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しおりを挟む1番難しいのは人の移動だ。慣れていない子供や年寄りは7日の移動は耐えられないだろう。体調を見ながら、移動するのは腰が折れる。それでもレイシャルは時間がかかっても安全を優先した。
ウエンはレイシャルを残すことを最後まで反対した。しかし、レイシャルが卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されることが一番平和的な解決方法だとも理解をしていた。卒業パーティーにはウエンも招待状が届いていたが、レイシャルの手紙には『絶対に来ないで欲しい』と書かれていた。
ミカエルにも「王子の身に何かあれば戦争になる。それはレイシャルお嬢様も望んでいない」と欠席を約束させられた。
この壮大な計画の立案にワイアットはため息しか出てこないが、普段は怒ることもない優しいウエン王子が、鬼のように厳しい顔になっている。
「ところでミカエル、卒業パーティーでレイシャル様は間違いなく婚約破棄を言い渡されるのか」
「ああ、100%間違いない。王子が浮気しているのは妹のリリアンだ。リリアンも暗殺者として教育を受けている。男を手玉にするなど妹にかかれば容易いことだ、すでに王子や取巻きを陥落させたと言っていた」
「リリアンと言うのはお前の妹なのか?」
「ああ、俺がお嬢様の暗殺を請け負った時も止めるようにと説得してきたのもリリアンだ」
ミカエルは酒を飲み干すと、グラスを机に置いた。
「旦那様は王子と別れさせるために証拠を集めていたんだ。そして協力していたのがリリアンだ。リリアンは旦那様が殺されたと聞くとお嬢様を助け出すと言い出した。そして、作戦を成功させるため知り合いの男爵に頼んで養女になったという訳だ」
「そうか。そうなるとお前の妹も卒業パーティーに出席するのか?」
「ああ、もちろんだ」
ウエンは口を挟まず静かにふたりの会話を聞いていた。
歳を聞けばまだリリアンは16歳だという。王族を誑かすなど一歩間違えれば死刑になることなど目に見えている。ミカエルがふざけているのは妹を心配しているのを悟らせないためではないかとワイアットは考えた。
そしてミカエル自身も王宮に忍び込めば暗殺未遂として捕まる可能性もある。ワイアットはミカエルの本心を見定めるよう、一挙手一投足を見逃さなかった。
(俺も命を賭けるしかないようだな)
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