンが音を放つ。

「小林さんですよ幸多。」

「そんな時間か。」

幸多は時計を見て、沙夜を呼ぶ。

「おい、いくぞー。」

「あ、はいよ。」

「どこかいくの?」

「ちょっとな。留守番よろしく。」

美奈は少し不思議そうな顔をしていたが、なにも言わなかった。

幸多は沙夜とブリュンヒルデ、そしてフレイヤと一緒に玄関へ。

ドアを開けると再び冷たい空気が体にぶつかる。

「やあ、こんばんは。そちらは助っ人かな?とりあえず時間がないから乗ってくれ。話はそれからだ。」

小林は道路の端に止まっている車を指差した。

「わかりました。」

幸多たちはその車に乗った。

「では、出ます。」

やがてその車は動き出す。


未知なる戦場に向かって―。
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