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戻ったレイシャルとミカエルは、みんなを心配させた挙句泣かれるわ、王妃には怒られわ散々な目に遭った。王妃は主にウエンとワイアットに怒っていたが、1番怒っていたのはアンヌだ。
王妃より怒っているアンヌもどうかと思うが、王妃までアンヌの怒りに触れないように気を使っていた。
「どこかに行くときはちゃんと、周りの大人に声をかけてから出かけなさい!それに、横に寝ていて気付かなかった王子も王子です!」
(俺は十分大人だぞ!)
そう心の中で思ってもミカエルはアンヌに敵わないと分かっている。言い返すこともなく素直に正座を続けるのだった。
***
「こってり怒られたな・・・」
「ええ、本当に」
部屋に戻って来た途端ふたりはぐったりと椅子にもたれかかったが、その割にウエンはどこか上機嫌に見える。
(アンヌがウエンと一緒に寝なさいなんて言うんだもの)
そうなのだ、怒られていた時『レイシャル様は目が覚めたらウエン王子を必ず起こしなさい。夜中でも同じです』と言い出したのだ。
「待ってアンヌ、私は自分の屋敷に帰るわよ」
「駄目です。レイシャル様はご自身がどれだけ無理をしたか分かっているのですか。男と違って女の身体は繊細なのよ。急に体調が悪くなったらどうするのです。当面は城に住んでウエン王子と生活を共にしなさい」
「じゃあ、別の部屋を用意して」
「どうしてです。子供の頃はあれだけウエンと一緒じゃなきゃ寝れないとワガママを言っていたでしょ」
「それは・・・そうだけど・・・」
「だったら何も問題ありません。ウエン王子もちゃんと目を覚ますのですよ」
(えーーーー、そんな!)
昼からは陛下やルビー、ベンハー、キース達と今後の運営について話し合い。港に停泊している船長や船員を招待したレセプションの開催も約束してくれた。
有意義な時間を過ごしたことには間違いないが、その後夕食を食べるとあっという間に夜になった。
***
「ウエン、私にも枕を頂戴」
「なぜだ?レイシャルは私の腕枕がお気に入りだっただろ」
そうなのだ、子供の頃の私は引っ付き虫だった。ウエンがどこに行くにも付いて行ったし、寝るのも一緒がいいとお母様を困らせた。
私が余りにもウエンに引っ付くものだから、自然とウエンの腕枕で寝るというスタイルに落ち着いたのだ。
「ぐぅ・・そんなこともあったわね」
(今思い出しても完全なストーカーじゃない)
「じゃ、お邪魔して・・・きゃっ」
「どうした?いつも寝る時は頬にキスをしてと言ってただろ」
(言ったわ、確かに言ったわ。ウエンが子供みたいにおでこにキスをするから拗ねてほっぺがいいって)
「まぁ・・・そんなことも言ったわね」
(ああ、穴があったら入りたい・・・)
「じゃあ、蝋燭を消すよ」
「ええ、おやすみ・・・」
蝋燭を消すと部屋は真っ暗になった。今はその暗闇が有難い。段々目が慣れてくると、月明りで規則正しく上下するウエンの胸板が見えた。
(寝息も聞こえるし、ウエンはもう寝たわね)
いつもベッドに入ると5分で寝る私が、環境が違うせいかどうも寝れない。
それに、さっきから頭の位置もしっくりこないし、腕の置き場が分からずもぞもぞ動いていた。
(私・・・どうやって寝ていたのかしら・・・そうだわ。ウエンの胸の上に置けばいいじゃない)
子供の頃はミノムシみたいの引っ付いて寝ていた記憶が蘇った。そして、ウエンを横から抱き着くように胸の上に腕を乗せると一瞬ウエンがびっく動いた気がした。
(ん?・・・寝てるよね)
ウエンの静かな寝息がまた聞こえる。
(それにしても、子供の頃はこんなに筋肉もなかったよね)
月明りに浮かぶウエンの首の太さや喉仏を眺めていると急に胸が苦しくなった。ウエンの胸に置いた腕から感じる固い筋肉に胸がドキドキするのだ。
(ウエンといると時々こうなるのよね。もしかして狭心症かもしれないわ。前世の祖母も狭心症で亡くなったし、遺伝とか?)
***
「さあ、どこまで耐えれるかな~」
「15日間しかないですからね」
ミリタ王子が面白そうにキースに話しかけると、キースは別のことを考えているようだった。
「そうだね。ところでワイアットは帰ったの?」
「ええ、ミカエルを連れて」
「じゃあ、あっちも見学に行ってみる?」
「いえ、私はそろそろリリアンが着く頃なのでそちらに」
「あ、サミエルの妹だよね。調べてどうするの?」
「いえ、気になることがあるだけですよ」
「ふ~ん」
******
また暇な時間を見つけ、ちょこちょこ手直ししています。「あれ?何か変わった」と思った方、貴方の言う通りです。拙い文章で申し訳ありません。
王妃より怒っているアンヌもどうかと思うが、王妃までアンヌの怒りに触れないように気を使っていた。
「どこかに行くときはちゃんと、周りの大人に声をかけてから出かけなさい!それに、横に寝ていて気付かなかった王子も王子です!」
(俺は十分大人だぞ!)
そう心の中で思ってもミカエルはアンヌに敵わないと分かっている。言い返すこともなく素直に正座を続けるのだった。
***
「こってり怒られたな・・・」
「ええ、本当に」
部屋に戻って来た途端ふたりはぐったりと椅子にもたれかかったが、その割にウエンはどこか上機嫌に見える。
(アンヌがウエンと一緒に寝なさいなんて言うんだもの)
そうなのだ、怒られていた時『レイシャル様は目が覚めたらウエン王子を必ず起こしなさい。夜中でも同じです』と言い出したのだ。
「待ってアンヌ、私は自分の屋敷に帰るわよ」
「駄目です。レイシャル様はご自身がどれだけ無理をしたか分かっているのですか。男と違って女の身体は繊細なのよ。急に体調が悪くなったらどうするのです。当面は城に住んでウエン王子と生活を共にしなさい」
「じゃあ、別の部屋を用意して」
「どうしてです。子供の頃はあれだけウエンと一緒じゃなきゃ寝れないとワガママを言っていたでしょ」
「それは・・・そうだけど・・・」
「だったら何も問題ありません。ウエン王子もちゃんと目を覚ますのですよ」
(えーーーー、そんな!)
昼からは陛下やルビー、ベンハー、キース達と今後の運営について話し合い。港に停泊している船長や船員を招待したレセプションの開催も約束してくれた。
有意義な時間を過ごしたことには間違いないが、その後夕食を食べるとあっという間に夜になった。
***
「ウエン、私にも枕を頂戴」
「なぜだ?レイシャルは私の腕枕がお気に入りだっただろ」
そうなのだ、子供の頃の私は引っ付き虫だった。ウエンがどこに行くにも付いて行ったし、寝るのも一緒がいいとお母様を困らせた。
私が余りにもウエンに引っ付くものだから、自然とウエンの腕枕で寝るというスタイルに落ち着いたのだ。
「ぐぅ・・そんなこともあったわね」
(今思い出しても完全なストーカーじゃない)
「じゃ、お邪魔して・・・きゃっ」
「どうした?いつも寝る時は頬にキスをしてと言ってただろ」
(言ったわ、確かに言ったわ。ウエンが子供みたいにおでこにキスをするから拗ねてほっぺがいいって)
「まぁ・・・そんなことも言ったわね」
(ああ、穴があったら入りたい・・・)
「じゃあ、蝋燭を消すよ」
「ええ、おやすみ・・・」
蝋燭を消すと部屋は真っ暗になった。今はその暗闇が有難い。段々目が慣れてくると、月明りで規則正しく上下するウエンの胸板が見えた。
(寝息も聞こえるし、ウエンはもう寝たわね)
いつもベッドに入ると5分で寝る私が、環境が違うせいかどうも寝れない。
それに、さっきから頭の位置もしっくりこないし、腕の置き場が分からずもぞもぞ動いていた。
(私・・・どうやって寝ていたのかしら・・・そうだわ。ウエンの胸の上に置けばいいじゃない)
子供の頃はミノムシみたいの引っ付いて寝ていた記憶が蘇った。そして、ウエンを横から抱き着くように胸の上に腕を乗せると一瞬ウエンがびっく動いた気がした。
(ん?・・・寝てるよね)
ウエンの静かな寝息がまた聞こえる。
(それにしても、子供の頃はこんなに筋肉もなかったよね)
月明りに浮かぶウエンの首の太さや喉仏を眺めていると急に胸が苦しくなった。ウエンの胸に置いた腕から感じる固い筋肉に胸がドキドキするのだ。
(ウエンといると時々こうなるのよね。もしかして狭心症かもしれないわ。前世の祖母も狭心症で亡くなったし、遺伝とか?)
***
「さあ、どこまで耐えれるかな~」
「15日間しかないですからね」
ミリタ王子が面白そうにキースに話しかけると、キースは別のことを考えているようだった。
「そうだね。ところでワイアットは帰ったの?」
「ええ、ミカエルを連れて」
「じゃあ、あっちも見学に行ってみる?」
「いえ、私はそろそろリリアンが着く頃なのでそちらに」
「あ、サミエルの妹だよね。調べてどうするの?」
「いえ、気になることがあるだけですよ」
「ふ~ん」
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また暇な時間を見つけ、ちょこちょこ手直ししています。「あれ?何か変わった」と思った方、貴方の言う通りです。拙い文章で申し訳ありません。
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