婚約破棄されることは事前に知っていました~悪役令嬢が選んだのは~

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ウラーラ王妃が本気を見せる時

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「それで私は何をすればいいのでしょう?」

「先ほどから話を聞けば、国王は虫も殺せぬほど穏やかな性格だとか。逆に貴方は人々も恐れる悪妃なのでしょう。だったらそれを地でやればいいのです」

「ふっふっふ。そういうことであれば最後まで演じて見せますわ」

ウラーラが意図的に裏切ったのではないと分かると、その場の空気が和らいだ。このメンバーでおしゃべりをしていると昔を思い出す、よく部屋に籠って3人でいたずらを考えたものだ。

リブルとウラーラも言葉には出さないが、再会できた喜びを感じているのだろう。

「では、優しい国王には泣いてもらいましょう」

それと同時に奪われた時間に怒りを感じている。ウラーラもドルトムント一族として威圧をコントロールできるが、今は隠す気もないのか殺気が駄々洩れだ。ウラーラの人を殺せそうな冷ややかな表情も健在なようだ。

「キース様、繰り返しになりますがアティーブルとベガルだけは守ってくださいね」

「おや?ザーブル王子が入っていないのは意味深ですね」

「ザーブルは・・・私の子ではありませんから」

「皮肉なことですが、世間では冷酷なザーブル王子が母親似だとされています。でも、ウラーラ王妃様と血が繋がっていないことを考えると、あの残虐性は国王陛下の本質なのでしょう」

先ほどから話を聞いていた侍女が、我慢できないとばかりに口を挟んできた。

「ウラーラ、貴方が産んだのでなければ母親は誰です?」

「誰にも言わないでください・・・・ザーブルの母親は、陛下の妹であるツッティー王女です。兄弟で子を成したなど世間体が悪く、産まれたらすぐに私に第二王子が誕生したと発表されました」

「なんてことだ。この国の闇はそこでしたか」

「ザーブルは恐らく、私が薬を飲んでいる状況も理解していると思います」

「サーブル王子が、そうですか」

ウラーラが少し躊躇うような表情をしたのは、我が子として育ててきた情があるのかもしれない。しかし、暗殺者として情がいかに厄介なのかも理解している。

「それと次期国王のことですが、ウラーラは誰を推すのですか?」

「母上、できれば僕を選んで欲しい。アティーブル兄上は努力家ですから国王に決まれば自分を押し殺してでも役目を果たすでしょう。しかし、音楽家として生計を立てる方が兄上にとって幸せな気がするのです」

「そうね、私もそう思うわ。それに貴方なら立派に国王を務めることができるでしょう」

ウラーラはベガルの顔を向け、ベガルの手を強く握る。

「それにザーブルに負けては駄目よ。サーブルがこの国のトップになれば恐怖政治に国民が怯えることになるわ」

「分かっています」

「さて次期国王も決まったことですし、明日からの予定を決めましょう」

***

「陛下、今日の会議にはザーブル王子を連れて行くのですか?」

宰相のザトルが陛下の部屋に迎えに行くと、国王にしか身に付けることができない高貴な色とされる朱色の服を着たサーブル王子がいたのだ。

「ああ、会議の流れで行くとそろそろザーブルに決まりそうだからね。宰相にも苦労を掛けるがよろしく頼むよ」

いつも労う言葉をかける気の優しい陛下だが、宰相のザトルはなにか違和感を覚える。

「ウラーラ王妃は会議にご出席されるのでしょうか?ここ最近お姿をお見掛けしませんが」

「彼女は気まぐれだからね。跡目争いには関心がないようだ。それに、何も言ってこないところをみると彼女も反対はしていないのだろう。私も彼女の意思を無碍にはできないからね」

今日はいつになく饒舌に話す国王と共に会議に入ると、召集されたウェスト王国の貴族達から拍手で迎えられた。国王はその光景を満足そうに見つめると、ゆっくりと最上段にある王座の椅子に座る。サーブル王子も後に続き、国王の隣に立った。

「忙しいところ集まってくれてありがとう。時間もないので早速次期国王について話し合おう」

正統派の連中はザーブル王子の朱色の服装に気づき眉をしかめたが、連日の会議でザーブル王子の派閥が勢いを増していた。

「ごく一部の者がサーブルが次期国王になることに反対をしていることは知っている。しかし大多数の者がサーブルの決断力を認め、次期国王に望んでいる。それを鑑み鷲はサーブルを次期国王に・・・」

ギィイ・・・

その時、最後まで話すことなく勢いよく扉が開いた。視線が一斉に扉に集まるとそこにはウラーラ王妃がいた。

「お、お、お前・・・何しに来た」

国王はウラーラ王妃を見て心底驚いた顔をしたのだった。



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