婚約破棄されることは事前に知っていました~悪役令嬢が選んだのは~

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「キース、簡単に第三王子を国王に祭り上げると言うけど実際にはどうするの?」

「すでに豊富な軍資金を与えています。今はそのお金で集めた傭兵をドルトムント一族が徹底的に鍛え上げていますし、19歳になる第三王子のベガル王子にも姉が護衛にあたっているので問題ないでしょう」

「キースにお姉様が?」

「ええ、私には姉と妹がおりますので」

ドルトムント一族の情報は些細なことでも高値で売られる。ハラハラするウエン達の心配もよそに、レイシャルは質問を続ける。

「そんな危険な役割をお姉様がして、大丈夫なの」

「はい。姉は性技に長け、毒物の扱いも得意ですので」

「そんなもので身を守れるのか?」

サマリが久しぶりに口を開いた。

「姉自身は強くはありませんが、一度姉の極めた性技を味わうと男は魅了にかかったように、命を賭けて姉を守るようになるそうです。男側からすると天国が味わえる代わりに、姉でしかイケなくなるのが難点ですが・・・お互いWinWinの関係でしょう」

「お、おう」

男性陣が何とも言えない顔になっていたが、ドルトムント一族はひとりひとりが何かを極めているそうだ。ちなみに妹さんはあらゆるものを武器にするのが得意だそうだ。手に何かを持たせると簡単に人を殺せると言っていた。

「私って意外と普通の人間だったのね」

リリアンはそう呟いていたけど、普通の令嬢はナイフなど持ってはいない。リリアンにも教えることが沢山ありそうだ。

「とにかく、リリアンはこの国を出ることは禁止です。リリアンもお父様に雇われていたならオーロラ商会の従業員と同じでしょ。リリアンの今後の仕事については改めて話し合いましょう。それとカミュール男爵の生活についても保証をするので安心してください」

「永住権も承諾しよう。これからの住処を探すといい」

「ほ、本当にありがとうございます。では、私は家族が待っているので宿に戻ります。お兄ちゃん、また近いうちに」

嬉しそうに挨拶をして部屋を出るリリアンは、付き物が落ちたようにすっきりしていた。どこから見ても普通の貴族令嬢に見えた。その姿を見てミカエルも安心したのだろう。私のそばまで来て可愛らしい顔で笑うのだ。本当に兄弟揃って可愛らしい。

「妹のこと黙っていてすまなかった。ありがとうウエン王子、それにレイシャル様」

「いいのよ。でも、サミエルも同じよ。勝手にこの国を出ることは許さないわよ」

「ああ、分かってる・・・ついでにワイアットにも抱き着くなと注意してもらえないか。さっきから筋肉が暑苦しいんだ」

「ん~ん。それはワイアット様の不安が解消されれば落ち着くんじゃない」

「なんで庇うんだよ。ウエン王子もこんな近衛騎士隊長は嫌だろ?ほら部下に示しがつかないよな」

「ああ、別に構わん。熱がほどよく逃げて、丁度いいぐらいだ」

「何でだよ!」
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