契約に失敗した俺は……。

ど~はん

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2.侵入者

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後日―。

「和原幸多です。よろしくお願いいたします。」

「陸上自衛隊特殊作戦群特務中隊の二等陸佐 田川たがわです。よろしく。小林さんから話は聞いてるよ、力を貸してくれるんだって?」

「はい。」

「君の安全は、我々陸上自衛隊、そして警視庁公安部が保証するよ。協力に感謝します。」

田川二等陸佐は敬礼をした。



その後、家まで送ってもらった幸多とフレイヤ。

「では、失礼します。」

小林は車に乗り、ドアを閉めた。
やがて静かに車が発進し、幸多たちは見えなくなるまで、遠ざかる車を眺めていた。

「めんどうなことになったなぁ。」

「私が契約してる以上、幸多が死ぬことはありえないので安心してください。」

「それは助かる。」

めんどうなことは勘弁と、幸多が思いながら玄関のドアノブに手を掛けたとき―。

「幸多、待って。」

フレイヤが何かに気づいたようだ。

「家の中にあなたの妹以外に誰かいます。そして天使の気配も。」

「何だって!?」

幸多とフレイヤは玄関から入ると危険と判断し、裏口に回った。

「幸多、これを。」

裏口の前に着いたとき、幸多はフレイヤから短剣を渡された。

「いざとなったら使ってください。使い方は『目覚めよ!』っと、心から唱えることが大切です。」

「目覚めよか、了解。」

「私は一応、姿を消しておきます。会話は普通にできるのでご安心を。」

「わかった。じゃあ、いくぞっ!」

戸を開けて中に入る。

暗く、物音ひとつしない静かな廊下、幸多は、心臓の振動が加速していくのが感じた。

「どこだ…。」

息をするのも慎重になるほど集中する。

なぜなら、いつもここは自分たちの領域だが、今は完全に侵入者の殺害空間テニトリーだからである。

床の鳴き声にさえも少し体が反応するほど神経を尖らせる。

リビングに到達する。
すると…。

「美奈っ!」

美奈がソファーの上で横になっていた。

急いで駆け寄る幸多。

「大丈夫かっ!?」

「寝ているようですね。」

フレイヤが姿を消した状態で、瞬時に美奈の状態を読み取った。

『その子はしばらく起きないわよ。』

リビングの角の影に少女が立っていた。

ソファーにわざと妹を眠らせて、幸多の注意を引かせ、自分の存在を隠していたようだ。

「一人だけみたいね。」

フレイヤは姿を消しているため少女からは見えない。

「さて、先日の夜。ここで光が見えたのだけど天使か悪魔を召喚したんじゃないかと思って来てみたのだけど…違ったみたいね。私の天使が気配を捕らえられてないもの。」

「幸多、私が合図したら剣を。」

フレイヤが幸多の心に喋りかけた。

「まぁ、とりあえずあなたにもしばらく眠って貰いましょうか。」

少女の天使が近づいてきた。

幸多は静かに剣を握ってる右手に力を入れる。

だんだんと天使が近づいてると同時に、幸多は膝を曲げ、右足を引き、体制を低く構える。

「今です!幸多。」

「目覚めよぉ!」

幸多は唱えた―。
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